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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~少年よ、恋心に野心を抱け~
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『エウリィ:こんにちは。 今日も訓練おつかれさまです。 ところで、先日部屋で待っていたのですが来られませんでしたね。 お疲れなのでしょうか。 気を張り詰めると本番の時に力は出ないものです。 ですので時には肩の力を抜いて気軽さを忘れないようにしてくださいね』
こんなメッセージが届いたのは昼過ぎの事だった。
〝腹ごしらえも済んだし、さて午後も頑張ろう〟などと張り切っていた時の事である。
しかしその瞬間から勇はずっと体育座りで俯いたままだ。
余程機会を逃したのが悔しかったのだろう。
午前中の気迫もすっかり抜け、突けば崩れ落ちそうな雰囲気である。
「めっちゃ怒ってる。 ヤバイ。 どうしよう」
しかもそんな小言をブツブツと。
この長文メッセージから余程強い意図が汲み取れたらしい。
機械を通すと通じない命力も、ここぞという時にはビンッビンに効いてくれる。
こういう時ほど命力さん、とても空気を読んでくれない。
どうやら勇、エウリィの事をすっかり忘れていた様子。
まぁジョゾウ達との邂逅がインパクト有り過ぎたので仕方ないのかもしれないが。
ともあれこれでは訓練どころではない。
「勇殿は如何なされたのであろうか」
「男とは時に過ちを身に抱えるものだ。 放っといてやれ」
「ホウホウ、なれば男の哀愁も一つ記録に残し識の素としような」
そんな勇の背中をジョゾウが遠慮なくスマートフォンに納めていく。
人間の事をよく知らない彼等なりの好奇心の形だ。
こればかりは隙を見せた者に抗う術など無い。
「投稿するのだけはよしてやれ。 あとここの事はインターネットに上げる事は許可出来んのでそのつもりでな」
「存じておる。 主殿よりそう承っている故な。 拙僧は今まだ『あきぃた』に居る事となっておる。 『いんすとりあるぐらむ』仲間からも疑われてはおらぬよ」
「現代に馴染み過ぎじゃないか?」
それもジョゾウ程のインフルエンサーっぷりを前にすれば。
一体いつどこでこんな知識とノリを覚えたのやら。
スマートフォンを与えたという彼等の主が、まるで陽キャJKにでも見えて来そうな話である。
そもそもジョゾウの性格ゆえというのも否定出来ないけども。
「なれば仕方ありませぬ。 ではちゃな殿の砲撃を想定した訓練に移るとしましょう」
「えいほー!」
しかし勇が居なければ訓練は進まない。
なのでとミゴが切り返し、誰よりも素早く手を上げるちゃなの姿がそこに。
ミゴ主導の訓練の甲斐もあってか、ちゃなも今やこんな声を上げてしまう程に染まっている。
こうなれば仕上がるのも時間の問題か。
明日にでもカラクラ精鋭八人衆になりそうな勢いである。
という訳で訓練内容を少し変える事になったのだが。
「すまぬが、拙僧はもう少し休を長く頂きたく。 良かろうか?」
するとその中で一人、僅かに大柄な者が手を上げ懇願する。
【カラクラ族】メンバーの一人であるムベイだ。
実は彼、七人の中で最も長寿。
若輩者のライゴの二倍近い歳を生きているという。
その所為もあってか、皆より少し体力が乏しいのだとか。
「仕方なかろうな。 ではこのジョゾウが代わりの翼となろう」
彼等には年功序列という概念は無いのだろう。
しかしその能力の低さを支えるのが仲間というもので。
誰一人嫌な顔もせず、頷き応える姿がここに。
そうして仲間達が空へと飛び立っていく―――のだが。
その時ムベイは何を思ったのか、勇の横に座っていて。
まるで慰めるかの如く、肩に翼を回す。
「勇殿、それ程エウリィ王女殿下の事をお想いか?」
「え? あ、いやその、昨日会いに行くつもりだったのが叶わなくて……」
「左様か。 若き娘はせっかちな所もあるからして、きっと怒っておるであろうな」
「そうなんですよね。 だからやっちゃったって。 えっとぉ―――」
「ムベイである」
どうやらムベイは仮病を使ったらしい。
その顔はどこにも疲労の節は無く、至って普通だ。
勇を励まそうとしての事だから悪くはないけれども。
やはりあの落胆ぶりに見て見ぬふりは出来なかったのだろう。
長寿者として、悩みを理解出来る者として。
「今は怒れど、早々に誠意を見せればきっと応えてくれよう。 それにボウジ殿も言うておったが、時には押す事も必要である。 そう強さを見せればおのずと理解もしてくれるハズよ。 意志の強さこそが押しという事なれば、その意志に迎合したいと思わせるのも伴侶の務めであるからして」
「そういうものなのかなぁ」
「拙僧はそうして良き妻と子にも恵まれもうした。 故に今でも夫婦円満よ。 はっは」
何でもムベイにはもう一四ほどになる長男が居るのだそう。
他にも小さな子供達もが。
それだけ子宝と妻に恵まれたからこそ、達観出来ている所もある様だ。
先日の暴れっぷりはただ食事が美味しくて食べ捲りたかっただけに過ぎない。
だからこそこうして勇を励ませられる。
後押しする事だって出来るのだろう。
「そこで勇殿に秘密の言葉を教えて進ぜよう。 エウリィ王女殿下の前で勇気を振り絞り、〝【ロンダッタ】をして頂けませぬか〟と請い願うので御座る」
「ろんだった……?」
「うむ。 その言葉を聴けばきっと王女殿下が手取り足取り教えてくれるであろう。 なぁに、何も悩む事は御座らぬ。 気付けば全てが済んでおる」
「そうかぁ、【ロンダッタ】かぁ……よし!」
そんな想いが、助言が勇の心を奮い立たせた。
長寿者としての知識が勇気をも与えてくれた。
【ロンダッタ】―――その力強く特別な言葉を得て。
「しかし張り切り過ぎてはいかぬぞ? 戦いに向けて力を温存せねばな」
「はい、ありがとうございますムンベイさん!!」
「ムベイである」
なら勇ほどの若者が立ち上がらない訳が無い。
失望させてしまったであろうエウリィに報いる為にも。
そしてこれから待つ期待の一時の為にも。
だからこそ勇はもう走っていた。
城壁どころか城をも飛び越えようとせんばかりの勢いで。
少しでも早く、エウリィに会って仲直りしたいから。
そんな想い見せた背をムベイは眺める。
まるで〝頑張れよ〟と言わんばかりに嘴へと微笑みを浮かばせて。
「ろんだった……? それは一体何なのでしょうか? あ、きっと現代の遊びなのですね!」
しかし現実がそう上手く行くとは限らない。
というか何もかもが上手く行っていない。
そもそも最初から一ミリたりとて噛み合っていない。
どうやらエウリィ、それほど怒ってはいなかった模様。
ついでに言うと、【ロンダッタ】の意味も全く知らない様子。
ただいまランニングマシーンで元気に鍛錬励み中だ。
きっと勇達に触発されたに違いない。
命力は時に人の意思をも運ぶという。
しかし機械同様その力に頼り過ぎるのも如何なものか。
という訳で勇は今ここで再び打ちのめされる事となる。
自分の甘さと思い込み、あと若さゆえの過ちに。
なお【ロンダッタ】とはカラクラの言葉で「共に空で舞い踊りましょう」という意味とのこと。
なので言語に長けたフェノーダラ王国でも存在しないのは当然である。
こんなメッセージが届いたのは昼過ぎの事だった。
〝腹ごしらえも済んだし、さて午後も頑張ろう〟などと張り切っていた時の事である。
しかしその瞬間から勇はずっと体育座りで俯いたままだ。
余程機会を逃したのが悔しかったのだろう。
午前中の気迫もすっかり抜け、突けば崩れ落ちそうな雰囲気である。
「めっちゃ怒ってる。 ヤバイ。 どうしよう」
しかもそんな小言をブツブツと。
この長文メッセージから余程強い意図が汲み取れたらしい。
機械を通すと通じない命力も、ここぞという時にはビンッビンに効いてくれる。
こういう時ほど命力さん、とても空気を読んでくれない。
どうやら勇、エウリィの事をすっかり忘れていた様子。
まぁジョゾウ達との邂逅がインパクト有り過ぎたので仕方ないのかもしれないが。
ともあれこれでは訓練どころではない。
「勇殿は如何なされたのであろうか」
「男とは時に過ちを身に抱えるものだ。 放っといてやれ」
「ホウホウ、なれば男の哀愁も一つ記録に残し識の素としような」
そんな勇の背中をジョゾウが遠慮なくスマートフォンに納めていく。
人間の事をよく知らない彼等なりの好奇心の形だ。
こればかりは隙を見せた者に抗う術など無い。
「投稿するのだけはよしてやれ。 あとここの事はインターネットに上げる事は許可出来んのでそのつもりでな」
「存じておる。 主殿よりそう承っている故な。 拙僧は今まだ『あきぃた』に居る事となっておる。 『いんすとりあるぐらむ』仲間からも疑われてはおらぬよ」
「現代に馴染み過ぎじゃないか?」
それもジョゾウ程のインフルエンサーっぷりを前にすれば。
一体いつどこでこんな知識とノリを覚えたのやら。
スマートフォンを与えたという彼等の主が、まるで陽キャJKにでも見えて来そうな話である。
そもそもジョゾウの性格ゆえというのも否定出来ないけども。
「なれば仕方ありませぬ。 ではちゃな殿の砲撃を想定した訓練に移るとしましょう」
「えいほー!」
しかし勇が居なければ訓練は進まない。
なのでとミゴが切り返し、誰よりも素早く手を上げるちゃなの姿がそこに。
ミゴ主導の訓練の甲斐もあってか、ちゃなも今やこんな声を上げてしまう程に染まっている。
こうなれば仕上がるのも時間の問題か。
明日にでもカラクラ精鋭八人衆になりそうな勢いである。
という訳で訓練内容を少し変える事になったのだが。
「すまぬが、拙僧はもう少し休を長く頂きたく。 良かろうか?」
するとその中で一人、僅かに大柄な者が手を上げ懇願する。
【カラクラ族】メンバーの一人であるムベイだ。
実は彼、七人の中で最も長寿。
若輩者のライゴの二倍近い歳を生きているという。
その所為もあってか、皆より少し体力が乏しいのだとか。
「仕方なかろうな。 ではこのジョゾウが代わりの翼となろう」
彼等には年功序列という概念は無いのだろう。
しかしその能力の低さを支えるのが仲間というもので。
誰一人嫌な顔もせず、頷き応える姿がここに。
そうして仲間達が空へと飛び立っていく―――のだが。
その時ムベイは何を思ったのか、勇の横に座っていて。
まるで慰めるかの如く、肩に翼を回す。
「勇殿、それ程エウリィ王女殿下の事をお想いか?」
「え? あ、いやその、昨日会いに行くつもりだったのが叶わなくて……」
「左様か。 若き娘はせっかちな所もあるからして、きっと怒っておるであろうな」
「そうなんですよね。 だからやっちゃったって。 えっとぉ―――」
「ムベイである」
どうやらムベイは仮病を使ったらしい。
その顔はどこにも疲労の節は無く、至って普通だ。
勇を励まそうとしての事だから悪くはないけれども。
やはりあの落胆ぶりに見て見ぬふりは出来なかったのだろう。
長寿者として、悩みを理解出来る者として。
「今は怒れど、早々に誠意を見せればきっと応えてくれよう。 それにボウジ殿も言うておったが、時には押す事も必要である。 そう強さを見せればおのずと理解もしてくれるハズよ。 意志の強さこそが押しという事なれば、その意志に迎合したいと思わせるのも伴侶の務めであるからして」
「そういうものなのかなぁ」
「拙僧はそうして良き妻と子にも恵まれもうした。 故に今でも夫婦円満よ。 はっは」
何でもムベイにはもう一四ほどになる長男が居るのだそう。
他にも小さな子供達もが。
それだけ子宝と妻に恵まれたからこそ、達観出来ている所もある様だ。
先日の暴れっぷりはただ食事が美味しくて食べ捲りたかっただけに過ぎない。
だからこそこうして勇を励ませられる。
後押しする事だって出来るのだろう。
「そこで勇殿に秘密の言葉を教えて進ぜよう。 エウリィ王女殿下の前で勇気を振り絞り、〝【ロンダッタ】をして頂けませぬか〟と請い願うので御座る」
「ろんだった……?」
「うむ。 その言葉を聴けばきっと王女殿下が手取り足取り教えてくれるであろう。 なぁに、何も悩む事は御座らぬ。 気付けば全てが済んでおる」
「そうかぁ、【ロンダッタ】かぁ……よし!」
そんな想いが、助言が勇の心を奮い立たせた。
長寿者としての知識が勇気をも与えてくれた。
【ロンダッタ】―――その力強く特別な言葉を得て。
「しかし張り切り過ぎてはいかぬぞ? 戦いに向けて力を温存せねばな」
「はい、ありがとうございますムンベイさん!!」
「ムベイである」
なら勇ほどの若者が立ち上がらない訳が無い。
失望させてしまったであろうエウリィに報いる為にも。
そしてこれから待つ期待の一時の為にも。
だからこそ勇はもう走っていた。
城壁どころか城をも飛び越えようとせんばかりの勢いで。
少しでも早く、エウリィに会って仲直りしたいから。
そんな想い見せた背をムベイは眺める。
まるで〝頑張れよ〟と言わんばかりに嘴へと微笑みを浮かばせて。
「ろんだった……? それは一体何なのでしょうか? あ、きっと現代の遊びなのですね!」
しかし現実がそう上手く行くとは限らない。
というか何もかもが上手く行っていない。
そもそも最初から一ミリたりとて噛み合っていない。
どうやらエウリィ、それほど怒ってはいなかった模様。
ついでに言うと、【ロンダッタ】の意味も全く知らない様子。
ただいまランニングマシーンで元気に鍛錬励み中だ。
きっと勇達に触発されたに違いない。
命力は時に人の意思をも運ぶという。
しかし機械同様その力に頼り過ぎるのも如何なものか。
という訳で勇は今ここで再び打ちのめされる事となる。
自分の甘さと思い込み、あと若さゆえの過ちに。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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