時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
973 / 1,197
第三十四節「鬼影去りて 空に神の憂鬱 自由の旗の下に」

~誠意、現れ~

しおりを挟む
「三時間……それだけでいい。 それが出来れば、俺達は勝てる!!」



 たった三時間での戦争の勝利。
 そこに至ったのは〝確信〟でもブライアンからの提案でも無い。
 ハッキリとそう言い切れる程に自信を篭める、勇自身の導き出した答えなのである。

「今回の戦いはきっと厳しくなると思う。 でも成し遂げなければ俺達はここまでだ。 だから何が何でも俺を本土まで連れて行って欲しい」

「そこに連れて行けば勝てる算段があるんですね?」

「ああ。 詳しく説明出来ない事には変わりないけど……」

 勇がそう言い切った事に意味を感じずにはいられなくて。
 誰しもが押し黙る中で途端に莉那と龍が考え込み、その口を止める。
 福留も足を下げた以上、何を言うまいと勇達のやり取りを静かに傍観していて。

 そんな時、とうとう莉那の小さな唇が再び動きを刻む。

「……わかりました。 全ての事情は事が終わった後に説明頂きます。 勇さんにしかわからない理屈なのなら、私達がやるべきなのは目の前で起ころうとしている事に対する対処だけです。 そこでむやみに考える必要は無いのですから」

 グランディーヴァは勇の持つ理念の下に仲間が集まって出来たと言える団体だ。
 彼を信じ、世界を救わんと戦う為に。
 それは盲目的になれという事ではなく「彼の行う事全てに意味があると思え」という事に他ならない。
 先日勇と戦った心輝もまたその真の意味に気付いた今、それに疑う者達はこの場には居ない。

 だからこそ莉那はこう言い切ったのだ。
 「勇が勝てると言ったならば勝てる」のだと。

「ありがとう、莉那ちゃん」

「礼を言うのは早いですよ。 具体的な作戦、考えているのでしょう?」

 不意に莉那が見せるのは、見上げる様に覗き込みながら浮かばせる不敵な笑み。
 まるで全てを見抜いた様な彼女の視線も、今の勇の立場からすれば頼もしい事この上無い。

「勿論さ。 戦える人数は少ない上に俺は前線に立てない。 でも皆なら大丈夫だって俺も信じてるから、今回は皆の命を俺が預かる」

 すると何を思ったのか勇がそっと右手の人差し指を伸ばし。
 そのままその指が「スゥー」っと流れる様に―――一人の巨体を指し示す。

「その上で今回の前線での戦いのキーになるのは恐らくマヴォさんだと思ってる」

「お、俺か……!?」

 突然の指名に戸惑い、マヴォが思わず自身を指差し周囲を伺っていて。
 皆の視線を受け取る中で、勇の意図を読み取れずに顔をしかめさせるばかり。

「ああ。 、完成したんだろ?」

「あ……そうか、アレなら……」

 どうやらそう言われて初めて気付いた様だ。

 それは心輝の代わりに実践テストを買って出た末に出来た集大成。
 超金属を使用して造られた―――新型魔剣である。

 僅かな製作期間であったが、カプロにもはや不可能の文字は無い。
 二人の会話を前に、カプロが自信満々の胸を張り上げる姿が在ったのは言うまでもないだろう。

「ああ。 アレの機動力なら多分今までの心輝以上、もしかしたら茶奈に匹敵する戦果を上げられるハズだ」

 そう言い切る程に新型魔剣の性能は段違いだという事。
 マヴォもその意見にまんざらでも無く。
 「なるほど」と腕を組み、俯きながら深く考えを巡らせる様子を見せていた。

 如何にして有効的に扱う事が出来るか、その真価を発揮する方法を求めて。

「空軍の攻撃はナターシャと牽引したセリが凌いでくれ。 ディックさんはマヴォさんのサポートで。 それと今回は獅堂、お前も出てもらう」

「ぼ、僕かい!?」

 獅堂にはそう指名された事が驚きで。
 何せ彼の力はまだ実戦投入には早いと言わざるを得ない段階なのだから。
 しかし人手は多い方が良いのと、獅堂にも出来る役割があったからこそ勇は迷わず指名したのだ。

 とはいえ期待を掛けられれば燃えない訳も無いのが獅堂という男。
 勇の期待に応える為にも、その一心で拳を強く握り締める。

「じゃあ私も―――」
「茶奈には別の役割がある。 これは君にしか出来ない事だから……」

 自身だけにしか出来ない役割。
 そう聞かされた時、茶奈の表情に強張りが生まれる。
 彼女に出来て仲間に出来ない事はもはや僅かだが、残るいずれもが群を抜いて困難を極める行為ばかりだ。

 そこに期待をされれば、緊張しない訳も無い。
 だが茶奈ならやり遂げられるという自信があったから、勇は大事な役目を言い渡す事が出来る。

 茶奈はそれに対してただ一頷きを返すのみ。
 だけの事で、二人の間で言葉を交わす必要はもはや無いのだから。

「莉那ちゃん、カプロ、今回は敢えてアルクトゥーンを前進させなきゃいけない。 万が一に備えて防御システムは完璧に頼む」

 莉那もカプロも勇の一言を前に力強く頷く。
 元より不備は無い。
 でも二人の事だ、必要以上の手を加えてこれ以上に無い結果を導いてくれるだろう。

「イシュは俺と一緒にアルクトゥーンで本土に向かう。 俺を全力で守ってくれ」

「ええ、わかりました。 貴方を守る必要性を感じませんが、与えられた役目はこなしましょう」

 本土に付いても勇なりに成さねばならぬ事がある。
 一人では達成が困難と思えたからこその采配だ。

「概要は以上だ。 皆に任せっきりになるのは心苦しいけど……どうか頼む、俺に力を貸してくれ」

 そして最後に勇が見せたのは―――深く頭を下げた姿。
 自分の代わりに戦火を引き受ける仲間達に向けた、彼なりの誠意だった。

 きっとそんな行為など皆の前では何の意味も成さないだろう。
 皆が勇の事を信じ、付いてきているのだから。
 でもこう出来る彼だからこそ皆、今ここに居る。

 こんな彼だからこそ、人は惹かれてならないのだ。





「おう、そういう事なら俺も一枚噛ませな」





 そんな時、突如管制室の扉が消えて巨体がその姿を晒す。

 それは剣聖。
 どうやら勇達の話を影で聴いていた様だ。

「剣聖さんが!?」

「おうよ。 こうなった以上は俺もおめぇらに付いていくぜ。 目的が一緒なら構わねぇよなぁ?」

 もう勇達も、剣聖も進むべき道筋は一つになった。
 ここからはもう、師弟でも上に行く存在でも無い。
 共通の目的を持った仲間なのだ。

 それだけではない。
 勇達にとって剣聖という存在が如何に心強い事か。
 そう名乗り出た事が、たったそれだけで勇達への強い意思を更に強固とさせた。

「ええ……ありがとう、剣聖さん!!」

「剣聖さんが来てくれるなら鬼に金棒ですね!」

 強い意思は自信をもたらし、行動力を著しく増加させる。

 勇と剣聖。
 二人が持つ安心感とも言える存在感は、間違いなく今回の作戦に大きな影響を与えるだろう。

「計画の詳細は追って説明する。 開始は一週間後。 戦いは今まで以上に厳しくなる。 だからそれまでに皆、しっかりと準備を整えてくれ!!」





 こうして、勇によるエイミーとブライアンとの会合の末にグランディーヴァの道筋は定まった。
 決して楽とは言えぬ道のりだが、勇達にはもはや戸惑いなど在りはしない。
 勇の持つ絶対的な自信を信じ、その思惑を形にする為に。

 彼等はもう覚悟を決めたのだから。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...