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ベルトランの災厄
15.帰らずの地
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「へ?あっしが道案内?」
ゼファーの言葉にキツネはきょとんとしている。
「こいつが道案内ぃ?」
俺はあからさまに面倒そうな声をあげた。
「その通りだ」
俺たち二人の反応を見て満足そうに頷くゼファー。
「こやつは我が国の各地方を旅しながら冒険者をしているそうではないか。ならばマッシナのことも知っているはずだ。そうであろう?」
「そ、そりゃまあ…知らないこともないっすけど…」
突然ゼファーに話を振られてキツネがびくびくしながら答える。
「ならば決まりだな。テツヤたちの案内は任せたぞ」
ゼファーはそう言ってキツネの肩を叩いた。
「で、でも…そいつはちょっと…」
何故かキツネは気が進まなそうだ。
「嫌なのか?ならばまた不法賭博と詐欺の罪で投獄してもらわねばならぬな。刑期は…そうだな、五年もあればいいか」
「喜んでやらせていただきます!」
キツネは背筋を伸ばしながら居酒屋店員のように叫んだ。
「うむ、それでこそだ。無事に任務を果たした暁には恩赦も期待して良いぞ。後のことはヘルマに一任してある。ヘルマよ、テツヤたちの世話は任せたぞ」
「はっ」
ヘルマの敬礼を合図にゼファーとの会食と会見が終了した。
俺たちはそれから王城内の客間へと案内され、そこで更に詳しい打ち合わせをすることになった。
客間とは言ってもそこはまさに王侯貴族の居室と言っていい豪華さだ。
「はえ~こんな世界があるんすねえ」
さっきまで震えていたのはどこへやら、キツネは子供のようにキョロキョロと辺りを眺めまわしている。
「それどころじゃないだろ、あの時ゼファーが渡した報酬はどこにやったんだよ」
俺は呆れたようにため息をついてキツネを睨みつけた。
「へへっ、俺は宵越しの金は持たない主義でして」
すまし顔でキツネが答える。
こいつ、数年遊んで暮らせるだけの金を一年足らずで使い切ったってのかよ!
実は大物なんじゃないだろうか?
「ともかくだ、まずはそのマッシナについて教えてもらうぞ」
「…それなんですがね、あそこはやばいっすよ」
キツネの口調が急に低くなった。
「やばい?何がだ?」
「マッシナは冒険者にとって還らずの土地って噂が立ってるんすよ。今回の虫害は冒険者にとっても死活問題なんでどこそこは被害が少ないってのが今一番ホットな話題になってるんす。そういう所は仕事もあるっすからね」
キツネが調子に乗って話し始めた。
「で、そういうところはウルカンシアとか何ヶ所かあるんすけどマッシナもその一つなんす。特にマッシナは被害が全然ないと一時話題だったんすよ」
そんな話が広まっているのか。
ヘルマを見ると首を横に降ってきた。
どうやら国の機関には伝わってきていないらしい。
「そりゃこういうのは冒険者の間だけの話っすよ。うかうか広められたら商売あがったりっすからね。おっと、喋り過ぎちまった」
キツネがおどけたように口を塞いだ。
「そういえばウルカンシアも被害が少ないけど調査が入っているのか?」
「あそこは別だ。既に国のものが火神教の中に入り込んでいるしな。むしろウルカンシアをモデルケースにして虫害を抑えようとしているところだ」
ヘルマはそう説明するとキツネに話を続けろと促した。
「それで何人か、いや十人や二十人じゃ効かない冒険者がマッシナに向かったんすけど誰も帰ってきてないって話題になってるんす。今じゃ冒険者の間じゃマッシナの話はタブーになってるくらいで」
「そこまで大事になっているのなら何故報告しないのだ!」
流石にヘルマがキツネを咎めた。
「それはそれ、冒険者の性ってやつでさ。冒険者ってのは脛に傷持つ連中が多いんすよ。わざわざ報告に行って痛くもねえ腹を探られちゃ堪らねえでしょ?」
「まったく…」
ヘルマはため息をついた。
「そういう金の匂いに敏い連中は特にそうなんすよ。ともかくマッシナはやばいって評判なんす。そういう所にはなるべく関わり合いにならないってのが俺のポリシーでして」
「そのポリシーも今回は曲げてもらおう」
キツネの軽口にヘルマは冷たく言い放った。
「しかしそんなことになっているのであればますます怪しいということになるな」
リンネ姫が口を開いた。
「おそらく中に入り込むのも容易ではないはずだ」
「その通り。マッシナを出入りする者は人でも荷物でも全て入念にチェックされている」
ヘルマがその言葉に頷く。
「堂々と入っていっちゃ駄目か?査察とかなんとか理由をつけてさ」
「できないこともないが…できることならそれは最後の手段にしたい。今は未曽有の事態であり陛下の施策が問われているのでな。無理を通すと反発の力が強まる恐れがある。それは避けたいところだ」
なるほど、あくまで大事にしたくないという訳か。
そもそも俺に行かせるのもそのためだもんな。
「その辺は大丈夫だろう。そのために道案内を用意したのだからな」
「やっぱり俺っすか…」
キツネががっくりと肩をうなだれた。
「当然だ。貴様のことだからマッシナまで気付かれずに行く道も知っているのだろう。案内してもらうぞ」
「お勧めはしねえんですけど…」
キツネは気乗りしないというようにため息をついた。
ゼファーの言葉にキツネはきょとんとしている。
「こいつが道案内ぃ?」
俺はあからさまに面倒そうな声をあげた。
「その通りだ」
俺たち二人の反応を見て満足そうに頷くゼファー。
「こやつは我が国の各地方を旅しながら冒険者をしているそうではないか。ならばマッシナのことも知っているはずだ。そうであろう?」
「そ、そりゃまあ…知らないこともないっすけど…」
突然ゼファーに話を振られてキツネがびくびくしながら答える。
「ならば決まりだな。テツヤたちの案内は任せたぞ」
ゼファーはそう言ってキツネの肩を叩いた。
「で、でも…そいつはちょっと…」
何故かキツネは気が進まなそうだ。
「嫌なのか?ならばまた不法賭博と詐欺の罪で投獄してもらわねばならぬな。刑期は…そうだな、五年もあればいいか」
「喜んでやらせていただきます!」
キツネは背筋を伸ばしながら居酒屋店員のように叫んだ。
「うむ、それでこそだ。無事に任務を果たした暁には恩赦も期待して良いぞ。後のことはヘルマに一任してある。ヘルマよ、テツヤたちの世話は任せたぞ」
「はっ」
ヘルマの敬礼を合図にゼファーとの会食と会見が終了した。
俺たちはそれから王城内の客間へと案内され、そこで更に詳しい打ち合わせをすることになった。
客間とは言ってもそこはまさに王侯貴族の居室と言っていい豪華さだ。
「はえ~こんな世界があるんすねえ」
さっきまで震えていたのはどこへやら、キツネは子供のようにキョロキョロと辺りを眺めまわしている。
「それどころじゃないだろ、あの時ゼファーが渡した報酬はどこにやったんだよ」
俺は呆れたようにため息をついてキツネを睨みつけた。
「へへっ、俺は宵越しの金は持たない主義でして」
すまし顔でキツネが答える。
こいつ、数年遊んで暮らせるだけの金を一年足らずで使い切ったってのかよ!
実は大物なんじゃないだろうか?
「ともかくだ、まずはそのマッシナについて教えてもらうぞ」
「…それなんですがね、あそこはやばいっすよ」
キツネの口調が急に低くなった。
「やばい?何がだ?」
「マッシナは冒険者にとって還らずの土地って噂が立ってるんすよ。今回の虫害は冒険者にとっても死活問題なんでどこそこは被害が少ないってのが今一番ホットな話題になってるんす。そういう所は仕事もあるっすからね」
キツネが調子に乗って話し始めた。
「で、そういうところはウルカンシアとか何ヶ所かあるんすけどマッシナもその一つなんす。特にマッシナは被害が全然ないと一時話題だったんすよ」
そんな話が広まっているのか。
ヘルマを見ると首を横に降ってきた。
どうやら国の機関には伝わってきていないらしい。
「そりゃこういうのは冒険者の間だけの話っすよ。うかうか広められたら商売あがったりっすからね。おっと、喋り過ぎちまった」
キツネがおどけたように口を塞いだ。
「そういえばウルカンシアも被害が少ないけど調査が入っているのか?」
「あそこは別だ。既に国のものが火神教の中に入り込んでいるしな。むしろウルカンシアをモデルケースにして虫害を抑えようとしているところだ」
ヘルマはそう説明するとキツネに話を続けろと促した。
「それで何人か、いや十人や二十人じゃ効かない冒険者がマッシナに向かったんすけど誰も帰ってきてないって話題になってるんす。今じゃ冒険者の間じゃマッシナの話はタブーになってるくらいで」
「そこまで大事になっているのなら何故報告しないのだ!」
流石にヘルマがキツネを咎めた。
「それはそれ、冒険者の性ってやつでさ。冒険者ってのは脛に傷持つ連中が多いんすよ。わざわざ報告に行って痛くもねえ腹を探られちゃ堪らねえでしょ?」
「まったく…」
ヘルマはため息をついた。
「そういう金の匂いに敏い連中は特にそうなんすよ。ともかくマッシナはやばいって評判なんす。そういう所にはなるべく関わり合いにならないってのが俺のポリシーでして」
「そのポリシーも今回は曲げてもらおう」
キツネの軽口にヘルマは冷たく言い放った。
「しかしそんなことになっているのであればますます怪しいということになるな」
リンネ姫が口を開いた。
「おそらく中に入り込むのも容易ではないはずだ」
「その通り。マッシナを出入りする者は人でも荷物でも全て入念にチェックされている」
ヘルマがその言葉に頷く。
「堂々と入っていっちゃ駄目か?査察とかなんとか理由をつけてさ」
「できないこともないが…できることならそれは最後の手段にしたい。今は未曽有の事態であり陛下の施策が問われているのでな。無理を通すと反発の力が強まる恐れがある。それは避けたいところだ」
なるほど、あくまで大事にしたくないという訳か。
そもそも俺に行かせるのもそのためだもんな。
「その辺は大丈夫だろう。そのために道案内を用意したのだからな」
「やっぱり俺っすか…」
キツネががっくりと肩をうなだれた。
「当然だ。貴様のことだからマッシナまで気付かれずに行く道も知っているのだろう。案内してもらうぞ」
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キツネは気乗りしないというようにため息をついた。
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