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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~これはとてもいい物ッス~
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楽しい時間を終え、勇達が帰路に就く。
荷物ももう全部自宅だから、帰りもとても身軽だ。
約一名、走りっぱなし歩きっぱなしで脚がガクガクなままだけれども。
「今日の事は絶対に忘れられないと思います。こんなお店というものがわたくし達の世界にもあればどれだけ良かったか」
その中でエウリィが振り返り、ライトアップされた店舗を眺め見る。
城さえも越えた建屋を前に、感慨を覚えてならなくて。
たった数時間の間だったけれど、何もかもが新鮮だった。
少し前に遊びに行った遊園地もだけど、これもまた別の意味で。
お金という概念さえも知らなかった彼女には全てが驚きだったから。
「うん、同じ事をアージさんにも言われたかな。『戦いさえ無ければ、物を簡単に手に入れられる時代が訪れていたかもしれない』って」
「そうですね。『こちら側』と『そちら側』の違いは、きっとそれだけなのかもしれません。でも、それでいて大きな違い。私達には到底考えも付かないくらいの」
『あちら側』はきっとそれだけ貧困に苛まれているのだろう。
戦いと、消耗と、それと同時に維持もし続けなければいけないから。
人類史上、中世初期の血生臭い世界がずっと続いているのと同じだ。
発展に至れない世界。
成長さえ考えられない世界。
エウリィはそんな世界と、今の発展し尽くした世界を両方垣間見ている。
だからこそ、そのギャップに思う所があって。
もう少し自分達の世界を変えられるキッカケがあるのではないかと考えてしまう。
今朝に学んだ、新しい視点へと繋がるキッカケが。
ならもし元の世界へ戻った時、そのキッカケが花開くかもしれない。
学んだ事を生かして、『あちら側』を発展させる事が出来るかもしれない。
今だからそんな気持ちが湧いて来る。
高揚と、期待が溢れて来る。
そうしたいと願ってならないくらいに。
「でも君もカプロも、アージさん達だってこの世界を知ったさ。なら真似する事だって出来る」
「はい。だからもっとこの世界を知りたいと思います。それがわたくしの出来る事なのだと。なので勇様、気が済むまではお付き合いをどうかよろしくお願い致します」
「うん。頼みがあったら何でも聞くよ。出来る事なら、だけどね」
それに今はこうして協力してくれる人達が居る。
親友だって出来て、本音も打ち解け合える。
それならもう怖い物なんて何一つ無いだろう。
そう確認出来ただけで、今日ここに来た甲斐はあった。
エウリィは今、こう思わずにはいられない。
「なら勇さん、ボクちょっと頼みがあるッス」
「ん? なんだ?」
するとそんな話の中、カプロが悩ましい顔で見上げていて。
思いも寄らない話に、勇が思わず首を傾げる。
「実はちょっと探し物してたんスけど、あのお店には無くて」
「えっ、ショッピングモールにも無かったのか?」
しかもそのお願いはと言うと、思いがけもしない話で。
まさかのショッピングモールでも見つからない代物があるという。
探しそびれか、あるいは本当に無いのか。
まさかの話に勇達も驚きを隠せない。
「そうッス。ボク、工具探してるんスよ」
「工具? 大工が使ったりする様な?」
「ウン。御味さんから話を聞いたんス。『この世界にはずっと良い工具もあるよ。気になるなら後で勇君にお店に連れてってもらうといい』って」
ただこうして話をすると初めてわかる。
「確かに、このモールに工具品店は無いな」と。
縁が無いだけに、今まで気づかなかったらしい。
でも何故無いのだろう。
そんな疑問もふと沸き上がる事に。
「なら丁度いい店がすぐそこにあんじゃん。DIY道具専門店がよ」
「「「あっ!」」」
しかしその疑問も心輝が瞬時に取り払う。
そう、モールの直ぐ近くに専門店があるのだ。
地域職人御用達の、割と大きい個人店が。
しかも朝早くから開くという、個人だからこそ出来る強みを抑えての。
なので恐らく、モールに工具品店が無いのではない。
モールが、工具品店を置かなかったのだろう。
それは店舗展開前から件の店が近くにあったから。
このモールグループは割と地域密着型という事で有名で。
近所の店舗都合を考えた出店・価格帯を設定するのだとか。
それで敢えて出店ジャンルから外したに違いない。
そんな大店舗が避けるくらいの店なら、目当ての物があるかも。
「ならせっかくだし行ってみようぜ。俺も入った事無いから気になってたしよ」
という訳で、早速その足で件の店へ。
モールから出て徒歩二分というお隣に。
そうして現れたのは【DIYショップ パパンヤ】というお店で。
世間がクリスマスだろうと我を押し通す、黄色一色の箱型店舗が登場だ。
やはりジャンルに縁が無いとあって、ちょっと入り難いけれども。
それでも勇気を出し、足を踏み入れて。
すると早速、木材と金属の独特な香りが鼻を突く事に。
勇達にとってはあまり嗅ぎ慣れない匂いだ。
それも少し濃くて、少しむせてしまいそう。
「んっほぉ!! これはワクワクしてくるッス!!」
でもどうやらカプロにとっては違うらしい。
だからか、大喜びで店の中を駆け回り始めていて。
気になるのはやはり単純加工具だ。
金槌やノコギリといった、そのまま製造に生かせそうな道具である。
逆に電動工具などには見向きもしない。
便利なのは紹介絵などでわかる様だが、そもそも興味が無い様で。
だからかゆっくりと見回る勇達を他所に、一人で色々と駆け回る姿が。
「カプロって、なんだかんだで男の子なのね。こういうの好きなんてさ」
「それもあるだろうけど、やっぱり大きいのは文化の違いなんだと思うよ」
きっとそれだけ楽しいのだ。
これもエウリィが先ほど言っていた話の延長だから。
「あっちは何でも自分達で造らないといけないだろうし。誰かが考えて造って売ってくれる俺達の世界と違ってさ。それで先鋭化出来た道具はほんと凄いんだと思う。俺達にとっては当たり前でも、カプロ達にとっては進歩の先の話なんだから」
それ故に、自分達が如何に恵まれているのかという事も実感出来る。
今こうして喜ばないでいられる、それがどれだけ幸せなのかという事を。
もし自分達の歴史が少しでも戦いに傾いていたら、こうはならなかったかもしれない。
もしかしたら『あちら側』と同じ戦乱の世になっていたかも。
いや、まだこの世界から争いは消えていない。
今もどこかで、現代人同士でも戦っているのだろう。
なら自分達は紙一重なんじゃないかとさえ思えてならない。
実は恵まれている様に見えて、すぐ後ろには戦いが迫っている。
ほんの少し背を叩かれただけで、こんな平和は消えてしまうのではないか、と。
「勇さんっ!!」
「うわあッ!? な、なんだよカプロ、いきなり背中を叩くなよぉ……」
そんな想いに駆られていたから、カプロの接近に気付けなった様だ。
戦いの先に立つ者なだけに、余計のめり込んでいたらしい。
「ご、ごめんッス……それでちょっとお願いがあって。お金、貸してくれねッスか?」
「え、お金? 何か欲しいのあったのか?」
「そうッス。目当ての物が見つかったんス……けど」
しかもそんな勇へ、寝耳に水な話が飛び込んだ。
カプロはそれなりにお金を持たされていて。
ある程度はお土産に費やしたが、それでも使い切るには至っていないはず。
それなのに工面して欲しいという。
という事はつまり、欲しい物とはそれなりに高額なのだろうか。
とはいえカプロのお願いであれば、聞かない訳にもいかない。
仮に手が届かないくらいに高いならまだしも。
少しくらいなら勇だってまだ手持ちもあるので。
なので一先ずその商品の下へ案内してもらう事に。
「これッス」
「こ、これってぇ……!?」
すると突如として、それは現れた。
訪れた勇達の目前に堂々と、驚きの逸品が。
長大な鉄槌である。
カプロより高い丈の木製長柄と、その先端には磨かれた四角い金属塊。
その金属部からは鏡の様な輝きが放たれていてとても重厚だ。
更には意匠まで刻まれており、見た目一つ取っても美しいの一言に尽きる。
しかもそれ以上に語る事が無いくらいシンプル。
それでいてどこ一つとってもムラが無い完璧な造りという。
これには職人芸を感じずにいられない。
「これはとてもいい物ッス。これをボクは探してたッスよ」
ただ、こんな物をどこで使うのかと言われれば勇達にもわからない。
見た感じは只のオブジェだし、実用性はあまり無さそう。
でもちゃんと値札は付いている。(ただし値段が九八〇〇〇円と超高額)
なので買えない訳じゃない。
勇の手持ちでは足りないが、カードを使えば問題にはならないだろう。
だが、それでいて疑問が残る。
どうしてこんな物が欲しいのか、それが全く理解出来なくて。
「これじゃないとダメなのか?」
「これじゃねとダメッス。師匠へのお土産なら、これくらいデカくねと」
「あっ、これもしかしてバノさんに?」
「そうッス」
けれどこうして話せばすぐ理解に至れる。
それだけ理由がハッキリとしていたから。
そう、これは決して個人的に欲しいのではない。
あの巨漢バノへのお土産として持ち帰りたいのだと。
確かに、あの巨大なバノならこんな鉄槌でも軽々と使えそう。
むしろ現代にこれ以外の相応しい道具は無いだろう。
そして勇もバノに恩がある。
色々と仲裁に入ってくれた、返しきれていない恩が。
ならもう、勇の行動は決まっている。
「そっか。じゃあ俺が買ってやるよ。バノさんにはいつだかにお世話になったしさ」
「ゆ、勇さん……!!」
だからカプロの帽子をそっと上げ、頭をわしわしと撫で上げて。
手早くあのカードを取り出し、ニヤリと笑って見せつける。
思い切りの良さはクリスマスが去ってもまだ健在な様だ。
そんな訳でDIYショップでの買い物も無事終了。
目当ての逸品もカプロ自らが背負って帰宅する事に。
ちゃんと持てているその姿には店主もビックリしていたそうな。
でもその足取りは軽く。
今日一番の買い物が出来たのはきっと他でも無く、金槌を背負った毛玉に違いない。
荷物ももう全部自宅だから、帰りもとても身軽だ。
約一名、走りっぱなし歩きっぱなしで脚がガクガクなままだけれども。
「今日の事は絶対に忘れられないと思います。こんなお店というものがわたくし達の世界にもあればどれだけ良かったか」
その中でエウリィが振り返り、ライトアップされた店舗を眺め見る。
城さえも越えた建屋を前に、感慨を覚えてならなくて。
たった数時間の間だったけれど、何もかもが新鮮だった。
少し前に遊びに行った遊園地もだけど、これもまた別の意味で。
お金という概念さえも知らなかった彼女には全てが驚きだったから。
「うん、同じ事をアージさんにも言われたかな。『戦いさえ無ければ、物を簡単に手に入れられる時代が訪れていたかもしれない』って」
「そうですね。『こちら側』と『そちら側』の違いは、きっとそれだけなのかもしれません。でも、それでいて大きな違い。私達には到底考えも付かないくらいの」
『あちら側』はきっとそれだけ貧困に苛まれているのだろう。
戦いと、消耗と、それと同時に維持もし続けなければいけないから。
人類史上、中世初期の血生臭い世界がずっと続いているのと同じだ。
発展に至れない世界。
成長さえ考えられない世界。
エウリィはそんな世界と、今の発展し尽くした世界を両方垣間見ている。
だからこそ、そのギャップに思う所があって。
もう少し自分達の世界を変えられるキッカケがあるのではないかと考えてしまう。
今朝に学んだ、新しい視点へと繋がるキッカケが。
ならもし元の世界へ戻った時、そのキッカケが花開くかもしれない。
学んだ事を生かして、『あちら側』を発展させる事が出来るかもしれない。
今だからそんな気持ちが湧いて来る。
高揚と、期待が溢れて来る。
そうしたいと願ってならないくらいに。
「でも君もカプロも、アージさん達だってこの世界を知ったさ。なら真似する事だって出来る」
「はい。だからもっとこの世界を知りたいと思います。それがわたくしの出来る事なのだと。なので勇様、気が済むまではお付き合いをどうかよろしくお願い致します」
「うん。頼みがあったら何でも聞くよ。出来る事なら、だけどね」
それに今はこうして協力してくれる人達が居る。
親友だって出来て、本音も打ち解け合える。
それならもう怖い物なんて何一つ無いだろう。
そう確認出来ただけで、今日ここに来た甲斐はあった。
エウリィは今、こう思わずにはいられない。
「なら勇さん、ボクちょっと頼みがあるッス」
「ん? なんだ?」
するとそんな話の中、カプロが悩ましい顔で見上げていて。
思いも寄らない話に、勇が思わず首を傾げる。
「実はちょっと探し物してたんスけど、あのお店には無くて」
「えっ、ショッピングモールにも無かったのか?」
しかもそのお願いはと言うと、思いがけもしない話で。
まさかのショッピングモールでも見つからない代物があるという。
探しそびれか、あるいは本当に無いのか。
まさかの話に勇達も驚きを隠せない。
「そうッス。ボク、工具探してるんスよ」
「工具? 大工が使ったりする様な?」
「ウン。御味さんから話を聞いたんス。『この世界にはずっと良い工具もあるよ。気になるなら後で勇君にお店に連れてってもらうといい』って」
ただこうして話をすると初めてわかる。
「確かに、このモールに工具品店は無いな」と。
縁が無いだけに、今まで気づかなかったらしい。
でも何故無いのだろう。
そんな疑問もふと沸き上がる事に。
「なら丁度いい店がすぐそこにあんじゃん。DIY道具専門店がよ」
「「「あっ!」」」
しかしその疑問も心輝が瞬時に取り払う。
そう、モールの直ぐ近くに専門店があるのだ。
地域職人御用達の、割と大きい個人店が。
しかも朝早くから開くという、個人だからこそ出来る強みを抑えての。
なので恐らく、モールに工具品店が無いのではない。
モールが、工具品店を置かなかったのだろう。
それは店舗展開前から件の店が近くにあったから。
このモールグループは割と地域密着型という事で有名で。
近所の店舗都合を考えた出店・価格帯を設定するのだとか。
それで敢えて出店ジャンルから外したに違いない。
そんな大店舗が避けるくらいの店なら、目当ての物があるかも。
「ならせっかくだし行ってみようぜ。俺も入った事無いから気になってたしよ」
という訳で、早速その足で件の店へ。
モールから出て徒歩二分というお隣に。
そうして現れたのは【DIYショップ パパンヤ】というお店で。
世間がクリスマスだろうと我を押し通す、黄色一色の箱型店舗が登場だ。
やはりジャンルに縁が無いとあって、ちょっと入り難いけれども。
それでも勇気を出し、足を踏み入れて。
すると早速、木材と金属の独特な香りが鼻を突く事に。
勇達にとってはあまり嗅ぎ慣れない匂いだ。
それも少し濃くて、少しむせてしまいそう。
「んっほぉ!! これはワクワクしてくるッス!!」
でもどうやらカプロにとっては違うらしい。
だからか、大喜びで店の中を駆け回り始めていて。
気になるのはやはり単純加工具だ。
金槌やノコギリといった、そのまま製造に生かせそうな道具である。
逆に電動工具などには見向きもしない。
便利なのは紹介絵などでわかる様だが、そもそも興味が無い様で。
だからかゆっくりと見回る勇達を他所に、一人で色々と駆け回る姿が。
「カプロって、なんだかんだで男の子なのね。こういうの好きなんてさ」
「それもあるだろうけど、やっぱり大きいのは文化の違いなんだと思うよ」
きっとそれだけ楽しいのだ。
これもエウリィが先ほど言っていた話の延長だから。
「あっちは何でも自分達で造らないといけないだろうし。誰かが考えて造って売ってくれる俺達の世界と違ってさ。それで先鋭化出来た道具はほんと凄いんだと思う。俺達にとっては当たり前でも、カプロ達にとっては進歩の先の話なんだから」
それ故に、自分達が如何に恵まれているのかという事も実感出来る。
今こうして喜ばないでいられる、それがどれだけ幸せなのかという事を。
もし自分達の歴史が少しでも戦いに傾いていたら、こうはならなかったかもしれない。
もしかしたら『あちら側』と同じ戦乱の世になっていたかも。
いや、まだこの世界から争いは消えていない。
今もどこかで、現代人同士でも戦っているのだろう。
なら自分達は紙一重なんじゃないかとさえ思えてならない。
実は恵まれている様に見えて、すぐ後ろには戦いが迫っている。
ほんの少し背を叩かれただけで、こんな平和は消えてしまうのではないか、と。
「勇さんっ!!」
「うわあッ!? な、なんだよカプロ、いきなり背中を叩くなよぉ……」
そんな想いに駆られていたから、カプロの接近に気付けなった様だ。
戦いの先に立つ者なだけに、余計のめり込んでいたらしい。
「ご、ごめんッス……それでちょっとお願いがあって。お金、貸してくれねッスか?」
「え、お金? 何か欲しいのあったのか?」
「そうッス。目当ての物が見つかったんス……けど」
しかもそんな勇へ、寝耳に水な話が飛び込んだ。
カプロはそれなりにお金を持たされていて。
ある程度はお土産に費やしたが、それでも使い切るには至っていないはず。
それなのに工面して欲しいという。
という事はつまり、欲しい物とはそれなりに高額なのだろうか。
とはいえカプロのお願いであれば、聞かない訳にもいかない。
仮に手が届かないくらいに高いならまだしも。
少しくらいなら勇だってまだ手持ちもあるので。
なので一先ずその商品の下へ案内してもらう事に。
「これッス」
「こ、これってぇ……!?」
すると突如として、それは現れた。
訪れた勇達の目前に堂々と、驚きの逸品が。
長大な鉄槌である。
カプロより高い丈の木製長柄と、その先端には磨かれた四角い金属塊。
その金属部からは鏡の様な輝きが放たれていてとても重厚だ。
更には意匠まで刻まれており、見た目一つ取っても美しいの一言に尽きる。
しかもそれ以上に語る事が無いくらいシンプル。
それでいてどこ一つとってもムラが無い完璧な造りという。
これには職人芸を感じずにいられない。
「これはとてもいい物ッス。これをボクは探してたッスよ」
ただ、こんな物をどこで使うのかと言われれば勇達にもわからない。
見た感じは只のオブジェだし、実用性はあまり無さそう。
でもちゃんと値札は付いている。(ただし値段が九八〇〇〇円と超高額)
なので買えない訳じゃない。
勇の手持ちでは足りないが、カードを使えば問題にはならないだろう。
だが、それでいて疑問が残る。
どうしてこんな物が欲しいのか、それが全く理解出来なくて。
「これじゃないとダメなのか?」
「これじゃねとダメッス。師匠へのお土産なら、これくらいデカくねと」
「あっ、これもしかしてバノさんに?」
「そうッス」
けれどこうして話せばすぐ理解に至れる。
それだけ理由がハッキリとしていたから。
そう、これは決して個人的に欲しいのではない。
あの巨漢バノへのお土産として持ち帰りたいのだと。
確かに、あの巨大なバノならこんな鉄槌でも軽々と使えそう。
むしろ現代にこれ以外の相応しい道具は無いだろう。
そして勇もバノに恩がある。
色々と仲裁に入ってくれた、返しきれていない恩が。
ならもう、勇の行動は決まっている。
「そっか。じゃあ俺が買ってやるよ。バノさんにはいつだかにお世話になったしさ」
「ゆ、勇さん……!!」
だからカプロの帽子をそっと上げ、頭をわしわしと撫で上げて。
手早くあのカードを取り出し、ニヤリと笑って見せつける。
思い切りの良さはクリスマスが去ってもまだ健在な様だ。
そんな訳でDIYショップでの買い物も無事終了。
目当ての逸品もカプロ自らが背負って帰宅する事に。
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