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好きなのは私だけ 前編
しおりを挟むΩのカリナはずっと好きだった幼馴染みのαが運命の番と出会ったことで失恋する。Ωはαと結婚し子供を作らなければならないという義務があるため、失恋の傷も癒えぬままに国から決められたαと結婚することになる。結婚した相手は優しく、彼との穏やかな生活がカリナの傷を癒してくれた。次第に彼に惹かれていくけれど、彼には別に好きな人がいると知る。
───────────────
カリナは十九歳の誕生日を迎えた今日、ある覚悟を決めて幼馴染みのウィルフレドと会っていた。
緊張のせいで口数が少なくなり、ウィルフレドに体調を心配されてしまうがどうにか誤魔化す。
二人で本屋に入り、カリナは予め欲しいと目をつけていた本を見つけた。その本を、誕生日のプレゼントとしてウィルフレドに買ってもらう。
「ありがとう、ウィル」
「ああ。この後はどうする?」
「えっと……公園に寄ってもいい? ほら、今の時期はツツジが綺麗に咲いてるでしょ?」
適当な理由をつけて、ウィルフレドと公園に入る。
幸いにも人は少なく、カリナはウィルフレドとベンチに座った。
ウィルフレドは元々無口で、カリナはどうやって話を切り出そうかと悶々としていたので互いに無言が続く。
カリナはそっと傍らのウィルフレドに視線を向けた。
黒い髪に黒い瞳。端正な顔立ちは無表情で冷たく見える。
彼とは家が隣で幼馴染みだ。幼い頃からずっと傍で彼を見てきた。
彼は社交的ではなく、一人を好む。綺麗なその顔が感情で動く事は滅多にない。変わらない表情に、切れ長の瞳は怒っているようにも見えて人を寄せ付けない。
けれど、子供の頃から近くにいるカリナは彼が優しい人だという事を知っている。
無愛想に見えるけれど、ちゃんと周りを見てさりげなく気遣う事のできる素敵な人なのだと。
そんな彼の事が、カリナはずっと好きだった。
ウィルフレドは決してカリナに恋愛感情は抱いていない。幼馴染みとして、友人として、他の人よりも親しい関係を築いてはいる。けれど、異性として彼がカリナを見ることはない。彼の事が好きだからこそ、全く意識されていない事はわかっていた。
それでも、カリナは彼を一途に思い続けてきた。
だから、カリナは彼に結婚を提案しようとしていた。
カリナはΩで、ウィルフレドはαだ。
総じてαはエリートだ。けれど、αはΩとの間にしか子を作れない。Ωでなければ、αの子を孕めない。そして、αからはαの子が産まれる確率が高い。
優秀な子孫を残すため、αはΩと結婚し子を作ることを義務付けられている。
二十歳までに特定の相手がいない場合、国から身分の釣り合った結婚相手を宛がわれる事になる。
一つ年下のウィルフレドは、来年十九歳になる。
カリナはウィルフレドが好きで、ウィルフレドは好きな相手はいない。
カリナは来年には国から結婚相手を宛がわれる事になるだろう。ウィルフレドもこのままなら、再来年にはそうなる。
それならば……。
国で勝手に決められた相手と結婚するならば、カリナが相手でもいいのではないか。
恋愛感情はなくても、知らない相手と結婚するよりは、付き合いの長いカリナの方がいいと思ってくれるのではないか。
カリナは彼に結婚しないかと提案するつもりでいた。
好きだと伝えるつもりはなかった。彼に気持ちがないのはわかっているから。気持ちを伝えてしまえば、彼はカリナを選んではくれないと思った。
だから、恋愛感情はないけれど、歳も近いし結婚相手としてはお互い丁度いいだろうと、そういうスタンスで結婚を申し出る。
ズルいけれど、結婚して家族になればいずれ愛情が芽生えるのではないかと、そう考えた。
フラれるのが怖くて告白する勇気もないくせに、けれど国から宛がわれた相手と結婚するのは嫌で、自分の気持ちも伝えずに彼と結婚しようとしている。
それが今のカリナの精一杯なのだ。
プレゼントしてもらった本をぎゅっと握り、覚悟を決めて口を開く。
「あ、あのね……っ」
緊張に声が上擦りそうになる。ウィルフレドの顔は見れなかった。まっすぐ前を見据えた状態で話し続ける。
「私、もう十九になったでしょ」
「ああ」
「ウィルも来年、十九になるでしょ」
「そうだな」
「そ、それでね……。ほら、私達、お互い好きな相手いないし……。恋人いなくて、ひ、一人でしょ……」
「…………」
この時、ウィルフレドは何かに気づいたように辺りに視線を走らせていた。そちらに気を取られてカリナの話など聞いていなかったのだが、彼を見ていなかったカリナはその事に気づいておらず、間抜けにもつらつらと言葉を並べ立てていた。
「このままだと、国から勝手に結婚相手を決められちゃう事になるわよね……。で、でも、そんな知らない人といきなり結婚なんて、やっぱり抵抗あるし……う、うまくいくか不安だし……。そ、それでね、だからね、それなら、私達が……えっと……幼馴染みだし付き合い長いし、家も隣だし身分も近いし、私達で、結婚、すれば、丁度いいんじゃないかって、思ってっ」
一気に言い切った時、急にウィルフレドが立ち上がった。カリナはびくりと肩を竦める。
「ひゃっ、な、なに、どうしたの……?」
尋ねるけれど、彼はカリナには見向きもせずに周囲を見回している。
「ウィル……?」
名前を呼ぶカリナを無視してウィルフレドはその場から駆け出した。
「えっ? ちょ、ど、どこ行くの……!? ウィル……!?」
カリナは慌てて彼を追いかけた。
公園内の更に奥へ走っていくウィルフレドを懸命に追う。
彼の向かう先にいたのは、一人の少女だ。可憐で儚げな、小柄な少女。彼女の首にはカリナと同じように項を守るチョーカーが付けられていた。彼女もΩなのだろう。
ウィルフレドと少女が対面し、見つめ合う。
お互いが、お互いしか見えていない。
まるで運命的な出会いを果たしたかのような。
感動のワンシーンのような。
二人がどちらからともなく腕を伸ばし抱き合う光景を、カリナは離れた場所から呆然と見ていた。
映画ならば、彼らがヒーローとヒロインで、カリナはただの脇役の通行人だったのだろう。
ウィルフレドは、既にカリナの存在などまるで眼中にない。目の前の少女の事しか見ていない。彼の意識は全て少女に注がれていた。
十九歳の誕生日。好きな人に結婚しないかと申し出ようとしていたまさにその日、カリナは見事に失恋したのだった。
あの少女は、ウィルフレドの運命の番だった。
運命的な出会いに見えたあれは、まさしく運命の出会いだったのだ。
運命の番というものは知っていたが、出会う確率などあまりにも低く、自分には全く関係ないと思っていた。運命の番に出会う事などあるわけない、夢物語でしかないのだと、そう思っていた。
まさか、自分の好きな人が運命の番と出会うだなんて想像もしていなかった。
出会ったその瞬間から、ウィルフレドの心はあの愛らしい少女のものになってしまった。
結果、カリナは完膚なき失恋を果たした。
唯一の救いは、彼がカリナの結婚の誘いを聞いていなかった事だ。
もし少しズレていたら。ウィルフレドがカリナの結婚の提案に乗っていたら。その後で運命の番と出会っていたら。
お互いに気まずくなるし、カリナはとても惨めな気持ちになった事だろう。
好きだと伝えなくてよかった。そう思うことでカリナは必死に自分を慰めた。
ウィルフレドと少女は、すぐに結婚しそして番となった。
少女の項に残る噛み痕を、カリナはただ羨む事しかできない。
ウィルフレドは愛おしくて堪らないという瞳で少女を見つめる。語りかける声は酷く甘い。
幼い頃からずっと傍にいたのに。カリナは彼のこんな顔を知らない。こんな声を聞いた事などない。
ほんの少し前に出会った少女よりも、ずっと長い時間を一緒に過ごしてきたのに。
カリナはウィルフレドの本当の笑顔すら見たことがなかったのだ。
自分は彼にとってただの幼馴染みでしかなかったのだと、改めて思い知らされた。
深くショックを受け、それでもその悲しみを懸命に押し殺し笑顔で二人を祝福しなければならない。
そして時間は過ぎてゆき、失恋の傷も癒えぬままにカリナの結婚が決まった。
カリナの両親は、なんとなくカリナの気持ちを知っていた。だから、カリナはウィルフレドと結婚するだろうと考えていた。
けれどこんな事になってしまい、カリナの結婚相手は国に決められてしまった。
両親は心配してくれた。本当に国に決められた相手でいいのかと。自分で選んだ相手と結婚した方がいいのではないかと。
両親はそう言ってくれたが、好きな人と結婚できないのなら他の誰でも一緒だ。今更自分で結婚相手を捜す気にはならない。
カリナは結婚を受け入れ、夫となる相手の家に嫁ぐ事となった。
奇跡が起きて、その結婚相手がカリナの運命の番だった、なんて事はなく。顔を合わせても特に何も感じなかった。
数度面会を繰り返し、互いに承諾したことであっさり結婚が決まった。
引っ越しや結婚式の準備で慌ただしく時間は過ぎ、カリナはあっという間にαの夫の家に嫁いできた。
思い合っているわけではない相手との形式的な結婚式は感動も喜びもなく、ただ緊張して終わった。 そしてその夜。
カリナは用意されていた少しセクシーな夜着を身につけ寝室でじっと身を固めていた。
今夜は初夜だ。優秀な子孫を残すための結婚なのだから、子作りするのは当然だ。わかってはいたけれど、いざとなると恐怖と不安に体が竦む。
好きでもない相手と結婚し、抱かれなくてはならないのだ。義務とはいえ、やはりすんなりとは受け入れ難い。
でも、それは相手も同じだろう。彼だってカリナの事を好きではない。けれど、義務として抱かなくてはならないのだ。
そう考えると、この結婚はなんなのだろうと気持ちが沈む。
ウィルフレドは運命の人と結婚し、番になれて幸せそうだった。
それに比べて自分の幸せは程遠いように思えた。
どんどん憂鬱になっていく。
その時、ドアがノックされた。
緊張した声で返事をすれば、ドアが開きカリナの夫となった人物、フィデルが入ってきた。
人懐こそうな愛嬌のある顔が、カリナを見てニコッと笑う。
穏やかで優しい雰囲気の、目を瞠るような美形だ。
正直、彼のような美しい人に何故相手がいなかったのか不思議でならない。恋人の一人や二人、いてもおかしくなさそうなのに。
「待たせてしまってごめん」
「い、いいえ……」
カリナとしては、来てくれなくてもよかったくらいだ。
けれどそんな心情を態度に出すなんて失礼な事はできない。懸命に笑おうとするけれど、自分でもわかるほどに笑顔は引きつっていた。
そんな緊張丸出しのカリナを見て、フィデルが苦笑する。
「そんなに不安そうな顔をしないで」
「す、すみません……」
「大丈夫。僕は自分の部屋のベッドで寝るから」
「っえ……」
予想外の発言に、カリナは目を丸くする。
フィデルは穏やかに微笑んでいた。
「僕達は夫婦にはなったけど、出会ってまだ日も浅い。結婚したからといって、すぐにそういう事をする必要はないよ。もっとお互いの事を知って、ゆっくり関係を進めていこう」
「フィデルさん……」
こちらを気遣う彼の優しさに、緊張で強張っていた肩から力が抜ける。
「あ、ありがとう、ございます……」
「お礼なんていいよ。出会ったばかりだけれど、君は僕の妻で、僕は君を大事にしたいと思ってる。だから、嫌な事や怖い事を我慢しないで。君の気持ちを優先させて」
そう言って、「おやすみ」という挨拶を残して彼は部屋を後にした。
まさかそんな事を言ってもらえるなんて思っていなかったカリナは心の底から安堵した。
ウィルフレドでないのなら、誰でも同じだと思っていた。結婚相手なんて誰でもいいと。
けれど、今はフィデルで良かったと心から思えた。
ずっと好きだった人に告白する事なくフラれ、いじけて自棄になっていたけれど。
もし結婚相手が相手の気持ちを慮る事のない、横暴な人だったら。義務だからと互いの気持ちを無視して体を繋げるような人だったら。
カリナは今頃、結婚を深く後悔する事になっていただろう。
フィデルのような優しい人と結婚できて良かった。
誰でもいいだなんて、とても失礼な考えだったと今更カリナは反省した。
フィデルの優しさに応えたい。すぐに気持ちを切り替える事はできないけれど、いつまでもウィルフレドの事を引きずっていないで、これからはフィデルとの未来を考えよう。
そう心に決め、カリナは一人眠りに就いた。
フィデルとの結婚生活は穏やかだ。まだ慣れないけれど、カリナは冷遇される事もなく受け入れられ、平穏な日々を送れていた。
屋敷の窓に午後の日差しが降り注ぐ。外に出たら気持ちよさそうだ。窓から庭を覗くと、フィデルの姿があった。
カリナは彼のもとへ向かう。驚かせないよう静かに近づいていくと、彼がキャンバスに絵を描いている事に気づいた。
意識を全てキャンバスに向け集中しているような、彼のそんな真剣な顔をはじめて見た。
軽々しく声をかけてはいけない雰囲気に、カリナは無意識に息を詰める。
夢中になって絵を描く彼を、カリナはただじっと見つめ続けた。
あまりにも真剣で、情熱的な彼の表情から目が離せない。
やがてフィデルはふ……と肩から力を抜く。それを見て、カリナもふう……と息を吐いた。
そこで漸くフィデルはこちらの存在に気付き、振り返る。カリナの姿を見つけ、目を見開く。
「カリナ……? ごめん、いつからそこに……?」
「少し前から……。ごめんなさい、邪魔しちゃいけないと思って……。盗み見るつもりじゃなかったんです……」
気づかれずに近づいて黙って見ていたなんて、不快に思っただろうか。気づかれる前に立ち去るべきだったかもしれない。
申し訳ない気持ちで謝れば、フィデルは頬を緩ませた。
「はは、そんな、謝るようなことじゃないよ」
「そうですか……?」
「うん。気にしないで」
「えっと……見せてもらってもいいですか……?」
「いいよ。大したものじゃないけどね」
フィデルは体をずらしてキャンバスを見せてくれた。
「すごい……」
そこに描かれた絵を見て、カリナは自然と声を漏らしていた。
細部まで描き込まれた繊細で美しい風景画に目を奪われる。
「綺麗です、とても……言葉にならないくらい……」
「そんな、大袈裟だよ」
フィデルははにかむ。
彼は謙遜するが、お世辞ではなく本当に素晴らしい絵だとカリナは思った。
「そんなことありません……。本当に、素敵な絵です」
「……ありがとう」
フィデルは苦笑を浮かべた。
「両親には、才能がないんだからやめなさいと言われてるんだけどね。僕は絵を描くことが好きだから、やめられなくて……」
「え……。才能が、ない……? こんなに、すごいのに……?」
「両親にとって、絵とはお金にならなければ意味がないものなんだよ」
「そんな……」
切なげに微笑むフィデルの瞳は寂しそうだ。
好きな事を否定されるのはとても辛いだろう。
好きならば、これからも絵を描き続けてほしい。こんなにも素敵な絵を描けるのだから。少なくとも、カリナは彼の絵に心を動かされた。もっと見たいと思った。
「私は、好きです。フィデルさんの、絵」
「カリナ……」
「感動しました。すごく綺麗で、見ていると、心が癒される感じがします……」
もっと沸き上がるような感情があるのに、うまく伝えられない事がもどかしい。
「絵に詳しくない私が、こんなことを言っても失礼かもしれないですが……」
「そんなことないよ。ありがとう、カリナ」
曇っていた彼の瞳は嬉しそうに細められ、少しでもカリナの感動が伝えられたのだとわかり安心する。
改めて彼の絵を見つめ、呟くように言った。
「私はとても絵が下手なので、純粋に尊敬します」
「カリナも絵を描くの?」
「授業で少し描いたことがありますが、本当に酷いもので……」
「え、見てみたいな、カリナの絵」
「いえ、本当に酷いくて……。見た人に壊滅的に絵のセンスがないと言われたくらいで……」
控えめに断るけれど、断れば断るほどフィデルの興味を引いてしまうようで彼は熱心に頼んでくる。
「そんな風に言われると余計気になるよ。ねえ、描いてみて」
そう言ってスケッチブックと鉛筆を渡してくる。
「ほ、本当に、人に見せられるものじゃないんです……。絶対笑いますよ……」
「笑わないよ。だから描いてみて」
フィデルの絵を見せてもらったのに自分は頑なに拒否するのもどうかと思い、カリナはスケッチブックと鉛筆を手に持った。
促されるまま椅子に座り、カリナは迷いながら白い紙に絵を描きはじめる。
渋々ではあるが、手を抜いたりはしない。真剣に描いた。フィデルを見習い細かい部分まで描き込んでみたりもした。
スケッチブックに向き合うこと十数分。
「できました……!」
絵が完成し、スケッチブックをフィデルに見せる。
「こ、これは……」
絵を見たフィデルは暫し言葉を失った。
十数秒の沈黙ののち、慌てて感想を口にする。
「えっと……すごく、独創的な絵だね! オリジナリティに溢れてる、唯一無二の、誰にも真似できない、カリナにしか描けない絵だよ……!」
言葉を選んでいるのがひしひしと伝わってくる。
「猫にも見えるけど、犬にも見えるし……兎っぽくもあるけど、熊にも見えてくるし……。その……守備範囲が広いよね……」
「…………です」
「え?」
「フィデルさん、です……」
「へ……?」
「だから、フィデルさんを描いたんです……!」
カリナは顔を真っ赤にしながら言った。
フィデルは目を丸くし、カリナの絵を凝視する。
「え……僕を、描いてくれたの……?」
まじまじと絵を見つめ、それからくしゃりと表情を崩した。
「ふふ、そっかぁ。僕を描いてくれたんだね」
「すみませんね、下手くそで」
「そんなことないよ……ふはっ……嬉しい……」
絵を見ながらフィデルは肩を震わせて明らかに笑っていた。
カリナはムスリと唇を尖らせる。
「笑わないって言ったのに」
「ごめんっ……でも……くふっ……嬉しくて……っ」
笑いながらも、本当に嬉しそうに笑みを浮かべる。柔らかい瞳で見つめ、慈しむような仕種でスケッチブックの中の絵を撫でた。
笑われて恥ずかしいけれど、そんな反応を見せられたら怒れない。それに、悲しんでいるよりも余程いい。彼には笑顔の方が似合っている。自分の絵で楽しい気持ちになってもらえたのなら、恥をかいた甲斐もあるだろう。
「ありがとう、カリナ。この絵、大切にするね」
「ええっ!? やめて、そんな絵、すぐに捨ててください……!」
「捨てたりなんてしないよ。カリナが一生懸命描いてくれたんだから」
そう言ってフィデルはスケッチブックをしっかりと胸に抱き締める。
まさか、あんな酷い絵を本当にとっておいたりはしないだろうけれど。フィデルの言葉は冗談に聞こえなくて怖い。
「もう……笑ったくせに……っ」
「それは……ごめん。でも、変な意味じゃなくて、嬉しくて笑っちゃっただけで……」
「笑ったのは事実ですっ」
「うぅ……ごめん……」
しゅん……と肩を落とすフィデルに、カリナは顔を綻ばせた。
「私、フィデルさんの絵をもっと見てみたいです」
「え……?」
「見せてくれたら、笑ったことは許してあげます」
フィデルは快く承諾してくれた。
そして屋敷の中の一室に案内される。そこは彼がアトリエとして使っている部屋だった。絵を描く為の道具と、描かれた絵がたくさん置いてある。
「すごい……」
「僕は外を片付けてくるから、自由に見てていいよ」
一人になったカリナは、部屋の中の絵を見て回る。
やはり彼の絵は繊細で美しい。
ぼうっと見惚れながら、部屋を歩く。
「痛っ……!」
絵に気をとられていたカリナは机に腰をぶつけた。その衝撃で何かが落ちる。
見ると、古びたスケッチブックが床に広がっていた。
「ご、ごめんなさい、フィデルさん……!」
ここにはいない彼に謝りながらそれを拾う。
中を見ると動物の絵が描かれていた。猫や犬、リスや馬。風景だけでなく、生き物の絵も上手だ。
ペラペラと捲っていくと、動物ではなく人間の女性が描かれたページに辿り着く。
美しい女の人。口元のほくろが印象的な、艶っぽい大人の魅力に溢れた女性だ。
人物もこんなに上手に描けるのに、見た限り風景の絵しかない。人物や動物を描くのは苦手なのだろうか。
スケッチブックを机に戻し、再び絵を見て回る。
見ていると心が癒される、温かく優しい絵だ。
見入っているとフィデルが戻ってきた。
「そんなに真剣に見てもらえるなんて、照れ臭いけど嬉しいな」
「フィデルさんの絵は、本当に素敵です。部屋に飾りたいくらい……」
「こんな絵でよければ、どれでも好きなものを持っていってもらって大丈夫だよ」
「えっ……そんな軽々しく……いいんですか……?」
「もちろん構わないよ」
「でも、手放したくないものもあるんじゃ……」
「手放すって……同じ家に住んでるのに」
「あ、そうですよね……」
「それに、僕は描くことが好きだけど、絵を自分の手元に置いておきたいとは思ってないんだ。僕の絵を欲しいと言ってくれる人がいるなら、喜んで譲るよ。だから、遠慮なんてしなくていいよ」
「ありがとうございます……っ」
瞳を輝かせ喜べば、フィデルは擽ったそうに瞳を細める。
「もし絵が見たいのなら、この部屋にも自由に入っていいよ」
「で、でも……」
「鍵はかけてないから。好きな時に来ても大丈夫だよ」
「本当ですか……? あの、私、絶対絵には触りませんから! 傷つけたり汚したりしないよう、細心の注意を払います!」
「そこまで気にしなくていいよ。ただ趣味で描いてるだけだから、汚そうが傷つけようが別に……」
「ダメですよ! 趣味だとしても、フィデルさんが心を込めて作り上げたものには変わりません! そんな大事なものをぞんざいに扱うなんて絶対にダメです!」
こんな素晴らしい絵を汚したり傷つけたりするなんて許せない。
力一杯主張すれば、フィデルはきょとんとして言葉を失う。それから、照れ臭そうに微笑んだ。
「……ありがとう。そんな風に言ってもらえて、嬉しいよ」
頬を染める彼を見て、カリナも恥ずかしい事を言ってしまったのかもしれないと自覚し顔に熱が上る。カリナはうろうろと視線をさ迷わせた。
「えっと、その……偉そうな事を言ってすみません……。フィデルさんの描いた絵なのに、私が熱くなってしまって……」
「ねえ、カリナ」
「は、はいっ……?」
「よければ僕の事は『フィデルさん』じゃなくて、『フィデル』って呼んでくれないかな。敬語も使わなくていいよ」
「え、でも……」
「夫婦なんだから、そっちの方が自然でしょ。もちろん、カリナが嫌なら強要はしないけど」
「嫌だなんて……。じゃあ、わかりま……わかったわ、フィデル」
「うん」
フィデルはにっこり笑った。
優しく思いやりのある人だ。彼が結婚相手でよかったと、改めて思う。この人となら互いに歩み寄り、いつか本当に夫婦として幸せになれるかもしない。そう思えた。
カリナはフィデルに誘われ美術館にやって来た。
訪れる客が多く、人とぶつかりそうになる。
「結構人が多いね。危ないし、はぐれないように手を繋いでもいいかな? 嫌じゃなければ……」
「も、もちろん大丈夫です! よろしくお願いしますっ」
ただ手を繋ぐだけですごい気合いの入った返しをしてしまった自分に恥ずかしくなり、カリナは頬を染めた。
笑みを零したフィデルは、そっとカリナの手を握る。
夫婦となって一月以上は経ったけれど、未だ触れ合う事など殆どない。
彼の手は思っていたよりも大きい。自分のと比べると指も長くて太く、すっぽりと包み込まれてしまう。
幼い頃はウィルフレドと手を繋ぐ事もあったけれど、成長してからは男の人と手を繋いだ事などない。
最初は緊張し手に意識を持っていかれたが、絵を見て回るうちに気にならなくなっていた。
癒され引き込まれ感動を覚えるような絵もあれば、全くテーマのわからない何が描かれているのか謎な絵もある。
当たり前だが描き手によって雰囲気も何もかもが違い、楽しかった。
真剣に絵を鑑賞するカリナを見て、フィデルは嬉しそうに微笑む。
「よかった。楽しんでくれてるみたいで」
「え?」
「美術館は僕の趣味だから……カリナはあまり興味がないかなって不安だったんだ」
「確かに詳しくはないけど、興味がないなんて事はないわ」
なかなか足を運ぶ機会はなかったけれど、こうして誘ってもらえてカリナは嬉しい。
「強い思いを込めて絵を描いて、でもその描いた絵は見る人によって感じ方が違って……。同じ絵を見ても、抱く感想は全く別の事もある。絵って、不思議で、面白いわ」
「確かに、そうだね。こうしてカリナと並んで同じ絵を見てるけど、絵を見て何を感じるかはそれぞれなんだよね」
何かを思い付いたように、フィデルは目の前の絵に顔を向ける。
「因みに、この絵を見てカリナはどう思った?」
「えっ、この絵……?」
今二人で見ていた絵は、かなり抽象的で何が描かれているのかカリナにはさっぱりわからないような絵だった。
「この絵は……なんていうか……情緒不安定な気持ちを表してる感じがするわ」
「…………っふ」
「下の方は暗くて、上の方は明るい色を使ってるのは、悲しかったり楽しかったり、感情の大きな動きを表現してるんじゃないかしら。真ん中に描かれてるオブジェのようなものは、不安定な作者の心そのもので……」
「……ふはっ……」
隣で控えめに吹き出され、カリナはそちらへ顔を向けた。
笑いをこらえながらフィデルは謝る。
「ご、ごめん……。でも、この絵のタイトルは『公園で遊ぶ子供』なんだ」
「ええっ……?」
再び絵に顔を向ける。まじまじと見据えるが、どう見ても「公園で遊ぶ子供」が描かれているようには見えない。
「つまり、このオブジェのようなものが子供ってこと……?」
「多分ね。僕にも、子供には見えないけど……。でも描いた本人にとっては間違いなく子供なんだろう」
「…………やっぱり絵って奥が深いのね」
思わず感心してしまうカリナに、フィデルは笑みを深めた。
「カリナは面白いね」
「面白い? 私が?」
「うん。カリナのそういうところ、好きだなぁって思うよ」
「っ……ど、どうも……?」
さらりと「好き」と言われて、動揺してしまう。恋愛的な意味ではないのだろうに、過剰に反応してしまう自分が恥ずかしくて必死に平静を装った。
繋いだ手をまた意識して、頬が熱くなる。
赤くなった顔を見られないよう不自然に顔を逸らしながら、残りの絵を見て回った。
とても穏やかに日々は過ぎていく。
フィデルとはまだ夫婦としての関係は築けていないけれど、二人の仲は確実に深まっていると感じる。
彼と一緒に過ごす時間は苦ではなく、寧ろどんどん楽しいと思えるようになっていった。
最初は自暴自棄のような気持ちで結婚を決めたけれど、今はこの穏やかな日々が好きで、彼と結婚できて嬉しいと感じる。
彼の人好きのする柔らかい笑顔を見ていると、こちらまで自然と笑顔になる。
彼はずっとカリナを気遣って、きちんと一定の距離を保って接している。
だがカリナはもう、彼との距離を縮めてもいいと思っていた。夫婦としての関係を築いていきたいと。
直接それを口にするのは恥ずかしく、どうすれば彼にその気持ちを伝えられるか悩んでいた。
とりあえず自分から手を繋いでみたり、少しずつスキンシップを増やしていこうかと考える。
とにかく会わなければはじまらない。カリナはフィデルを捜すためまずは彼がアトリエに使っている部屋に向かった。
その途中の事だった。廊下の角の向こうから女性の使用人達の声が聞こえ、思わず足を止める。気にせず進めばよかったのに、潜められた声音に姿を見せてはいけないと判断してしまったのだ。
「フィデル様もお可哀想よね。思い合う女性がいらっしゃったのに、お相手がβだから結ばれなかったんだもの」
「本当よね。いつも笑顔で塞ぎ込んでいる様子ではないけど、やっぱり心の内では傷ついているでしょうね」
「そうよ。きっとまだあの方の事が好きなんだわ。だってカリナ様とはまだ寝室も別でしょう? 気持ちの整理がついていないのよ」
「あの方がΩだったら、今頃フィデル様は彼女と結婚できていたでしょうにね」
「こればかりはどうしようもないわよね。フィデル様もαとして産まれてきてしまった以上、Ωとの間に子供を作らなくてはならないんだから」
カリナは足音を立てずその場から離れた。
自室に戻り、ドアの前で蹲る。
そうだったのか。自分にウィルフレドという片思いの相手がいたように、フィデルにも好きな人がいたのだ。
使用人達の言葉を聞く限り、カリナとは違い両思いだったのだろう。
お互いに好きだったのに結ばれなかったのだとしたら、カリナよりも彼はずっと深く悲しんでいる事だろう。簡単に忘れられはしない。
ここに来てはじめての夜。彼はカリナを気遣って寝室を別にしようと言ってくれたのだと思っていた。
もちろん、それもあるのだろう。
けれど彼自身、他に好きな女性がいたからカリナと体を重ねようとはしなかったのだ。
勝手に、カリナは自分が彼を待たせていると思っていた。カリナの気持ちを優先してくれているのだと。
それはただの自惚れだ。
一定の距離を保ってカリナと接しているのは、彼の心に別の人がいるからなのだろう。
その証拠に、彼はカリナの項を噛まない。結婚はしたが、番にはなっていない。
結婚はせざるを得なかったから仕方なくしたが、フィデルは他に好きな人がいるからカリナを番にはしたくないのだ。
いつも抑制剤を飲んでいるけれど次の発情期が来たら、その時は薬は飲まずにフィデルと……なんて考えていたがそれはもう無理だ。
いずれは彼との間に子供を作らなくてはならない。でも今はまだ無理だ。
早まらなくてよかった。カリナは自分の気持ちしか考えていなかった。彼の気持ちも知らず、彼との距離を縮めようとしていた。
彼がどんな思いでカリナと結婚したのか。それを考えると苦しくなる。
きっとフィデルは今もその人の事が好きで、本当はその人と結婚したかった。できるのならばその人と結ばれたいと、今もそう思っているのだ。
それなのに、カリナを蔑ろにする事もなく、優しく受け入れてくれた。
それで充分だ。彼がカリナを好きになってくれる事がなくてもいい。カリナは彼と結婚できてよかったと心から思っているから。
彼じゃなければ、カリナは今もウィルフレドの事を引き摺っていただろう。結婚相手をウィルフレドと比べ、ウィルフレドではない事に悲しみ、いつまでも立ち直れずにいただろう。
でも、カリナはフィデルのお陰で前向きになれた。フィデルが相手だったから、過去にとらわれずにいられたのだ。
彼に惹かれ、芽生えたこの気持ちが報われる事がないのだとしても、彼と結婚できて嬉しかった。
その日、カリナはフィデルと一緒に公園に来ていた。絵を描くというフィデルが、よかったら一緒にと誘ってくれたのでついてきた。
公園内の景色を描いていく彼の姿をカリナは見つめる。
「フィデルは、人は描かないの?」
ふと気になっていた事を尋ねる。
カリナが見た限り、フィデルの人物画はスケッチブックに描かれたあの一枚きりだ。
「え……? ああ、人を描くのは苦手で。描くときにずっと見ているのも、相手が人だとなんだか恥ずかしくて……」
「そうなの。……あ、邪魔してごめんなさい」
「ううん、僕の方こそごめん。僕が絵を描いてる間、カリナは退屈だよね」
僕が誘ったくせに……と謝るフィデルに首を横に振る。
「ううん。大丈夫よ、退屈なんかじゃないから」
「でも……」
「フィデルが絵を描いているところを見るのは好きよ。真っ白な紙にもう一つ風景が作られていくの、魔法みたいにすごくて、見ているだけで楽しいわ」
「そ、そうなんだ……」
フィデルは頬を赤くして照れる。
「でも、あんまり見たらフィデルは気になって集中できないかしら……」
「そんなことはないけど、もしよかったらカリナも絵を描かない?」
「えっ……」
固まるカリナに、フィデルはスケッチブックを差し出してくる。
「いや、私は下手だからいいわ……」
「僕の為に描いてよ。僕はカリナの絵が好きだから、君の絵がもっと見てみたい」
「……笑ったくせに」
「あれは嬉しかったからだってば。ね、お願い、描いてよ」
「もう……」
あまりに熱心に頼んでくるので、カリナは仕方なくスケッチブックを手に取った。
捲っていくと、カリナの描いたフィデルの絵がまだ残っていた。こんな下手くそな絵をいつまでも残しておかれるのは恥ずかしい。
「捨ててって言ったのに……っ」
「捨てるわけないじゃないか。カリナが描いてくれた絵なんだから。言っただろう、僕はカリナの絵が好きなんだよ」
そんなわけないと思うのに、フィデルが嘘や冗談を言っているようには見えない。
だから今すぐ捨ててほしかったけれど、それ以上は何も言えなかった。
「こんな変な絵を好きだなんて……。そんなこと言うの、フィデルだけだわ」
「ははっ、それでいいじゃないか。僕も、カリナが好きって言ってくれればそれでいいよ。他の誰に何を言われても、カリナさえ好きって言ってくれるなら、それでいい」
「っ……」
カリナは慌ててフィデルから顔を逸らした。スケッチブックに視線を落とし、絵を描く振りをする。
どうしてそんな事を言うのだろう。
嬉しいけれど、泣きそうになる。
絵じゃなくて、カリナの事を好きだと言ってほしいと望んでしまう。
でも、それはできない。彼を困らせたくはない。今、自分の気持ちを押し付ければ、フィデルを辛い気持ちにさせてしまうだろう。彼には他に好きな人がいるのだから。
折角こうして二人で穏やかな時間を過ごす事ができているのに、それを壊してしまう。
そんな事はしたくない。だからカリナは自分の気持ちを押し隠した。
ウィルフレドにも、結局気持ちを伝えられないままだった。
ウィルフレドには、伝えようともしなかった。
だから今度は好きだと言いたいと思っていた。
けれど、フィデルにも伝える事はできないのかもしれない。
それでも、こうして彼と一緒にいられるだけで嬉しかった。
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