時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十九節「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」

~引き千切れ、死の可能性など~

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 遂に勇達へと転機が訪れた。
 茶奈の魔剣破壊を成功させた事によって。

 こうなればもう炎弾などの砲撃は実現不可能だ。
 加えて邪魔だった星達も制御を失い地に堕ちる。
 事実上の戦力半減である。

 もちろん勇達も満身創痍にである事に変わりはない。
 勇の使っていた魔剣【エベルミナク】は刀身を削られた事で死んで。
 心輝の魔剣【灼雷宝鱗甲ラークァイト】は利き手拳部が砕けた。
 瀬玲の魔剣【虹閃奏弓ペルパリューゼ】も砕け散り、武装はもう無い。
 おまけに誰しも傷だらけで消耗も著しいという。

 ただそれでも、作戦成功による気力の充実は大きい。
 心輝や瀬玲の消耗を賄える程に。

 何より進展が目に見えてわかる。
 たかが武器でも、こうして派手に砕ければ期待も生まれよう。
 全人類が見ていたからこそ影響は計り知れない。

「ああ、アあ……ッ!! お前達、よクも、よくモォォォーーー!!!」

 そしてこの結果はアルトラン・アネメンシーにとって大きな想定外だ。
 何故なら―――理論上、魔剣を砕く事など本来は不可能だったのだから。

 邪神制御下の星力ならば、魔剣を限り無く不壊とさせるはずだった。
 例え最高硬度の素材を使わなくとも。
 強制的に分子結合を極限化してしまうからだ。
 おまけに自己修復機能も伴うからこそ、外力が耐久を超える事は無いのだと。
 
 だが勇達の力はその理論さえもを覆した。

 これは茶奈にも無かった情報だ。
 勇達の力がここまで強大であるなどとは。

 故に今、激昂している。
 それは決して魔剣を破壊された事に腹を立てているのではない。

 勇達に自知識を凌駕された事が何よりも許せなかったのだ。
 
「許さぬッ!! 魂ごト磨り潰してやルッ!! 星の力を全テ使い切ろウともォ!!」

「やれるもんならやってみやがれェーーーッ!!」

 魔剣を砕く程の一撃を経てもなお、心輝の気迫は途切れない。
 裂光拳の勢いのまま、追撃の右拳を二発三発と撃ち込んでいく。

ドガガガッ!!!

 その威力は先程までとは格がまるで違う。
 幾ら星力を解放した茶奈とて見過ごせない程に。
 心輝の命力がなお高まり続けている証拠だ。

 だからこそ勢いに押され、再び二人の軌跡が空へと刻まれる事に。

「セリッ!! お前は暫く休んでるんだ、俺とシンで何とかする!!」

 一方の地上では、勇と瀬玲が合流を果たしていた。
 心輝が攻勢に出てる今だからこそ。

 当然心輝自身も二人に気付いている。
 気付いた上で一人で引き付けているのだ。
 少しでも時間を稼ぎ、勇に決定的なチャンスを届けようと。

 自分の力が茶奈に届かない事などわかりきっている。
 それでも今の勢いなら一人ででも押せるだろう。
 なら全てを出し切るまで突っ走ってみせる。
 その命尽き果てるまで。

 これこそが心輝の今抱く覚悟であるが故に。

「冗談ッ!! ここまで来て大人しく出来る訳が無いッ!!」

 だからこそ瀬玲も引こうとはしない。
 心輝の意志を誰よりも理解しているからこそ。
 伊達に小さな頃からずっと一緒だった訳ではない。

「……わかった。 ならとことん付き合ってもらうッ!!」

「おっけぇ……!!」

 正直な所、瀬玲の状態は三人の中で最も酷い。
 魔装はほぼほぼ燃え尽き、インナーさえ露出していて。
 その上で至る箇所から血が流れ、全身を赤黒く染め上げている。
 きっと内臓や骨格にも相当な負荷が掛かっている事だろう。
 炎弾や爆発、光球をもろに受け続けた影響で。

 明らかに立っているのが不思議なくらいの重傷だ。
 おまけに魔剣も無いのだから戦力的には乏しい。

 でも戦意だけは一切衰えが無い。
 この戦いへの意欲だけは昔からずっと変わらないから。

 故に今、己の命力を駆け巡らせる。
 秘術によって身体を強制的に活性化させる為に。
 今一度だけ戦いに参加するだけの力を得ようと。

「で、勝てる算段は?」

「ある。 答えはもう―――!」

「へぇ……! んじゃ、繋げてあげるよ。 その答えまでの道程をさ」
 
 加えて、勇の一言が勇気をも与えてくれた。
 纏う命力に揺さぶりをも与える程に。

 突如、表皮で波打つ命力に変化が訪れる。
 細い糸状へと分かれる様にして伸びたのだ。
 しかも直後、まるで自分自身を縛る様に巻き付いていくという。

ギュギュムッ!!

 そうして引き絞られれば、たちまち蒼光の外装が生まれる事に。
 なんと【疑似命鎧装アレムグランダ】を自らの命力だけで再現したのである。
 その模倣技術に、もはや際限など有りはしない。

「その代わり、埋め合わせはよろしくね。 アメリカ戦の分と、デュラン戦の分とー」

「待て待て、そこまで積んだらどうやって返せばいいかわからないんだが?」

 でもその途端に始まったのは、なんて事の無い普通の会話で。
 瞬く空を二人して見上げながらも普段の笑顔がついつい零れる。
 そんな場違いな緩い雰囲気が確かにあったのだ。

 まるで、二人だけが別の空間に居る様な。

「そんな深く考えなくてもいいよ。 じゃあさ、これが終わったらデート、しよっか」

「は!? ちょ、何でそうなるんだよ!?」

「だから深く考えないでって。 普通に買い物行ってさ、映画観て、ご飯食べて話して。 誰かとゆっくりそんな事がしたい、ただそれだけだからさ」

「ま、まぁそれくらいならいいけどさ」

 きっとこれが瀬玲にとっての一種のリラックスの仕方なのだろう。
 思い詰めるよりも、心輝の様に熱くなるのでもなく。
 ただただ自分らしく、それでいて望むままに。

 だったらこうして一つでも楽しみを作ってもいいだろう。
 その為に突っ走るくらい、許されてもいい。

 例えそれが不純なお楽しみなのだとしても。

「……なんかその約束、シンが『死亡フラグだ~』なんて騒ぎそうだよな」

「ふふっ、言えてる。 ま、私はそんなの軽く引き千切ってやるけどね」

 たったそれだけで明日を生きられるのなら安いものだ。
 そもそも死ぬつもりなど毛頭ないからこそ。

 ならば死の可能性フラグなど千切ってみせよう。
 それも片っ端から跡形も無く。
 そう出来る知恵が彼女にはあるのだから。

「なら折角だ、全員の死亡フラグって奴を纏めて引き千切りに行くぞ。 準備はいいな?」

「上等じゃん。 おっけ、おまけでミス邪神ちゃんにそのフラグ擦り付けてやるわ」

 そんな決意と覚悟が出来たから頷きで返す。
 この後に待つ死線を潜り抜ける為に。

 もう振り返りはしない。
 かつて格好つけるだけだった自分は居ないから。
 例え泥塗れ血塗れとなろうとも生きる為に戦おう。
 
 来たるべき明日にて、仲間達と共に平穏を享受する為にも。



 こうして今、二人もが跳ぶ。
 心輝と茶奈が繰り広げる激闘の最中へと。

 戦いの大詰めを迎えたからこそ、三人で空を翔ける時が来たのだ。


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