外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
109 / 298
ボーハルト復興

16.尻のために

しおりを挟む
 ホランドがボーハルトに来て一安心、と思ったのも束の間でむしろ俺にとっては更に忙しい日々が始まることになってしまった。

 まず洞窟からバット・グアノを運び出すための採掘集団と輸送集団がやってきたのだ。
 採掘されたバット・グアノは一旦ボーハルトに集積し、その後に旧カドモイン領各地に配られる手はずになっていた。

 採掘周りの管理はルビキュラたちに、ボーハルトの方はホランドに任せることになったから良かったものの、もし両者とも繋がりを持っていなかったら大変なことになっていただろう。

 トロブとボーハルト、洞窟を往復する忙しい日々を送りながら俺は改めて運と縁に感謝していた。




 そんなある日、洞窟に行くと道路に人だかりができていた。

「どうかしたのか?」

「ああ、テツヤさんじゃないすか。実は荷馬車が壊れちまってこのままじゃ走らせられないんすよ」

「どれどれ、車軸が折れているのか。これならすぐに直せるよ」

 俺は素早くその荷馬車を直した。

 ついでに車軸に付けられていたベアリングの精度も上げておこう。


「おお、凄え!流石はテツヤさんだ!」

「これで作業の遅れを取り戻せるぜ!」

 そう言って作業に戻ろうとした男たちに俺は何か違和感を覚えた。


「なあ、なんでみんな歩いているんだ?荷馬車に乗った方が疲れないし効率良くないか?」


「それなんですがね…」

 男たちはばつが悪そうに口ごもった。

「荷馬車に座ってると揺れるたびに尻を打っちゃって痛くて痛くて。かえって疲れちまうんでさあ」

「そうそう、荷台に立っていても揺れると酔っちまって。それなら歩いていった方がまだ疲れないんですよ」

 むむ、そうなのか。

 確かにここからボーハルトまでは未舗装路だからどうしても轍や凹凸は避けられない。

 荷馬車の車輪は小さいから地面のギャップを伝えやすいし御者台にクッションを置いても限界があるのだろう。

 本当はアスファルトを敷きたいところだけど原料になるアスファルトがない以上、別の方法を考えないと…


「そうだ!これならいけるかもしれない!」

 俺はすぐにボーハルトへと飛んでいった。



 ボーハルトに戻って空き家から鉄なべやフライパンなど鉄製の道具をかき集め、それでバネとシャフト、シャフトを通すためのパイプを作りあげた。

 ちょうどそこにバット・グアノを積んだ荷馬車がやってきた。

「ちょうどいいところに来た。ちょっと戻るのを待ってくれないか?」

 俺はその荷馬車の御者台を分解して御者台にシャフトを、荷台の御者台を乗せる部分にパイプを取り付けてその間にバネを付けた。

 簡単なサスペンションの出来上がりだ。

「これを試してみてくれないか。多少揺れるかもしれないけど今までよりマシになると思うんだ」


「本当に大丈夫なんで……うわっなんだこれ!尻が弾んでるみてえだ!揺れても全然痛くねえ!」

 半信半疑だった荷馬車の御者が仰天している。

「そいつは押しバネというんだ。荷重がかかれば縮むけど元に戻る力が働くから衝撃が加わらなくなるんだよ」

「す、凄え…これなら尻のことを気にせずに馬車を走られるようになりますぜ!」

「今までの倍くらい効率が良くなりますよ!」

「あっしらの馬車にも取り付けてくださいよ!」

 騒ぎを聞きつけて次々に人が集まってきた。

 これはベアリングの時の二の舞になりそうな予感がするぞ。

 とは言え今回はゲーレンさんもいないから俺一人でやるしかなさそうけど少なくとも馬車の数は限られているしなんとかなるか。

 苦笑いをしつつ俺は作業を続け、結局その日は馬車が来るたびに座席にサスペンションを取り付けていた。

 さ、流石に疲れたぞ。


 トロブに戻った俺はヘトヘトに疲れ切っていたから食事もそこそこに風呂に入ることにした。

 風呂に入りながらも考えていたのは早く眠りたいということだった。

 この世界のベッドのマットレスはウールで出来ていてそれはそれで心地が良いんだけど、こういう泥みたいに疲れた日は地球のベッドが恋しくなる。

 待て、バネができたということはスプリングコイル式のベッドも作れるんじゃないか?

 そう考えると無性にベッドで寝たくなってきた。

「よし、次はベッドを作るぞ!」


 俺は勢いよく湯船から立ち上がった。


「なにか良いことでも考え付いたのか?」

 突然横から声がした。

「うわあっ!ア、アマーリア!なんでここにいるんだよ!?」

 湯船に浸かっていた俺の隣にはいつの間にかアマーリアがいた。

 そういえばさっきから背中に何か柔らかいものが当たっていたような気がしてたけど…まさか…


「なんでって、私が入っていたらテツヤが来たのだぞ?」

 …そ、そうだっけ?疲れすぎてぼんやりしてたからよく覚えてないんだけど、確か脱衣所に服はなかったような…

「ああ、今日は暑かったから汗をかいてしまってな。服は洗濯場に置いてきたのだ」

 そういえば裸族だったことを忘れていた。


「そんなことよりもだな…」

 珍しいことにアマーリアが頬を染めている。


「その、流石にこれは目のやり場に困るのだが」

 言われて初めて俺がアマーリアの目の前で立ち上がっていたことに気付いた。

 全裸で。



「うわああっ!!ごめん!!!」

 慌てて湯船にしゃがみこむ。

 しかしこれでは再びアマーリアと一緒にお風呂に入ることになってしまう。


 ちらりと横目で見ると濁ったお湯からアマーリアの見事な裸体が見え隠れしている。



「お、俺はもう出るからゆっくりしていってくれ!」

 俺は慌てて風呂場から飛び出した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

処理中です...