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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Rencontre destinée <宿命たる邂逅>~
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勇とディックが屋敷の通路をゆっくりと進む。
如何な罠が張り巡らされているとも限らないから。
でもその慎重さにも拘らず、進む道は真っ直ぐ、迷う事さえ無い。
それもそのはず。
勇にはデュランの居る場所が見えているのだ。
通路に刻まれた気配の中に混じる、より強い意思の色が。
ずっと真っ直ぐ、通路の奥へと続いていたのだから。
「クリアだ。 しっかし、罠どころか異常な所が何一つ見つからんのはどういう事かねぇ」
特殊部隊員時代の名残か、ディックの斥候具合は実に様になっている。
手鏡を使って曲がり角の先を探り、手信号で合図を送るなど。
とはいえ、その行動が無為になるほど……何も無い。
これにはディックも思わず首を傾げるばかりだ。
「こういう屋敷ってのは大抵罠だらけって相場が決まってるもんなのにねぇ」
対して勇はと言えば、実に落ち着いていて。
さも「罠が無いのは当然だ」と言わんばかりに堂々と歩を進めていく。
「そういう趣味じゃないのかもしれないな。 少なくとも、俺が見えている限りはさ」
というのも勇には見えていたのだ。
先に見える通路だけでなく、待っている者の意思の残滓もが。
その彩りが意味する行動原理さえも。
「行くぞ。 警戒する時間も惜しい」
こうして実際に罠の無い事が確証へと繋がり、たちまち勇の足取りを大胆にさせる。
ただただ真っ直ぐに、先で待つ者の下へと向かう為に。
そして彼等は間も無く到達する事となる。
勇が辿った想いの光―――〝空色〟の心が待つ部屋の前へと。
通路を隔てる扉に手を掛け、押し開く。
警戒する事も、敵意を迸らせる事も無く。
ただただ穏やかに。
そう開かれた扉はとても軽く。
勇の手からすぐにでも離れ、自らその隔たりを広げていて。
あっという間に部屋の全容を明らかにしていく。
そこは十数人が纏めて集まれそうな程に広い部屋で。
日当たりの良く、全体的に明るみで溢れていた。
きっと外では激しい戦闘が繰り広げられているからか。
開いた窓から強めの風が吹き付け、白いレースのカーテンを煽る。
その為か、部屋に射し込む光がまるでシャンデリアの輝きの様に彩って止まらない。
その明るさを引き立たせているのは、全体的にダークブラウンで仕上げられた家具達。
全てが古風な造形を有しており、重厚な佇まいが西洋独特の落ち着きを魅せる。
更にはガラス棚にはワイン瓶などが数多く納められていて、上品ささえ伴わせる程だ。
そんな彩り溢れた部屋の窓際に―――彼は居た。
「やぁユウ=フジサキ、よく来てくれたね」
そう、デューク=デュランである。
しかも宿敵を前にして最初に見せたのは―――微笑み。
まるで勇と出会えた事が嬉しいのかと思える程に優し気な。
それこそがデュランという存在であると示さんばかりに。
「君とは会ってみたいとずっと思っていた。 本当ならこういう形では出会いたくなかったものだがね」
「ああ、俺も会いたかったよ。 お前の事を聞いて興味を持ったからさ」
勇もまた、そんなデュランに対して笑顔で応える。
そう出来たのは、相手が自分に最も馴染みのある心の色を有していたから。
リデルからも話を聞いて、なんとなくそうなのではないかという予感もしていたから。
こうして出会えた事でハッキリとわかったのだ。
〝デュランは限り無く自分と近い心を持つ存在なのだ〟と。
だからこうして二人は笑顔を見せ合える。
例えこれから戦い合う間柄であろうとも、地を見せる事が出来るのである。
ただ、そう出来るのはあくまでも勇とデュランだけの話であるが。
「デューク=デュランッ!! テメェよくも俺の女をすけこましやがったなあッ!!」
ここにはもう一人居るのだ。
デュランに対して最も激情を燃やしたディックという男が。
「ッ!?」
「うっ!? やめろディック!!」
デュランを見つけた時、ディックは既に銃口を向けていた。
怒りと憎しみを銃弾に乗せ、怨敵に一矢報いる為に。
その卓越した反応速度はもはや感情の赴くまま。
指を掛けた引き金を力一杯に引き絞る。
ズドォンッ!!
空かさず放たれる銃弾。
狙いは当然、デュランの額。
娘が自身にしてやった事と同じ様に。
ずっとずっと、そうしてやりたかったのだろう。
その為に虎視眈々と復讐心を磨き続けて来て。
何度も何度も戦場に向かい、血反吐を履き続けて来て。
そして今日この時がやっと訪れたから。
だがその想いは、思いがけぬ人物に止められる事となる。
なんと勇が銃弾を掴み取り、掌の中で握り潰していたのだ。
「んなッ!? 何すんだ勇さんよぉ!?」
渾身の一発とも言える銃弾だった。
彼にとって最も鋭く、素早く、確実な射撃だった。
それをこうも仲間に止められてしまえば、怒りもしよう。
でもそれはディックが何もわかっていないからに過ぎない。
勇が銃弾を塞き止めた理由を。
「やめろディック。 デュランはこんな物で殺せる様な相手じゃない。 それにもしこの銃弾が届いていたら―――お前は殺されていた」
「なッ!?」
それというのも、勇は既に気付いていたのだ。
デュランが秘める実力を。
魔導兵装如き玩具では太刀打ち出来ない、強大な力を秘めているのだと。
そう気付けた理由は簡単だ。
相手が強者だから、ただそれだけ。
いつだかバロルフが剣聖を目前にして実力を把握したのと同様に。
勇もまた一目でデュランが相応の実力を有している事を見抜いたのである。
「もし生半可な力で戦ってしまえば、間違い無く負ける」と思える程の実力を。
「そう、彼の言う通りだ。 私は敵意をぶつけた者には容赦しない。 それが【救世同盟】の在り方でもあるからね」
きっとそれはデュランもまた同様に感じているだろう。
勇という存在が想像を超えた強者であるという事に。
命力を感じる感じない以前に、その本質を捉えたのだ。
だからこうして落ち着いていられる。
こうして見えた藤咲勇という男を信頼出来るからこそ。
「彼ならば必ず銃弾を止める」と、抵抗さえしなかった。
仲間の命を救う為に行動を起こすのだとわかっていたから。
「ディック、ここは退け」
そう仲間を想えるからこそ、勇はこうも切り出す事が出来る。
デュランとの戦いで、ディックが何の役にも立たない事を痛いほど理解したからこそ。
想いや気持ちだけではどうにもならない世界がここに存在するからこそ。
「だ、だが―――」
「お前の想いは俺が引き継ぐッ!! ……だから皆を頼む」
でもだからといってディックの気持ちがわからない訳でもない。
だからこそ想いを引き継ぎ、願いを託すのだ。
今の勇に出来なくて、ディックだけに出来る事が沢山あるのだから。
「―――わかった。 なら惜しみ無くブッ飛ばしてくれよなぁ……」
「ああ、任せてくれ……!」
そんな想いも願いもひっくるめて。
纏めて引き受けてくれるのが勇だからこそ。
ディックも想いを遠慮無く託す事が出来る。
自身では叶えられない最上最高の一撃を間違いなく見舞える男へと。
そして口惜しさと無念を胸に、ディックが踵を返す。
最も復讐すべき相手を背にして。
「クソッ……クッソッ!!」
これ程自身が非力だった事に悔いた事は無いだろう。
あと数年若ければ、その復讐心を糧に魔剣使いにも成れたかもしれないのに。
真の意味で勇達と並んで歩けるかも知れなかったのに。
それが出来なかったから。
自分自身の不甲斐無さに怒りすら込み上げる。
走りが荒々しくなる程に。
「……こうなったら意地でも茶奈ちゃん達を守ってやらにゃ、箔が付かんね……ッ!!」
それでも自分を見失う程、ディックは愚かでは無い。
むしろこういう時にこそ冷静になれる事が強みだと言えよう。
何度も何度も血反吐を履いて学んできたから。
その経験は紛れも無く勇達以上だと確信しているから。
今はその経験を生かすのみ。
ッダァーーーーーーンッ!!
だがそう決意を固めるディックへ、突如として凶弾が襲い掛かる。
真っ直ぐ、その頭部へと向けられた一発が。
「ッ!?」
しかしその弾丸は辛うじて後頭部を掠めて通り過ぎ。
咄嗟にディックが物陰へと飛び退く。
「クソッ!! こんな時に来てくれてさぁ!!」
今の一発を躱せたのは決して偶然ではない。
撃たれる寸前に気付いて躱したのだ。
今までに培ってきた経験と勘がディックに教えたのである。
見えぬ相手から殺意を向けられていた事を。
ずっと敵が潜んでいたという事を。
「こんな隠れる所ばかりじゃ頭が痛くなるねぇ、ったく!!」
左腕に備えた【キュリクス】を身構えつつ、自慢の短銃を右手に。
銃弾の弾数はまだ充分、数えるまでもない。
後は物陰に隠れ、潜み続ける相手に備えて機会を待つのみ。
するとそんな時―――
「久しいなぁディーーーック!! こうして銃を撃ち交わす事になるとは思ってもみなかったぞぉ!!」
突如、先程凶弾が撃ち放たれた通路の先から野太い声が響く。
まるで愉快に跳ねる様な大声で。
しかもどうやら相手はディックの事を知っているらしい。
ただ、今の声を聴いて―――ディックもようやく気付いた様だ。
「この声は……ッ!!」
それに気付いた途端、ディックがお返しと言わんばかりに物陰から銃弾を撃ち放つ。
体勢を整える為の牽制弾である。
そう、ディックはもう既にやる気なのだ。
敵意を向ける相手が誰なのかわかってしまったからこそ。
「そうか、黒鷲……アンタか軍曹ォォォ!!!!」
だからこそ咆える。
今こうして相対した者こそ、もう一人の宿敵とも言える存在。
その相手が今こうして自ら現れたから―――猛らずにはいられなかった。
如何な罠が張り巡らされているとも限らないから。
でもその慎重さにも拘らず、進む道は真っ直ぐ、迷う事さえ無い。
それもそのはず。
勇にはデュランの居る場所が見えているのだ。
通路に刻まれた気配の中に混じる、より強い意思の色が。
ずっと真っ直ぐ、通路の奥へと続いていたのだから。
「クリアだ。 しっかし、罠どころか異常な所が何一つ見つからんのはどういう事かねぇ」
特殊部隊員時代の名残か、ディックの斥候具合は実に様になっている。
手鏡を使って曲がり角の先を探り、手信号で合図を送るなど。
とはいえ、その行動が無為になるほど……何も無い。
これにはディックも思わず首を傾げるばかりだ。
「こういう屋敷ってのは大抵罠だらけって相場が決まってるもんなのにねぇ」
対して勇はと言えば、実に落ち着いていて。
さも「罠が無いのは当然だ」と言わんばかりに堂々と歩を進めていく。
「そういう趣味じゃないのかもしれないな。 少なくとも、俺が見えている限りはさ」
というのも勇には見えていたのだ。
先に見える通路だけでなく、待っている者の意思の残滓もが。
その彩りが意味する行動原理さえも。
「行くぞ。 警戒する時間も惜しい」
こうして実際に罠の無い事が確証へと繋がり、たちまち勇の足取りを大胆にさせる。
ただただ真っ直ぐに、先で待つ者の下へと向かう為に。
そして彼等は間も無く到達する事となる。
勇が辿った想いの光―――〝空色〟の心が待つ部屋の前へと。
通路を隔てる扉に手を掛け、押し開く。
警戒する事も、敵意を迸らせる事も無く。
ただただ穏やかに。
そう開かれた扉はとても軽く。
勇の手からすぐにでも離れ、自らその隔たりを広げていて。
あっという間に部屋の全容を明らかにしていく。
そこは十数人が纏めて集まれそうな程に広い部屋で。
日当たりの良く、全体的に明るみで溢れていた。
きっと外では激しい戦闘が繰り広げられているからか。
開いた窓から強めの風が吹き付け、白いレースのカーテンを煽る。
その為か、部屋に射し込む光がまるでシャンデリアの輝きの様に彩って止まらない。
その明るさを引き立たせているのは、全体的にダークブラウンで仕上げられた家具達。
全てが古風な造形を有しており、重厚な佇まいが西洋独特の落ち着きを魅せる。
更にはガラス棚にはワイン瓶などが数多く納められていて、上品ささえ伴わせる程だ。
そんな彩り溢れた部屋の窓際に―――彼は居た。
「やぁユウ=フジサキ、よく来てくれたね」
そう、デューク=デュランである。
しかも宿敵を前にして最初に見せたのは―――微笑み。
まるで勇と出会えた事が嬉しいのかと思える程に優し気な。
それこそがデュランという存在であると示さんばかりに。
「君とは会ってみたいとずっと思っていた。 本当ならこういう形では出会いたくなかったものだがね」
「ああ、俺も会いたかったよ。 お前の事を聞いて興味を持ったからさ」
勇もまた、そんなデュランに対して笑顔で応える。
そう出来たのは、相手が自分に最も馴染みのある心の色を有していたから。
リデルからも話を聞いて、なんとなくそうなのではないかという予感もしていたから。
こうして出会えた事でハッキリとわかったのだ。
〝デュランは限り無く自分と近い心を持つ存在なのだ〟と。
だからこうして二人は笑顔を見せ合える。
例えこれから戦い合う間柄であろうとも、地を見せる事が出来るのである。
ただ、そう出来るのはあくまでも勇とデュランだけの話であるが。
「デューク=デュランッ!! テメェよくも俺の女をすけこましやがったなあッ!!」
ここにはもう一人居るのだ。
デュランに対して最も激情を燃やしたディックという男が。
「ッ!?」
「うっ!? やめろディック!!」
デュランを見つけた時、ディックは既に銃口を向けていた。
怒りと憎しみを銃弾に乗せ、怨敵に一矢報いる為に。
その卓越した反応速度はもはや感情の赴くまま。
指を掛けた引き金を力一杯に引き絞る。
ズドォンッ!!
空かさず放たれる銃弾。
狙いは当然、デュランの額。
娘が自身にしてやった事と同じ様に。
ずっとずっと、そうしてやりたかったのだろう。
その為に虎視眈々と復讐心を磨き続けて来て。
何度も何度も戦場に向かい、血反吐を履き続けて来て。
そして今日この時がやっと訪れたから。
だがその想いは、思いがけぬ人物に止められる事となる。
なんと勇が銃弾を掴み取り、掌の中で握り潰していたのだ。
「んなッ!? 何すんだ勇さんよぉ!?」
渾身の一発とも言える銃弾だった。
彼にとって最も鋭く、素早く、確実な射撃だった。
それをこうも仲間に止められてしまえば、怒りもしよう。
でもそれはディックが何もわかっていないからに過ぎない。
勇が銃弾を塞き止めた理由を。
「やめろディック。 デュランはこんな物で殺せる様な相手じゃない。 それにもしこの銃弾が届いていたら―――お前は殺されていた」
「なッ!?」
それというのも、勇は既に気付いていたのだ。
デュランが秘める実力を。
魔導兵装如き玩具では太刀打ち出来ない、強大な力を秘めているのだと。
そう気付けた理由は簡単だ。
相手が強者だから、ただそれだけ。
いつだかバロルフが剣聖を目前にして実力を把握したのと同様に。
勇もまた一目でデュランが相応の実力を有している事を見抜いたのである。
「もし生半可な力で戦ってしまえば、間違い無く負ける」と思える程の実力を。
「そう、彼の言う通りだ。 私は敵意をぶつけた者には容赦しない。 それが【救世同盟】の在り方でもあるからね」
きっとそれはデュランもまた同様に感じているだろう。
勇という存在が想像を超えた強者であるという事に。
命力を感じる感じない以前に、その本質を捉えたのだ。
だからこうして落ち着いていられる。
こうして見えた藤咲勇という男を信頼出来るからこそ。
「彼ならば必ず銃弾を止める」と、抵抗さえしなかった。
仲間の命を救う為に行動を起こすのだとわかっていたから。
「ディック、ここは退け」
そう仲間を想えるからこそ、勇はこうも切り出す事が出来る。
デュランとの戦いで、ディックが何の役にも立たない事を痛いほど理解したからこそ。
想いや気持ちだけではどうにもならない世界がここに存在するからこそ。
「だ、だが―――」
「お前の想いは俺が引き継ぐッ!! ……だから皆を頼む」
でもだからといってディックの気持ちがわからない訳でもない。
だからこそ想いを引き継ぎ、願いを託すのだ。
今の勇に出来なくて、ディックだけに出来る事が沢山あるのだから。
「―――わかった。 なら惜しみ無くブッ飛ばしてくれよなぁ……」
「ああ、任せてくれ……!」
そんな想いも願いもひっくるめて。
纏めて引き受けてくれるのが勇だからこそ。
ディックも想いを遠慮無く託す事が出来る。
自身では叶えられない最上最高の一撃を間違いなく見舞える男へと。
そして口惜しさと無念を胸に、ディックが踵を返す。
最も復讐すべき相手を背にして。
「クソッ……クッソッ!!」
これ程自身が非力だった事に悔いた事は無いだろう。
あと数年若ければ、その復讐心を糧に魔剣使いにも成れたかもしれないのに。
真の意味で勇達と並んで歩けるかも知れなかったのに。
それが出来なかったから。
自分自身の不甲斐無さに怒りすら込み上げる。
走りが荒々しくなる程に。
「……こうなったら意地でも茶奈ちゃん達を守ってやらにゃ、箔が付かんね……ッ!!」
それでも自分を見失う程、ディックは愚かでは無い。
むしろこういう時にこそ冷静になれる事が強みだと言えよう。
何度も何度も血反吐を履いて学んできたから。
その経験は紛れも無く勇達以上だと確信しているから。
今はその経験を生かすのみ。
ッダァーーーーーーンッ!!
だがそう決意を固めるディックへ、突如として凶弾が襲い掛かる。
真っ直ぐ、その頭部へと向けられた一発が。
「ッ!?」
しかしその弾丸は辛うじて後頭部を掠めて通り過ぎ。
咄嗟にディックが物陰へと飛び退く。
「クソッ!! こんな時に来てくれてさぁ!!」
今の一発を躱せたのは決して偶然ではない。
撃たれる寸前に気付いて躱したのだ。
今までに培ってきた経験と勘がディックに教えたのである。
見えぬ相手から殺意を向けられていた事を。
ずっと敵が潜んでいたという事を。
「こんな隠れる所ばかりじゃ頭が痛くなるねぇ、ったく!!」
左腕に備えた【キュリクス】を身構えつつ、自慢の短銃を右手に。
銃弾の弾数はまだ充分、数えるまでもない。
後は物陰に隠れ、潜み続ける相手に備えて機会を待つのみ。
するとそんな時―――
「久しいなぁディーーーック!! こうして銃を撃ち交わす事になるとは思ってもみなかったぞぉ!!」
突如、先程凶弾が撃ち放たれた通路の先から野太い声が響く。
まるで愉快に跳ねる様な大声で。
しかもどうやら相手はディックの事を知っているらしい。
ただ、今の声を聴いて―――ディックもようやく気付いた様だ。
「この声は……ッ!!」
それに気付いた途端、ディックがお返しと言わんばかりに物陰から銃弾を撃ち放つ。
体勢を整える為の牽制弾である。
そう、ディックはもう既にやる気なのだ。
敵意を向ける相手が誰なのかわかってしまったからこそ。
「そうか、黒鷲……アンタか軍曹ォォォ!!!!」
だからこそ咆える。
今こうして相対した者こそ、もう一人の宿敵とも言える存在。
その相手が今こうして自ら現れたから―――猛らずにはいられなかった。
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