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第八節「心の色 人の形 力の先」
~鋭感覚、これぞその真価~
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勇が遂に【オンズ族】の根城たる林へと辿り着いた。
もちろん余力は充分。
気力も体力も満ち溢れている。
ここに至る戦闘らしい戦闘は先程の一戦のみで。
目立たない様に走っていたおかげか、雑兵に遭遇する事も殆ど無く。
どうやらちゃなの隠れた活躍が功を奏していた様だ。
「ここを抜ければ王が居るはず。 さて、どう行くか」
しかし、そうにも拘らず勇は林の目前で立ち止まっていて。
生い茂る木々を眺めつつ、顎を手に取る姿が。
すぐにでも突撃出来ない理由があるのだろうか。
確かに、鬱蒼とした林は不気味だろう。
闇夜の中であればなおさらの事。
得も知れない恐怖心を煽ってくるかの様で。
でもどうやらそれが理由ではないらしい。
その証拠に、勇自身は至って冷静だ。
簡易ホルダーに魔剣を下げ、手足のストレッチまで始めていて。
そんな最中も木々を眺めて策を練る。
如何にしてこの林を突破してみせようか、と。
ストレッチはその準備の為なのだろう。
遂にはピョンピョンと小刻みに跳ね始めていて。
「さて、行くか―――」
ただそれも間も無く終わる事となる。
勇そのものがその場から姿を消す事によって。
まるで闇に溶けたかの様だった。
跳ねた拍子に消え去ったかの様だった。
例え夜目に馴れた者達でさえ、そう見えていたのだ。
「馬鹿な……消えた!?」
「や、奴はどこだ!?」
そんな囁きが聴こえるのは木々や茂みの中。
そう、兵士達が潜んでいたのである。
勇が突撃して来た時、奇襲出来る様にと。
それで待ち構えていたのだが、まさか見失うとは。
予想外の事態に、魔者達は動揺を隠せない。
たちまち周囲を見渡し、消えた相手を探し始めていて。
「ガッ!?」
だがその最中、小さな呻きが暗闇に木霊する。
それも一つや二つではない。
「ゴエッ!?」
「ゲフッ!?」
次から次へと幾所から。
たちまち囁きも消えていき、残された者達の顔に恐怖が滲んでいく。
何が起きているのかすらわからなかった。
でも次々と、潜んでいた仲間達の声が途絶えていて。
周囲から聴こえるのはそんな声と木々のさざめきだけだ。
……木々のさざめき。
無風とも言える今この時での。
この時、魔者達はそこに秘めた事実にようやく気付く。
消えた相手がどこへ行ったのか、その答えに。
「奴は頭上だァーーーッ!!!」
その叫びが周囲に木霊した途端、茂みに隠れていた者達が一斉に頭を上げる。
そしてその眼が見開いた時、彼等は見るだろう。
闇夜に紛れて魔剣を奮う相手の姿を。
なんと勇は彼等の頭上に居たのである。
木々の幹を足場にして、跳ねる様にして飛び交っていたのだ。
それも蹴った時の衝撃音が立たないよう、繊細に、柔らかに。
だからさざめき程度にしかならない。
余りにも自然と同化し過ぎていたが故に。
そしてそのほぼ無音の跳躍移動は、潜んでいた相手を瞬時に叩き伏せる事をも可能とした。
何せ相手は戸惑って足を止めているのだ、これ程狙いやすい的は無いだろう。
それに頭上ほど、敵が見易い場所は無い。
だから勇はもう既に把握していたのだ。
敵が潜んでいる位置を。
何をしようとしていたのかを。
どこを見て、どう感じて、どう動くのか―――その何もかもをも。
こうして気付けば、その全てが大地に伏す事に。
誰一人として勇を完全に捉える事も出来ず、抵抗さえ叶わないまま倒れていった。
もちろん、いずれも殺さない様にと手心を加えて。
この様にして戦う姿はまるで忍者。
闇夜に紛れて物音を立てず、相手に忍び寄っては沈黙させる暗殺者の如く。
では何故勇が突如としてそんな事が出来る様になったのか。
その答えは、魔剣【大地の楔】にこそ存在する。
勇は確かに命力の真の扱い方を会得した。
その事によって知覚がより鋭くなった事もあるだろう。
だがその感覚をより増幅させたのが、この魔剣の特殊能力。
それが【感覚鋭化】である。
相手の動きがゆっくり見える様になったり、触覚・聴覚が過敏になったり。
予測する事も出来れば、それに対応して体を動かす事も出来る。
それも意識するだけで好きなだけ。
同時に、適合しない者達を狂わせた畏怖すべき力でもある。
それ程までに感覚が鋭くなり、周囲の全てを半強制的に認識させるのだ。
その兆候は以前より現れている。
勇が【大地の楔】を初めて手にしたあの時からずっと。
池上の拳を躱し、手練れの魔者を制し、レンネィの剣を受け止た。
その全てがこの能力の賜物。
しかも【大地の楔】を手にした事で、その真価が発揮出来る様に。
この真の能力はかりそめの力とは比較にならない。
勇がその認識を広げた瞬間、周囲の世界が全て見える様になるのだから。
そう、何もかもが見える。
潜んでいた者達の姿も。
その息遣いや手足の動きも。
彼等がどこを見ているかも。
その眼の動きからの思考さえも。
そしてその死角さえも。
例え夜だろうと昼間の様に。
月夜の陰影も、細かな虫の動きであろうとも。
今の勇に見えない物は無い。
まさに千里眼とも言うべき能力。
これこそ今の勇が誇る最高最大の武器なのだ。
ちゃなの様に暴れる必要は無い。
よりスマートに、より静かに確実に。
勇は相方の真逆とも言える進化を果たしていたのである。
「よし、これで全部か。 後は―――」
その力のお陰でこうして全く苦労する事も無く防衛部隊を突破できた。
ならばあと残すは本陣を攻めるのみ。
だからこそ見据える。
木々に覆われて見えない景色の先を。
その先に間違いなく、かの者が潜んでいるはずだから。
勇は行く。
木々の合間を飛び交う様にして。
魔者達の王と対峙する為に。
一度は人間と対話を許したという【オンズ族】の王。
かの者は、果たして如何様な人物なのであろうか―――
もちろん余力は充分。
気力も体力も満ち溢れている。
ここに至る戦闘らしい戦闘は先程の一戦のみで。
目立たない様に走っていたおかげか、雑兵に遭遇する事も殆ど無く。
どうやらちゃなの隠れた活躍が功を奏していた様だ。
「ここを抜ければ王が居るはず。 さて、どう行くか」
しかし、そうにも拘らず勇は林の目前で立ち止まっていて。
生い茂る木々を眺めつつ、顎を手に取る姿が。
すぐにでも突撃出来ない理由があるのだろうか。
確かに、鬱蒼とした林は不気味だろう。
闇夜の中であればなおさらの事。
得も知れない恐怖心を煽ってくるかの様で。
でもどうやらそれが理由ではないらしい。
その証拠に、勇自身は至って冷静だ。
簡易ホルダーに魔剣を下げ、手足のストレッチまで始めていて。
そんな最中も木々を眺めて策を練る。
如何にしてこの林を突破してみせようか、と。
ストレッチはその準備の為なのだろう。
遂にはピョンピョンと小刻みに跳ね始めていて。
「さて、行くか―――」
ただそれも間も無く終わる事となる。
勇そのものがその場から姿を消す事によって。
まるで闇に溶けたかの様だった。
跳ねた拍子に消え去ったかの様だった。
例え夜目に馴れた者達でさえ、そう見えていたのだ。
「馬鹿な……消えた!?」
「や、奴はどこだ!?」
そんな囁きが聴こえるのは木々や茂みの中。
そう、兵士達が潜んでいたのである。
勇が突撃して来た時、奇襲出来る様にと。
それで待ち構えていたのだが、まさか見失うとは。
予想外の事態に、魔者達は動揺を隠せない。
たちまち周囲を見渡し、消えた相手を探し始めていて。
「ガッ!?」
だがその最中、小さな呻きが暗闇に木霊する。
それも一つや二つではない。
「ゴエッ!?」
「ゲフッ!?」
次から次へと幾所から。
たちまち囁きも消えていき、残された者達の顔に恐怖が滲んでいく。
何が起きているのかすらわからなかった。
でも次々と、潜んでいた仲間達の声が途絶えていて。
周囲から聴こえるのはそんな声と木々のさざめきだけだ。
……木々のさざめき。
無風とも言える今この時での。
この時、魔者達はそこに秘めた事実にようやく気付く。
消えた相手がどこへ行ったのか、その答えに。
「奴は頭上だァーーーッ!!!」
その叫びが周囲に木霊した途端、茂みに隠れていた者達が一斉に頭を上げる。
そしてその眼が見開いた時、彼等は見るだろう。
闇夜に紛れて魔剣を奮う相手の姿を。
なんと勇は彼等の頭上に居たのである。
木々の幹を足場にして、跳ねる様にして飛び交っていたのだ。
それも蹴った時の衝撃音が立たないよう、繊細に、柔らかに。
だからさざめき程度にしかならない。
余りにも自然と同化し過ぎていたが故に。
そしてそのほぼ無音の跳躍移動は、潜んでいた相手を瞬時に叩き伏せる事をも可能とした。
何せ相手は戸惑って足を止めているのだ、これ程狙いやすい的は無いだろう。
それに頭上ほど、敵が見易い場所は無い。
だから勇はもう既に把握していたのだ。
敵が潜んでいる位置を。
何をしようとしていたのかを。
どこを見て、どう感じて、どう動くのか―――その何もかもをも。
こうして気付けば、その全てが大地に伏す事に。
誰一人として勇を完全に捉える事も出来ず、抵抗さえ叶わないまま倒れていった。
もちろん、いずれも殺さない様にと手心を加えて。
この様にして戦う姿はまるで忍者。
闇夜に紛れて物音を立てず、相手に忍び寄っては沈黙させる暗殺者の如く。
では何故勇が突如としてそんな事が出来る様になったのか。
その答えは、魔剣【大地の楔】にこそ存在する。
勇は確かに命力の真の扱い方を会得した。
その事によって知覚がより鋭くなった事もあるだろう。
だがその感覚をより増幅させたのが、この魔剣の特殊能力。
それが【感覚鋭化】である。
相手の動きがゆっくり見える様になったり、触覚・聴覚が過敏になったり。
予測する事も出来れば、それに対応して体を動かす事も出来る。
それも意識するだけで好きなだけ。
同時に、適合しない者達を狂わせた畏怖すべき力でもある。
それ程までに感覚が鋭くなり、周囲の全てを半強制的に認識させるのだ。
その兆候は以前より現れている。
勇が【大地の楔】を初めて手にしたあの時からずっと。
池上の拳を躱し、手練れの魔者を制し、レンネィの剣を受け止た。
その全てがこの能力の賜物。
しかも【大地の楔】を手にした事で、その真価が発揮出来る様に。
この真の能力はかりそめの力とは比較にならない。
勇がその認識を広げた瞬間、周囲の世界が全て見える様になるのだから。
そう、何もかもが見える。
潜んでいた者達の姿も。
その息遣いや手足の動きも。
彼等がどこを見ているかも。
その眼の動きからの思考さえも。
そしてその死角さえも。
例え夜だろうと昼間の様に。
月夜の陰影も、細かな虫の動きであろうとも。
今の勇に見えない物は無い。
まさに千里眼とも言うべき能力。
これこそ今の勇が誇る最高最大の武器なのだ。
ちゃなの様に暴れる必要は無い。
よりスマートに、より静かに確実に。
勇は相方の真逆とも言える進化を果たしていたのである。
「よし、これで全部か。 後は―――」
その力のお陰でこうして全く苦労する事も無く防衛部隊を突破できた。
ならばあと残すは本陣を攻めるのみ。
だからこそ見据える。
木々に覆われて見えない景色の先を。
その先に間違いなく、かの者が潜んでいるはずだから。
勇は行く。
木々の合間を飛び交う様にして。
魔者達の王と対峙する為に。
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かの者は、果たして如何様な人物なのであろうか―――
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