時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
580 / 1,197
第二十一節「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」

~震撼させて、巨影~

しおりを挟む
 けたたましい音が絶えず長い通路に鳴り響く。

 走れない者は若い物に背負われ、小さな子供は抱きかかえられ……皆が協力し合いながら細い通路を大勢の人間達が駆けていく。

 先頭を走るジョゾウが周囲に警戒しつつ前を走り、曲がり角等に注意を払う。

時折、勇が別れ道等を警戒し入り乱れる様に走る姿が見受けられた。



 どれだけ走っただろうか……周囲を走る人々も疲れを見せ始め、徐々にペースが落ちていく。
 急ぐ事も大事だが、100人を超えるこの人数を分散させる事は非常に危険……ジョゾウと勇が声を掛け合いペースのコントロールを行っていく。

「ジョゾウさん、後方が少し遅れてる。 ペースを落として下さい」
「了解した。 各々方、無理せず行こうぞ」

 疲れへたり込みそうな者を庇う様に肩を取り、勇が前進を促す。
 止まる事は、後から来るかもしれない魔者との遭遇の確率が増し、非常に危険である。
 
 余裕がある者に手助けする事を促しながら、疲れをおして人々の進みを後押しする。



 すると、そんな彼等の前にとうとう入口前のT字路が姿を現した。



「間も無く外に御座る!! 外へ行けば助けに来た軍人達が待っておる故、安心召されよ!!」

 途端、歓喜の声が漏れ……疲れた表情を浮かべていた人々の顔に笑顔が蘇っていく。

 ジョゾウが曲がり角で彼等を送り出す様に立ち、腕を絶えず進路へ向けて奮う。
 それに応える様に人々が島の入口へと次々に進んでいった。



 すると、間も無くジョゾウの背後から足音が聞こえ……咄嗟に振り向いた。



「ジョゾウさん……?」
「おお、茶奈殿では御座らぬか!!」

 そこに現れたのは、研究員達を連れていた茶奈であった。

「良かった、間に合いました……心輝さんが私達を庇ってくれて……」
「そうであったか……しかしその問題は既に解決済みよ。 心配めさるな」

 既に先程、インカムを通してメズリ打倒完了の声が届いていた。
 勿論それは茶奈も知る所であるが、彼女の気持ちを察したのか……ジョゾウが優しく応え彼女の心を慰める。

「茶奈殿も先に行かれよ、ここは拙僧達に任せるのだ」
「はい、ありがとうございます!!」

 ジョゾウの好意を受け、研究員共々乗客達の中に紛れて茶奈も空洞の外へと走っていった。
 そして遅れて人々の末端が見え始め……勇も曲がり角から姿を現した。

「勇殿、茶奈殿が先に行き申した。 後方は拙僧に任せ先に行かれよ」
「わかりました、ジョゾウさんも無理せず」
「はは、ここまで来て無理なぞ出来ようもなかろうぞ」

 そんな軽い冗談を交わし、勇が子供を抱えながらジョゾウの前を過ぎ去っていく。
 それを見送り……ジョゾウは遅れた者達を励ます様に声を上げ、彼等の進みを促していた。



 乗客達が空洞からちらほらと姿を現し、それを迎える様に軍人達が彼等の下へと駆け寄っていく。
 そんな様子を遠巻きから眺める心輝達……その目に映ったのは茶奈と勇の姿。
 二人の姿が見えた事で、ようやく事の終わりを実感し大きな溜め息を吐き出した。

「ようやく終わりね」
「だぁーもう疲れた……早くベッドで寝たいぜ……」

 途端心輝がゴロリと地面に寝転がり、今にも寝そうな程に眠たげな表情を見せていた。
 「んもう」とあずーが声を漏らすが……彼女も安堵感から、それ以上の事は何も言う事は無かった。

「俺ぁどうするかぁ……ちっとここに残って探しモンでもいいが……戦争後の記録しかねぇんじゃ話になんねぇな」

 剣聖が求めるのは古代の戦争の発端である創世伝説の事……その後の話ともなれば既に彼にとっての興味の範疇外なのだ。
 もっとも、物珍しい物もある事を知っているからこそ、そちらを求めたいという気持ちはあるようだが。



 別動隊であった者達がこうして再び相まみえ、無事を確認する。





 全てはそれで終わった……―――かと思われた。





ゴゴゴゴ……



 突如鳴り響く轟音と振動……それに気付き、不意に気付き勇達が足を止める。

「なんだっ!?」



 それは彼等が居る場所から離れた場所……入口の空洞よりも大きな、何も無かった筈の穴。
 奥が振動で崩れ始め、突如人口の壁が現れた。

 壁が上に開き始めると……その奥から巨大な影が姿を現す。



 そして途端……その巨大な影が轟音を鳴り響かせ、巨体とは思えぬ速さで空洞から飛び出した。



 勇達の目の前に突如現れた黒い影。
 太陽の光を逆光に、黒の巨体を晒し空を飛ぶ姿に誰もが戦慄を憶えた。



 その巨体は形容するのであれば……まさしく『ロボット』というべき存在。



 鋼色の光沢を持ったボディに、短い四脚と四本の腕を持つその巨体。
 そしてその頂点部に身構えるのは、カラクラ族と思わしき一人の魔者。

 余りの衝撃的な状況に、その場に居合わせた全員の顔が引きつり強張る。
 脅え逃げ惑う者も居る中、勇達を含めた殆どの人間がその場に立ち尽くす他なかった。

「なんだ……あれはッ!?」

 目を見張る様に見開き、その巨体が近づいてくる様を見つめる勇達。



 だがその途端、その巨体の持つ腕部が勇達と心輝達へ向けられた。

「あれは……やべぇぞオッ!!」
「ううーーーーー!!」

 剣聖すら大声を張り上げ、自身の前に巨大な命力の盾を展開する。
 それに合わせて茶奈も精一杯の命力の盾を正面に向けて広げた。

 その瞬間、巨体の腕から弾丸が放たれる。
 光の筋を作り、連続で飛び出す光の弾丸が彼等に襲い掛かった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ

冬月光輝
恋愛
婚約者である伯爵家の嫡男のマルサスには病弱な幼馴染がいる。 親同士が決めた結婚に最初から乗り気ではなかった彼は突然、私に土下座した。 「すまない。健康で強い君よりも俺は病弱なエリナの側に居たい。頼むから婚約を破棄してくれ」 あまりの勢いに押された私は婚約破棄を受け入れる。 ショックで暫く放心していた私だが父から新たな縁談を持ちかけられて、立ち直ろうと一歩を踏み出した。 「エリナのやつが、他の男と婚約していた!」 そんな中、幼馴染が既に婚約していることを知ったとマルサスが泣きついてくる。 さらに彼は私に復縁を迫ってくるも、私は既に第三王子と婚約していて……。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

とある侯爵令息の婚約と結婚

ふじよし
恋愛
 ノーリッシュ侯爵の令息ダニエルはリグリー伯爵の令嬢アイリスと婚約していた。けれど彼は婚約から半年、アイリスの義妹カレンと婚約することに。社交界では格好の噂になっている。  今回のノーリッシュ侯爵とリグリー伯爵の縁を結ぶための結婚だった。政略としては婚約者が姉妹で入れ替わることに問題はないだろうけれど……

私がネズミになって世界の行方を見守ってみた

南野海風
ファンタジー
「俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで」の続きになります。ざっとでいいので先に向こうを読んでください。

処理中です...