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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~あのさ、実はお願いがあるんだ~
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「で、相談って?」
「アンタちょっと今日容赦なくない?」
唐突にこんな会話が始まったのは、コーヒーショップの席に着いてから。
勇が宣言通りおごったものの、その一杯を差し出す前に言葉が飛び出して。
その所為でか、瀬玲の顔が苦悶で歪む事に。
キャラメルモカの甘い香りだけではどうやら和らぐに至らないらしい。
「わかった。言うわ、言うわよ」
それで観念したのか、堪らず溜息が漏れる。
どうやらここまで引っ張って置いて、当人も語るに憚れている様だ。
それだけ重い相談なのだろう。
ようやく差し出されたコーヒーを少し口に含み、香りと味を楽しんで。
一つ二つと呼吸を整え、気持ちを纏める。
「あのさ勇、実はお願いがあるんだ……」
「お、お願い……?」
そして満を持して放たれたのは〝お願い〟という一言で。
更には恥じらうかの如く指を絡ませていて。
そんな思わぬ言動に、勇も動揺を隠せない。
それというのも、こんなしおらしい瀬玲はなかなか見ないから。
というか勇には見た記憶が無いもので。
普段から気丈な瀬玲、基本的にはいつも勝気だ。
攻撃的ではないものの、割とキツめの言葉が多いのは言わずもがな。
その彼女がこうもデレるなどとは思っても見なかったと。
だからこそ大いに期待せざるを得ない。
万が一が有り得るのではないか、と。
そう、思っていたのだけれど。
「あのねぇ、勇の政治力をぉ、私に貸してほしぃのぉ……!」
これだけ溜めて放たれたのは、よくわからない一言で。
勇も思わず「はい?」と眉間を寄せる事に。
政治力。
これは勇に全く憶えの無い力だ。
命力の派生形なのだろうかと一瞬勘違いしてしまう程に。
ならもちろん、そんな力を持った覚えなど無い。
一つ考えて政治の力だとは思い付いたけれど。
それでもやっぱりわからないもので。
「何、どういう事……?」
遂には額に拳を充てて悩む事に。
おかげさまで、先程までの期待は瞬時にして消え去ったらしい。
しかも話題は更なる明後日の方向へと飛躍していくという。
「勇って、【嵐丸】知ってるよね?」
「うん。ジェリーズ事務所の人気グループだろ?」
「そう。でね、実は私【嵐丸】のファンでさ、ファンクラブにも入ってるんだよね」
「ふーん」
「で、実はさ、その五周年目の年越しライブプレミアムチケットが手に入る予定だったんだ」
これには勇も冷めざるを得ない。
お笑い芸人の話題ならまだ食い付く余地はあるのだけども。
けど、いきなり始まったのは男性アイドルユニットの話で。
こんな全く興味の無い話にはさすがに乗りようも無い。
なにせアイドルと言われても顔は愚か、名前一つ記憶に無いのだからもう。
「けど、こないだいきなりさ、調達役が『都合が付かなくてチケット手に入らなかった』とか言い出したのよ……!! 絶対手に入るからって期待してたのに!!」
「それ続く? コーヒーおかわり、取ってきていい?」
「ダメ」
「アッハイ」
しかもおかわりのタイミングも逃したらしい。
仕方ないので残り少ないコーヒーで退屈を紛らわせる事に。
ちびちびと口に含みながら、ブラックコーヒーよりもドス黒い話を受け流していく。
「でもあのクサレビッチがッ!! 実は裏でチケ転売してやがっててえッ!! 仲間皆で通報してやったから追放されたけどさ、お陰で私達の格まで下がっちゃってぇ!!」
「わかったから落ち着けよ」
「……ごめん、あのアバズレの事思い出したら興奮しちゃって」
「知らんがな」
「なんで関西弁やねん」
そんな冷静さがあったから瀬玲のヒートアップにも粛々と対応出来たのだろう。
日々の命力鍛錬の賜物である。
もっとも、騒いだ所為で周囲のヒンシュクを買う事にはなったけれども。
「とにかく、今年のライブ参加が絶望的なのよ。順当にやってたら手に入るってくらい頑張ってたんだけどさ、ホントツイてない……」
でも周りの目が気にならないくらいには落ち込んでいるのだろう。
視線を集める中で、当の瀬玲はと言えば机に突っ伏していて。
アイドルファンだった事もさることながら、怒り悲しみに震える姿はどこか痛々しい。
その普段ならぬ情けない姿に、勇も堪らず失笑気味だ。
するとそんな時、突如として瀬玲の頭が持ち上がる。
まるで心を決めたかのような、強い眼差しを勇へとぶつけながら。
「それでね勇、福留さんの力を借りてなんとかならないかな?」
きっとこれが本命の相談だったのだろう。
厳密には勇より福留を頼りたかったというのが本音だった様で。
「うん、無理」
「だよねぇ、ハァ……」
しかしその願いも敢え無く撃沈する事に。
いくら福留でも、人気アイドルグループのチケットを私的に都合するのは厳しいだろう。
それに、そもそも勇にはその尊大な願いを聞き届ける程の義理も恩も無いので。
そんな勇の気分はさしずめこんな所だ。
〝友人へ渡して欲しいと、好きな女子からラブレターを預かった男子〟
当て馬にされた気持ちを考えれば当然の結果と言えよう。
魔剣でも命力でもどうにもならない話となれば尚更である。
それに、例えどうにか出来たとしても裏技を使うのはファンとしてどうなのか。
そう戒めたい勇だからこそ、今出来るのは肩を叩いて励ます事だけで。
「今はその励ましが辛いわ」
「なら最初から大人しく抽選で当たる事に期待しろよ」
「辛辣ゥ……」
だからこんなトドメを放つにも容赦はしない。
これが友達としての愛の形だからこそ。
もっとも、こんな話に巻き込まれた勇としては残念以外の何者でもないが。
だからこそ願わざるを得ない。
さっきまで抱いていた期待と純情を返して欲しい、と。
「アンタちょっと今日容赦なくない?」
唐突にこんな会話が始まったのは、コーヒーショップの席に着いてから。
勇が宣言通りおごったものの、その一杯を差し出す前に言葉が飛び出して。
その所為でか、瀬玲の顔が苦悶で歪む事に。
キャラメルモカの甘い香りだけではどうやら和らぐに至らないらしい。
「わかった。言うわ、言うわよ」
それで観念したのか、堪らず溜息が漏れる。
どうやらここまで引っ張って置いて、当人も語るに憚れている様だ。
それだけ重い相談なのだろう。
ようやく差し出されたコーヒーを少し口に含み、香りと味を楽しんで。
一つ二つと呼吸を整え、気持ちを纏める。
「あのさ勇、実はお願いがあるんだ……」
「お、お願い……?」
そして満を持して放たれたのは〝お願い〟という一言で。
更には恥じらうかの如く指を絡ませていて。
そんな思わぬ言動に、勇も動揺を隠せない。
それというのも、こんなしおらしい瀬玲はなかなか見ないから。
というか勇には見た記憶が無いもので。
普段から気丈な瀬玲、基本的にはいつも勝気だ。
攻撃的ではないものの、割とキツめの言葉が多いのは言わずもがな。
その彼女がこうもデレるなどとは思っても見なかったと。
だからこそ大いに期待せざるを得ない。
万が一が有り得るのではないか、と。
そう、思っていたのだけれど。
「あのねぇ、勇の政治力をぉ、私に貸してほしぃのぉ……!」
これだけ溜めて放たれたのは、よくわからない一言で。
勇も思わず「はい?」と眉間を寄せる事に。
政治力。
これは勇に全く憶えの無い力だ。
命力の派生形なのだろうかと一瞬勘違いしてしまう程に。
ならもちろん、そんな力を持った覚えなど無い。
一つ考えて政治の力だとは思い付いたけれど。
それでもやっぱりわからないもので。
「何、どういう事……?」
遂には額に拳を充てて悩む事に。
おかげさまで、先程までの期待は瞬時にして消え去ったらしい。
しかも話題は更なる明後日の方向へと飛躍していくという。
「勇って、【嵐丸】知ってるよね?」
「うん。ジェリーズ事務所の人気グループだろ?」
「そう。でね、実は私【嵐丸】のファンでさ、ファンクラブにも入ってるんだよね」
「ふーん」
「で、実はさ、その五周年目の年越しライブプレミアムチケットが手に入る予定だったんだ」
これには勇も冷めざるを得ない。
お笑い芸人の話題ならまだ食い付く余地はあるのだけども。
けど、いきなり始まったのは男性アイドルユニットの話で。
こんな全く興味の無い話にはさすがに乗りようも無い。
なにせアイドルと言われても顔は愚か、名前一つ記憶に無いのだからもう。
「けど、こないだいきなりさ、調達役が『都合が付かなくてチケット手に入らなかった』とか言い出したのよ……!! 絶対手に入るからって期待してたのに!!」
「それ続く? コーヒーおかわり、取ってきていい?」
「ダメ」
「アッハイ」
しかもおかわりのタイミングも逃したらしい。
仕方ないので残り少ないコーヒーで退屈を紛らわせる事に。
ちびちびと口に含みながら、ブラックコーヒーよりもドス黒い話を受け流していく。
「でもあのクサレビッチがッ!! 実は裏でチケ転売してやがっててえッ!! 仲間皆で通報してやったから追放されたけどさ、お陰で私達の格まで下がっちゃってぇ!!」
「わかったから落ち着けよ」
「……ごめん、あのアバズレの事思い出したら興奮しちゃって」
「知らんがな」
「なんで関西弁やねん」
そんな冷静さがあったから瀬玲のヒートアップにも粛々と対応出来たのだろう。
日々の命力鍛錬の賜物である。
もっとも、騒いだ所為で周囲のヒンシュクを買う事にはなったけれども。
「とにかく、今年のライブ参加が絶望的なのよ。順当にやってたら手に入るってくらい頑張ってたんだけどさ、ホントツイてない……」
でも周りの目が気にならないくらいには落ち込んでいるのだろう。
視線を集める中で、当の瀬玲はと言えば机に突っ伏していて。
アイドルファンだった事もさることながら、怒り悲しみに震える姿はどこか痛々しい。
その普段ならぬ情けない姿に、勇も堪らず失笑気味だ。
するとそんな時、突如として瀬玲の頭が持ち上がる。
まるで心を決めたかのような、強い眼差しを勇へとぶつけながら。
「それでね勇、福留さんの力を借りてなんとかならないかな?」
きっとこれが本命の相談だったのだろう。
厳密には勇より福留を頼りたかったというのが本音だった様で。
「うん、無理」
「だよねぇ、ハァ……」
しかしその願いも敢え無く撃沈する事に。
いくら福留でも、人気アイドルグループのチケットを私的に都合するのは厳しいだろう。
それに、そもそも勇にはその尊大な願いを聞き届ける程の義理も恩も無いので。
そんな勇の気分はさしずめこんな所だ。
〝友人へ渡して欲しいと、好きな女子からラブレターを預かった男子〟
当て馬にされた気持ちを考えれば当然の結果と言えよう。
魔剣でも命力でもどうにもならない話となれば尚更である。
それに、例えどうにか出来たとしても裏技を使うのはファンとしてどうなのか。
そう戒めたい勇だからこそ、今出来るのは肩を叩いて励ます事だけで。
「今はその励ましが辛いわ」
「なら最初から大人しく抽選で当たる事に期待しろよ」
「辛辣ゥ……」
だからこんなトドメを放つにも容赦はしない。
これが友達としての愛の形だからこそ。
もっとも、こんな話に巻き込まれた勇としては残念以外の何者でもないが。
だからこそ願わざるを得ない。
さっきまで抱いていた期待と純情を返して欲しい、と。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
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