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第三十七節「二天に集え 剣勇の誓い 蛇岩の矛は空を尽くす」
~多に数、空に浮岩の軍勢~
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茶奈の撃ち放った超高出力砲撃、【星穿煌】。
その規模は凄まじく、国並みに巨大な蛇岩を丸ごと覆い尽くすほど。
それどころか、宇宙の彼方に白筋を刻み込むまでの線量を誇っていたのである。
余りの破壊力だったが故に付近の海水が蒸発し、たちまち霧と雲が軌道一帯を包み込む。
それは茶奈自身も例外ではなく、白麗霧を纏って煌めく姿はどこか誇らしげで。
砲撃で火照った体が揺らめきを生み、まるで白炎に燃えている様にすら見える。
対して、蛇岩はと言えば―――
その姿が見えなくなる程の轟々とした黒煙を巻き上げていた。
規模が規模なだけに、景色の彼方が真っ黒に染まり上がる程だ。
煙そのものも絶え間無く流れる様に吹き上げ続けており、砲撃の威力を物語るかのよう。
「ふぅ……予想以上の威力だったけど、相手が壊せる程で良かったぁ」
それ程の砲撃を撃ち放ったにも拘らず、茶奈はまだ元気だ。
水滴に汗も交じってはいるが息切れは無く、体力にも余裕を残している。
ならば即座に次の行動へと移る事も厭わない。
今頃勇達が南米で戦っているのだ、戦力は少しでも多い方が良いのだから。
「ここからなら【エフタリオン】でも一時間くらいかな―――」
そう思い、振り向いた時だった。
グオオオオオーーーーーーンッ!!!
その途端、周囲に鈍い重低音が響き渡る。
まるで船舶警笛の様な、腹の底を押し上げる様な轟音が。
それに気付いて振り返り直した時、茶奈は目撃する事となる。
黒煙を突き抜けて現れた、巨大な蛇岩の姿を。
「そ、そんな……ッ!?」
茶奈が驚愕を隠せない。
渾身の一撃を放ったにも拘らず、破壊するどころか留める事すら出来なかったのだから。
全く通用していなかったのだ。
あれ程の規模で、あれ程の線量だったのにも拘らず。
表皮だけを焼いただけで、形はほとんど以前と変わらない。
各部からなお黒煙を吐きつつも、悠々と空を泳ぎ続けていたのである。
確かに【星穿煌】は星をも貫く破壊力を有していただろう。
万物を焼き尽くせる程の威力を誇っていたのだろう。
しかし、相手の規模とその姿がその力を無効化してしまった。
蛇の様な姿をしていたからこそ砲撃が受け流されてしまったのだ。
では一体どういう事が起きていたのか。
仮に、蛇岩を一本の鉛筆と例えるとしよう。
もし削っていない鉛筆を蛇口の下に立て、勢いよく水を放ったらどうなるか?
その瞬間、水が鉛筆の平たい端面に打ち当たり、勢いよく四散していくことだろう。
でもその鉛筆が先を尖らせる程に削っていたならば?
答えは簡単だ。
当たる面積が小さいので、流水がそのまま鉛筆に沿って流れていくだろう。
ほとんど跳ねる事も無く、筆を包む様にして。
つまり、蛇岩にも同じ様な現象が起きていたのだ。
砲撃が放たれた途端に口を閉じ、直撃面積を最小限に抑えて。
鉛筆の様な円筒形の身体が更に光を受け流し、焼けるのを表皮だけに留めたのである。
そう出来るという事はすなわち。
蛇岩は生きている。
意思があるのだ。
それも砲撃を見て防御する程の知性さえ重ね揃えて。
これに気付いて驚かずにはいられようか。
「それじゃあどうしたら……ッ!!」
【ユーグリッツァー】二本による超増幅機構からの攻撃。
今茶奈が思い付く限りの最高出力砲撃だったのに。
それでもなお止められない。
止まらない。
唖然とする時間が延びれば延びる程、視界の蛇岩が際限無く大きくなっていて。
しかも、そんな動揺を見せる茶奈へ、無慈悲の洗礼が向けられる事となる。
その時、蛇岩に異変が起こっていた。
表皮の一部が「メキメキ」と音を立ててめくれ上がっていたのだ。
幾多の破片を弾けさせ、反り返る様にしながら。
そしてその隙間から何かが飛び出し、真っ直ぐ飛翔していく。
それは空飛ぶ岩塊。
しかも、空を埋め尽くさんばかりの無数で。
それもまるで【ユーグリッツァー】の星を模したかの如く、菱形に形成されていて。
いずれも棘の様に鋭く、それでいて大きく硬く。
そのサイズは一粒につき人間二人分、尋常ではない大きさだ。
そんな物が幾つも茶奈へと向けて飛来していく。
軌道修正し、迂回まで見せつけながら。
「くぅぅッ!?」
それは明らかな茶奈への敵意。
それだけの殺意が岩塊一つ一つから発せられていて。
堪らず茶奈が後方へと飛び退く程だ。
だが―――振り解けない。
岩塊の飛行速度が異常に速いのだ。
例え不規則に飛ぼうとも追い付けてしまう程に。
「そんなッ!? 私に追い付けてるッ!?」
トップスピードではないとはいえ、既にその速度は音速を超えている。
なのに、只の岩の塊が追い付けているという事実。
それが驚愕を乗り越え、戦慄さえ誘う。
「こうなったら迎撃するしかッ!!」
このままでは逃げ切るのは不可能に近いだろう。
例え逃げても、その間に蛇岩がゴールへと辿り着いてしまいかねないから。
ならばもう、茶奈には応戦する他に道は無い。
空を突き抜けながら、二本の魔剣を掲げて力を籠める。
するとたちまち星達が輝き、再び魔剣から飛び出して。
即座にして、十個の星達が茶奈の周囲を取り囲む。
その途端に始まったのは、本体含めた合計十二砲台からの連装砲撃の嵐。
しかも全てが全てガトリング砲の如き速射を見せつけて。
ドドドッ!! ドドドドッッ!!! ドドドドドッッッ!!!―――
その威力、その連射性能を前には岩塊とてひとたまりも無い。
砲撃一発に打ち当たった途端に弾け、粉々に打ち砕かれていく。
ただ、岩塊達もその数量規模が尋常ではないからこそ。
四方八方への砲撃にも恐れず襲い掛かり行く。
互いに引けを取らず、攻防は激化していくばかりだ。
とはいえ茶奈も立ち止まって戦い続ける訳にはいかない。
何としてでも蛇岩を止めなければならないのだから。
例えその手段が思い付かなくとも。
―――きっともう一度撃ってもまた弾かれちゃう! それに撃てて後一発か二発……この状況で撃てるかどうかもわからないのにッ!!―――
岩塊の大群一波を退け、再び蛇岩へと距離を詰めていく。
星達を四方八方へ散らし、周囲から迫る次波の岩塊を迎撃しつつ。
時折、星達の包囲網を突破した岩塊が迫るも、魔剣で薙ぎ払い。
とめどなく動き続けて追撃を退ける。
そうしなければならない程に激化しているからこそ。
それこそが手段の見つからない理由。
そう、動き続けなければならないのだ。
それはすなわち、先程の様な超高出力砲撃が出来ないという事。
撃ち放つ力を溜める事さえ許されないからである。
余りの岩塊の数の多さに、もはや星十個では絶対数が足りない。
星も命力が無尽蔵ではないから。
力を消耗すれば本体へと戻って補給しなければならず。
そうなれば稼働効率が落ち、結果的に迎撃が間に合わなくなってしまう。
対して岩塊はなお数を増している。
更に増えていくかもしれない。
これでは悪循環だ。
蛇岩を倒すどころか、防御網を完全突破されてしまうのも時間の問題だろう。
でも、茶奈は諦めない。
この状況を覆せる秘策が無い訳ではないのだから。
「こうなったら……ッ!! 【エフタリオン】ッ!!」
この時、遂に茶奈がその秘策を解き放つ。
背に纏い魔剣【翼燐エフタリオン】のもう一つの可能性を。
その意思に反応して動きを見せたのは、背中のバックパック部。
それが突如として上開きし、内部から何かが幾つも飛び出していく。
出て来たのは、【ユーグリッツァー】に搭載された物と同じ星達。
緊急・補充用として積載されていた補助兵装である。
【翼燐エフタリオン】は飛行魔剣としてだけではなく、収納装備としても機能しているのだ。
臨界突破時の副翼部を構築するアーマーパッドの他、予備の星を十個まで搭載可能で。
内部ホルダーを切り替える事によって、あらゆる物資を持ち運べる様になっている。
「これならこの包囲網を突破出来るはずッ!!」
放出された星は当然、【ユーグリッツァー】と互換性がある。
それに【ラーフヴェラ】を備えた茶奈ならば合計二十個の星を同時に操る事も可能だ。
そうなれば、茶奈を守る防御壁は一層の厚みを得る事となる。
たちまち、茶奈を囲む星達による凄まじい砲撃の嵐が周囲へばら撒かれていく。
茶奈がそれを機に、蛇岩への接近速度を上げていく中で。
星達もがそれに追従し、全周から迫る岩塊達をも撃ち落としながら。
時に星そのものがぶつかって切り裂き。
時に光線が走って焼き尽くし。
爆風が吹き荒れる中を縦横無尽に突き進む。
全ては茶奈の意思のままに。
そんな時、それさえも突破した岩塊が頭上から襲い掛かる。
ガシャァーーーーーンッ!!!
だがそれも間も無く無為となる。
巨大な弧を描いて舞う一本の飛行物によって打ち砕かれたのだから。
それはなんと【ユーグリッツァー】本体。
先程まで茶奈が右手に掴んでいた一本が一人でに飛び交っていたのだ。
操っているのは、左手に掴んだもう一本の本体。
実は互換がある本体同士もこうして操る事が可能。
それはまさに星達を操るかの様にして。
しかもその威力は星達の比ではない。
何せ独自の命力を持つ魔剣そのものが飛んでいるのだ。
その攻撃力は星と比べてざっと数倍にも匹敵する。
これぞ茶奈が構築出来る最高の防御布陣。
二十の衛星は惑星たる主を護りて軌跡を描き。
一つ恒星が迫る脅威を焼き尽くす。
それらが生みしは絶対不可侵領域。
その名も【星導跡】。
星巫女を守護せしは銀河連星の如し。
ただその無敵の防御布陣も所詮は時間稼ぎに過ぎない。
茶奈が全ての準備を整える為の。
蛇岩へと再び、確滅の一撃を見舞う為に。
この時、バックパックが今度は下開きを見せていて。
その途端に、短い一本の何かが「ピンッ!!」と頭上へ飛び出す。
そう、収納の中に納められているのが星だけとは限らない。
茶奈が【ユーグリッツァー】を手放したのは、その何かを掴み取る為。
これこそが秘策の本懐とも言える物だからこそ。
「行きましょう。 貴方なら、きっとやれるはず……ッ!!」
それをこうして手にした今、もう茶奈は躊躇わない。
世界が死に包まれてしまわない為に。
世界を真に滅びから救う為に。
先ずはこの巨大で強大な相手を滅せねば、何も始められはしないのだから。
その規模は凄まじく、国並みに巨大な蛇岩を丸ごと覆い尽くすほど。
それどころか、宇宙の彼方に白筋を刻み込むまでの線量を誇っていたのである。
余りの破壊力だったが故に付近の海水が蒸発し、たちまち霧と雲が軌道一帯を包み込む。
それは茶奈自身も例外ではなく、白麗霧を纏って煌めく姿はどこか誇らしげで。
砲撃で火照った体が揺らめきを生み、まるで白炎に燃えている様にすら見える。
対して、蛇岩はと言えば―――
その姿が見えなくなる程の轟々とした黒煙を巻き上げていた。
規模が規模なだけに、景色の彼方が真っ黒に染まり上がる程だ。
煙そのものも絶え間無く流れる様に吹き上げ続けており、砲撃の威力を物語るかのよう。
「ふぅ……予想以上の威力だったけど、相手が壊せる程で良かったぁ」
それ程の砲撃を撃ち放ったにも拘らず、茶奈はまだ元気だ。
水滴に汗も交じってはいるが息切れは無く、体力にも余裕を残している。
ならば即座に次の行動へと移る事も厭わない。
今頃勇達が南米で戦っているのだ、戦力は少しでも多い方が良いのだから。
「ここからなら【エフタリオン】でも一時間くらいかな―――」
そう思い、振り向いた時だった。
グオオオオオーーーーーーンッ!!!
その途端、周囲に鈍い重低音が響き渡る。
まるで船舶警笛の様な、腹の底を押し上げる様な轟音が。
それに気付いて振り返り直した時、茶奈は目撃する事となる。
黒煙を突き抜けて現れた、巨大な蛇岩の姿を。
「そ、そんな……ッ!?」
茶奈が驚愕を隠せない。
渾身の一撃を放ったにも拘らず、破壊するどころか留める事すら出来なかったのだから。
全く通用していなかったのだ。
あれ程の規模で、あれ程の線量だったのにも拘らず。
表皮だけを焼いただけで、形はほとんど以前と変わらない。
各部からなお黒煙を吐きつつも、悠々と空を泳ぎ続けていたのである。
確かに【星穿煌】は星をも貫く破壊力を有していただろう。
万物を焼き尽くせる程の威力を誇っていたのだろう。
しかし、相手の規模とその姿がその力を無効化してしまった。
蛇の様な姿をしていたからこそ砲撃が受け流されてしまったのだ。
では一体どういう事が起きていたのか。
仮に、蛇岩を一本の鉛筆と例えるとしよう。
もし削っていない鉛筆を蛇口の下に立て、勢いよく水を放ったらどうなるか?
その瞬間、水が鉛筆の平たい端面に打ち当たり、勢いよく四散していくことだろう。
でもその鉛筆が先を尖らせる程に削っていたならば?
答えは簡単だ。
当たる面積が小さいので、流水がそのまま鉛筆に沿って流れていくだろう。
ほとんど跳ねる事も無く、筆を包む様にして。
つまり、蛇岩にも同じ様な現象が起きていたのだ。
砲撃が放たれた途端に口を閉じ、直撃面積を最小限に抑えて。
鉛筆の様な円筒形の身体が更に光を受け流し、焼けるのを表皮だけに留めたのである。
そう出来るという事はすなわち。
蛇岩は生きている。
意思があるのだ。
それも砲撃を見て防御する程の知性さえ重ね揃えて。
これに気付いて驚かずにはいられようか。
「それじゃあどうしたら……ッ!!」
【ユーグリッツァー】二本による超増幅機構からの攻撃。
今茶奈が思い付く限りの最高出力砲撃だったのに。
それでもなお止められない。
止まらない。
唖然とする時間が延びれば延びる程、視界の蛇岩が際限無く大きくなっていて。
しかも、そんな動揺を見せる茶奈へ、無慈悲の洗礼が向けられる事となる。
その時、蛇岩に異変が起こっていた。
表皮の一部が「メキメキ」と音を立ててめくれ上がっていたのだ。
幾多の破片を弾けさせ、反り返る様にしながら。
そしてその隙間から何かが飛び出し、真っ直ぐ飛翔していく。
それは空飛ぶ岩塊。
しかも、空を埋め尽くさんばかりの無数で。
それもまるで【ユーグリッツァー】の星を模したかの如く、菱形に形成されていて。
いずれも棘の様に鋭く、それでいて大きく硬く。
そのサイズは一粒につき人間二人分、尋常ではない大きさだ。
そんな物が幾つも茶奈へと向けて飛来していく。
軌道修正し、迂回まで見せつけながら。
「くぅぅッ!?」
それは明らかな茶奈への敵意。
それだけの殺意が岩塊一つ一つから発せられていて。
堪らず茶奈が後方へと飛び退く程だ。
だが―――振り解けない。
岩塊の飛行速度が異常に速いのだ。
例え不規則に飛ぼうとも追い付けてしまう程に。
「そんなッ!? 私に追い付けてるッ!?」
トップスピードではないとはいえ、既にその速度は音速を超えている。
なのに、只の岩の塊が追い付けているという事実。
それが驚愕を乗り越え、戦慄さえ誘う。
「こうなったら迎撃するしかッ!!」
このままでは逃げ切るのは不可能に近いだろう。
例え逃げても、その間に蛇岩がゴールへと辿り着いてしまいかねないから。
ならばもう、茶奈には応戦する他に道は無い。
空を突き抜けながら、二本の魔剣を掲げて力を籠める。
するとたちまち星達が輝き、再び魔剣から飛び出して。
即座にして、十個の星達が茶奈の周囲を取り囲む。
その途端に始まったのは、本体含めた合計十二砲台からの連装砲撃の嵐。
しかも全てが全てガトリング砲の如き速射を見せつけて。
ドドドッ!! ドドドドッッ!!! ドドドドドッッッ!!!―――
その威力、その連射性能を前には岩塊とてひとたまりも無い。
砲撃一発に打ち当たった途端に弾け、粉々に打ち砕かれていく。
ただ、岩塊達もその数量規模が尋常ではないからこそ。
四方八方への砲撃にも恐れず襲い掛かり行く。
互いに引けを取らず、攻防は激化していくばかりだ。
とはいえ茶奈も立ち止まって戦い続ける訳にはいかない。
何としてでも蛇岩を止めなければならないのだから。
例えその手段が思い付かなくとも。
―――きっともう一度撃ってもまた弾かれちゃう! それに撃てて後一発か二発……この状況で撃てるかどうかもわからないのにッ!!―――
岩塊の大群一波を退け、再び蛇岩へと距離を詰めていく。
星達を四方八方へ散らし、周囲から迫る次波の岩塊を迎撃しつつ。
時折、星達の包囲網を突破した岩塊が迫るも、魔剣で薙ぎ払い。
とめどなく動き続けて追撃を退ける。
そうしなければならない程に激化しているからこそ。
それこそが手段の見つからない理由。
そう、動き続けなければならないのだ。
それはすなわち、先程の様な超高出力砲撃が出来ないという事。
撃ち放つ力を溜める事さえ許されないからである。
余りの岩塊の数の多さに、もはや星十個では絶対数が足りない。
星も命力が無尽蔵ではないから。
力を消耗すれば本体へと戻って補給しなければならず。
そうなれば稼働効率が落ち、結果的に迎撃が間に合わなくなってしまう。
対して岩塊はなお数を増している。
更に増えていくかもしれない。
これでは悪循環だ。
蛇岩を倒すどころか、防御網を完全突破されてしまうのも時間の問題だろう。
でも、茶奈は諦めない。
この状況を覆せる秘策が無い訳ではないのだから。
「こうなったら……ッ!! 【エフタリオン】ッ!!」
この時、遂に茶奈がその秘策を解き放つ。
背に纏い魔剣【翼燐エフタリオン】のもう一つの可能性を。
その意思に反応して動きを見せたのは、背中のバックパック部。
それが突如として上開きし、内部から何かが幾つも飛び出していく。
出て来たのは、【ユーグリッツァー】に搭載された物と同じ星達。
緊急・補充用として積載されていた補助兵装である。
【翼燐エフタリオン】は飛行魔剣としてだけではなく、収納装備としても機能しているのだ。
臨界突破時の副翼部を構築するアーマーパッドの他、予備の星を十個まで搭載可能で。
内部ホルダーを切り替える事によって、あらゆる物資を持ち運べる様になっている。
「これならこの包囲網を突破出来るはずッ!!」
放出された星は当然、【ユーグリッツァー】と互換性がある。
それに【ラーフヴェラ】を備えた茶奈ならば合計二十個の星を同時に操る事も可能だ。
そうなれば、茶奈を守る防御壁は一層の厚みを得る事となる。
たちまち、茶奈を囲む星達による凄まじい砲撃の嵐が周囲へばら撒かれていく。
茶奈がそれを機に、蛇岩への接近速度を上げていく中で。
星達もがそれに追従し、全周から迫る岩塊達をも撃ち落としながら。
時に星そのものがぶつかって切り裂き。
時に光線が走って焼き尽くし。
爆風が吹き荒れる中を縦横無尽に突き進む。
全ては茶奈の意思のままに。
そんな時、それさえも突破した岩塊が頭上から襲い掛かる。
ガシャァーーーーーンッ!!!
だがそれも間も無く無為となる。
巨大な弧を描いて舞う一本の飛行物によって打ち砕かれたのだから。
それはなんと【ユーグリッツァー】本体。
先程まで茶奈が右手に掴んでいた一本が一人でに飛び交っていたのだ。
操っているのは、左手に掴んだもう一本の本体。
実は互換がある本体同士もこうして操る事が可能。
それはまさに星達を操るかの様にして。
しかもその威力は星達の比ではない。
何せ独自の命力を持つ魔剣そのものが飛んでいるのだ。
その攻撃力は星と比べてざっと数倍にも匹敵する。
これぞ茶奈が構築出来る最高の防御布陣。
二十の衛星は惑星たる主を護りて軌跡を描き。
一つ恒星が迫る脅威を焼き尽くす。
それらが生みしは絶対不可侵領域。
その名も【星導跡】。
星巫女を守護せしは銀河連星の如し。
ただその無敵の防御布陣も所詮は時間稼ぎに過ぎない。
茶奈が全ての準備を整える為の。
蛇岩へと再び、確滅の一撃を見舞う為に。
この時、バックパックが今度は下開きを見せていて。
その途端に、短い一本の何かが「ピンッ!!」と頭上へ飛び出す。
そう、収納の中に納められているのが星だけとは限らない。
茶奈が【ユーグリッツァー】を手放したのは、その何かを掴み取る為。
これこそが秘策の本懐とも言える物だからこそ。
「行きましょう。 貴方なら、きっとやれるはず……ッ!!」
それをこうして手にした今、もう茶奈は躊躇わない。
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