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第二十一節「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」
~三身揃いて、陽下の決着~
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「ねぇねぇ剣聖さん?」
「なんだぁ?」
「アタシもう戻るよ~?」
勇へ連絡を入れた後……剣聖は何かしらを調べる様に再びオブジェクトを触り始めていた。
目的も達したともあれば、その場に居続ける理由もない……古代遺跡の事などさっぱりわかるはずも無いあずーであればなおさらだ。
「おう、さっさと戻りやがれ。 目的は達したんだろうがよぉ」
「剣聖さんは~?」
「もうちっと弄り倒していく」
顔を向ける事すら無く素っ気ない返事を返す剣聖に、あずーはお手上げを示す。
諦めた彼女は一人で飛び上がり、入って来た道へと戻っていった。
―――
島の外、輸送機が並ぶ設営地……。
そこに閃光が幾重にも迸り、光の筋を作る。
キュンッ!! キュンッ!!
空気を貫く音が響き渡ると同時に閃光が弧を描いて宙を走り、空洞から現れる魔者を貫いていった。
「これで終わり……?」
相手が雑兵ともあれば苦戦などする訳も無く、瀬玲は淡々と姿を現す魔者達に対して攻撃を仕掛けていく。
すると一通りの襲撃が過ぎたのか……空洞からの魔者の飛び出しは収まりを見せ、暫しの平穏が訪れた。
「ふぅ……終わったみたいね」
兵士達が喝采を上げる中、悪い気もしない瀬玲は少し頬を赤らめ彼等の祝福を受け入れる。
―――こんな事ならまだやっていけるかもね―――
「ふふっ」と軽く笑う彼女はそう思い、自分の気持ちの不安定さを誤魔化す。
人に褒められる事は何よりもの活力となる。
彼女はその欲求が人一倍強いだけに他ならない。
ドォーーーンッ!!
「何ッ!?」
途端、大きな音が鳴り響き、瀬玲が驚きの声を上げた。
咄嗟に見上げると……彼女の目に映ったのは、島内部から噴き出た朱の一閃。
「あれって……まさかシン!?」
そう察した彼女は不意に飛び上がり……傍に在った旅客機の上へと着地した。
そして炎の噴出口を見上げる様に眺めると……そこに映る光景をしっかりと見据えていた。
「あれは……魔者……?」
じっと目を凝らし、遠方を眺める瀬玲の視界に映ったのは緋色の翼を持つ魔者の姿。
遥か遠くを視認出来る程の彼女の視力は、カッデレータの新しい力によって強化されているからこそ。
彼女の持つ【カッデレータ・フェグリーム】の有する力……それは広がる感覚。
勇が持つ感覚鋭化の力に視認の拡張を加えた感覚特化の能力。
それが【感覚拡張】……瀬玲に与えられた新しい力。
「誰か、あの空を飛ぶ赤い魔者の事知らない!?」
咄嗟にインカムを通して仲間に意思を伝える……あれが敵であるかどうかを。
すると間もなく聞こえてきたのはジョゾウの声。
『赤い……それは恐らくメズリであろう。 緋色の羽根を持つのはかの者の一族のみ故』
「今ソイツと思われる奴が空飛んでるの!! 撃っていいの!? ダメなの!?」
その途端、インカムにブレた声が響く。
『撃てェ!! そいつぁ敵だ!! 仲間の命も見境ねぇクズ野郎だ!!』
それは精一杯の心輝の声。
力を振り絞り地表へと姿を現した心輝を瀬玲の目が捉えた。
「わかったわ!!」
心輝の声を聞き取った瀬玲は、自身が番える弓を引き絞る様に構える。
途端、カッデレータに強い光が迸り……その両端から弦が如く光が筋を作って彼女の手に集約していく。
その光が彼女の手へと集約された時……光がまるで巨大な矢の様に、長く太い光の筋を形成し始めていた。
今までの糸の様に細い矢とは異なる、圧倒的な程に力強い光の矢。
自身の身長の二倍にも足る長さの矢を形成した彼女は躊躇う事無く……矢を放った。
キィィィーーーーーンッ!!
それは共鳴音。
放たれた矢は螺旋を描く様に軌道を中心に回り始め……芯が三つへと別れていく。
三束の光が凄まじい速度で残光を引きながら空を舞っていく……だが不意に急激にその進路を曲げ、暴風渦巻く外縁の中へと消えていった。
―――
「ハァ!! ハァッ!! おのれ、下等生物如きが……!!」
全身を焼かれ僅かに煙を立ち込めさせた羽根を奮い、メズリが空を滑空する。
心輝の予測通り、彼女は生きていた。
だが決してダメージが無い訳ではない。
その顔は既に疲労とダメージの蓄積の様が浮かび上がっていた。
既に地表から遠く離れ、彼女の後に遅れて地表に到達した心輝は追ってくる様子を見せていない。
メズリはその時考える。
―――このままあの人間を殺す事なぞ容易いが……その後が問題よ……―――
心輝との戦いで彼の力量は計れていた……それ故に戦いが続けば彼女の勝ちは必至。
だが、その戦いを繰り広げれば彼女自身に与える影響も大きい。
リスクを負う事は、今の彼女を取り巻く状況から得策ではないと考える。
ここは逃げが上策……そう考えたメズリは既に空島の外へ逃げ込む様に大きく島の上へと飛び上がっていた。
嵐スレスレを滑空し、その風を利用しての飛翔……それが彼女の考えていた島外への脱出方法。
彼女はほくそ笑む。
次はこの様な失態は無い、と。
だが、それは油断だった。
―――……ィィィイインッ!!
「なっ!?」
突如、嵐の中から一筋の閃光が迸り、メズリの片翼を貫いた。
シュバオウッ!!
「がああああッ!?」
緋色の羽根と共に僅かな血飛沫を撒き散らし、きりもみしながら落ちていくメズリの身体。
直撃では無かったが、確実なダメージがその身に刻まれた事を示していた。
そんな彼女に容赦なくもう一本の閃光が嵐の中より姿を現し襲い掛かる。
ギュンッ!!
「クゥアアッ!?」
だが、その閃光は奇しくも彼女の脇下を通り過ぎていく。
「なんだというのだあッ!?」
傷付いた腕を動かし、バランスを取り再び滑空するメズリ。
そんな彼女の視界のずっと先……そこに、魔剣を構え光を放つ瀬玲の姿が映りこんだ。
「奴かあああーーーーーーーッ!!」
それに気付いたメズリは一気に急降下を掛け、瀬玲へと向けて飛び込んでいく。
だが、それも瀬玲の読み通りであった。
途端、再び渦の中から現れる閃光……しかしその数は先程の比では無かった。
時間差で姿を現していく閃光……その数は15余り。
その瞬間……メズリの顔が引きつっていく。
波状攻撃による光の連鎖攻撃……メズリは己の力をふんだんに奮い、力の限り急旋回を行った。
彼女を追うように残光を引く光が襲い掛かり、そのスレスレを飛び交っていく。
僅かにメズリの身体が光の筋を躱し、次々に空へと光がアーチを描いていった。
だが、それでは終わらない。
躱した矢弾は遥か先で旋回し、波を描く様に再びメズリへと向けて飛び掛かったのだ。
「ウアアアーーーーーーー!!」
最早必死である。
絶えず襲い掛かる無数の閃光の槍に逃げ場を奪われたメズリは、己の力を振り絞り攻撃を回避していく。
だが徐々にその軌道を修正し襲い掛かって来る閃光を前に、その機動力ですら追い詰められている様を見せていた。
辛うじて第二波を躱しきったメズリ。
疲労の顔を浮かべながらも次に来るであろう波状攻撃に警戒し体を強張らせていた。
―――……ゥォンヒュオンッ!!
突如、耳を突く異音……メズリが「ハッ!!」とするも既に時は遅し……。
「んあああああっ!!」
そう唸り声を上げたのはあずー。
なんと瀬玲の矢弾に合わせ、彼女が飛び込んで来ていたのだ。
縦の回転を利用し、油断の顔を浮かべていたメズリの背中へと鋭い斬撃が見舞われた。
「ガハァッ!? まっさっか!! 三人目だとォ!?」
突然の伏兵にメズリが驚きを隠せない。
知らない訳では無かった。
ただ、存在を忘れるくらいに消耗していただけに過ぎない。
だがそれが彼女の勝敗を大きく分けたのだろう。
斬撃を与えた後、あずーがすぐさまに空へと舞っていく。
そして彼女の作った軌跡の裏から再び襲い掛かる閃光の嵐。
幾重にも重なった光がメズリを貫いた。
致命傷になる程の一撃は無かった。
だが、三本の直撃した矢弾が確実に彼女の動きを止める。
ヒュウウウウンッ!!
動きを止めたメズリに向けて、二刀を構えたあずーが飛び込んでいく。
……そして……
ズシャアッ!!
その刃がメズリの両翼を刻み、その力を奪った。
「ウアアアーーー!?」
空を飛ぶ力を失ったメズリが重力に引かれ落ちていく。
「―――……オオオオッ!!」
その耳に聞き慣れた声が聞こえて来た時……意識を失いかけていたメズリの目が見開かれた。
その目に映ったのは……自身へ向けて飛び込んでくる心輝の姿。
―――何故だ……何故彼奴は……!?―――
「―――ォらっしゃあああーーーーーー!!」
心輝が両拳を合わせ振り上げ、自身の力を振り絞った渾身の一撃をメズリへと叩き込んだ。
ドッゴオオオーーー!!
最早メズリには断末魔さえ吐く力も残っていなかった。
自身が砕ける感覚に見舞われながら、心輝と共に勢いよく地表へと落下していく。
そして―――
バッゴオオオーーーーーーンッ!!
輸送機が並ぶ設営地点の近くへ落下し、大音と共に大量の砂塵が舞い上がった。
多くの者達が見守る中、巻き上げられた砂塵が治まり……その場に落ちたモノを徐々に晒していく。
完全に砂塵が吹き飛び……そこに現れたのは、地に伏せ動かなくなったメズリと……かろうじて立ち上がる心輝の姿。
間も無くあずーと瀬玲も心輝の傍へと着地し……彼を気遣う様に寄り添う。
「大丈夫? お兄」
「へへ……あぁなんとかな……でももうさすがに……」
「もう……随分お疲れじゃない?」
途端、心輝がその場にへたり込む……彼の命力は既にほぼ底を突きかけていた。
そんな彼らの様子の一部始終を見ていた兵士達は皆……目を丸くし、固まる様に見つめていた。
目の前で起きた戦闘……それは彼等の想像の遥か上を行く激しい戦いであったからだ。
魔剣使いの戦いを見た事が無い彼等であればなおさらであろう。
普通の人間から見た心輝達はまさしく超人と呼べる存在であった。
「にしても……三人でようやく王っぽいのを倒せるのかぁ~まだまだだね、アタシ達」
「しょうがないじゃない……勇や茶奈の成長がおかしいのよ」
激闘を忘れるかの様に談笑に更け、笑いを誘い合う。
力の殆ど残っていない心輝も、息も絶え絶えながら笑みを零していた。
「ガアアアアアアア!!」
その瞬間、突然メズリが飛び上がる様に起き上がり、彼等の動揺を買う。
ギュンッ―――
ドォーーーーーーーーーンッ!!
「ギャバッ!?」
突然、轟音と共に何かが落ち……起き上がったメズリの体を押し潰した。
悲鳴とも、断末魔とも、ただの空気の漏れた音とも取れる声を上げ、ぐしゃりと潰れるメズリの体。
既にその原型は留めておらず、赤い血が滲み出るのみ。
メズリを押し潰したのは……剣聖の巨体。
「おう、おめぇら随分面白そうな事してたじゃねぇか」
「け、剣聖さん……見てたんですか?」
三人も剣聖の突然の登場に驚き目を丸くするばかり。
「たりめぇだ……だが面白かったぜぇ、随分成長したじゃあねぇか。 こいつぁあの勇ですら手を焼く位の実力者だぜ?」
三人掛かりとはいえ……勇ですら苦戦するであろう相手を倒せた事に、彼等は喜びを禁じ得ない様子を見せていた。
「へ、へへ……やったぜ……剣聖さんに褒められた……」
「馬鹿野郎……苦戦してるくらいじゃまだまだって事くらいわかりやぁがれ」
「うへぇ……剣聖さん手厳しー」
再び和気藹々とした空気を取り戻した心輝達……激戦を終え、彼等の役目はしっかり果たされた。
後は勇達が救出した乗客乗員達と、茶奈と研究員達が戻れば全てが解決する。
その考えが脳裏によぎり、彼等を笑顔にしていた。
だが、その島の奥底で……何かが蠢いている事に気付く者はまだ誰も居ない……。
「なんだぁ?」
「アタシもう戻るよ~?」
勇へ連絡を入れた後……剣聖は何かしらを調べる様に再びオブジェクトを触り始めていた。
目的も達したともあれば、その場に居続ける理由もない……古代遺跡の事などさっぱりわかるはずも無いあずーであればなおさらだ。
「おう、さっさと戻りやがれ。 目的は達したんだろうがよぉ」
「剣聖さんは~?」
「もうちっと弄り倒していく」
顔を向ける事すら無く素っ気ない返事を返す剣聖に、あずーはお手上げを示す。
諦めた彼女は一人で飛び上がり、入って来た道へと戻っていった。
―――
島の外、輸送機が並ぶ設営地……。
そこに閃光が幾重にも迸り、光の筋を作る。
キュンッ!! キュンッ!!
空気を貫く音が響き渡ると同時に閃光が弧を描いて宙を走り、空洞から現れる魔者を貫いていった。
「これで終わり……?」
相手が雑兵ともあれば苦戦などする訳も無く、瀬玲は淡々と姿を現す魔者達に対して攻撃を仕掛けていく。
すると一通りの襲撃が過ぎたのか……空洞からの魔者の飛び出しは収まりを見せ、暫しの平穏が訪れた。
「ふぅ……終わったみたいね」
兵士達が喝采を上げる中、悪い気もしない瀬玲は少し頬を赤らめ彼等の祝福を受け入れる。
―――こんな事ならまだやっていけるかもね―――
「ふふっ」と軽く笑う彼女はそう思い、自分の気持ちの不安定さを誤魔化す。
人に褒められる事は何よりもの活力となる。
彼女はその欲求が人一倍強いだけに他ならない。
ドォーーーンッ!!
「何ッ!?」
途端、大きな音が鳴り響き、瀬玲が驚きの声を上げた。
咄嗟に見上げると……彼女の目に映ったのは、島内部から噴き出た朱の一閃。
「あれって……まさかシン!?」
そう察した彼女は不意に飛び上がり……傍に在った旅客機の上へと着地した。
そして炎の噴出口を見上げる様に眺めると……そこに映る光景をしっかりと見据えていた。
「あれは……魔者……?」
じっと目を凝らし、遠方を眺める瀬玲の視界に映ったのは緋色の翼を持つ魔者の姿。
遥か遠くを視認出来る程の彼女の視力は、カッデレータの新しい力によって強化されているからこそ。
彼女の持つ【カッデレータ・フェグリーム】の有する力……それは広がる感覚。
勇が持つ感覚鋭化の力に視認の拡張を加えた感覚特化の能力。
それが【感覚拡張】……瀬玲に与えられた新しい力。
「誰か、あの空を飛ぶ赤い魔者の事知らない!?」
咄嗟にインカムを通して仲間に意思を伝える……あれが敵であるかどうかを。
すると間もなく聞こえてきたのはジョゾウの声。
『赤い……それは恐らくメズリであろう。 緋色の羽根を持つのはかの者の一族のみ故』
「今ソイツと思われる奴が空飛んでるの!! 撃っていいの!? ダメなの!?」
その途端、インカムにブレた声が響く。
『撃てェ!! そいつぁ敵だ!! 仲間の命も見境ねぇクズ野郎だ!!』
それは精一杯の心輝の声。
力を振り絞り地表へと姿を現した心輝を瀬玲の目が捉えた。
「わかったわ!!」
心輝の声を聞き取った瀬玲は、自身が番える弓を引き絞る様に構える。
途端、カッデレータに強い光が迸り……その両端から弦が如く光が筋を作って彼女の手に集約していく。
その光が彼女の手へと集約された時……光がまるで巨大な矢の様に、長く太い光の筋を形成し始めていた。
今までの糸の様に細い矢とは異なる、圧倒的な程に力強い光の矢。
自身の身長の二倍にも足る長さの矢を形成した彼女は躊躇う事無く……矢を放った。
キィィィーーーーーンッ!!
それは共鳴音。
放たれた矢は螺旋を描く様に軌道を中心に回り始め……芯が三つへと別れていく。
三束の光が凄まじい速度で残光を引きながら空を舞っていく……だが不意に急激にその進路を曲げ、暴風渦巻く外縁の中へと消えていった。
―――
「ハァ!! ハァッ!! おのれ、下等生物如きが……!!」
全身を焼かれ僅かに煙を立ち込めさせた羽根を奮い、メズリが空を滑空する。
心輝の予測通り、彼女は生きていた。
だが決してダメージが無い訳ではない。
その顔は既に疲労とダメージの蓄積の様が浮かび上がっていた。
既に地表から遠く離れ、彼女の後に遅れて地表に到達した心輝は追ってくる様子を見せていない。
メズリはその時考える。
―――このままあの人間を殺す事なぞ容易いが……その後が問題よ……―――
心輝との戦いで彼の力量は計れていた……それ故に戦いが続けば彼女の勝ちは必至。
だが、その戦いを繰り広げれば彼女自身に与える影響も大きい。
リスクを負う事は、今の彼女を取り巻く状況から得策ではないと考える。
ここは逃げが上策……そう考えたメズリは既に空島の外へ逃げ込む様に大きく島の上へと飛び上がっていた。
嵐スレスレを滑空し、その風を利用しての飛翔……それが彼女の考えていた島外への脱出方法。
彼女はほくそ笑む。
次はこの様な失態は無い、と。
だが、それは油断だった。
―――……ィィィイインッ!!
「なっ!?」
突如、嵐の中から一筋の閃光が迸り、メズリの片翼を貫いた。
シュバオウッ!!
「がああああッ!?」
緋色の羽根と共に僅かな血飛沫を撒き散らし、きりもみしながら落ちていくメズリの身体。
直撃では無かったが、確実なダメージがその身に刻まれた事を示していた。
そんな彼女に容赦なくもう一本の閃光が嵐の中より姿を現し襲い掛かる。
ギュンッ!!
「クゥアアッ!?」
だが、その閃光は奇しくも彼女の脇下を通り過ぎていく。
「なんだというのだあッ!?」
傷付いた腕を動かし、バランスを取り再び滑空するメズリ。
そんな彼女の視界のずっと先……そこに、魔剣を構え光を放つ瀬玲の姿が映りこんだ。
「奴かあああーーーーーーーッ!!」
それに気付いたメズリは一気に急降下を掛け、瀬玲へと向けて飛び込んでいく。
だが、それも瀬玲の読み通りであった。
途端、再び渦の中から現れる閃光……しかしその数は先程の比では無かった。
時間差で姿を現していく閃光……その数は15余り。
その瞬間……メズリの顔が引きつっていく。
波状攻撃による光の連鎖攻撃……メズリは己の力をふんだんに奮い、力の限り急旋回を行った。
彼女を追うように残光を引く光が襲い掛かり、そのスレスレを飛び交っていく。
僅かにメズリの身体が光の筋を躱し、次々に空へと光がアーチを描いていった。
だが、それでは終わらない。
躱した矢弾は遥か先で旋回し、波を描く様に再びメズリへと向けて飛び掛かったのだ。
「ウアアアーーーーーーー!!」
最早必死である。
絶えず襲い掛かる無数の閃光の槍に逃げ場を奪われたメズリは、己の力を振り絞り攻撃を回避していく。
だが徐々にその軌道を修正し襲い掛かって来る閃光を前に、その機動力ですら追い詰められている様を見せていた。
辛うじて第二波を躱しきったメズリ。
疲労の顔を浮かべながらも次に来るであろう波状攻撃に警戒し体を強張らせていた。
―――……ゥォンヒュオンッ!!
突如、耳を突く異音……メズリが「ハッ!!」とするも既に時は遅し……。
「んあああああっ!!」
そう唸り声を上げたのはあずー。
なんと瀬玲の矢弾に合わせ、彼女が飛び込んで来ていたのだ。
縦の回転を利用し、油断の顔を浮かべていたメズリの背中へと鋭い斬撃が見舞われた。
「ガハァッ!? まっさっか!! 三人目だとォ!?」
突然の伏兵にメズリが驚きを隠せない。
知らない訳では無かった。
ただ、存在を忘れるくらいに消耗していただけに過ぎない。
だがそれが彼女の勝敗を大きく分けたのだろう。
斬撃を与えた後、あずーがすぐさまに空へと舞っていく。
そして彼女の作った軌跡の裏から再び襲い掛かる閃光の嵐。
幾重にも重なった光がメズリを貫いた。
致命傷になる程の一撃は無かった。
だが、三本の直撃した矢弾が確実に彼女の動きを止める。
ヒュウウウウンッ!!
動きを止めたメズリに向けて、二刀を構えたあずーが飛び込んでいく。
……そして……
ズシャアッ!!
その刃がメズリの両翼を刻み、その力を奪った。
「ウアアアーーー!?」
空を飛ぶ力を失ったメズリが重力に引かれ落ちていく。
「―――……オオオオッ!!」
その耳に聞き慣れた声が聞こえて来た時……意識を失いかけていたメズリの目が見開かれた。
その目に映ったのは……自身へ向けて飛び込んでくる心輝の姿。
―――何故だ……何故彼奴は……!?―――
「―――ォらっしゃあああーーーーーー!!」
心輝が両拳を合わせ振り上げ、自身の力を振り絞った渾身の一撃をメズリへと叩き込んだ。
ドッゴオオオーーー!!
最早メズリには断末魔さえ吐く力も残っていなかった。
自身が砕ける感覚に見舞われながら、心輝と共に勢いよく地表へと落下していく。
そして―――
バッゴオオオーーーーーーンッ!!
輸送機が並ぶ設営地点の近くへ落下し、大音と共に大量の砂塵が舞い上がった。
多くの者達が見守る中、巻き上げられた砂塵が治まり……その場に落ちたモノを徐々に晒していく。
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間も無くあずーと瀬玲も心輝の傍へと着地し……彼を気遣う様に寄り添う。
「大丈夫? お兄」
「へへ……あぁなんとかな……でももうさすがに……」
「もう……随分お疲れじゃない?」
途端、心輝がその場にへたり込む……彼の命力は既にほぼ底を突きかけていた。
そんな彼らの様子の一部始終を見ていた兵士達は皆……目を丸くし、固まる様に見つめていた。
目の前で起きた戦闘……それは彼等の想像の遥か上を行く激しい戦いであったからだ。
魔剣使いの戦いを見た事が無い彼等であればなおさらであろう。
普通の人間から見た心輝達はまさしく超人と呼べる存在であった。
「にしても……三人でようやく王っぽいのを倒せるのかぁ~まだまだだね、アタシ達」
「しょうがないじゃない……勇や茶奈の成長がおかしいのよ」
激闘を忘れるかの様に談笑に更け、笑いを誘い合う。
力の殆ど残っていない心輝も、息も絶え絶えながら笑みを零していた。
「ガアアアアアアア!!」
その瞬間、突然メズリが飛び上がる様に起き上がり、彼等の動揺を買う。
ギュンッ―――
ドォーーーーーーーーーンッ!!
「ギャバッ!?」
突然、轟音と共に何かが落ち……起き上がったメズリの体を押し潰した。
悲鳴とも、断末魔とも、ただの空気の漏れた音とも取れる声を上げ、ぐしゃりと潰れるメズリの体。
既にその原型は留めておらず、赤い血が滲み出るのみ。
メズリを押し潰したのは……剣聖の巨体。
「おう、おめぇら随分面白そうな事してたじゃねぇか」
「け、剣聖さん……見てたんですか?」
三人も剣聖の突然の登場に驚き目を丸くするばかり。
「たりめぇだ……だが面白かったぜぇ、随分成長したじゃあねぇか。 こいつぁあの勇ですら手を焼く位の実力者だぜ?」
三人掛かりとはいえ……勇ですら苦戦するであろう相手を倒せた事に、彼等は喜びを禁じ得ない様子を見せていた。
「へ、へへ……やったぜ……剣聖さんに褒められた……」
「馬鹿野郎……苦戦してるくらいじゃまだまだって事くらいわかりやぁがれ」
「うへぇ……剣聖さん手厳しー」
再び和気藹々とした空気を取り戻した心輝達……激戦を終え、彼等の役目はしっかり果たされた。
後は勇達が救出した乗客乗員達と、茶奈と研究員達が戻れば全てが解決する。
その考えが脳裏によぎり、彼等を笑顔にしていた。
だが、その島の奥底で……何かが蠢いている事に気付く者はまだ誰も居ない……。
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その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
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