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暗闇の中を意識が泳ぐ。
遠くから光が見えた……かと思えば、声も聞こえてきた。
「諦めないで!!」
あぁ……そう言えば海へ落ちたんだっけ……? なんて他人事のような思考が蘇り、ふと目を開けた。
「あ、起きたわ」
「!?」
目を開ければ、すぐそこに可愛らしい女の子の顔があった。こんな至近距離で誰かと顔を合わせるなんて事、産まれてから経験した事がない。
もはや口づけ出来る距離だった為、ホセは反射的に顔を背けた。
「そんなにいきなり頭を動かさないで!」
緊迫するような叫び声に、ホセの身体はビクリと震える。
少女が自分から離れたのを視界の隅に捕らえたホセは、ゆっくりとした動作で頭を元の位置へと戻した。
「殿下……良かった……怪我は痛みますか?」
護衛が涙目になりながら問いかけてきて、ホセは肩の痛みに気が付いた。
更に言えば、とても寒い。保温の為だろうか、余計な衣服は取り除かれて、身体はタオルにくるまれており、近くには焚火がおこされていた。
「……すまなかったな」
多分、自分は危なかったのだろうとホセは理解し、謝罪の言葉を口にした。
自分に何かあった場合、責任を問われるのは護衛だ。今回は全て自分の勝手な行動のせいだ。申し訳なく思えて、仕方ない。
だけれど……ホセは起きて少女を見た時から、胸の鼓動が止まらず、どこか落ち着かないのだ。
罪悪感と共に、浮ついた気持ちもどこかにある。
「殿下を守れなかった自分の落ち度です……生きていてくださって良かった……」
護衛は、焚火の近くでこちらに背を向けて何かをしている、先ほどの少女へと視線を向け、小さく頭を下げていた。
ホセが海へ落ちる時の記憶が正しければ、護衛は自分を守る事が出来ず……海の中では少女の影を見た気がしたのだ。
そして……目覚めれば可愛らしい少女が自分の側に居た。
「……あの子は……?」
護衛の視線の先を追って、息が苦しくなる程に鼓動が高鳴るホセは、気持ちを落ち着かせ何とか言葉を絞り出した。
「あのご令嬢が殿下を救ってくれたのです」
「!」
護衛の言葉に、ホセは感銘を受ける。
きっと自分はあの子に一目ぼれをしたのだ。その相手が自分の命を助けてくれた人だとは!
ホセは、ゆっくりと身体を起こす。
「もう起き上がっても大丈夫なの?」
その様子に気が付いた少女は、ホセの方へと顔を向け問いかけた。
「あぁ……命を助けてくれて感謝する」
ホセは少女の目を真っすぐ見つめて言葉を述べた。
あぁ……何て勇敢な少女なのだろう。
何も顧みず、誰かが溺れているというだけで、自ら海へと飛び込む優しき人。
だけれど、そんな心優しい少女は、どこか寂しそうな目をして遠くを見つめた。
遠くから光が見えた……かと思えば、声も聞こえてきた。
「諦めないで!!」
あぁ……そう言えば海へ落ちたんだっけ……? なんて他人事のような思考が蘇り、ふと目を開けた。
「あ、起きたわ」
「!?」
目を開ければ、すぐそこに可愛らしい女の子の顔があった。こんな至近距離で誰かと顔を合わせるなんて事、産まれてから経験した事がない。
もはや口づけ出来る距離だった為、ホセは反射的に顔を背けた。
「そんなにいきなり頭を動かさないで!」
緊迫するような叫び声に、ホセの身体はビクリと震える。
少女が自分から離れたのを視界の隅に捕らえたホセは、ゆっくりとした動作で頭を元の位置へと戻した。
「殿下……良かった……怪我は痛みますか?」
護衛が涙目になりながら問いかけてきて、ホセは肩の痛みに気が付いた。
更に言えば、とても寒い。保温の為だろうか、余計な衣服は取り除かれて、身体はタオルにくるまれており、近くには焚火がおこされていた。
「……すまなかったな」
多分、自分は危なかったのだろうとホセは理解し、謝罪の言葉を口にした。
自分に何かあった場合、責任を問われるのは護衛だ。今回は全て自分の勝手な行動のせいだ。申し訳なく思えて、仕方ない。
だけれど……ホセは起きて少女を見た時から、胸の鼓動が止まらず、どこか落ち着かないのだ。
罪悪感と共に、浮ついた気持ちもどこかにある。
「殿下を守れなかった自分の落ち度です……生きていてくださって良かった……」
護衛は、焚火の近くでこちらに背を向けて何かをしている、先ほどの少女へと視線を向け、小さく頭を下げていた。
ホセが海へ落ちる時の記憶が正しければ、護衛は自分を守る事が出来ず……海の中では少女の影を見た気がしたのだ。
そして……目覚めれば可愛らしい少女が自分の側に居た。
「……あの子は……?」
護衛の視線の先を追って、息が苦しくなる程に鼓動が高鳴るホセは、気持ちを落ち着かせ何とか言葉を絞り出した。
「あのご令嬢が殿下を救ってくれたのです」
「!」
護衛の言葉に、ホセは感銘を受ける。
きっと自分はあの子に一目ぼれをしたのだ。その相手が自分の命を助けてくれた人だとは!
ホセは、ゆっくりと身体を起こす。
「もう起き上がっても大丈夫なの?」
その様子に気が付いた少女は、ホセの方へと顔を向け問いかけた。
「あぁ……命を助けてくれて感謝する」
ホセは少女の目を真っすぐ見つめて言葉を述べた。
あぁ……何て勇敢な少女なのだろう。
何も顧みず、誰かが溺れているというだけで、自ら海へと飛び込む優しき人。
だけれど、そんな心優しい少女は、どこか寂しそうな目をして遠くを見つめた。
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