没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵

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盗まれた魔道具編

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マークの予想通り、古城の中にはいち早くマーク達の襲撃を察知しすぐに身を隠した者達が一定数いた。

彼らはいわゆるこの盗賊団の古株メンバーで、先に捕まった下っ端達とは違い常に何かしらの魔道具を用心で身につけている。


この時もマーク達の襲撃を察知した瞬間に全員が魔道具によるフル装備に身を固めていた。

悔やまれるべくは時間が短すぎて下っ端の連中に警戒を促せなかったことだが、残っているメンバーの全員が問題ないと考えていた。

下っ端だから見捨てても良いという意味ではなく、襲撃してきた連中を返り討ちにして仲間を取り戻すつもりだった。


「ジャーゴ、ラナ達を連れて表を固めてる奴らを片付けてこい。他の奴らは俺についてこい。奴らを個別に引き離して一人ずつ倒していくぞ」


身を隠すための魔道具を起動した状態で、通信の魔道具を使っているのはユルミルである。


シュレンガーについてこの土地までやってきたユルミルは気がつけばこの盗賊団の副団長になっていた。

犯罪行為に手を染めることに抵抗がないわけではなかったが、奪った金は今でも貧しい村に届けるということをシュレンガーは続けていたし、似た様な境遇の者が集まった盗賊団は居心地も良かった。

どこぞの貴族や魔法使い連中に潰されてなるものかともしもの時のための防衛を任されているのがユルミルである。


マークが古城の入り口二箇所に二人ずつ配置した魔法騎士団達への対処としてユルミルは腕の立つ八人の盗賊達を向かわせた。

ユルミルの読みでは敵で腕が立つのは古城に侵入してきた四人。

その他の敵には勝る数を相手にさせて制圧、もしくは時間を稼ぐつもりだった。


中に入ったマーク達を相手に取るのはユルミルと盗賊団での経験が最も長い三人の仲間達である。

盗賊団が所有している魔道具への理解が深く、使いこなせるメンバーである。


「シュリ、アレを作動させろ」


ユルミルはシュリという女性の盗賊に指示を出す。
このシュリが所持している魔道具は姿を透明にするという貴重なもので盗賊団の中で隠密に特化したメンバーである。

そのシュリが言われた通りにある魔道具を作動させる。

それは、古城にあらかじめ仕掛けられていた大掛かりな魔道具で防衛時の要となるものだった。





「なんだ? 霧……」

古城の廊下を進んでいた四人はマークの警戒する声で立ち止まった。

崩れた壁や天井から光が差し、明るかった廊下に突然霧が発生したのだ。


この辺りはどちらかといえば乾燥の強い地域である。

晴れた日に急に霧が発生するとは考えづらく、明らかに敵の策略であるとマークは考えた。


「おい、油断すんなよ。離れんな」


マークは後ろにいた三人、特にダルブとドリスに向けて注意を促した。

最近では考え方に変化があったらしいこの二人だが、もともと悪魔という別種族。膨大な魔力とそれに伴った大きな力のせいで敵を舐めてかかる節がある。

霧はあっという間に廊下に充満して、すぐ近くにいるはずのお互いの姿も確認できなくなる。


「おい、いるか?」


マークは問いかけるが、返事はない。


「ただの霧じゃねぇな」


姿が見えなくなるのはまだしも、声まで届かなくなるのはおかしい。

まるで、既にこの場には誰もいないみたいにシンと静まり返っている。

敵が仕掛けた罠である以上ただの霧ではないのだろうが、このままでは下手に動くこともできない。

マークは冷静になるために深呼吸をすると、耳をよく澄ました。

後ろにいたはずのルイズ達の声はやはり聞こえない。


では、前方は?

かすかに、衣擦れの音が聞こえた。


「そこだ!」


マークは剣を抜き、音の方向へ切り掛かる。

金属のうち合わせる音がした。
それと同時に何もなかったところにスーッと人影が現れる。


「へぇ……やるね」


そこには刀を持ったユルミルがいた。
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