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7. 戸惑いと流れる夜
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ホテルに着き、部屋のドアが閉まる音を聞く。後戻りはできない。
次の瞬間、桐生さんはオレを壁に押し付けた。
俺より少し背が高い、伊勢と同じくらいだろうか。
「んっ……!」
熱を帯びた口づけが唇を塞ぎ、深く、ねっとりとした熱が喉の奥まで流れ込んでくる。ウイスキーと香水の匂いが、オレの意識を痺れさせる。
ベッドに押し倒される。シーツの冷たさも、一瞬で桐生さんの体温に飲み込まれた。
ふと、視線が合う。
桐生さんの瞳に、オレが抱えるすべてが映し出されている気がした。
「オレは、伊勢のことが、好きなんです」
言った瞬間、胸の奥がふわっと軽くなるのを感じた。
恥ずかしさ、恐怖、そしてなにより、ずっと誰にも言えなかった孤独感。それが今、この熱の中で、桐生さんに受け止められた気がして、余計に鼓動が早くなる。
「友達としても、アイドルのメンバーとしても、大事で必要なんだ。でも、好きだって気持ちは止められなくて。湊さんが現れるまでは、隠そうと決めてたんです。静かに思っていればいい、近くにいられるだけでいいって」
言葉が止まらなかった。
「ずっと自分の心に押し込めて、笑ってやり過ごしてきたんです。でも、本当は、すごく苦しかった」
桐生さんは驚きもせず、包み込むように柔らかく微笑んだ。
「気持ちを言葉にできただけで、少しは楽になったんじゃない?」
その一言に、張りつめていた心がふっと緩み、涙が出そうになる。誰かにこの苦しみを共有してもらえただけで、こんなに心が落ち着くのか。
「湊さんのことも、好きだし、尊敬しています。それに、伊勢が幸せそうに笑うの、本当に嬉しい。嘘じゃないんです」
「そうだね。彼らはとても、いい関係なんだろう」
桐生さんはオレの視線をまっすぐに受け止め、そっと囁いた。
「君が、伊勢を好きなのは分かっていたよ。〈Dulcis〉のライブを見に行ったとき、伊勢を見る視線も歌声も、十分伝わったよ」
今年の夏、東京ドームのライブに招待したときだろう。楽屋に挨拶をしてくれた。たぶん、それがオレと桐生さんの初対面だった。
「自分の気持ちを、大事にしていいんだよ」
その眼差しは、演技ではない。
純粋な熱と優しさが混ざり合っていて、胸の奥に溶けていく。まるで、長く一人で立っていたオレを、初めて誰かが強く抱きとめてくれたような、圧倒的な安心感があった。
「こんなに素直に、抱きたいと思うのは久しぶりだな」
耳元に落ちる囁きに、心が焼き尽くされる。
「……桐生さん」
「どうせなら、下の名前が嬉しいな」
「しょ、翔さん」
「いいね、理久」
耳元ではじめて下の名前で呼ばれ、ゾクっとする。
桐生さんは、オレの頬を包む手をそのままに、真剣な眼差しで囁いた。
「理久が伊勢を好きなのは分かっている。そして、俺に抱かれることは、理久の意思じゃない。本意でないことも、理解している」
桐生さんの手が、オレの震える体を優しく抱きしめた。その手の力が、強烈な安心感をもたらす。
「伊勢に届かない、どうにもできない熱を抱えているだろう? 俺は役者だ。君が今、この熱に溺れることで、伊勢への痛みを一時的に忘れられるなら、俺がその役を演じよう」
彼は優しく、だが有無を言わせない力でオレを抱きしめた。
素肌を合わせることが、こんなに暖かいなんて。
「流されて抱かれるのも、いいんじゃないか?」
その言葉は、まるで悪魔の囁きだった。叶わない想いを、この熱に乗せてしまいたかった。
夜は深く、長かった。新しい熱が体に深く刻み込まれ、もう後戻りできないことだけを思い知った。
次の瞬間、桐生さんはオレを壁に押し付けた。
俺より少し背が高い、伊勢と同じくらいだろうか。
「んっ……!」
熱を帯びた口づけが唇を塞ぎ、深く、ねっとりとした熱が喉の奥まで流れ込んでくる。ウイスキーと香水の匂いが、オレの意識を痺れさせる。
ベッドに押し倒される。シーツの冷たさも、一瞬で桐生さんの体温に飲み込まれた。
ふと、視線が合う。
桐生さんの瞳に、オレが抱えるすべてが映し出されている気がした。
「オレは、伊勢のことが、好きなんです」
言った瞬間、胸の奥がふわっと軽くなるのを感じた。
恥ずかしさ、恐怖、そしてなにより、ずっと誰にも言えなかった孤独感。それが今、この熱の中で、桐生さんに受け止められた気がして、余計に鼓動が早くなる。
「友達としても、アイドルのメンバーとしても、大事で必要なんだ。でも、好きだって気持ちは止められなくて。湊さんが現れるまでは、隠そうと決めてたんです。静かに思っていればいい、近くにいられるだけでいいって」
言葉が止まらなかった。
「ずっと自分の心に押し込めて、笑ってやり過ごしてきたんです。でも、本当は、すごく苦しかった」
桐生さんは驚きもせず、包み込むように柔らかく微笑んだ。
「気持ちを言葉にできただけで、少しは楽になったんじゃない?」
その一言に、張りつめていた心がふっと緩み、涙が出そうになる。誰かにこの苦しみを共有してもらえただけで、こんなに心が落ち着くのか。
「湊さんのことも、好きだし、尊敬しています。それに、伊勢が幸せそうに笑うの、本当に嬉しい。嘘じゃないんです」
「そうだね。彼らはとても、いい関係なんだろう」
桐生さんはオレの視線をまっすぐに受け止め、そっと囁いた。
「君が、伊勢を好きなのは分かっていたよ。〈Dulcis〉のライブを見に行ったとき、伊勢を見る視線も歌声も、十分伝わったよ」
今年の夏、東京ドームのライブに招待したときだろう。楽屋に挨拶をしてくれた。たぶん、それがオレと桐生さんの初対面だった。
「自分の気持ちを、大事にしていいんだよ」
その眼差しは、演技ではない。
純粋な熱と優しさが混ざり合っていて、胸の奥に溶けていく。まるで、長く一人で立っていたオレを、初めて誰かが強く抱きとめてくれたような、圧倒的な安心感があった。
「こんなに素直に、抱きたいと思うのは久しぶりだな」
耳元に落ちる囁きに、心が焼き尽くされる。
「……桐生さん」
「どうせなら、下の名前が嬉しいな」
「しょ、翔さん」
「いいね、理久」
耳元ではじめて下の名前で呼ばれ、ゾクっとする。
桐生さんは、オレの頬を包む手をそのままに、真剣な眼差しで囁いた。
「理久が伊勢を好きなのは分かっている。そして、俺に抱かれることは、理久の意思じゃない。本意でないことも、理解している」
桐生さんの手が、オレの震える体を優しく抱きしめた。その手の力が、強烈な安心感をもたらす。
「伊勢に届かない、どうにもできない熱を抱えているだろう? 俺は役者だ。君が今、この熱に溺れることで、伊勢への痛みを一時的に忘れられるなら、俺がその役を演じよう」
彼は優しく、だが有無を言わせない力でオレを抱きしめた。
素肌を合わせることが、こんなに暖かいなんて。
「流されて抱かれるのも、いいんじゃないか?」
その言葉は、まるで悪魔の囁きだった。叶わない想いを、この熱に乗せてしまいたかった。
夜は深く、長かった。新しい熱が体に深く刻み込まれ、もう後戻りできないことだけを思い知った。
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