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そして、決闘へ
03
しおりを挟む「あーもー、わかったわかった。そこのお嬢さん。決闘終了だ。勝者はヴァニタス。俺の完敗だ」
投げやりな声でセオドアは言う。
「決闘、終了! 凄いじゃない、ヴァニタス!」
メモリアが歓声を上げると、触手に拘束されたままのセオドアがぼやく。
「お前がレオノーラのように大人しく鳥籠の中の小鳥に甘んじてくれるようなタマじゃないっていうのも痛い程にわかった。スヴェンめ、とんだじゃじゃ馬に育て上げやがって。恋慕う者がいるにも関わらず、自ら俺に接吻してまで牙を剥くとは」
「せっ……」
接吻。
間違いではないし、否定は出来ないのだが……。
「もう少し他の言い方はないか?」
「ねっとりと熱く蕩けた舌を絡めた深い口づけ」
「余計に悪い!!」
しかも、何だそのR-18展開に流れ込みそうな表現の仕方は。
「まぁ、何だかんだで俺も悔しいからな。しばらくいじられる覚悟をしておけ」
頼むからやめてくれ……胃に悪い。
溜め息を吐きながら、指を弾いて触手を消す。
触手から解放されたセオドアは、俺が外して捨てたゴーグルと不織布マスクを手に取った。
「これで目と口を覆って、さっきのアレを防いだというわけか」
「目を覆うゴーグルは、本来は水中で目を開ける用途のもの、口を覆う不織布マスクは本来感染症を防ぐ為のものだ」
「感染症を……」
セオドアが不織布マスクを凝視する。
「ペラッペラだが、優秀だぜ。あーっと……かつて恐ろしい感染力を持つ疫病が流行した際に大活躍したらしい。スピルスが持ってきた本に書いてあった」
あっぶねー。
思わず前世の話をしちまうところだった。
「これは……量産できないのか?」
「それは俺が錬成したものだからこの屋敷から離れれば消える。作り方自体は単純だが、量産できるかどうかは素材を大量に手に入れられるかどうかと、現在のこの国の技術力に左右されると思うぞ」
「疫病から身を守れるのであれば、是非とも量産したいものであるが……」
セオドアはゴーグルとマスクを懐に入れる。
「…………おい」
「勝者は勝者らしく余裕を持って敗者に譲るくらいしろ」
何だその敗者らしくない横暴っぷりは。
「最初のアレは一体何なんだ」
「目の痛みとくしゃみで相手を無力化する気体を発生させた。30分程度で効き目は失われただろ? 相手を殺さずに鎮圧する為のものだ」
「ふむ。あの結晶もまた錬成しておけ。量産できないか研究する」
ちょっと待て。
クロロアセトフェノンの結晶錬成するの、飴に魔法陣描く以上に凄まじい労力だったんだが。
「愛しのスピルスに会わせてやると言っているんだ。その程度の労力、大したことはないよなぁ?」
ぐぬぬ……。
こいつ性格悪い。
いや、知ってたけれども。
人の足元見やがって……。
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