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2章 学園生活
8 早く婚約したい男と、囲まれる妖精姫
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マリアベルが女子の標的となっていることには、いくつかの理由がある。
1つは、貴族の娘なのに貧乏で、学費免除の特待生であること。
この時点で、わりと特異な存在である。
そのくせ急にきれいになって現れて、男子にちやほやされ始めた。
マリアベルはあまり意識していないが、男たちは「妖精姫」にメロメロで、婚約者もいない彼女をなんとかランチデートにでも誘えないかと苦心している。
マリアベルが異性からの「学食奢るよ」を受けたのは、アーロンただ一人である。
それから、ちょっとした演習でもわかるほどの、魔法の才。
彼女は短い歌を詠唱とし、簡素な魔法陣を描いて魔法を発動させるが、これは並大抵のことではない。
本来は、高等な術になればなるほど詠唱は長くなり、複雑な魔法陣を必要とする。
他の学生であれば、長い長い詠唱を口にしながら、間違えないよう気を張りつつ陣を描かなければいけない術を、マリアベルは歌い踊るように発動させるのである。
丸の中に、三角を二つ。それから、サラマンダーのつもりのにょろにょろを描きながら、歌――それも5音ほどである――を歌い、大きな火の渦を作り出したときには、教師も唖然としたものである。
妖精姫とまで呼ばれる美貌を持つ彼女の歌声と軽やかな動作、その圧倒的な才に心奪われる者もいるが、やっかむ者だって当然存在する。
女子に嫌われる理由として、最も大きいかもしれないものが――みなの憧れの存在であるアーロンに、寵愛されていることだ。
アーロンがマリアベルにご執心なことは、この学園では有名だ。
彼がマニフィカ領に通っていることを知る人は多かったが、入学後、その愛しっぷりはさらに有名になった。
なんたって、婚約すらしてないのに、わざわざ送迎するほどだ。
寮もあるのにそんなことをするなんて、幼馴染だから、領地が近いから、だけでは説明できない。
アークライト領とマニフィカ領は近いが、馬車で移動すればそれなりに時間がかかる。
アーロンは、今までより早く起き、遅く帰り……。自分の時間を削ってまで、マリアベルとともに登下校しているのである。
みんなの憧れの令息が、「鮮血」なんて二つ名を有していた貧乏暴力娘にご執心。
他のご令嬢からすれば、「なんでよ! 私のほうがあの人にふさわしいじゃない!」といった具合である。
マリアベルとコレット、女子二人のランチに、それっぽい理由をつけて混ざることに成功したアーロン。
二人に「すごいお弁当ですね」なんて言われて苦笑しながらも、愛しのベルとの婚約話を、早く進めなければと考えていた。
アーロンとて、マリアベルとともに登下校する自分を見る女子の視線や、今日のクラリスの態度で、彼女がいじめられる原因の1つが自分にあると気が付いていた。
もちろん、自分が女子に人気のある物件であることも理解している。
婚約もしていないのに、アーロンがマリアベルを特別扱いするから、彼女は他の女性に敵視されているのだ。
婚約者でもないくせに、と思われるのなら、婚約してしまえば問題ない。
結婚の約束さえしてしまえば、アーロンは今まで以上にマリアベルのサポートもできるだろう。
学食を使う費用や弁当を受け取ってもらえるかもしれないし、ドレスや装飾品も「婚約者へのプレゼントだ」と言って堂々と渡すことができるようになる。
今は制服通学をするマリアベルだが、上手くいけばアーロンが贈った私服で登校してくれる可能性だってある。
そんなの、考えるだけでもう最高である。
婚約の話は、現在調整中。
突然のプロポーズをかましてしまいました、と正直に白状したうえで、正式に話を進めたいとアークライト家に……当主である自身の親に掛け合っているところだ。
アークライト公爵家は強さを重んじる家系だから、おそらく、マリアベルと婚約したい旨は了承されるだろう。
いずれ、マニフィカ家に正式に婚約を申し込むことになるはずだ。
だが、今すぐに、とはいかない。
婚約者として彼女を守れないこと、堂々と隣に立てないことが、歯がゆかった。
まあとりあえず、このままお弁当仲間にはなれそうだから、昼休みはマリアベルの安全が確保されるだろう。
――明日は、昼休みに入ったら速攻で教室までベルを迎えに行こう。
そんなことを思いながらも、アーロンはマリアベルとコレットとのランチの時間を楽しんだ。
翌日、アーロンは「なにかの競技に参加中ですか?」と聞きたくなるような早歩きで、一年生の教室へと向かった。
もちろん、昼休み突入と同時にマリアベルを迎えにいくためである。
身体能力が高く、足も長い彼は、走ってはいなくともすぐに目的地にたどり着く。
「ベル! 今日も一緒に、おひる、を……」
笑顔で一歩教室に入った彼が、そこで見た光景は。
「マリアベル様、一緒に学食に行きませんか?」
「魔法を教えて欲しいんだが、昼休みを少しもらえはしないだろうか。マリアベル嬢」
「実は俺も、魔研に入ろうかと思ってて……」
そんなことを話す男たちに囲まれる、マリアベルの姿だった。
1つは、貴族の娘なのに貧乏で、学費免除の特待生であること。
この時点で、わりと特異な存在である。
そのくせ急にきれいになって現れて、男子にちやほやされ始めた。
マリアベルはあまり意識していないが、男たちは「妖精姫」にメロメロで、婚約者もいない彼女をなんとかランチデートにでも誘えないかと苦心している。
マリアベルが異性からの「学食奢るよ」を受けたのは、アーロンただ一人である。
それから、ちょっとした演習でもわかるほどの、魔法の才。
彼女は短い歌を詠唱とし、簡素な魔法陣を描いて魔法を発動させるが、これは並大抵のことではない。
本来は、高等な術になればなるほど詠唱は長くなり、複雑な魔法陣を必要とする。
他の学生であれば、長い長い詠唱を口にしながら、間違えないよう気を張りつつ陣を描かなければいけない術を、マリアベルは歌い踊るように発動させるのである。
丸の中に、三角を二つ。それから、サラマンダーのつもりのにょろにょろを描きながら、歌――それも5音ほどである――を歌い、大きな火の渦を作り出したときには、教師も唖然としたものである。
妖精姫とまで呼ばれる美貌を持つ彼女の歌声と軽やかな動作、その圧倒的な才に心奪われる者もいるが、やっかむ者だって当然存在する。
女子に嫌われる理由として、最も大きいかもしれないものが――みなの憧れの存在であるアーロンに、寵愛されていることだ。
アーロンがマリアベルにご執心なことは、この学園では有名だ。
彼がマニフィカ領に通っていることを知る人は多かったが、入学後、その愛しっぷりはさらに有名になった。
なんたって、婚約すらしてないのに、わざわざ送迎するほどだ。
寮もあるのにそんなことをするなんて、幼馴染だから、領地が近いから、だけでは説明できない。
アークライト領とマニフィカ領は近いが、馬車で移動すればそれなりに時間がかかる。
アーロンは、今までより早く起き、遅く帰り……。自分の時間を削ってまで、マリアベルとともに登下校しているのである。
みんなの憧れの令息が、「鮮血」なんて二つ名を有していた貧乏暴力娘にご執心。
他のご令嬢からすれば、「なんでよ! 私のほうがあの人にふさわしいじゃない!」といった具合である。
マリアベルとコレット、女子二人のランチに、それっぽい理由をつけて混ざることに成功したアーロン。
二人に「すごいお弁当ですね」なんて言われて苦笑しながらも、愛しのベルとの婚約話を、早く進めなければと考えていた。
アーロンとて、マリアベルとともに登下校する自分を見る女子の視線や、今日のクラリスの態度で、彼女がいじめられる原因の1つが自分にあると気が付いていた。
もちろん、自分が女子に人気のある物件であることも理解している。
婚約もしていないのに、アーロンがマリアベルを特別扱いするから、彼女は他の女性に敵視されているのだ。
婚約者でもないくせに、と思われるのなら、婚約してしまえば問題ない。
結婚の約束さえしてしまえば、アーロンは今まで以上にマリアベルのサポートもできるだろう。
学食を使う費用や弁当を受け取ってもらえるかもしれないし、ドレスや装飾品も「婚約者へのプレゼントだ」と言って堂々と渡すことができるようになる。
今は制服通学をするマリアベルだが、上手くいけばアーロンが贈った私服で登校してくれる可能性だってある。
そんなの、考えるだけでもう最高である。
婚約の話は、現在調整中。
突然のプロポーズをかましてしまいました、と正直に白状したうえで、正式に話を進めたいとアークライト家に……当主である自身の親に掛け合っているところだ。
アークライト公爵家は強さを重んじる家系だから、おそらく、マリアベルと婚約したい旨は了承されるだろう。
いずれ、マニフィカ家に正式に婚約を申し込むことになるはずだ。
だが、今すぐに、とはいかない。
婚約者として彼女を守れないこと、堂々と隣に立てないことが、歯がゆかった。
まあとりあえず、このままお弁当仲間にはなれそうだから、昼休みはマリアベルの安全が確保されるだろう。
――明日は、昼休みに入ったら速攻で教室までベルを迎えに行こう。
そんなことを思いながらも、アーロンはマリアベルとコレットとのランチの時間を楽しんだ。
翌日、アーロンは「なにかの競技に参加中ですか?」と聞きたくなるような早歩きで、一年生の教室へと向かった。
もちろん、昼休み突入と同時にマリアベルを迎えにいくためである。
身体能力が高く、足も長い彼は、走ってはいなくともすぐに目的地にたどり着く。
「ベル! 今日も一緒に、おひる、を……」
笑顔で一歩教室に入った彼が、そこで見た光景は。
「マリアベル様、一緒に学食に行きませんか?」
「魔法を教えて欲しいんだが、昼休みを少しもらえはしないだろうか。マリアベル嬢」
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そんなことを話す男たちに囲まれる、マリアベルの姿だった。
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