【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話

凍星

文字の大きさ
15 / 142
第2章 溺れる人魚は揺れ惑う

◆4 ユキSide:困った人だから

しおりを挟む
先輩は、高城さんのこういうスキンシップに麻痺している……というか「麻痺させられている」所があって、肩を組まれたり腰を抱かれたりしても、普通にスルーしていることが多い。

(何で気が付かないんですか??この人絶対、先輩を自分のものにしたいと思ってますよ……!?)

もう後戻りはできない――そう思って僕は覚悟を決めた。
気持ちが表情に出にくい僕は、多分もの凄く冷静に見えてるのかもしれないと思う。だけど心臓はいつになく、ばくばくと大きな音を身体全体に響かせている。

先に反応したのは高城さんの方だった。 

「……それはどういう意味だ?」 

回りくどいことが嫌いなこの人は、僕の乱暴な問いかけを咎めもせず、「そのケンカ買ってもいいぞ」という余裕の態度を見せた。 

「俺に何か言いたいことがありそうだな――ユキ」
「はい、あります。聞いていただけますか?」
「ユ、ユユ、ユキ?お前、何を――」 
「高城さんのヘルプの件ですが」

僕がケンカを売る気満々なのを察知して、心配そうに青褪める蓮夜先輩。
目を合わせてしまったら何も言えなくなりそうだったので……とりあえず無視することにした。「ごめんなさい」と心の中で謝り、高城さんだけに向かって話しかける。 

「馬鹿!ユキお前、何言おうとして――」
「連夜、お前は黙ってろ。好きに喋らせてやれ」
「うっ…」

(――そう言ってくれると思ってました) 

こういう点では高城さんは期待を裏切らない。ある意味、とても寛大だと思う。 
僕の無謀さを面白がっているんだろうけど、こんな下っ端の無礼な発言を聞いても無視したり、怒ったりしない大先輩に感謝して、僕は深く一礼した。 

「……普段、高城さんには、葵さんが専属でヘルプについていますよね?」


その質問は、そのまま宣戦布告へと繋がることになって――――……



***



「ユキ……お前、なんであんな無茶なことした?こっちはもう、気が気じゃなくて……寿命が!もう、どんだけ縮まったかっ」

店の外で二人きりになった途端。
はああぁ~…と、先輩は大きく息を吐き出した。……ようやく、深呼吸できた。そんな雰囲気だ。
僕は思わず「セクハラに気付いてください!」と声を大にして言いたくなったが、そこは我慢した。高城さんのことを悪く言って、先輩の気分を害するようなことは避けたかった。

「……先輩は、魔王様が苦手でしょう?だから――僕が、軍師として付いていてあげなきゃダメだと思ったんです」
「お前は!あの人に睨まれたらどういうことになるか、知らないからそうやって簡単に言うけどな……!」


――怒ってる……それはそうだよね。
何の相談もなく、勝手で無茶苦茶な提案をして。
だけど、どうしても見ていられなかったから。
あの人に無防備すぎる貴方と、いつまでも迷っているような中途半端な姿を……


浮かされていた謎の熱い感情が、ひゅんと萎むと、急激に。冷静ないつもの自分が戻ってきた。そうなると、さっきまでの強気は、キレイさっぱり何処かへ消えてしまう。
先輩のためにと思っての行動だったけど……余計なことをするなと言われてしまうかもしれない。僕の助力なんて必要ないのかも――とそう思ったら、すごく悲しくなった。

「迷惑でしたか……?」
「――っ」

先輩はうっと、一瞬、言葉を詰まらせたけれど、絞り出すように自分の思いを語ってくれた。

「――迷惑かって……?そんな訳、あるかよ――嬉しかったよ。もう、泣きそうなくらいにさ……とりあえず、高城さんの前じゃ怒ったふりしとかないと、と思ったけど」
「せんぱ……」

気が付けば先輩が――僕を、強く抱き締めていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

これは恋でないので

鈴川真白
BL
そばにいたい ――この気持ちは、恋であったらダメだ アイドルオタクな後輩 × マスクで素顔を隠す先輩

誰かの望んだ世界

日燈
BL
 【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。  学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。  彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。  過去との邂逅。胸に秘めた想い――。  二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。  五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。  終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…? ――――  登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。  2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。

新生活始まりました

たかさき
BL
コンビニで出会った金髪不良にいきなり家に押しかけられた平凡の話。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

処理中です...