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第一節「全て始まり 地に還れ 命を手に」
~守る と いうこと~
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生き物の命を奪う事が気持ち良くない事なんて、勇にもわかっている。
それは理不尽で、残酷で、不道徳な事なのだと。
でも、これからの相手にその様な概念は存在しないし通用しない。
思うがままに人を殺し、蹂躙した怪物達なのだから。
そんな怪物達によって多くの人が不条理に殺された。
自分を守ろうとしてくれた統也もまた。
皆、きっと無念だっただろう。
だからせめて仕返しだけは成したい。
いや、成さなければならない。
そんな強い想いが生まれ、勇を後押しする。
まるで統也がまた勇の背中を押してくれたかの様に。
そのお陰なのだろう
勇の顔が強く引き締まる。
まさに戦いへと赴かんとする戦士の如く。
ならもう、後は仇を見つけて復讐を果たすだけだ。
故に今、勇は一歩を踏み出していた。
剣聖という心強い味方と共に。
―――がそんな時。
ふと、勇がとある事を思い出す。
「あ、そうだ……」
今の今まで興奮しっぱなしですっかり忘れていたらしい。
足元にへたり込んだままの少女の事を。
どうやら傍で一言も上げる事無く蹲っていた様だ。
それも勇と剣聖がやりとりしていた間もずっと黙って。
ただ、彼女ももう落ち着いているのだろう。
ふと勇が見下ろせば、相変わらずの髪越し眼が見返してきて。
にしても髪が寄れたお陰で素顔がほんの少しだけ露わに。
白い肌や意外にくりんとしている眼と、思ったより可愛いのかもしれない。
そんな眼で見られたからか、勇は何だか恥ずかしそう。
忘れていた事も相まって。
「ご、ごめん、すっかり忘れてて……」
「い、いえ……」
でもきっと、少女も起きる機会を見失っていたに違いない。
あれだけ【マモノ】だの剣聖だのが暴れ回っていたのだから。
気が弱いのもあって、じっとしているしか無かったのだろう。
だからか少女も何だか申し訳なさそうだ。
「君、自分で立てる?」
勇がそっと手を差し伸べ、少女が恐る恐る手に取る。
逃げる時に感じた震えはもう残ってはいない。
力の弱い所は相変わらずだけれど。
「はい、なんとか……」
「そうか、よかった」
そのまま引き起こし、少女が立ち上がる。
僅かによろめくも、細い足はしっかりと地に足を突いていて。
立つ事自体は何の問題無さそうだ。
「あの、あ、ありがとうございます……」
そして返って来たのは、気恥ずかしさを伴った穏やかな声で。
チラリと見えた素顔と相まって、淑やかな女の子らしさを醸し出す事に。
それが勇の心に不思議な高揚感を与えてならなくて。
「うん!」
嬉しかったのだ。
少女とやっと会話らしい会話を交わせた事が。
何せ、少女とのまともな対話はこれが初めてで。
今まではずっと「はい」とか「いえ」とかそんなのばかり。
身体の軽さも相まり、まるで人形とさえ思えてならなくて。
だけどこうしてお礼も言ってくれたから、もうそれだけで嬉しくもなる。
善意と、ほんの少しの男冥利が報われた様な気がしたから。
「あ、でも、うーん……どうしよう」
「?」
でも、同時に迷いもあった。
これから統也の仇を取りに向かう事となる。
それも恐ろしい【マモノ】達が居る場所に、来た道をわざわざ戻って。
そうなると彼女は一体どうするべきなのだろうか、と。
統也の仇を取るのは勇個人の意思であり、彼女は無関係だ。
ならいっそここで別れた方が良いのではないか、とさえ脳裏に過る。
それが彼女の為になるかもしれないと思えたからこそ。
「あの、さ……これから俺、君を最初に背負ってた統也って奴の仇を取りに行かなきゃいけない」
「うん」
「だから、俺に付いてくると君にも危険が及ぶかもしれない」
「うん……」
「だからその、君は一人で逃げれる、かなって」
「……」
けれど、うんうんと言い続けた少女も最後だけは頷かなかった。
少女は自身が非力な事を充分に理解していたから。
「一人で逃げろ」なんて言われても、それは絶対に叶わないのだと。
「どうしようかな」
もちろん勇だって放って置けない。
だからこそ悩ましい。
女の子を自分の都合で危険地帯へと連れ回すのは如何なものかと。
その所為か、たちまち精悍だった顔付きが苦悶で歪む事に。
こうなると「ううーん」と唸って止まらない。
だがそんな最中―――
ドッパァーーーンッ!!
突如として勇の背中にとてつもない衝撃が走る。
まるで十本くらいの竹刀で同時に叩かれたかの様な。
「いッてえええッ!?」
これには堪らず飛び出す事に。
手の届かぬ背に必死と腕を回しながら。
「バッカヤロォ! そこは無理でも『俺が守る』って言う所だろぅがよォ無 理 で も!!」
そう、その仕掛け人はやはりこの男。
剣聖が巨大平手打ちで勇に発破を掛けたのだ。
なんだか一言二言多いけれども。
とはいえ勇はもはやそれどころではない様子。
想像以上の痛みに悶え、遂には蹲っていて。
予想外の打たれ弱さに、剣聖もガッカリを隠せない。
「はぁ~……ったく、しゃあねえなぁ、嬢ちゃんくらい俺が守れらぁな」
やはり「守る」の一言は強者の特権か。
そんな剣聖の頼もしい一言に、少女が「はわぁ」と喜びの笑みを零す。
くりんとした瞳をまんまると輝かせながら。
これには勇も落胆を隠せない。
かっこいい所を見せる事も叶わない自分に対して。
そうして「面目ない」と項垂れる姿は情けないの一言で。
でも、そんな勇へ「フフッ」と嬉しそうに笑う少女の姿があった。
それは理不尽で、残酷で、不道徳な事なのだと。
でも、これからの相手にその様な概念は存在しないし通用しない。
思うがままに人を殺し、蹂躙した怪物達なのだから。
そんな怪物達によって多くの人が不条理に殺された。
自分を守ろうとしてくれた統也もまた。
皆、きっと無念だっただろう。
だからせめて仕返しだけは成したい。
いや、成さなければならない。
そんな強い想いが生まれ、勇を後押しする。
まるで統也がまた勇の背中を押してくれたかの様に。
そのお陰なのだろう
勇の顔が強く引き締まる。
まさに戦いへと赴かんとする戦士の如く。
ならもう、後は仇を見つけて復讐を果たすだけだ。
故に今、勇は一歩を踏み出していた。
剣聖という心強い味方と共に。
―――がそんな時。
ふと、勇がとある事を思い出す。
「あ、そうだ……」
今の今まで興奮しっぱなしですっかり忘れていたらしい。
足元にへたり込んだままの少女の事を。
どうやら傍で一言も上げる事無く蹲っていた様だ。
それも勇と剣聖がやりとりしていた間もずっと黙って。
ただ、彼女ももう落ち着いているのだろう。
ふと勇が見下ろせば、相変わらずの髪越し眼が見返してきて。
にしても髪が寄れたお陰で素顔がほんの少しだけ露わに。
白い肌や意外にくりんとしている眼と、思ったより可愛いのかもしれない。
そんな眼で見られたからか、勇は何だか恥ずかしそう。
忘れていた事も相まって。
「ご、ごめん、すっかり忘れてて……」
「い、いえ……」
でもきっと、少女も起きる機会を見失っていたに違いない。
あれだけ【マモノ】だの剣聖だのが暴れ回っていたのだから。
気が弱いのもあって、じっとしているしか無かったのだろう。
だからか少女も何だか申し訳なさそうだ。
「君、自分で立てる?」
勇がそっと手を差し伸べ、少女が恐る恐る手に取る。
逃げる時に感じた震えはもう残ってはいない。
力の弱い所は相変わらずだけれど。
「はい、なんとか……」
「そうか、よかった」
そのまま引き起こし、少女が立ち上がる。
僅かによろめくも、細い足はしっかりと地に足を突いていて。
立つ事自体は何の問題無さそうだ。
「あの、あ、ありがとうございます……」
そして返って来たのは、気恥ずかしさを伴った穏やかな声で。
チラリと見えた素顔と相まって、淑やかな女の子らしさを醸し出す事に。
それが勇の心に不思議な高揚感を与えてならなくて。
「うん!」
嬉しかったのだ。
少女とやっと会話らしい会話を交わせた事が。
何せ、少女とのまともな対話はこれが初めてで。
今まではずっと「はい」とか「いえ」とかそんなのばかり。
身体の軽さも相まり、まるで人形とさえ思えてならなくて。
だけどこうしてお礼も言ってくれたから、もうそれだけで嬉しくもなる。
善意と、ほんの少しの男冥利が報われた様な気がしたから。
「あ、でも、うーん……どうしよう」
「?」
でも、同時に迷いもあった。
これから統也の仇を取りに向かう事となる。
それも恐ろしい【マモノ】達が居る場所に、来た道をわざわざ戻って。
そうなると彼女は一体どうするべきなのだろうか、と。
統也の仇を取るのは勇個人の意思であり、彼女は無関係だ。
ならいっそここで別れた方が良いのではないか、とさえ脳裏に過る。
それが彼女の為になるかもしれないと思えたからこそ。
「あの、さ……これから俺、君を最初に背負ってた統也って奴の仇を取りに行かなきゃいけない」
「うん」
「だから、俺に付いてくると君にも危険が及ぶかもしれない」
「うん……」
「だからその、君は一人で逃げれる、かなって」
「……」
けれど、うんうんと言い続けた少女も最後だけは頷かなかった。
少女は自身が非力な事を充分に理解していたから。
「一人で逃げろ」なんて言われても、それは絶対に叶わないのだと。
「どうしようかな」
もちろん勇だって放って置けない。
だからこそ悩ましい。
女の子を自分の都合で危険地帯へと連れ回すのは如何なものかと。
その所為か、たちまち精悍だった顔付きが苦悶で歪む事に。
こうなると「ううーん」と唸って止まらない。
だがそんな最中―――
ドッパァーーーンッ!!
突如として勇の背中にとてつもない衝撃が走る。
まるで十本くらいの竹刀で同時に叩かれたかの様な。
「いッてえええッ!?」
これには堪らず飛び出す事に。
手の届かぬ背に必死と腕を回しながら。
「バッカヤロォ! そこは無理でも『俺が守る』って言う所だろぅがよォ無 理 で も!!」
そう、その仕掛け人はやはりこの男。
剣聖が巨大平手打ちで勇に発破を掛けたのだ。
なんだか一言二言多いけれども。
とはいえ勇はもはやそれどころではない様子。
想像以上の痛みに悶え、遂には蹲っていて。
予想外の打たれ弱さに、剣聖もガッカリを隠せない。
「はぁ~……ったく、しゃあねえなぁ、嬢ちゃんくらい俺が守れらぁな」
やはり「守る」の一言は強者の特権か。
そんな剣聖の頼もしい一言に、少女が「はわぁ」と喜びの笑みを零す。
くりんとした瞳をまんまると輝かせながら。
これには勇も落胆を隠せない。
かっこいい所を見せる事も叶わない自分に対して。
そうして「面目ない」と項垂れる姿は情けないの一言で。
でも、そんな勇へ「フフッ」と嬉しそうに笑う少女の姿があった。
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