ヒロインはモブの父親を攻略したみたいですけど認められません。

haru.

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ー番外編ーヴィオレット*隣国編*

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あれからサンとレイにはこの件は少し考えると伝えて保留にしてある。

(だって護衛達が違う理由だけど、関わるべきじゃないって思ってるんだよ?
それに私だってそんな暗殺者擬きは怖いよ・・でも、そんな男が孤児院にいるかと思うと尚更気になるんですけど・・・)

部屋の中を歩き回りながら、なんとか打開策を探す・・・

ぐるぐる・・・ぐるぐる・・・ぐるぐる・・・

「・・・・・・・・・」

ぐるぐる・・・ぐるぐる・・・ぐるぐる・・・

何時間も狂ったように歩き続ける。すると、

ブチッッッ
「お嬢様ッッッ!!!
はしたない真似はおやめなさい!」

側についていたケイトが鬼のような形相で、ソファーに座っていなさいッ!と怒鳴りつけてきた

(こ、怖ッッッ・・・そりゃずっと歩き回ってたのは、不味かったかもしれないけど平民だし大目に見ては・・・くれませんね・・・)

私の怠惰な心を見透かしたのかキッと鋭い目で睨み付けられた・・・

少しシュンッ・・・となりながらソファーに腰を下ろした。

「一体どうしたというのですか?
何か悩み事でしょうか?・・・お嬢様・・・」

柔らかな笑顔で私に微笑むケイト。
それはケイトが昔から私を甘やかす時にする笑顔だった。

「やってみたい事が見つかりそうだったのに問題があって解決策が見当たらないの・・・お祖父様達にも相談は出来なくて、それに護衛達も反対してて・・・」

「それでどうされたいのですか?」

「これ以上皆に迷惑はかけたくないけど・・・それでも、やってみたいのよ・・・」

私は誰にも言っていなかった本音や弱音の部分を言ってしまった・・・

(やっぱりケイトに隠し事は出来ないな・・・)

幼い頃に亡くなってしまった母や領主として忙しい父に変わって側にいてくれたケイトが私を育てたと言っても過言ではない・・・
いけない事をすればしっかりと叱り・・・
困ってる時には相談にのってくれて・・・
私が楽しい時は一緒に笑ってくれた・・・
寂しい時には側にいてくれた・・・

そして私の為に隣国へついてきてくれた・・・ケイトには感謝してもしたりない。

ケイトはそうですか・・・と一瞬悩んだ顔をし、「では、旦那様や奥様へ相談いたしましょう。・・・只今お会いできるか、確認して参ります。」と言って部屋から出て行こうと扉に手をかけた。

「え、えッッッ!!!ちょっと待って・・・
まだ2人に相談出来る段階じゃないの。今話したら関わるの事態を止められてしまうわ・・・」

「あら、お嬢様は旦那様達に止められたらそれで諦めてしまうのですか?」

「え・・・だって・・・私は今養われてる身なのよ?・・・それにこれ以上の迷惑は・・・」

私はお祖父様達に身分返上させてしまったという負い目が心の中にあり、俯いてしまった。そんな私を見て側へやって来たケイトは私の前にひざまずき手を両手で握った・・・

「お嬢様、旦那様達はそのように思わせる為に身分を棄ててまでこの地へやって来た訳ではないのですよ?私共も含めて皆、お嬢様の幸せを願っておりますわ・・・」

優しい笑みを浮かべていたケイトが突然握りしめていた手を離して立ち上がった・・・

「それに旦那様達がお嬢様の動きを把握されていないと?・・・旦那様は前回お嬢様が傷つけられた時、側にいられなかった事をそれは後悔されています。その旦那様が同じ失敗をされると思いますか?・・・フフフ」

「今この時も、何かお嬢様の為に動かれてるかもしれませんわね?・・・」

「え?・・・」

ケイトは何かを知っているのか怪しい笑みを浮かべて、「お嬢様もさっさと私共を巻き込む覚悟を決めて下さいッ!・・・」と言って部屋を出て行った・・・

(巻き込む覚悟・・・今でも私のせいでかなり巻き込んでるのにそれ以上を望むなんて、どんだけ私を甘やかすつもりなの・・・皆。)

私は先程のケイトが言った、お祖父様達が何か動かれているかもしれない。という言葉の意味を考えた・・・

(動くって何?・・・私を守るためなんだよね?何から守るの?・・・それに私の動きを把握してるって・・・)

(あ、あれ・・・もしかして・・・)

初歩的な事に気づいた・・・ありえない。
サンもレイもお祖父様から借りた護衛だ・・・だから絶対に報告をしている筈、それが護衛の義務だから・・・

お祖父様達に私の行動が筒抜け・・・

(マ、マヌケ過ぎる・・・私・・・
バレてるならさっさと相談して一緒に解決策を考えてもらえばよかった。)

あれだけ悩んでいたのに、それがあまり意味の無い事だったとわかり脱力した・・・

そしてケイトが部屋に戻り、「只今、お時間がとれるそうなので、談話室へ来るようにと仰られております。」と言って、私をお祖父様達の元へと連れていった・・・

廊下を歩いている途中・・・

「お嬢様いいですか、家族とは失敗を許してくれる存在です。ですからまだやってもいない事に恐れず、挑戦してみて下さい。
せっかくお嬢様が手に入れた新たな人生なのですから・・・」

ケイトは私に更なる後押しをしてくれた。

・・・・・・・・・・・・・・・

「失礼致します・・・お嬢様が参りました。」

案内された談話室は少し肌寒かった廊下とは違い暖炉で暖められた空気が私を包み込み、体が解されるような気分になった・・・

部屋にはお祖父様とお祖母様が2人がけのソファーに座ってお茶を飲んでいた。ケイトは私を向かいのソファーへと案内し、お茶を用意してくれた。

「ヴィオレット、話とは何だ?」

挨拶もそこそこに、いきなり話題を振ってきたお祖父様の目は穏やかな優しい色をしており、表情から何かを読み取る事は出来なかった。

(何の用件かは恐らくバレてるんだから・・・今更ビビってもしかたないよね・・・)

覚悟を決めた私はここ最近の出来事やあの孤児院について話す事にした・・・

「新たな地で何が出来るのかずっと考えてました。新しく何かを始めるのなら、人の為になる事をしてみたいと・・・」

「そして、モーラナ町で知りました。孤児が生きるにはこの世界は厳しすぎるという事を・・孤児の半数以上がまともな仕事につけない。仕事がないという事はお金が稼げないという事。即ち死を意味します・・・」

「孤児なのだから仕方ない・・・そう思う人も少なくないでしょう。皆自分が生きるだけで精一杯。そう思うのは仕方ない事です。
ですが、人が死ぬという事はそれだけ人材が失われるという事です。今回の件に私が孤児に同情して助けたいと思った気持ちがある事は否定しません。ですがそれ以上に孤児に手を差し伸べる事でこの国の助けになるのではとも思うのです。」

「そして今回私が考えたのは孤児に読み書きと算出を教える事、そして私が相談役となり子供達のお金儲けを手助けしたいと考えております。」

「孤児が雇ってもらえないのは学がないからです。だからそれを最低限補ってあげる事で彼等を通常の学力まで押し上げます。そしてお金儲けはあくまで手助け、何をやるかは本人達に考えさせ行動に移させます。そしてお金はあの子達が15歳・・・孤児院を出るまでに貯める費用とさせたいと考えております。」

お祖父様は難しい顔をしながら「穴だらけの案だな・・・」と厳しい言葉を言ってきた。

「まずは孤児院は領主の管轄だ。好き勝手な事は出来ないぞ・・・」

「はい。わかっております。孤児院の方々から信頼と同意が得られた場合領主であるウィルトリア公爵家へ交渉に行きたいと思っております。」

「・・・うむ。では、孤児が何をやるかはわからないが失敗したらどうする。商いや店が頓挫するのはよくある事だ。それに金は必要だぞ?」

「まだ何も決まってない段階で成否は問えませんが、お金は私の個人資産を初期投資致しますので経営には私も口を出しますし、あくまで投資なのでお金の回収方法はきちんと考えます。出来るのであればお祖父様達の助言も得たいと考えているのですが・・・ダメでしょうか?」

最後の方はお祖父様達頼りになっていたし、内容もまだガタガタだ・・・それでも私は引かない。やってみたい。そう目に力を込めてお祖父様を見つめてみた・・・すると、「クっ・・・クハハハハハハハハハハハハッッッ・・・」目に涙を貯めて今まで見たこと無いほどの大笑いをしているお祖父様。

「は、はぁ、はぁ・・ぁ・・・クククッ・・」

「フフフ・・・笑いすぎですよ?あなた・・」

「ああ。わかっている。だが・・・孫から必要とされるのは悪くないな・・・」

「ええ・・・。この地へ来た甲斐がありますわ。こんなに立派なヴィオレットが見られるのなんて・・・」

「え?・・・」

困惑している私にお祖父様達は告げた。

「・・・お前が私達には負い目を感じているのには気づいていた。」

「私達の目には、貴女が早く何かをしなくては、私達に恩返しをしなくてはと焦っているように見えたの。」

「・・・・・・・・・」

「だが、負い目を感じるなといくら言ってもきっと無駄なのだろう?・・・家族とはいえ、誰かに何かを捨てさせるのは罪悪感を感じる物だ。だから私達はヴィオレットが自分で乗り越えるまで見守るつもりだったのだ・・・」

呆けている私に優しく微笑むお祖父様。そしていつの間にか私の隣に座っていたお祖母様が、「でも、貴女の背中を押したのはやっぱりケイトだったわね・・・少し妬けてしまうわ。」といじけたような笑顔をしながら私を抱き締めた

「好きに生きなさい。ヴィオレット・・・
困った事があるなら私達がお前を助けよう。まずはやるだけやってみなさい・・・」

お祖父様の愛情のこもった瞳や表情は孫を応援すると語っているようだった・・・

嬉しかった。応援してくれて・・・でも私の考えを認めたのではなく、孫の頑張りを応援したいという祖父母からの愛情だ。

(世間知らずで実績もない小娘が得られる支援は身内や知り合いになるのは仕方ない・・・対等な相手として接してもらいたいなんて早すぎたしおこがましかったな・・・。
だけど・・・これからだから・・・)

私はいずれお祖父様達が目を見張るような実績を出して孫としてだけでなく、一人の人間として認めてもらおう!と決意を固めていた。

(よし!ヤル気が出てきたぞ・・・)

「では次の話にいこう。」

(・・・次?)

孤児院の話が出来た私は安心のあまり忘れていた。どうして孤児院の話が進められなかったのか・・・レイが恐れていた・・・あの暗殺者擬きの事を・・・

ん?と首を傾げている私を見て苦笑しているお祖父様は「忘れてしまったのか?・・・本題はその件だと思っていたのだか・・・」と言われて、何の話か思い出した私は、サァァァァァッと体温が下がっていった・・・

(わ、忘れてた・・・
え・・・お祖父様から許可は頂いたけど、暗殺者擬きがいるのなら話はまた別じゃない?)

振り出しに戻った気分の私は、溜め息をついて落胆する姿を隠す事が出来なかった・・・



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