先輩アイドルに溺愛されて、恋もステージもプロデュースされる件 <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう

文字の大きさ
14 / 26
ステージ 1 〈高校編〉

13. 終演後の憂い

しおりを挟む
ライブの最後、花火が夜空に盛大に打ち上げられ、会場全体が歓声に包まれた。


終演後、ステージから降りても、胸の高鳴りが収まらなかった。照明、歓声、五感全てに余韻が残っている気がして、足もとがふわふわする。


何より、さっきのサプライズが衝撃すぎた。

TOMARIGIに新メンバーが追加される?しかも、今日のステージにいた候補生から?
そんな話、聞いたこともない。夢みたいで信じられない。


「蒼真先輩!」


人混みをかき分けて声をかける。すぐそこに彼がいた。汗を拭いながらスタッフに囲まれている。


「悪いな、急いでるんだ」


手を伸ばしかけた瞬間、マネージャーにさえぎられる。

ほんの数メートル先にいるのに、ガラス越しみたいに遠い。

言葉を探すあいだに、TOMARIGIのメンバーは車に乗り込み、次の現場へと送り出されていった。深夜の生放送に出演するらしい。ライブが終わってすぐなのに。

さっきまで。あんなに近くで光を放っていたのに。手を伸ばせば届きそうだったのに。その背中はあっという間に遠ざかっていった。


楽屋に戻ると、候補生みんなが集まっていた。


「みなさん、驚かれたでしょう。メンバー選考の詳細は、あらためて連絡します。今日はお疲れさまでした!」


スタッフの声が響く。これでは肝心なことは何ひとつ分からない。


仕方なく、帰り支度をしているときだ。背中に、ドンという衝撃があった。


「調子乗んなよ」


振り向けば、同じ候補生のひとり。ダンスの世界大会にも出たことがある、実力者のひとりだ。

その隣には、彼に同調する候補生たちが数人、俺を刺すような視線で囲んでいた。


「蒼真さんに気に入られてるから、メンバーに選ばれる思ってるんだろう」


そのとき、隣からカイリが助けに入ってくれた。


「ツバサ、帰ろうぜ」


候補生たちは舌打ちをして去っていった。


「大丈夫か、ツバサ?」

「うん、ありがとう」


カイリは何も聞かずに、ただ静かに俺のそばにいてくれた。その優しさに甘えて、俺は何も言えなかった。


帰りの電車の中、俺はスマホを握りしめていた。

あのステージで向けられた視線が、自分の思い違いじゃないと確かめたい。

しかし、蒼真先輩から連絡は届かない。


ライブ前夜。胸を焦がすように近くに感じていた距離が、ひどく遠く思えた。

あの瞬間を忘れたくない。


「蒼真先輩……」


ポツリと呟く声は、誰にも届かない。

会いたい。話したい。
もう一度、あの光が、本物だったと確かめたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ② 人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。 そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。 そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。 友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。 人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!

先輩アイドルは僕の制服を脱がせ、次のステージへと誘う〈TOMARIGIシリーズ ツバサ×蒼真 #2〉

はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ★ツバサ×蒼真 ​ツバサは大学進学とデビュー準備のため、実家を出て東京で一人暮らしを始めることに。 高校の卒業式が終わると、トップアイドルの蒼真が、満開の桜の下に颯爽と現れた。 ​蒼真はツバサの母に「俺が必ずアイドルとして輝かせます」と力強く宣言すると、ツバサを連れて都内へと車を走らせた。 ​新居は蒼真と同じマンションだった。ワンルームの部屋に到着すると、蒼真はツバサを強く抱きしめた。「最後の制服は、俺の手で脱がせたい」と熱く語る。 ​高校卒業と大学進学。「次のステージ」に立つための新生活。これは、二人の恋の続きであり、ツバサの夢の始まり……

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

処理中です...