30 / 31
♯1
29. 小鳥が止まる木
しおりを挟む
ドームツアー最終日、オープニングからボルテージは最高潮だった。
デビュー曲のイントロと共に炎が上がると、会場の熱狂は爆発した。
伊勢のダンスは華麗でありながらも力強く、ステージ全体を支配する王者の風格があった。
蒼真は、体幹を活かしたしなやかで優美な動きで魅了する。腰の動き、指先の表現一つ一つにセクシーさが滲み、ファンは悲鳴を上げた。
オレだって負けていない。誰かに愛されることで強くなれる。今までにないパワフルさで、ドーム全体に熱気を送り込んだ。
激しいパフォーマンスから一転して、バラードのイントロが流れた。
会場がフィナーレだという寂しさに包まれる。汗で濡れた髪を振り乱しながら、三人が息を整える。
「みんな、本当に最高の時間をありがとう!」
伊勢の興奮した声に、会場から大歓声が上がる。
「あまりの熱気に、酸欠になりかけたよ」
蒼真が優雅に冗談を言うと、会場から笑いが起こる。
照明が落ち着いた中で、オレはマイクを握りしめた。
「TOMARIGIは、止まり木という意味です」
静まり返った会場、スポットライトがオレを照らす。
「そしてファンのみんなは、KOTORI。つまり、小鳥が止まり木に集まって休むように、僕たちが、みんなの心の安らぎの場所でありたい。そう思って活動してきました」
オレは、言葉に詰まりそうになりながら、続けた。
「でもね、オレがここに立っていられるのは、間違いなく、小鳥のみんなが、僕の止まり木になってくれたからです」
オレは再び、最上階の奥を見つめた。
「だから、これからもなにがあっても、KOTORIのためのTOMARIGIであり続ける!これからも、応援よろしくお願いします!」
万雷の拍手がドームを包み込む。
ふと、伊勢の瞳が『ありがとう』と言っているように見えた。
しっとりとしたバラード曲を歌い上げた後、フィナーレに相応しい、ハードなダンスナンバーが鳴り響いた。
しんみり終わらせるのは柄じゃない。打ち上げ花火みたいに爆音で派手に終わらせる。性格がバラバラなオレたちだけど、それはいつも一致していた。
「よっしゃぁ!5大ドームツアーもこれで最後だ!ぶちかますぞ!」
オレの咆哮に似た声に大歓声が応える。
メインステージを飛び出した。全速力で三塁側から中央へと走り抜けたときだ。
芸能人仲間やスポンサーがいる関係者席、その片隅。ライブ中盤まで、そこは空席だったはずだ。
スポットライトの届かない暗がりでも、見間違いじゃない。あの笑顔を見間違えるはずがない。
――来てくれたんだ。
喉の奥が熱くなる。自然と、そこへ手を伸ばしていた。
「……ありがとう」
声にはならなかったけど、唇がそう動いた。
その瞬間、銀テープが空を舞った。
照明がゆっくりと落ち、ステージの上だけが柔らかく光に包まれた。
耳に残るのは、なりやまないアンコールの声と、ドクンドクンと鳴るオレの鼓動。この鼓動が止まらない限り、オレはまたここに帰ってくる。
KOTORIのために。
そして――背中を押してくれた、あの人のために。
デビュー曲のイントロと共に炎が上がると、会場の熱狂は爆発した。
伊勢のダンスは華麗でありながらも力強く、ステージ全体を支配する王者の風格があった。
蒼真は、体幹を活かしたしなやかで優美な動きで魅了する。腰の動き、指先の表現一つ一つにセクシーさが滲み、ファンは悲鳴を上げた。
オレだって負けていない。誰かに愛されることで強くなれる。今までにないパワフルさで、ドーム全体に熱気を送り込んだ。
激しいパフォーマンスから一転して、バラードのイントロが流れた。
会場がフィナーレだという寂しさに包まれる。汗で濡れた髪を振り乱しながら、三人が息を整える。
「みんな、本当に最高の時間をありがとう!」
伊勢の興奮した声に、会場から大歓声が上がる。
「あまりの熱気に、酸欠になりかけたよ」
蒼真が優雅に冗談を言うと、会場から笑いが起こる。
照明が落ち着いた中で、オレはマイクを握りしめた。
「TOMARIGIは、止まり木という意味です」
静まり返った会場、スポットライトがオレを照らす。
「そしてファンのみんなは、KOTORI。つまり、小鳥が止まり木に集まって休むように、僕たちが、みんなの心の安らぎの場所でありたい。そう思って活動してきました」
オレは、言葉に詰まりそうになりながら、続けた。
「でもね、オレがここに立っていられるのは、間違いなく、小鳥のみんなが、僕の止まり木になってくれたからです」
オレは再び、最上階の奥を見つめた。
「だから、これからもなにがあっても、KOTORIのためのTOMARIGIであり続ける!これからも、応援よろしくお願いします!」
万雷の拍手がドームを包み込む。
ふと、伊勢の瞳が『ありがとう』と言っているように見えた。
しっとりとしたバラード曲を歌い上げた後、フィナーレに相応しい、ハードなダンスナンバーが鳴り響いた。
しんみり終わらせるのは柄じゃない。打ち上げ花火みたいに爆音で派手に終わらせる。性格がバラバラなオレたちだけど、それはいつも一致していた。
「よっしゃぁ!5大ドームツアーもこれで最後だ!ぶちかますぞ!」
オレの咆哮に似た声に大歓声が応える。
メインステージを飛び出した。全速力で三塁側から中央へと走り抜けたときだ。
芸能人仲間やスポンサーがいる関係者席、その片隅。ライブ中盤まで、そこは空席だったはずだ。
スポットライトの届かない暗がりでも、見間違いじゃない。あの笑顔を見間違えるはずがない。
――来てくれたんだ。
喉の奥が熱くなる。自然と、そこへ手を伸ばしていた。
「……ありがとう」
声にはならなかったけど、唇がそう動いた。
その瞬間、銀テープが空を舞った。
照明がゆっくりと落ち、ステージの上だけが柔らかく光に包まれた。
耳に残るのは、なりやまないアンコールの声と、ドクンドクンと鳴るオレの鼓動。この鼓動が止まらない限り、オレはまたここに帰ってくる。
KOTORIのために。
そして――背中を押してくれた、あの人のために。
11
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
先輩アイドルに溺愛されて、恋もステージもプロデュースされる件 <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ③
進路に悩む高校三年生の戸塚ツバサ。憧れの先輩は今や人気アイドルグループ【TOMARIGI】の浅見蒼真。
同じ事務所の、候補生としてレッスンに励む日々。「ツバサ、まだダンス続けてたんだな」再会した先輩は、オレのことを覚えていてくれた。
ある日、ライバルと息の合ったダンスを疲労すると、蒼真は嫉妬を剥き出しにしに💜先輩という立場を利用してキスを迫る。
友情と、憧れと、そして胸の奥に芽生え始めた恋。「少しだけ、こうしてて」ライブ前夜、不安を打ち明けてくれた先輩。
完璧なアイドルの裏の顔。その弱さに、俺は胸が締めつけられる。この夏、俺たちの関係は、もう後戻りできない…
死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる
ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!?
「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています
大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。
冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。
※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる