423 / 1,197
第十四節「新たな道 時を越え 心を越えて」
~相沢瀬玲~
しおりを挟む
気付けば新年度……勇や心輝達は3年生となり、茶奈達もまた2年生へと昇級していた。
白代高校は2年進級時に進路によってクラス分けを行う。
進学か就職か……理系か文系か……各々が選択した道に沿って分かれるのである。
そんなこの学校は基本的に2年から3年への進級時にはクラス替えを行う事は無い。
その為、勇達は続き心輝達と共に同じクラスで過ごす事となる。
新しい教室で、去年と何ら変わらない面々が会話を連ねる。
いつも通りの風景、いつも通りの声……彼等は思うままに会話に華を咲かせていた。
「ねぇねぇ最近の藤咲君ってさ、なんか妙に大人っぽくない?」
「わーかーるー! なんかすごい貫禄っていうの? そんな雰囲気凄い出てきてるよね」
「妙にカッコイイよね、告っちゃおうかな~」
昼休みの一角……教室の片隅でクラスの女子達が惜しげも無くそんな話題を交わす。
幸か不幸か……勇は心輝と共に昼食を取る為に教室に居なかった。
もっとも、彼が居るのであればそんな堂々と彼の事など話はしないだろうが。
そんな彼女達の傍らには瀬玲の姿もあった。
「多分徒労に終わるよ……勇には好きな子いるし。 しかもその子も勇の事好きだし……多分」
「えー! マジで~!?」
「意外~!! 藤咲君って奥手だと思ってたのに~……もしかして行く所まで行っちゃった感じ?」
女子達の会話は無邪気にエスカレートするが、瀬玲が釘を刺す様に言葉を返す。
「さぁね~……でも多分その内行くんじゃない~?」
―――本人達にその気があれば……だけど―――
その目は座っており、半ば退屈そうにも見える。
それもそうだろう……勇と茶奈、二人の関係が進展しない事にやきもきする感情があるからだ。
本来彼女もこんな桃色の話は大好物なのだが……最も身近とも言える存在が煮え切らない対象となれば話は別だ。
茶奈が自身の名前を認めて以来、勇も彼女の事を名前で呼ぶ様になった。
その関係が進展したと思われたが……結局今までと何ら変わらない生活が今なお続いている。
「いっそ自分が告白でもしようものなら簡単に奪えてしまうのではないか」……そう思った事すらあり、その感傷は既に末期とも言えるだろう。
何より性質が悪いのは、それを瀬玲当人が認識してしまっている事か。
机の上で両腕を組み、顎を組まれた腕に沈み込む様に乗せて欠伸を上げ、彼女達の話に聞き耳を立てる。
そんな時突然……彼女達の前に、教室の扉の外から珍しく茶奈が姿を現した。
教室に顔を覗かせた途端、彼女の視界に瀬玲の顔が映る。
「あっ、セリさん……勇さんいますか?」
慌てて来たのだろう、彼女は「ふうふう」と息を荒げていた。
口を小さく摺動させる彼女だったが、その口角は僅かに高く……まるで大きな笑みを浮かべているよう。
「勇なら食堂にもう行ったよー」
「あ、そうなんですね……乗り遅れちゃった」
途端大きく開かれた唇は萎み、「へ」の字を描く。
茶奈から小さな溜息が漏れ……その唇は再び微笑みへと姿を変えた。
「じゃあ私、行きますね。 教えてくれてありがとうございます」
茶奈が小刻みに手を振ると、瀬玲もまた作った様な笑顔を浮かべて振り返す。
そのまま覗かせた顔を引っ込めた彼女は踵を返して去っていく。
そんな姿を瀬玲は扉の隙間から見届けていた。
彼女の姿が見えなくなると……ぐらりと頭を揺らさせ、組んだ両腕の中に「ドスン」と音を立てて沈めた。
「あ~……モヤモヤするわー」
一人モヤつく気分に苛まれながら椅子の先から出る足をバタバタとばたつかせる。
やり場の無い悶々とした感情は更に両腕へと滑らす様におでこをグリグリと擦り付けさせていた。
「今の子誰? 3年にいたっけ?」
茶奈の事が気になったのだろう……ふと女子の一人が声を上げる。
その問い掛けに、瀬玲はぬぃっと頭を起こしてぼそりと呟いた。
「あの子が噂の子」
「マジでぇーーーっ!?」
桃色の声が教室中に響き、ちょっとした喧騒を生む。
だが間も無く……狭い空間に上がっていた声が桃色に押し出され、得も知れぬ静寂が教室を包み込んだのだった。
白代高校は2年進級時に進路によってクラス分けを行う。
進学か就職か……理系か文系か……各々が選択した道に沿って分かれるのである。
そんなこの学校は基本的に2年から3年への進級時にはクラス替えを行う事は無い。
その為、勇達は続き心輝達と共に同じクラスで過ごす事となる。
新しい教室で、去年と何ら変わらない面々が会話を連ねる。
いつも通りの風景、いつも通りの声……彼等は思うままに会話に華を咲かせていた。
「ねぇねぇ最近の藤咲君ってさ、なんか妙に大人っぽくない?」
「わーかーるー! なんかすごい貫禄っていうの? そんな雰囲気凄い出てきてるよね」
「妙にカッコイイよね、告っちゃおうかな~」
昼休みの一角……教室の片隅でクラスの女子達が惜しげも無くそんな話題を交わす。
幸か不幸か……勇は心輝と共に昼食を取る為に教室に居なかった。
もっとも、彼が居るのであればそんな堂々と彼の事など話はしないだろうが。
そんな彼女達の傍らには瀬玲の姿もあった。
「多分徒労に終わるよ……勇には好きな子いるし。 しかもその子も勇の事好きだし……多分」
「えー! マジで~!?」
「意外~!! 藤咲君って奥手だと思ってたのに~……もしかして行く所まで行っちゃった感じ?」
女子達の会話は無邪気にエスカレートするが、瀬玲が釘を刺す様に言葉を返す。
「さぁね~……でも多分その内行くんじゃない~?」
―――本人達にその気があれば……だけど―――
その目は座っており、半ば退屈そうにも見える。
それもそうだろう……勇と茶奈、二人の関係が進展しない事にやきもきする感情があるからだ。
本来彼女もこんな桃色の話は大好物なのだが……最も身近とも言える存在が煮え切らない対象となれば話は別だ。
茶奈が自身の名前を認めて以来、勇も彼女の事を名前で呼ぶ様になった。
その関係が進展したと思われたが……結局今までと何ら変わらない生活が今なお続いている。
「いっそ自分が告白でもしようものなら簡単に奪えてしまうのではないか」……そう思った事すらあり、その感傷は既に末期とも言えるだろう。
何より性質が悪いのは、それを瀬玲当人が認識してしまっている事か。
机の上で両腕を組み、顎を組まれた腕に沈み込む様に乗せて欠伸を上げ、彼女達の話に聞き耳を立てる。
そんな時突然……彼女達の前に、教室の扉の外から珍しく茶奈が姿を現した。
教室に顔を覗かせた途端、彼女の視界に瀬玲の顔が映る。
「あっ、セリさん……勇さんいますか?」
慌てて来たのだろう、彼女は「ふうふう」と息を荒げていた。
口を小さく摺動させる彼女だったが、その口角は僅かに高く……まるで大きな笑みを浮かべているよう。
「勇なら食堂にもう行ったよー」
「あ、そうなんですね……乗り遅れちゃった」
途端大きく開かれた唇は萎み、「へ」の字を描く。
茶奈から小さな溜息が漏れ……その唇は再び微笑みへと姿を変えた。
「じゃあ私、行きますね。 教えてくれてありがとうございます」
茶奈が小刻みに手を振ると、瀬玲もまた作った様な笑顔を浮かべて振り返す。
そのまま覗かせた顔を引っ込めた彼女は踵を返して去っていく。
そんな姿を瀬玲は扉の隙間から見届けていた。
彼女の姿が見えなくなると……ぐらりと頭を揺らさせ、組んだ両腕の中に「ドスン」と音を立てて沈めた。
「あ~……モヤモヤするわー」
一人モヤつく気分に苛まれながら椅子の先から出る足をバタバタとばたつかせる。
やり場の無い悶々とした感情は更に両腕へと滑らす様におでこをグリグリと擦り付けさせていた。
「今の子誰? 3年にいたっけ?」
茶奈の事が気になったのだろう……ふと女子の一人が声を上げる。
その問い掛けに、瀬玲はぬぃっと頭を起こしてぼそりと呟いた。
「あの子が噂の子」
「マジでぇーーーっ!?」
桃色の声が教室中に響き、ちょっとした喧騒を生む。
だが間も無く……狭い空間に上がっていた声が桃色に押し出され、得も知れぬ静寂が教室を包み込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる