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そして、決闘へ
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しおりを挟む「ね。この2人凄く面白いでしょ」
俺とセオドアのやり取りを眺めていたメモリアがそう口にすると、彼女の肩に乗っていた半透明の球体がポヨンポヨンと楽しそうに跳ねた。
「スライム!? 何で此処にスライム!?」
「水脈を通って流れてきたのよ。ヴァニタスの領域に侵入できたんだから、悪意や敵意のある魔物ではないと思って、保護したの」
スライムはメモリアの肩から飛び降りると軽快に跳び跳ねながら俺とセオドアの元へ来た。
スライムは、俺とセオドアの様子を窺うように立ち止まると、ポヨヨンと高く跳躍して俺の肩に乗った。
「おいこらそこのスライム!! 元ラスティル国王のこの俺よりもヴァニタスを選びやがったな!!」
セオドアがスライムに触れる。
最初は片手で、次に両手で縦横斜めに引っ張った。
スライムは俺の肩の上でピョンピョン跳び跳ねている。
セオドアの暴挙に怒っているようにも、逆に楽しんでいるようにも見える。
某ゲームのスライムと違って目も口もないから感情は判断し辛い。
ただ、とにかくやたら元気なのだけはわかる。
「こいつのことは置いておいて……」
途端にスライムは電流が走ったように固まった。
慌ててそのツルツルぷにぷにボディを撫でてやる。
「スピルスには会わせてくれるんだな?」
セオドアは溜め息を吐いた。
「男に二言は無い。ユスティートとスヴェンと打ち合わせをして、会談の機会を作ってやる」
やった。
俺が拳を握ると、肩のスライムも跳ねる。
「但し2人きりにはさせない。会談はこの屋敷にスピルスを招いて行うつもりだが、アルビオンをお前たちに同伴させる。これでも、俺としては最大限の譲歩のつもりだ」
アルビオンが同伴……。
いや、むしろ都合が良いのかもしれないと思い直す。
アルビオンは俺が異世界転生者であることを把握しているし、スピルスも俺の同類じゃないかと考えているようだった。
「だったら会談の日の午前中、アルビオン立ち会いの元でスピルスと話す機会を先に設けて欲しい。セオドアやスヴェンたちも加わるのであれば午後からにして欲しい」
「まぁ、負けたし……な。考えてやるよ」
セオドアがわしゃわしゃと俺の頭を撫でた。
「髪が乱れるわ!!」
「男っぷりが増すんじゃねぇの? くくくっ……」
セオドアは笑いながら地下水脈の湖を後にした。
「セオドアとヴァニタスって、何処となく似てるわよね」
メモリアの言葉にスライムが頷くように身体を震わせる。
何処がだよ!!
「ところでメモリア、このスライムはどうするんだ?」
「そうね……君、どうする?」
メモリアがスライムに尋ねると、スライムは俺の司祭服の中に潜り込んだ。
おいこら、何処に入り込んでるんだ。
「ヴァニタスが気に入ったみたいね。お屋敷に連れて行ってあげて。身体が乾くと死んじゃうから、定期的に水につけてあげてね。食事は雑草とかで大丈夫よ」
ひょこっと顔を出したスライムが草むしりなら任せとけと言わんばかりにドヤると、ひゅっと司祭服の中に引っ込んだ。
「まさかスライムを飼うことになるとは思わなかった」
「……普通のスライムはもっと臆病なんだけどね。その子は妙に人慣れしているというか……」
この国にはスライムをペットにする習慣があったり……するなんて聞いたことねぇよ。
まぁ……でも。
「俺もコイツは憎めねぇし、責任持って飼うよ。もし困ったことがあったら相談に乗ってくれ」
「任せて」
俺とメモリアの言葉を聞いた途端、スライムは司祭服から飛び降りて、跳び跳ねる。
本当にコイツ、元気が良いスライムだな……。
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