【第二部完結】恋するホストと溺れる人魚と、多分、愛の話

凍星

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第2章 溺れる人魚は揺れ惑う

◆3 ユキSide:僕の先輩が、魔王様に攻略されそうだったので

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「!?」

……目を疑った。


どうして顎を掬い上げられて、顔を近付けあっているんだろう?
普通に話していて、何でそういう状況になるのかな?
全く意味が分からないんだけど……??


僕の身体に震えが奔る。


もう本当に、貴方ときたら――
どうして高城さんにだけは、そんなに隙だらけなんですか……!!?


思わず、ギュッと力が入って、手にしたお掃除道具を握りしめてしまう。 
僕がこの二ヶ月間味わっていた、経験したことのない種類のストレス。 
それに、お腹の底に溜まっていた怒りの感情。 
よく分からない色々な想いが混ざりあって、熱い感情が一気に昂まっていく。 


……どうしてくれるんですか?と。 
魔王様にも先輩にも、文句を言いたい気分だった。 

まるで別人に、生まれ変わってしまったようだった。 
それは多分、先輩に出会ったから。 
そう、僕を変えた貴方だから…… 


こんな所でくすぶっていたら、ダメなんです――……っ!
 

溜まりに溜まったストレスが溢れ出して、決壊したのかもしれない。 
衝動的な思いに囚われるのは、僕の人生の中でこれが二度目。 
一度目はこの店で働くと決めた時で―― 

そして、いま。 
気が付けば。 
僕は、握りしめていたハンディモップを投げ捨てていた。

足が勝手に動き、僕はVIP専用の個室スペースに向かっていて。
カツリと靴音を響かせて、中途半端に閉じられていたレースのカーテンをサッと大きく開き――


「……前々から思っていたんですけど」 

驚いた顔の2人が目の前にいる。
自分の突然の行動に「あれ?」と思った時にはすでに、僕は高城さんに思い切り意見をぶつけていた。

「貴方と売り上げを競うにしても――少しアンフェアなんじゃないですか?」


挨拶も何もせず、いきなり挑発的な言葉で切り込んで。
高城さんの興味を引くことには成功した。
 2人とも、一瞬、時が止まったかのように身体をこわばらせ、突然の闖入者に唖然とした表情でこちらを見ている。 
今のこの態勢だけをみれば、先輩はまるで高城さんに唇を奪われそうな状況だった。

(この人……絶対、だよね……?)

「何しちゃってるんですか」という、僕の視線での激しい抗議を――全く悪びれもせずに受け止めて、高城さんはニヤリと笑った。


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