外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
270 / 298
ベルトランの災厄

14.マッシナ

しおりを挟む
「マッシナか…」

 ゼファーが唸った。

 食事も終わり、デザートのアイスクリームを食べながらの四方山話はいよいよ本題である虫害へと移っていた。

 それにしてもゼファーは気が付けば甘いものを食べている気がする。

 意外と甘党なのか?

 落ち着いたらかき氷でも教えてやろうかな。


「知っていたのか?」

 ゼファーの反応は明らかに予想外だったというそれじゃない。

「…知っていた、というのとは少し違うな」

 そう言ってゼファーがヘルマを見た。

 ヘルマは小さく頷くと咳払いをして話し始めた。

「陛下も今回の虫害はただごとではないと認識しておられる。これだけの規模となると人為的なものとは考えにくいが可能性がないわけではない。なのでそちらの方向についても調査をしていたのだ」

 小さな可能性にも力を割けるのはベルトラン帝国ならではだな。

「まず我々はこの虫害で利益を増やした商人、貴族を洗い出した。しかしシセロはその中には入っていない」

 入ってないのかよ!

「次に行ったのは虫害が起こってから極端な政策を打ち出した地方の豪族、地区総督、有力者の調査だ。この機に反旗を翻す者が出ないとも限らぬ。あるいはそのためにこれを起こしたという可能性もある。そしてシセロはその中にも入っていない」

「待った。それはおかしいんじゃないか?エイラはそのマッシナという土地から巡礼者が来なくなったと言っていたぞ。人の出入りを制限しているんじゃないのか?」

「それはこちらも認識している。しかしそれは他の地区総督も行っていることなのだ。己の領地へ虫を持ち込ませない、虫を持ち出さないということでな。地区総督にはそれを行う権限もある」

 ヘルマが話を続けた。

「シセロは我々の調査では何も怪しい部分がなかった。領地は虫害で被害を被り、利益は上がるどころか下がっている。地区総督としての政策にもおかしなところはない」

「じゃあなんで…」

「それとは別件でシセロを注視していたのだ」

 ゼファーが言葉を継いだ。

「シセロはこの国で代々続く亜晶鉱山の鉱山主でな。お主らが高純度の亜晶を提供したことで閉山を余儀なくされた。まあそれを命じたのは余なのだが、ともかくそれによってシセロの収入源が大きく断たれたのは事実だ」

「つまり…?」

「貧すれば鈍するという言葉もあるようにそういう事態に陥ったものは間違った選択をしでかすことがよくある。そういう理由で彼の者に目を付けていたのだ。しかしそれもそろそろ解こうと思っていたのだが…」

 ゼファーが軽くため息をついた。

 その顔には微かにやるせなさが浮かんでいる。

「ともあれお主たちの話からシセロが虫害の被害を偽って報告している可能性が出て来た以上無視するわけにもいかなくなった。しかしこの程度の噂話では正式な調査隊を派遣して臨検を行うわけにもいかぬ。大事にすると隠蔽される恐れもあるしな」

 そう言ってゼファーが俺を見た。

 そういうことね。

 俺は軽くため息をついた。

「わかったよ。俺が行ってそのシセロという男のことを調べればいいんだろ」

「余はまだ何も言っておらぬぞ」

 ゼファーは俺の言葉ににやにやしながら答えた。

「いいさ、どっちにしろ報告だけして後は任せたというつもりもなかったんだ。乗り掛かった舟だし最後まで面倒を見るよ」

「その性格は相変わらずのようだな。しかし今回は余も最大限の支援をしよう。必要なものがあれば何でも言うがよい。すぐに手配させよう」

「だったら案内人を頼めるかな?なんせこっちは誰もそのマッシナについて知らないんだ」

「それならばもう用意してある」

 ゼファーが指を鳴らした。

 それを合図にヘルマが退出してすぐに何者かを引き連れて戻ってきた。

 こうなることが分かって事前に手配していたのかよ!

 相変わらず抜け目がないというかなんというか…

「シセロのことを調べさせるつもりではなかったのだがな。このような事態だ、お主には何かと手勢が必要だと思って用意していたのだ」


 その男?は両手を後ろ手に縛られて頭に革袋を被らされていた。

 床に跪いて全身をぶるぶる震わせている。

 これが本当に案内人なのか?

 ヘルマが乱暴に革袋をはぎ取った。


「お、お願いです!命ばかりはお助けを!何でもしますから!というか俺ってそこまで酷いことしてないっすよね!?こんなのってあんまりっすよ!」

 男は革袋が取れた途端に猛烈な勢いで命乞いを始めた。

「キツネ!?」


 その顔を見て俺は目を丸くした。

「は?え?え?テ、テツヤさん?なんでここに?って…へ、陛下ぁっ!?」


 それはかつてベルトラン帝国で一緒に行動したことのある冒険者、を名乗る限りなくペテン師に近い男、キツネだった。

 俺の姿に気付いたキツネは目を飛び出さんばかりに仰天していた。

 それから周囲を見渡してゼファーとヘルマを認めたキツネの顔が青から白へ、そしてまた青へと変わっていった。


「久しぶりだのう、キツネよ。息災であったか?」

 にやにやと笑いながらゼファーが話しかけるとキツネはまるでシバリングでもおこしたように震えはじめた。

「す…すいませんでしたぁっ!た、ただの出来心だったんです!もう二度としません!心を入れ替えますからどうか…どうかご慈悲を!」

 キツネは両手を縛られたまま床に頭をこすりつけて命乞いを再開した。

 こいつ何をやらかしたんだ?

「なに、大したことなどしておらぬよ。違法カジノでいかさまディーラーをしていたかどで捕まっていたのだ」

 違法カジノって…いかさまディーラーって…

 俺は頭を抱えた。

「テ、テツヤさん!いやテツヤ様!俺とあなたの仲じゃないっすか!どうかテツヤ様からも陛下に一言御口添えをしてくださいよ!この通りっす!」

 キツネが俺に向かって哀れな口調で嘆願をしてきた。

「で、こいつをどうすんの?マッシナに向かう前の景気づけに処罰でもするのか?」

「そ、そんなご無体な!」

「そんなことなどせぬよ」

 ゼファーはおかしそうに笑いながらヘルマに合図をしてキツネの拘束を解かせた。

 不思議そうな顔をするキツネに向かってゼファーが口を開いた。

「キツネよ、お主にはマッシナへの道案内をしてもらう」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

処理中です...