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唐突なる別離
04
しおりを挟むマチルダ、アルビオン、セオドア。
彼らとテーブルを囲みつつ、俺は凹んでいた。
感情任せに行動してしまったこと。
弟をビンタしてしまったこと。
弟の背後にスピルスがいて、黒疑惑が深まってしまったこと……。
「魔法的なアプローチではなく、シルヴェスターの直情的な性格を利用したってわけか。領域魔法で保っているこの屋敷に打撃を与えるには確かにこの上ない一撃だな。やはり賢者ってところか。スピルス、油断できない奴だ……」
俺は、この屋敷から出られない。
出てしまったら領域魔法の効果が消えてしまう。
元国王であるセオドアがいる今は尚更、動くことはできない。
でも。
スピルスに会いたい。
会って話がしたい。
本当に魔王の配下なのか。
それともただの勘違いなのか。
「ねぇ、ヴァニタス。ちょっとメモリアのところに行かない? 彼女にも報告が必要でしょ?」
アルビオンが立ち上がると、マチルダに視線を送る。
「でしたら、このアップルパイをメモリアさんに届けてください。今回はなかなかの出来だと思うんです」
「ありがとうマチルダさん。じゃあ行ってくるねー」
アルビオンがぐいぐいと、立ち直れない俺を引っ張った。
「あ、おい」
「王様、難しい話はまた後にしてよ。その年齢で若年者の心情に配慮できないとか、流石にどうかと思うよー」
アルビオンが不敬極まりない言葉をセオドアに投げつける。
「ちょっと、アルビオン言い過ぎ」
「あれぐらい言っといた方がいいんだって。この屋敷の主はヴァニタスだよ。アイツじゃない。はい、アップルパイ持って」
アルビオンがメモリアに説明している間も、俺は完全に上の空だった。
「ヴァニタス、話は聞いたわ」
「……スピルスの話?」
メモリアは頷く。
「ヴァニタス、私……すごく気になることがあるの。“魔王ってそもそも何者なのかしら?”」
メモリアの言葉に、首を傾げる。
「人間を苦しめる……かもしれない、悪?」
「その善悪は、あくまでも人間目線での善悪よね?」
メモリアの言葉の真意がわからない。
「メモリアは、スピルスのことをかなり好意的に思っていたよね?」
アルビオンの言葉にメモリアは頷く。
「恋に一生懸命の可愛い子だと思っていたわ。私、応援していたもの。彼から邪念は感じなかったわ」
どういうことか、さっぱりわからない。
アルビオンとメモリアがこの会話の中に何を意図しているのか……全く読み取れない。
「……ね、ヴァニタスかなり参っちゃってるでしょ?」
「あの王様、今日から1日1回3日間連続で、家具の角に小指をぶつけるといいわ」
メモリアもまたセオドアに対して凄まじいことを言ってる。
「そもそも、人間に対する悪が本当に悪なのかという話なのよ。いや、そもそも人間は善かしら?」
メモリアの言葉が哲学じみてきた。
「ヴァニタス、幼いあんたを苦しめたのは人間以外の何かかしら?」
幼いヴァニタス。
ヴァニタスに転生する前。
俺やヴァニタスを苦しめてきたのは人間だった。
転生前の俺の両親然り、ヴァニタスの両親然り。
「そう、私はスピルスに……あの子に邪念を一切感じなかった。それでもセオドアが主張するように、あんたが不安になったように、スピルスがあんたたち人間の敵対者だとするならば……スピルスが善で、あんたたち人間が悪である可能性もあるでしょ?」
俺たち人間が悪?
スピルスたち魔王側が善?
「そもそも、“魔王”って呼んでるのもあんたたち人間側でしょ? 仮にそれが“神”と呼ばれる存在だとしたら? “神”が悪である人間を断罪すべく、使徒であるスピルスをこのラスティル王国に使わせたとしたら……話は随分変わるでしょ?」
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