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第三十四節「鬼影去りて 空に神の憂鬱 自由の旗の下に」
~合同、図る~
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それは数日前の出来事。
まだアルクトゥーンがスイスに辿り着く前の頃、その事件は起きた。
「は? 合コン……?」
そう唸りにも近い声を上げたのは瀬玲。
安居料理長達の開く食堂、カフェエリア。
ここで四人の女子が集まりお茶会を開いていた。
そんな話の仕掛け人はと言えば、彼女の友人の三人。
吉岡 美羽と国井 一花と冴木 友奈……瀬玲の高校時代からの友人である。
「そそ! ほら、この艦って殆ど人の入れ替わり無いじゃん? だから珍しい出会いも少なくてさぁ」
「でも外国の人とかも要るし、折角だからいい人いないかなぁって」
そう、彼女達は現在、絶賛恋人募集中である。
この艦に乗る前もマッチングアプリを使用したりなんなりで恋人を探そうとした事もあったらしく。
とは言うもののイマイチぱっとせず、現在も独り身なのだとか。
だがそこで彼女達が目を付けたのは、グランディーヴァの隊員達だ。
艦内の各所で目立たず働く艦内作業員達、国連所属員とあって日本人以外の方が多い。
中には彼女達基準で見てイケメンと言える男性も居る様で、出会いの幅は意外と大きかった。
ただ、その人達に会う為に立ち入り禁止区域に入る訳にもいかない訳で。
そこで瀬玲に白羽の矢が立ったのである。
瀬玲ならそんな人達にも声を掛ける事が出来るし、集める事も容易だろう。
感性も近いので、見誤る事も無いと踏んでの話題だったのだ。
しかし彼女達はそこで大きな過ちを犯していた事に今、気付く。
「へぇ、イイ事聞いちゃった」
「あ、もしかしてセリも来ちゃう……?」
「当たり前じゃん、そんな人が居るなら当然行くに決まってるし!」
たちまち瀬玲の顔に「ニタリ」とした怪しい笑みが浮かび上がる。
そんな返事が返ったと同時に、「しまったぁ~」と友人達が頭を落とした。
瀬玲が行かないはずも無かったのだ。
そういう事に飢えているのは彼女も同じなのだから。
いやむしろ彼女の方が抑制された期間が長かったからこそ、誰よりも強いかもしれない。
「セリにはイシュライトさんがいるじゃん……」
「は? イシュはそんなんじゃないし。 そもそも種族が違うんだからそういうのは無理だって」
「えーあんなかっこよくて優しいのにぃ」
何を隠そう、イシュライトの訓練見学者のメインは彼女ら三人。
彼の美しいと言わんばかりの体の動きや仕草、そして相対した時見せる優しさと気遣い。
そこにもはや顔など関係無いと、三人は彼にぞっこんなのである。
もちろんアイドル的な立場としてであり、恋愛とはまた別の視点であるが。
しかし瀬玲は知っている。
それは確かにイシュライトの優しさではあるが、彼は戦えない女性に興味は持たない。
幾ら黄色い声援を送っても靡きはしないし、精々挨拶を返す程度なのだと。
「じゃあディックさんは?」
「ディックは軽すぎるからダメかな。 歳も結構離れてるし」
「私はあの人いいって思うけどなー」
ディックも意外と人気だ。
顔付きと体のバランスが整っているのに加え、白人特有の体格が功を奏している。
軽くともどこか気の回し方に紳士らしさを感じるのだとか。
しかし瀬玲は知っている。
ディックはただの女たらしで、いざ手が出せそうになると狼になるのだという事を。
あと近くで見ると結構髭の剃り方が雑なのでそこがNGという事も。
ちなみに少し体臭もあるそうだ。
「なんでそんな事知ってるのぉ……」
「仕事の関係上よ。 それ以上は機密だから言えないわ」
「体臭も機密なの……」
ある意味で言えば個人的な機密なのは間違い無いだろう。
何故瀬玲がそんな事を知っているかはさておき。
彼女を止める事も出来ないと悟った三人はしぶしぶ参加を認めるのだった。
そしてアルクトゥーン同伴者会主催の合同コンパの計画が始まりを迎える。
だがそれは彼女達の間だけで済む訳ではない。
合コンとはつまり男女のマッチングの場。
女が居れば男も居なければならないのだから。
この話題は女性サイドのみに尽きず、男性サイドでも巻き起こっていた。
「は? 合コン……?」
そう戸惑いにも足る声を上げたのは勇。
居住区階下、多目的スペースの会議室フロア。
瀬玲達の居るカフェエリアの大体真下辺り。
ここで二人の男が訓練中の勇を引っ張り出し、ちょっとした相談を持ち掛けていたのだ。
話の仕掛け人は前田と渡部。
互いにいじらしい笑みを浮かべて勇を囲む。
「そうなんだよ。 実は吉岡達とそんな話になってな!!」
「折角だからレッツパーリナイするべきだと思った訳だ。 そこでお前に相談したい事があるってワケよ」
「それでなんで俺なんだよ……」
たちまち勇の眉間にシワが寄り、口元が堪らずヒクつく。
それも当然だろう、こんな話題に一番疎いと言えるのが勇という男。
持ち掛けられてもただただ困惑する事請け合いだ。
それに今彼には茶奈が居る。
合コンなど本来縁が無い存在な訳で。
「シンは今機密行動中で会えないんだろ? ならお前しか頼るしかねぇじゃん!?」
もちろんそれは心輝が立て続けに怪我した事を知られない為の嘘の建前だ。
現在心輝は自室にてレンネィの看病の下で療養中。
前田と渡部はオタク気質ともあって交友関係が言う程広くは無い。
そこで勇に白羽の矢が立ったのである。
今回の事の発端はこうだ。
当然、愛だの恋だのといった事に疎遠な前田と渡部はいつもの様にゲームや漫画に塗れた一日を過ごしていた。
だがそんな二人にとうとう春が訪れる。
なんと吉岡達から直接、合コン計画の打診があったのだ。
彼等も男だ。
そうともなれば期待せずには居られない。
だからこそ、彼等は真の人としての春を得る為にも今こうして奔走しているのだ。
勇の下にだけ、であるが。
しかし二人がこう動くのも吉岡達の計画通りだった。
実の所、前田と渡部は平凡以下の様相しか持ち合わせていない。
彼女達の狙いでも無いのだ。
つまり二人はただの人数合わせ。
釣果を得る為の撒き餌に過ぎない。
全ては自分達の明るい未来の為に。
時として女はこんな時にこそ冷徹になれる。
そう、恋愛とは争奪戦であり戦争だという事を男よりも心から強く理解しているからである。
撒き餌に釣られ、活魚が寄ってくる。
それを虎視眈々と狙うは若き雌豹達。
彼女達の思惑は果たして成就するのか。
前田と渡部は青春を再び取り戻す事が出来るのか。
勇達に降りかからんとする戦いの炎は、彼等が振り払う事も叶わぬ程に強く激しく燃え上がろうとしていた。
当人の意思など構う事無く。
まだアルクトゥーンがスイスに辿り着く前の頃、その事件は起きた。
「は? 合コン……?」
そう唸りにも近い声を上げたのは瀬玲。
安居料理長達の開く食堂、カフェエリア。
ここで四人の女子が集まりお茶会を開いていた。
そんな話の仕掛け人はと言えば、彼女の友人の三人。
吉岡 美羽と国井 一花と冴木 友奈……瀬玲の高校時代からの友人である。
「そそ! ほら、この艦って殆ど人の入れ替わり無いじゃん? だから珍しい出会いも少なくてさぁ」
「でも外国の人とかも要るし、折角だからいい人いないかなぁって」
そう、彼女達は現在、絶賛恋人募集中である。
この艦に乗る前もマッチングアプリを使用したりなんなりで恋人を探そうとした事もあったらしく。
とは言うもののイマイチぱっとせず、現在も独り身なのだとか。
だがそこで彼女達が目を付けたのは、グランディーヴァの隊員達だ。
艦内の各所で目立たず働く艦内作業員達、国連所属員とあって日本人以外の方が多い。
中には彼女達基準で見てイケメンと言える男性も居る様で、出会いの幅は意外と大きかった。
ただ、その人達に会う為に立ち入り禁止区域に入る訳にもいかない訳で。
そこで瀬玲に白羽の矢が立ったのである。
瀬玲ならそんな人達にも声を掛ける事が出来るし、集める事も容易だろう。
感性も近いので、見誤る事も無いと踏んでの話題だったのだ。
しかし彼女達はそこで大きな過ちを犯していた事に今、気付く。
「へぇ、イイ事聞いちゃった」
「あ、もしかしてセリも来ちゃう……?」
「当たり前じゃん、そんな人が居るなら当然行くに決まってるし!」
たちまち瀬玲の顔に「ニタリ」とした怪しい笑みが浮かび上がる。
そんな返事が返ったと同時に、「しまったぁ~」と友人達が頭を落とした。
瀬玲が行かないはずも無かったのだ。
そういう事に飢えているのは彼女も同じなのだから。
いやむしろ彼女の方が抑制された期間が長かったからこそ、誰よりも強いかもしれない。
「セリにはイシュライトさんがいるじゃん……」
「は? イシュはそんなんじゃないし。 そもそも種族が違うんだからそういうのは無理だって」
「えーあんなかっこよくて優しいのにぃ」
何を隠そう、イシュライトの訓練見学者のメインは彼女ら三人。
彼の美しいと言わんばかりの体の動きや仕草、そして相対した時見せる優しさと気遣い。
そこにもはや顔など関係無いと、三人は彼にぞっこんなのである。
もちろんアイドル的な立場としてであり、恋愛とはまた別の視点であるが。
しかし瀬玲は知っている。
それは確かにイシュライトの優しさではあるが、彼は戦えない女性に興味は持たない。
幾ら黄色い声援を送っても靡きはしないし、精々挨拶を返す程度なのだと。
「じゃあディックさんは?」
「ディックは軽すぎるからダメかな。 歳も結構離れてるし」
「私はあの人いいって思うけどなー」
ディックも意外と人気だ。
顔付きと体のバランスが整っているのに加え、白人特有の体格が功を奏している。
軽くともどこか気の回し方に紳士らしさを感じるのだとか。
しかし瀬玲は知っている。
ディックはただの女たらしで、いざ手が出せそうになると狼になるのだという事を。
あと近くで見ると結構髭の剃り方が雑なのでそこがNGという事も。
ちなみに少し体臭もあるそうだ。
「なんでそんな事知ってるのぉ……」
「仕事の関係上よ。 それ以上は機密だから言えないわ」
「体臭も機密なの……」
ある意味で言えば個人的な機密なのは間違い無いだろう。
何故瀬玲がそんな事を知っているかはさておき。
彼女を止める事も出来ないと悟った三人はしぶしぶ参加を認めるのだった。
そしてアルクトゥーン同伴者会主催の合同コンパの計画が始まりを迎える。
だがそれは彼女達の間だけで済む訳ではない。
合コンとはつまり男女のマッチングの場。
女が居れば男も居なければならないのだから。
この話題は女性サイドのみに尽きず、男性サイドでも巻き起こっていた。
「は? 合コン……?」
そう戸惑いにも足る声を上げたのは勇。
居住区階下、多目的スペースの会議室フロア。
瀬玲達の居るカフェエリアの大体真下辺り。
ここで二人の男が訓練中の勇を引っ張り出し、ちょっとした相談を持ち掛けていたのだ。
話の仕掛け人は前田と渡部。
互いにいじらしい笑みを浮かべて勇を囲む。
「そうなんだよ。 実は吉岡達とそんな話になってな!!」
「折角だからレッツパーリナイするべきだと思った訳だ。 そこでお前に相談したい事があるってワケよ」
「それでなんで俺なんだよ……」
たちまち勇の眉間にシワが寄り、口元が堪らずヒクつく。
それも当然だろう、こんな話題に一番疎いと言えるのが勇という男。
持ち掛けられてもただただ困惑する事請け合いだ。
それに今彼には茶奈が居る。
合コンなど本来縁が無い存在な訳で。
「シンは今機密行動中で会えないんだろ? ならお前しか頼るしかねぇじゃん!?」
もちろんそれは心輝が立て続けに怪我した事を知られない為の嘘の建前だ。
現在心輝は自室にてレンネィの看病の下で療養中。
前田と渡部はオタク気質ともあって交友関係が言う程広くは無い。
そこで勇に白羽の矢が立ったのである。
今回の事の発端はこうだ。
当然、愛だの恋だのといった事に疎遠な前田と渡部はいつもの様にゲームや漫画に塗れた一日を過ごしていた。
だがそんな二人にとうとう春が訪れる。
なんと吉岡達から直接、合コン計画の打診があったのだ。
彼等も男だ。
そうともなれば期待せずには居られない。
だからこそ、彼等は真の人としての春を得る為にも今こうして奔走しているのだ。
勇の下にだけ、であるが。
しかし二人がこう動くのも吉岡達の計画通りだった。
実の所、前田と渡部は平凡以下の様相しか持ち合わせていない。
彼女達の狙いでも無いのだ。
つまり二人はただの人数合わせ。
釣果を得る為の撒き餌に過ぎない。
全ては自分達の明るい未来の為に。
時として女はこんな時にこそ冷徹になれる。
そう、恋愛とは争奪戦であり戦争だという事を男よりも心から強く理解しているからである。
撒き餌に釣られ、活魚が寄ってくる。
それを虎視眈々と狙うは若き雌豹達。
彼女達の思惑は果たして成就するのか。
前田と渡部は青春を再び取り戻す事が出来るのか。
勇達に降りかからんとする戦いの炎は、彼等が振り払う事も叶わぬ程に強く激しく燃え上がろうとしていた。
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