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第十三節「想い遠く 心の信 彼方へ放て」
~全てはこの時の為の布石~
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視線が上がりきった時……勇の瞳に信じられない光景が飛び込んだ。
獅堂を背に、勇に立ち塞がらんばかりに横に並び立つちゃな達の姿がそこに在ったのだ。
「なんだって……そんなバカな……皆!?」
その目はどこか虚ろではあるがしっかりと勇へと視線を向け、明らかな敵意を剥き出しにした表情を見せる。
そんな彼等を見る勇の目は絶望に震え、立ち上がる事すら忘れさせていた。
その中……突然「パチパチ……」という音が鳴り響く。
獅堂がその両手を小刻みに動かし拍手を上げていたのだ。
「完璧だぁ……完璧過ぎるぅ……完璧なまでに君は僕の思った通りに動いてくれたよ……アッハッハ……笑いが止まらないよぉ!!」
「な……!?」
悦びに満ち溢れた笑い声を上げ、激しく拍手を掻き鳴らす。
高らかに笑うその様はまさに勝利に酔いしれる面持ち。
そんな獅堂の言葉に耳を疑い、勇が唖然とした表情を見せる。
「ほんの少し嗾けて、その気にさせて……そして仲間達を率いて現れる……僕の書いたシナリオ通りにさ……」
すると獅堂は腰にぶら下げた細い棒のような物を右手の親指と人差し指で挟みながら取り上げ、「フルフル」と指先で震わせた。
「これが何だか判るかい? 魔剣【ラパヨチャの笛】っていうんだけどさ……これが凄いんだ」
縦笛の様な形にも見えなくもない魔剣が彼の手に収まると、自慢げに勇に見せつけた。
僅か20cm程の長さの四角い棒にも見えるそれは、小さな紋様を持つだけで殺傷能力など一切感じさせない。
だがその能力は勇の想像を遥かに越えた恐るべき物であった。
「操るなんて大層な事は出来る訳じゃないんだけどねぇ……まぁちょっと人の心をいじれるんだよ。 面白いだろ?」
「人の心を……いじる……!?」
それが【ラパヨチャの笛】と呼ばれた魔剣の力。
今までの魔剣とは一切異なる性質を持った、『武器ではない魔剣』の正体であった。
「そんな物を使う仕草は一切無かった……それは笛じゃないのか!?」
『笛』と呼ばれている以上、音色を聴かせる事で操るのは想像も容易い。
だが、勇はずっと見ていた。
ここに至るまでに彼がそんな物を使う所など無かった事を。
しかし獅堂は彼の戸惑う姿を前に不敵な笑みを浮かべる。
「そんなの決まってるだろ……言われないと解らないのか君は……君達がジョゾウ達に足を止められてる間に吹かせてもらったんだよ」
「なっ―――」
「後は誰かが僕を攻撃した時に、その効果が発現する様にタイマーを仕掛けて置いたって訳さ」
獅堂は再び腰に魔剣を仕舞うと、得意げに両手を組んだ。
「まぁあいつらじゃあれくらいしか足止め出来ないって事は分かってたし、いい時間稼ぎだったよ」
その言葉を耳にした途端、勇に再び沸々と怒りの感情が沸き上がり……突いた肘を浮かせてゆっくりと立ち上がる。
指先が掌に食い込む程に握り締められた拳は刻む様に震え、堪えきれない怒りを体現させていた。
「ジョゾウさん達が時間稼ぎだと……!? 彼等は命を懸けていたんだぞ……お前の為にッ!!」
命を投げ出す事の恐ろしさを知っているから。
盲目的に成らざるを得ず、命を無下に晒す事の無意味さを知っているから。
勇が咆える……それは己の為ではない。
ジョゾウやナイーヴァ王達の様に戦う事に囚われ、死すら抵抗無く受け入れた者達の為に。
そして彼等をけしかけた悪意に向けて。
「知ってるさ、それが何だよ? 力の無い仲間なんてさっさと切り捨てた方が面倒が無くていいじゃないか」
勇に向けられたその冷徹な瞳が彼の感情を煽る。
その声に籠るのは、人を物として扱う事に馴れきった人らしさを一切感じさせない淡泊な『色』。
「キサマァー!!」
勇が右手に携えた翠星剣を構え、力の限り飛び出す。
彼の脚力、そして翠星剣に篭められた命力が勢いに拍車を掛け、今まで以上に力強い踏み込みを生んでいた。
剣の切っ先から光が零れ、強い残光と成って軌跡を刻む。
獅堂達から離れていた筈の勇が、一瞬にして間隔を詰めた。
しかしそれを阻む様にアージの体が彼の前へと躍り出し、両手に携えた巨大な斧型魔剣アストルディで彼の斬撃を受け止めたのだった。
ギィンッ!!
その動きはまさにアージそのもの。
いつか戦った猛者としての彼の強さを体現させた、力強い防御であった。
「ア、アージさんッ!? 目を覚ましてッ!!」
「黙れ下郎がッ!! ぬぅあッ!!」
アージが受け止めた刀身を叩き上げると、その勢いで腕ごと翠星剣が跳ね上がり……勢いのままに勇の体が後方へと弾かれた。
「なっ、何を言ってッ!?」
突然のアージの言動に、思わず勇が戸惑う。
だがその途端……横からレンネィが飛び掛かり、曲刀型魔剣シャラルワールから繰り出される容赦の無い斬撃の嵐が襲い掛かった。
キキキィーーーンッ!!
勇が咄嗟に翠星剣を縦に構え、斬撃の嵐を全て受け止める。
先程のアージの攻撃に加え、嵐の様な連続攻撃が彼の体をますます後退させていった。
「や、やめるんだレンネィさん!!」
「貴方の身に余る言動や行い……許す訳にはいかないわ!!」
不可解な言動は彼女も同じ……勇が動揺によって苦悶の表情を浮かべる。
言動だけでなく、斬撃にも一切の迷いを感じさせない程に一撃一撃に力が籠められていた。
激しい連続攻撃の最中、勇の意識外から突如何かが飛び込む。
逃げ道を塞ぐ様に、細かい粒の様な赤い弾が勇の足元へと向けて撃ち放たれたのだ。
レンネィの斬撃をいなし、弾を辛うじて躱すと……不意に視線が弾の発生元へと向けられる。
そこに立つのはちゃな……両手に掴んだ杖型魔剣ドゥルムエーヴェを水平に構え、杖先を真っ直ぐ勇へと翳していたのだ。
「なっ、た、田中さんッ!?」
彼女までもが敵意を露わにし、容赦の無い炎弾攻撃を繰り出す。
それはいつだか勇が彼女に伝えた支援攻撃方法。
本来敵に向けられる筈の攻撃が自分に向けられるなど誰が思うだろうか。
勇は戸惑いながらも……素早く躱しながら体勢を立て直していく。
すると再びアージがその巨体に見合わぬ速度で勇との距離を一気に詰め始めた。
「ぬぅあー!!」
「うおおッ!?」
アージの強靭な肉体と巨大な魔剣から繰り出される強烈な横薙ぎ。
それを翠星剣で受け止めるが……その体ごと大きく弾き飛ばされ、宮殿入口傍の壁際へと押し戻された。
ザザザッ
砂塵を含む床の上に足を滑らせ、その勢いを力の限りに殺す。
辛うじて壁への激突は免れたが……前進する事は叶わず。
それどころか前進自体困難を極める事実に眉を細めざるを得ない。
操られたとは到底思えない程に……迷いや戸惑いなど微塵も感じさせない。
それ程までに息の合ったコンビネーション……卓越した者達だけが出来る鮮烈な動きであった。
獅堂を背に、勇に立ち塞がらんばかりに横に並び立つちゃな達の姿がそこに在ったのだ。
「なんだって……そんなバカな……皆!?」
その目はどこか虚ろではあるがしっかりと勇へと視線を向け、明らかな敵意を剥き出しにした表情を見せる。
そんな彼等を見る勇の目は絶望に震え、立ち上がる事すら忘れさせていた。
その中……突然「パチパチ……」という音が鳴り響く。
獅堂がその両手を小刻みに動かし拍手を上げていたのだ。
「完璧だぁ……完璧過ぎるぅ……完璧なまでに君は僕の思った通りに動いてくれたよ……アッハッハ……笑いが止まらないよぉ!!」
「な……!?」
悦びに満ち溢れた笑い声を上げ、激しく拍手を掻き鳴らす。
高らかに笑うその様はまさに勝利に酔いしれる面持ち。
そんな獅堂の言葉に耳を疑い、勇が唖然とした表情を見せる。
「ほんの少し嗾けて、その気にさせて……そして仲間達を率いて現れる……僕の書いたシナリオ通りにさ……」
すると獅堂は腰にぶら下げた細い棒のような物を右手の親指と人差し指で挟みながら取り上げ、「フルフル」と指先で震わせた。
「これが何だか判るかい? 魔剣【ラパヨチャの笛】っていうんだけどさ……これが凄いんだ」
縦笛の様な形にも見えなくもない魔剣が彼の手に収まると、自慢げに勇に見せつけた。
僅か20cm程の長さの四角い棒にも見えるそれは、小さな紋様を持つだけで殺傷能力など一切感じさせない。
だがその能力は勇の想像を遥かに越えた恐るべき物であった。
「操るなんて大層な事は出来る訳じゃないんだけどねぇ……まぁちょっと人の心をいじれるんだよ。 面白いだろ?」
「人の心を……いじる……!?」
それが【ラパヨチャの笛】と呼ばれた魔剣の力。
今までの魔剣とは一切異なる性質を持った、『武器ではない魔剣』の正体であった。
「そんな物を使う仕草は一切無かった……それは笛じゃないのか!?」
『笛』と呼ばれている以上、音色を聴かせる事で操るのは想像も容易い。
だが、勇はずっと見ていた。
ここに至るまでに彼がそんな物を使う所など無かった事を。
しかし獅堂は彼の戸惑う姿を前に不敵な笑みを浮かべる。
「そんなの決まってるだろ……言われないと解らないのか君は……君達がジョゾウ達に足を止められてる間に吹かせてもらったんだよ」
「なっ―――」
「後は誰かが僕を攻撃した時に、その効果が発現する様にタイマーを仕掛けて置いたって訳さ」
獅堂は再び腰に魔剣を仕舞うと、得意げに両手を組んだ。
「まぁあいつらじゃあれくらいしか足止め出来ないって事は分かってたし、いい時間稼ぎだったよ」
その言葉を耳にした途端、勇に再び沸々と怒りの感情が沸き上がり……突いた肘を浮かせてゆっくりと立ち上がる。
指先が掌に食い込む程に握り締められた拳は刻む様に震え、堪えきれない怒りを体現させていた。
「ジョゾウさん達が時間稼ぎだと……!? 彼等は命を懸けていたんだぞ……お前の為にッ!!」
命を投げ出す事の恐ろしさを知っているから。
盲目的に成らざるを得ず、命を無下に晒す事の無意味さを知っているから。
勇が咆える……それは己の為ではない。
ジョゾウやナイーヴァ王達の様に戦う事に囚われ、死すら抵抗無く受け入れた者達の為に。
そして彼等をけしかけた悪意に向けて。
「知ってるさ、それが何だよ? 力の無い仲間なんてさっさと切り捨てた方が面倒が無くていいじゃないか」
勇に向けられたその冷徹な瞳が彼の感情を煽る。
その声に籠るのは、人を物として扱う事に馴れきった人らしさを一切感じさせない淡泊な『色』。
「キサマァー!!」
勇が右手に携えた翠星剣を構え、力の限り飛び出す。
彼の脚力、そして翠星剣に篭められた命力が勢いに拍車を掛け、今まで以上に力強い踏み込みを生んでいた。
剣の切っ先から光が零れ、強い残光と成って軌跡を刻む。
獅堂達から離れていた筈の勇が、一瞬にして間隔を詰めた。
しかしそれを阻む様にアージの体が彼の前へと躍り出し、両手に携えた巨大な斧型魔剣アストルディで彼の斬撃を受け止めたのだった。
ギィンッ!!
その動きはまさにアージそのもの。
いつか戦った猛者としての彼の強さを体現させた、力強い防御であった。
「ア、アージさんッ!? 目を覚ましてッ!!」
「黙れ下郎がッ!! ぬぅあッ!!」
アージが受け止めた刀身を叩き上げると、その勢いで腕ごと翠星剣が跳ね上がり……勢いのままに勇の体が後方へと弾かれた。
「なっ、何を言ってッ!?」
突然のアージの言動に、思わず勇が戸惑う。
だがその途端……横からレンネィが飛び掛かり、曲刀型魔剣シャラルワールから繰り出される容赦の無い斬撃の嵐が襲い掛かった。
キキキィーーーンッ!!
勇が咄嗟に翠星剣を縦に構え、斬撃の嵐を全て受け止める。
先程のアージの攻撃に加え、嵐の様な連続攻撃が彼の体をますます後退させていった。
「や、やめるんだレンネィさん!!」
「貴方の身に余る言動や行い……許す訳にはいかないわ!!」
不可解な言動は彼女も同じ……勇が動揺によって苦悶の表情を浮かべる。
言動だけでなく、斬撃にも一切の迷いを感じさせない程に一撃一撃に力が籠められていた。
激しい連続攻撃の最中、勇の意識外から突如何かが飛び込む。
逃げ道を塞ぐ様に、細かい粒の様な赤い弾が勇の足元へと向けて撃ち放たれたのだ。
レンネィの斬撃をいなし、弾を辛うじて躱すと……不意に視線が弾の発生元へと向けられる。
そこに立つのはちゃな……両手に掴んだ杖型魔剣ドゥルムエーヴェを水平に構え、杖先を真っ直ぐ勇へと翳していたのだ。
「なっ、た、田中さんッ!?」
彼女までもが敵意を露わにし、容赦の無い炎弾攻撃を繰り出す。
それはいつだか勇が彼女に伝えた支援攻撃方法。
本来敵に向けられる筈の攻撃が自分に向けられるなど誰が思うだろうか。
勇は戸惑いながらも……素早く躱しながら体勢を立て直していく。
すると再びアージがその巨体に見合わぬ速度で勇との距離を一気に詰め始めた。
「ぬぅあー!!」
「うおおッ!?」
アージの強靭な肉体と巨大な魔剣から繰り出される強烈な横薙ぎ。
それを翠星剣で受け止めるが……その体ごと大きく弾き飛ばされ、宮殿入口傍の壁際へと押し戻された。
ザザザッ
砂塵を含む床の上に足を滑らせ、その勢いを力の限りに殺す。
辛うじて壁への激突は免れたが……前進する事は叶わず。
それどころか前進自体困難を極める事実に眉を細めざるを得ない。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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