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第二十三節「驚異襲来 過ち識りて 誓いの再決闘」
~殺 意 咆 哮~
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魔特隊本部地下に広がる大きな空間。
魔剣や命力を使った訓練に耐えられる様に設計されたその場所は、今までに何度も彼等の訓練の役に立ってきた。
その壁や床に刻まれた無数の傷跡は彼等の訓練の証……。
そして今また、新たな傷跡を残さんと……一人の戦士と二人の戦士見習いが対峙する。
離れた場所に立つのは仲間達、遅れてやってきた福留、事態を聞きつけたカプロやズーダー達、物珍しさでやってきたニャラといった多くの面々であった。
「勇さんとオバカ二人組がマジモードって本当ッスか?」
「あぁ、どうやら本気で行くらしいぜ。 傷付けない様に得物は前と同じ竹刀だけどよぉ」
アンディとナターシャが初めて出会った時と同様、勇の手に握られたのは二本の竹刀。
以前と同じかと思われたが……唯一違うのは、アンディとナターシャもまた携えた魔剣を逆刃に握っている事。
もちろん命力が乗る以上、峰打ちであろうと直撃すれば大ダメージは免れない。
例え魔装を纏っていても、全力で叩けば防ぎきれる事は無いだろう。
殺意では無く戦意を向ける為……以前とは違う、戦いに向けた意気込みと己の在り方を示そうとした二人の選択であった。
「いいか二人共……武器はこれだが、俺が乗せるのは殺意……それを、お前達が全力で止めるんだ」
「はいっ!!」
「俺はこれからお前達に全ての力をぶつける。 俺のありったけの全力を、お前達の力を以って止めてみせろ!!」
「うんっ!!」
そう言い放つと……勇は体くまなくに命力を滾らせ、その力を細胞の一つ一つへ振り撒く様にイメージをし始めた。
少ないながらも、目に見えない粒子程に細かく霧状となった命力が全身を駆け巡り……彼の体に力を与えていく。
ビチッ……ビチチッ……!!
それは勇の衣服が張る音……それ程までに命力によって強化された肉体が膨れ上がり、彼の体を徐々に大きくしていく。
それは空島で見せた身体強化法。
命力で物理的に肉体を鍛え上げ、肉体そのものが持つ潜在能力すらをも超えた力を出させる活性法。
だが、それと同時に自身の肉体にも多大な負担を与えかねないこの方法……瀬玲が控えているからこそ出来る、彼が持ちうる最高の『ブースト』であった。
「おぉぉォォォ……ッ!!」
「うぁ……」
二人の声から思わず怯む声が漏れる程に放たれた気迫は凄まじく、唖然とする二人の額から意図しない冷や汗が流れ落ちていた。
周囲に立つ者達も同様……彼の気迫によって震える空間そのものが動揺を誘う。
ズズズ……!!
空気の振動によって生まれた極小の共鳴音が、彼等の耳に意識させず入り込み……全てが震える様な感覚を呼び起こさせていたのだ。
異様な状況に、福留を除いた非戦闘員の者達が堪らず尻餅を突いていく。
「これが……今の勇君……!?」
久しく勇の戦いを見ていない福留は、今の圧倒的な殺意の塊となった勇の姿を前に……恐怖を覚えざるを得なかった。
それ程までに、広場に立つ勇の姿は……異常だったのだ。
身体バランスを崩さない姿……だが、それぞれの部位が太く硬く膨れ上がり、筋骨隆々の姿を見せつける。
「ミシミシ」と筋肉の音を立てんばかりに太く引き締まったその肉体は、全身が一回り大きくなる程。
鋭く、厳しい視線を向け……僅かな命力すら漏らさず自身の内に閉じ込めたその姿は、茶奈のフルクラスタとは真逆の究極体とも言えるモノであった。
「いいか……よク聞け……」
強張った口から放たれる、勇の理性の一言。
一語一句を聞き漏らさない様、アンディとナターシャが聞き耳を立てる。
「途中でヤめるつもりは無イ……俺を止めなケれば……俺がお前達を殺ス……!!」
ビリビリとした空気……それはいつか勇とギオが戦った時にも似た感覚。
膨大な殺意が誰彼構わず襲い掛かり、戦闘部隊員である心輝達をも怯ませる程に圧倒的な重圧を伴っていた。
それはまるで、かつて剣聖がカラクラの里で行った……殺意の重圧。
押し潰されそうな程に強烈な意思の奔流を前に、負けじとアンディとナターシャの膝に力が籠る。
敵意は……殺意は……その時、ハッキリと二人へと向けられた。
『全力で殺シに掛かって来おいィッ!!!!』
その一瞬が突如訪れた。
勇の叫びがきっかけとなり、対峙した二人が彼へと向けて同時に飛び出したのだ。
共に怯む事無く、戦う意思を以って力を纏わせた魔剣を鋭く走らせていく。
残光が二本の魔剣から尾を引き、勇へ向けて軌跡を描きながら襲い掛かった。
魔剣に篭められた力は明らかな戦意の塊……収束された、防御の出来ない破壊の一閃である。
「「アアアーーーーーーッ!!」」
以前の彼等には無かった、純粋でハッキリとした命力の滞留……それは二人の成長の証。
左右から同時に襲い掛かる明らかな戦意を前に……防御が出来ない事を悟った勇がその太い足で大地を叩き、力強い大きなバックステップを踏んだ。
一瞬の判断で躱される事となったアンディとナターシャの攻撃。
だが、彼等の勢いはなお止まる事は無い。
二人の交錯する意思が魔剣を介して加速していく。
「「だぁーーーッ!!」」
後ろへ跳ねた勇の勢いにも負けず劣らずの速度で一気に距離を詰めていく二人。
等間隔を開けた左右からの連携攻撃……立体的に多方向から相手の死角を突いていく、それが二人の選んだ対抗策であった。
だが、それすらも勇には全てが見えていた。
二刃が襲い掛かろうとした瞬間、彼の視界に映る全てが時を止めた。
二人の体の動き、魔剣の軌道、そこから読み取れる次の行動予測……一瞬で全てを網羅した勇は、思いも寄らぬ行動に移したのだった。
筋肉が張る事で行動に制限が出る……そう考える事もあるのかもしれない。
だが、決してそんな事は無い。
筋肉、血管、神経は剛柔伸縮自在の成体物質……電気信号によって伝えられて形を多様に変えるその部位は、扱い方次第でその強度を極限にまで変化させる事が可能なのだ。
まるでそれは命力と同じ特性。
そして命力によって強化されたそれは……もはや鉄や岩をも凌駕する強度と、大型原動機の駆動力をも凌駕する柔軟性を再現する事が可能なのである。
そこから導き出された答えは―――前進。
二人の攻撃の隙間を縫う様に、勇の体が飛び込まれていく。
飛び掛かる二人の間をすり抜け、残像を伴い駆け抜ける。
神速……それが周囲で見る者達が一同にして形容した彼の速力であった。
―――はや……い!?―――
一瞬にして互いの懐へ潜り込まれた時……二人の意識だけが彼の姿を認識し、目だけが追う。
だが次の瞬間、二人の腹部へ意図しない強い衝撃が走った。
意識すら間に合わぬ一撃……二人の腹部に勇の打撃が見舞われていたのだ。
パパァーーーーーンッ!!
「うああっ!!」
「あぐっ!?」
しなる竹刀から生まれた衝撃が二人の体を大きく跳ね飛ばし、勢いのまま落下した床から弾かれる様にその身を低く宙に舞わせた。
だがそれでも二人は怯まない。
戦う事を決めたから。
強くなりたいと想ったから。
そして自分達の為に、諸刃の剣とも言える強化法を用いて対峙してくれた恩師が目の前に居るから。
ザザザッ……
跳ねる体から手を伸ばし、床に指を走らせる。
爪を立てて強引に勢いを殺し、その足で力強く叩いた。
跳ね飛ばされた事など意にも介せず、二人が同時に佇んだままの勇へと飛び込んでいく。
左右からの挟み撃ち……例え鋭い感覚を持っていようと、認識外からの攻撃に対処するのは至難の技。
相手が以前の二人や雑兵程度であればまだしも、相手は成長したアンディとナターシャ……その実力は決して比較になどなりはしない。
だが……その戦いを見る者全てが息を飲み、起きた事実を目の当たりにする事となる。
アンディとナターシャが繰り出す連続斬撃。
残光を引いた軌跡が勇を狙い、幾重もの光の網を形成していく。
それはまるで蜘蛛の糸が如く。
命力によって生まれた残光は消えるのに僅かな時間が掛かる。
二人が勇を狙い刻んだ軌跡はハッキリと大気中に残り、刻むごとにその鋭利さを増していた。
それが形成される程に……勇は全ての攻撃を躱し、いなしていたのだ。
魔剣や命力を使った訓練に耐えられる様に設計されたその場所は、今までに何度も彼等の訓練の役に立ってきた。
その壁や床に刻まれた無数の傷跡は彼等の訓練の証……。
そして今また、新たな傷跡を残さんと……一人の戦士と二人の戦士見習いが対峙する。
離れた場所に立つのは仲間達、遅れてやってきた福留、事態を聞きつけたカプロやズーダー達、物珍しさでやってきたニャラといった多くの面々であった。
「勇さんとオバカ二人組がマジモードって本当ッスか?」
「あぁ、どうやら本気で行くらしいぜ。 傷付けない様に得物は前と同じ竹刀だけどよぉ」
アンディとナターシャが初めて出会った時と同様、勇の手に握られたのは二本の竹刀。
以前と同じかと思われたが……唯一違うのは、アンディとナターシャもまた携えた魔剣を逆刃に握っている事。
もちろん命力が乗る以上、峰打ちであろうと直撃すれば大ダメージは免れない。
例え魔装を纏っていても、全力で叩けば防ぎきれる事は無いだろう。
殺意では無く戦意を向ける為……以前とは違う、戦いに向けた意気込みと己の在り方を示そうとした二人の選択であった。
「いいか二人共……武器はこれだが、俺が乗せるのは殺意……それを、お前達が全力で止めるんだ」
「はいっ!!」
「俺はこれからお前達に全ての力をぶつける。 俺のありったけの全力を、お前達の力を以って止めてみせろ!!」
「うんっ!!」
そう言い放つと……勇は体くまなくに命力を滾らせ、その力を細胞の一つ一つへ振り撒く様にイメージをし始めた。
少ないながらも、目に見えない粒子程に細かく霧状となった命力が全身を駆け巡り……彼の体に力を与えていく。
ビチッ……ビチチッ……!!
それは勇の衣服が張る音……それ程までに命力によって強化された肉体が膨れ上がり、彼の体を徐々に大きくしていく。
それは空島で見せた身体強化法。
命力で物理的に肉体を鍛え上げ、肉体そのものが持つ潜在能力すらをも超えた力を出させる活性法。
だが、それと同時に自身の肉体にも多大な負担を与えかねないこの方法……瀬玲が控えているからこそ出来る、彼が持ちうる最高の『ブースト』であった。
「おぉぉォォォ……ッ!!」
「うぁ……」
二人の声から思わず怯む声が漏れる程に放たれた気迫は凄まじく、唖然とする二人の額から意図しない冷や汗が流れ落ちていた。
周囲に立つ者達も同様……彼の気迫によって震える空間そのものが動揺を誘う。
ズズズ……!!
空気の振動によって生まれた極小の共鳴音が、彼等の耳に意識させず入り込み……全てが震える様な感覚を呼び起こさせていたのだ。
異様な状況に、福留を除いた非戦闘員の者達が堪らず尻餅を突いていく。
「これが……今の勇君……!?」
久しく勇の戦いを見ていない福留は、今の圧倒的な殺意の塊となった勇の姿を前に……恐怖を覚えざるを得なかった。
それ程までに、広場に立つ勇の姿は……異常だったのだ。
身体バランスを崩さない姿……だが、それぞれの部位が太く硬く膨れ上がり、筋骨隆々の姿を見せつける。
「ミシミシ」と筋肉の音を立てんばかりに太く引き締まったその肉体は、全身が一回り大きくなる程。
鋭く、厳しい視線を向け……僅かな命力すら漏らさず自身の内に閉じ込めたその姿は、茶奈のフルクラスタとは真逆の究極体とも言えるモノであった。
「いいか……よク聞け……」
強張った口から放たれる、勇の理性の一言。
一語一句を聞き漏らさない様、アンディとナターシャが聞き耳を立てる。
「途中でヤめるつもりは無イ……俺を止めなケれば……俺がお前達を殺ス……!!」
ビリビリとした空気……それはいつか勇とギオが戦った時にも似た感覚。
膨大な殺意が誰彼構わず襲い掛かり、戦闘部隊員である心輝達をも怯ませる程に圧倒的な重圧を伴っていた。
それはまるで、かつて剣聖がカラクラの里で行った……殺意の重圧。
押し潰されそうな程に強烈な意思の奔流を前に、負けじとアンディとナターシャの膝に力が籠る。
敵意は……殺意は……その時、ハッキリと二人へと向けられた。
『全力で殺シに掛かって来おいィッ!!!!』
その一瞬が突如訪れた。
勇の叫びがきっかけとなり、対峙した二人が彼へと向けて同時に飛び出したのだ。
共に怯む事無く、戦う意思を以って力を纏わせた魔剣を鋭く走らせていく。
残光が二本の魔剣から尾を引き、勇へ向けて軌跡を描きながら襲い掛かった。
魔剣に篭められた力は明らかな戦意の塊……収束された、防御の出来ない破壊の一閃である。
「「アアアーーーーーーッ!!」」
以前の彼等には無かった、純粋でハッキリとした命力の滞留……それは二人の成長の証。
左右から同時に襲い掛かる明らかな戦意を前に……防御が出来ない事を悟った勇がその太い足で大地を叩き、力強い大きなバックステップを踏んだ。
一瞬の判断で躱される事となったアンディとナターシャの攻撃。
だが、彼等の勢いはなお止まる事は無い。
二人の交錯する意思が魔剣を介して加速していく。
「「だぁーーーッ!!」」
後ろへ跳ねた勇の勢いにも負けず劣らずの速度で一気に距離を詰めていく二人。
等間隔を開けた左右からの連携攻撃……立体的に多方向から相手の死角を突いていく、それが二人の選んだ対抗策であった。
だが、それすらも勇には全てが見えていた。
二刃が襲い掛かろうとした瞬間、彼の視界に映る全てが時を止めた。
二人の体の動き、魔剣の軌道、そこから読み取れる次の行動予測……一瞬で全てを網羅した勇は、思いも寄らぬ行動に移したのだった。
筋肉が張る事で行動に制限が出る……そう考える事もあるのかもしれない。
だが、決してそんな事は無い。
筋肉、血管、神経は剛柔伸縮自在の成体物質……電気信号によって伝えられて形を多様に変えるその部位は、扱い方次第でその強度を極限にまで変化させる事が可能なのだ。
まるでそれは命力と同じ特性。
そして命力によって強化されたそれは……もはや鉄や岩をも凌駕する強度と、大型原動機の駆動力をも凌駕する柔軟性を再現する事が可能なのである。
そこから導き出された答えは―――前進。
二人の攻撃の隙間を縫う様に、勇の体が飛び込まれていく。
飛び掛かる二人の間をすり抜け、残像を伴い駆け抜ける。
神速……それが周囲で見る者達が一同にして形容した彼の速力であった。
―――はや……い!?―――
一瞬にして互いの懐へ潜り込まれた時……二人の意識だけが彼の姿を認識し、目だけが追う。
だが次の瞬間、二人の腹部へ意図しない強い衝撃が走った。
意識すら間に合わぬ一撃……二人の腹部に勇の打撃が見舞われていたのだ。
パパァーーーーーンッ!!
「うああっ!!」
「あぐっ!?」
しなる竹刀から生まれた衝撃が二人の体を大きく跳ね飛ばし、勢いのまま落下した床から弾かれる様にその身を低く宙に舞わせた。
だがそれでも二人は怯まない。
戦う事を決めたから。
強くなりたいと想ったから。
そして自分達の為に、諸刃の剣とも言える強化法を用いて対峙してくれた恩師が目の前に居るから。
ザザザッ……
跳ねる体から手を伸ばし、床に指を走らせる。
爪を立てて強引に勢いを殺し、その足で力強く叩いた。
跳ね飛ばされた事など意にも介せず、二人が同時に佇んだままの勇へと飛び込んでいく。
左右からの挟み撃ち……例え鋭い感覚を持っていようと、認識外からの攻撃に対処するのは至難の技。
相手が以前の二人や雑兵程度であればまだしも、相手は成長したアンディとナターシャ……その実力は決して比較になどなりはしない。
だが……その戦いを見る者全てが息を飲み、起きた事実を目の当たりにする事となる。
アンディとナターシャが繰り出す連続斬撃。
残光を引いた軌跡が勇を狙い、幾重もの光の網を形成していく。
それはまるで蜘蛛の糸が如く。
命力によって生まれた残光は消えるのに僅かな時間が掛かる。
二人が勇を狙い刻んだ軌跡はハッキリと大気中に残り、刻むごとにその鋭利さを増していた。
それが形成される程に……勇は全ての攻撃を躱し、いなしていたのだ。
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