これはあくまでフィクションですが、私がみた夢の話を誰かきいてくれませんか?

芝 稍重

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4話 秋山遥香の日記①(抜粋、固有名詞の変更以外は原文まま) ※2004.04 某日

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2004年4月10日


お兄ちゃんが死んだ。
自殺ってなに?
昨日まで笑ってた人が急に死んだって言われても、私は信じない。

お父さんもお母さんもずっと泣いてる。
泣いてるってことは、お兄ちゃんが死んだことを受け入れたってこと?

昨日まで普通だったのに、家が息苦しい。
学校を二週間も休んでいいんだって。
お父さんも仕事を休むらしい。
普段ならめちゃくちゃ嬉しいことなのに、この家に居たくない。

べつにお兄ちゃんとは、特別仲良かったわけじゃない。
同じ中学に通うようになってからは、兄妹だって友達にバレたくなくて、学校で会ってもお互い無視してたし、一緒に遊ぶこともなかった。
でも、私のお兄ちゃんじゃん。
私は多分、何年経っても信じられないと思う。
涙を流してるお父さんとお母さんが、冷たい人間に思えるって変かな。変だよね。
だって、普通にかんがえたら、家族が死んだのに泣かないほうが冷たいもん。 
でも私にはどうしても、泣いてるお父さんお母さんが裏切り者みたいに感じちゃう。これってある意味私も、ちょっとおかしくなってるのかな。

わかんないけど、お兄ちゃんの友達や家族じゃない人が泣いてたら、もっとイライラするかもしれない。




2004年4月11日

お父さんとお母さんはお葬式の用意だかなんだかでずっと忙しくしてるから、昨日より家にいるのが楽だった。
お兄ちゃんが死んだこと、一日経ってもどうしても信じられなくて、なんとなくお兄ちゃんの部屋に入った。なんか臭かった。
机の上にはMDプレイヤーが出しっぱなしだし、コンポの上にはTSUTAYAから借りたCDがたくさんあった。
そのラインナップが微妙すぎて絶句……
いつからこんな音楽聴くようになったんだろう。おじさんくさい。

でも、おかげで気になることがいくつかできた。
お兄ちゃんは確かにだらしないけど、もし死ぬって決めてたなら、CDはTSUTAYAに返すと思う。
だってケチだから。
あの性格なら、延滞料の心配して死にきれなくなると思う。
それに、なんだかんだで結構何でも最後までやり切るタイプの人だからね。

小さい頃、私が途中で辞めた雪だるま作りも、お兄ちゃんは夕方までかけて特大のものを完成させてた。
東京の道に積もった雪をあちこちから集めて転がして、そうやって作ったから、めちゃくちゃ汚い色だった。
私が「世界一汚い雪だるま」って言って笑ったら、バカにされたのになぜか誇らしそうにしてたっけ。
でも、お兄ちゃんは最後までやりきった。

ピアノだって、お兄ちゃんは不器用で才能なかったくせに、いつまでも辞めなかった。弾けないくせに続けてた。できないくせに諦めなかった。
そうやって、いまでは学校代表で校歌の伴奏まで任されてる。
私は初めからわりと上手かったのに、小五で友達と遊ぶ時間がほしくて、簡単に辞めた。
そしたらいつのまにかお兄ちゃんに抜かされてた。本当はお兄ちゃんをみて少し後悔してたけど、もう追いつける気がしないから、全く興味がないフリしかできなかった。

お兄ちゃんはこんな簡単に最後までできることを、途中で終わらせる人じゃないと思う。
でも、そんなことをお父さんやお母さんに言ったら、荒れる未来しか見えないから言わない。

でも、そうなんだよ。
お兄ちゃんはやり遂げる人。

CDだけじゃない。
そもそも途中で人生を投げ出すわけがないと思う。
自殺って嘘なんじゃないかな。本当は事故や事件なんじゃない?
それとも、私たち家族が知らないだけで、本当はもうそんなお兄ちゃんじゃなくなるくらい、重い悩みでもあったのかな。

こんなこと、日記にしか書けない。これを口にだしたら、私が最低人間になっちゃうから。





2004年4月14日

朝起きた瞬間、全部夢だったのかと思ったけど、一秒で全部おもいだした。胃が痛くなった。

一昨日のお通夜で、お父さんとお母さんに「なんで泣かないの?」って聞かれた。
昨日のお葬式で、お兄ちゃんの友達に「泣かなくて強いね」って褒められた。

無性にイライラした。
これは、強いとかそういうのじゃない。受け入れてないだけ。認めてないだけ。

頭ではわかってるから態度にはださなかっただけ。
本当は、お葬式も火葬も、何もかもぶっ壊してやりたいくらいむかついてた。
本当は哀しまなきゃいけない時にずっとイライラしてるなんて、やっぱり私ってちょっとおかしいんだろうな。





2004年4月15日

お兄ちゃんのCDを返しに行ってあげた。
返却ポストに入れるだけでよかったのにやたら気になっちゃって、もう一度同じものを借りた。
だって、お兄ちゃんはもともと音楽のセンスだけは良かったから。
みんな知らないような古い洋楽をすらすら歌えて、そこだけはちょっとだけかっこよかったから。まあ、歌は下手だったけど。
でも、普通に気になったんだ。
なんでこんなにたくさん沖縄民謡ばかり借りてるのかなって。
多分、お兄ちゃんが気にいるようなすごい曲が入ってたんだと思う。
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