モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜

文字の大きさ
28 / 112
唐突なる別離

03

しおりを挟む


 そして更に時間は流れ……。

「我はアッシュフィールド家後継者、シルヴェスター・アッシュフィールドである! 兄上にお目通り願いたい!」

 白馬に乗って表れ、正門で堂々と名乗りを上げる長身の男。
 濃紺の髪に同じ色の瞳を持つ……。

「…………何か、想像と違うな」
「異母兄弟とはいえ、お前の弟だからな。馬鹿正直な所は似てるんじゃないのか?」

 余計な一言を躊躇なく口にする、それがセオドアクオリティ。

「あの真っ正面から堂々とくる馬鹿正直さなら、本人が何かを企んでいるというよりも、荷物として何かを持たされていたり、本人に何かの術式が組み込まれている可能性が高いか。従甥殿はあの弟を応接室に案内してやれ。俺が隣室で解析してやる」

 ホントに一々偉そうだな、この男。
 自己肯定感半端ねぇ……まぁ、王様だしな。


 俺は屋敷の門を開けた。
 
「ヴァニタス・アッシュフィールドだ」

 シルヴェスターも、俺本人が出迎えたのには面食らったらしい。

「この屋敷は人がそんなにいねぇんだ。入るなら入れ。早く入らねぇと閉め出すぞ」
「う、美しい……」

…………ん?
 何だかよくわからんこと言い出したな、この男。

「おい、お前大丈夫か?入らねぇとマジで閉め出すぞ」

 俺としちゃこのまま引き返してくれた方がありがたいがな。

「兄上……」
「…………ん?だから入るのか帰るのか……」
「兄上は本当に悪魔憑きなのですか!? 父上が母上と結婚したいが為に悪魔憑きと偽って兄上を幽閉しているのでは!?」

 間違っちゃいない。
 というより、父親であるアッシュフィールド公爵の動機としてはそれが正解だ。

 だが、今俺は自分の意志で此処にいるし、この屋敷は既に魔王配下による国家転覆阻止の拠点となっている。

「アッシュフィールド家に戻りましょう。私が父上を説得します」

 …………っ、んなぁ!?
 こ、こいつ……俺のことを軽々とお姫様抱っこしやがった。
 ま、まぁ……キモデブだった前世と違って今はスリムだからなぁ。

 シルヴェスターはそのまま、俺をお姫様抱っこしたまま屋敷を出ようとする。
 いやいや、まてまて。

「もしかして、スピルスに何か言われた?」
「えぇ。賢者スピルス樣に兄上が本当に悪魔憑きなのか確かめて来いと……」

 スピルスぅううう!?
 お前もう確実に黒に近いじゃないかぁあああ!!

「シルヴェスター樣、どうか即決せず……」
「お疲れでしょう? 屋敷で少しお休みになられては?」

 駆けつけたマチルダとアルビオンが助け船を出してくれた。
 良かった、助かっ……。

「黙れ!! 使用人風情が!!」

…………は?

「このアッシュフィールド家後継者、シルヴェスター・アッシュフィールドに、使用人ごときが意見するな!! 反吐が出る」

 なっ……おまっ…………。

「ふっ……ざけんなよ!!」

 屋敷前を彩るいくつもの花壇。
 その美しさに似合わない、パシンと乾いた音が響いた。
 俺がシルヴェスターに平手打ちをしたのだ。
 続いてシルヴェスターの胸を肘で殴り、怯んだシルヴェスターの腕から飛び下りる。

「俺にとって、マチルダとアルビオンは家族同然の存在だ。そんな2人を“風情”とか“ごとき”とか言って見下すヤツなんかこっちから願い下げだ。悪魔憑きで結構。アッシュフィールド家になんか絶対に帰らねぇよ、ばーか」

 俺はシルヴェスターに向かって喚くと、屋敷に駆け込んで扉を閉ざし、鍵を掛けた。

 しばらく窓から様子を窺っていると、暫し呆然としていたシルヴェスターは、やがて立ち上がると来た時同様颯爽と白馬に乗り、立ち去った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ
BL
目覚めたら親指姫サイズになっていた僕。親切なチョウチョさんに助けられたけど童話の世界みたいな展開についていけない。 親切なチョウチョを食べたヒキガエルに攫われてこのままヒキガエルのもとでシンデレラのようにこき使われるの?と思ったらヒキガエルの飼い主である悪い魔法使いを倒した強面騎士様に拾われて人形用のお家に住まわせてもらうことになった。夜の間に元のサイズに戻れるんだけど騎士様に幽霊と思われて…… 可愛いもの好きの強面騎士様と異世界転生して親指姫サイズになった僕のほのぼの日常BL

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

処理中です...