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恋する二人の隠し事 後編
しおりを挟む「あの……実は、シルヴェストルさんに、お願いがあるんです……」
「どうした、改まって」
店の定休日の今日、シルヴェストルが家に来て二人で過ごしていた。
先ほどまで一緒にアクセサリー作りをしていた。一段落終え、今度は二階へ移動しまったりと話をしていたのだが。
ディアナはずっと、シルヴェストルに対して気になっていることがあった。不快な気持ちにさせてしまうのではないかとなかなか口に出せずにいたのだが、こうして気にしていることを隠し続けるのもよくないのではないか。そう思い、勇気を出してシルヴェストルに言ってみることにした。
「あのですね……獣人は、その……獣の耳と尻尾が生えているのだと、聞いたのですが……シルヴェストルさんも、生えているのでしょうか……?」
「ああ」
「そのっ、あの……もし、嫌じゃなければ……見せて、いただけたらと……」
「見たいのか?」
「あっ、嫌だったらいいんです!」
「別に嫌なわけじゃない……ただ、見ても気味が悪いだけだと思うぞ」
「そんなわけありません!!」
ディアナは反射的に声を大にして否定した。
あまりの勢いにシルヴェストルは目を丸くしている。
「あっ、す、すみません……。でも、気味が悪いなんて、そんなこと思ったりしません、絶対」
力一杯断言すれば、シルヴェストルは照れたように頬を染める。
「っ……そ、そうか」
はにかむ彼が可愛くて、ディアナの胸はきゅんきゅんした。「可愛い」は彼にとっては誉め言葉にはならないので口には出さず胸に秘めておく。
「でも、普段はどうしてるんですか? 耳も尻尾も、生えているようには全然見えないんですが……」
尻尾はともかく、耳は帽子や布で隠さなければ丸見えになってしまうはずだ。けれどシルヴェストルは特に隠すこともなく頭部を晒したまま生活している。
「仕組みはよくわからないが、耳も尻尾も押し込めたら引っ込むんだ」
「ええっ……」
「ちょっとだけ残ってて、それを引っ張ったら出てくる」
シルヴェストルはベッドに座り、見やすいように頭を下げる。
「ほら、ここに耳があるだろ」
手を取られ、彼の頭に導かれる。髪を掻き分けると、ちょこんと飛び出す獣の耳の先端が見えた。ほんのちょっとなので、普段は完全に髪に隠れているのだ。
「これを引っ張ると……」
シルヴェストルは両手で両耳をぐいっと上に引っ張る。するとぴょこん、と三角の獣の耳が飛び出した。
「こうやって出てくる」
「ほ、おぉぉー……」
仕組みは全くわからないが、ディアナは感心し思わず手を叩く。
シルヴェストルは同じ要領で尻尾も引っ張り出した。
ピンと立った耳に、ふさふさの長い尻尾。
それらが、好きな人に生えているのだ。ときめかずにはいられない。
ディアナは恍惚とした顔で彼を見つめた。
「あ、あ、あ、あ、あのぉ……」
「なんだ?」
「ももももし、もし、もしっ、嫌じゃ、なければ、さ、触らせて、いただけたらと……思ったり……」
「別に嫌じゃない……」
頬を染め顔を反らすシルヴェストルの尻尾がブンブンブンブンと激しく揺れていて、ディアナは痛いくらいに胸をきゅんきゅんさせられた。
「で、で、で、では、お言葉に甘えて、失礼いたします……!」
ベッドに座るシルヴェストルの正面に立っているディアナは、彼の頭へ手を伸ばした。震える指で、そっと獣の耳に触れる。途端、フワッと柔らかな感触が伝わってきた。
柔らかくて温かい。ディアナは虜となり、気づけば夢中でその感触を堪能していた。
一体どれほど時間が過ぎたのか。ディアナは飽きることなく。彼の耳に触れていた。お互い向かい合う形でベッドに横になり、彼の頭を胸に抱えるようにして耳をふにふにし、頬擦りする。一生触っていたくなる、究極の癒しだ。ディアナはうっとりと目を細め、ぴくぴく揺れる耳に鼻を埋める。
「っ、ディアナ……まだ、触るのか……?」
「あっ、すみません、こんなにしつこく触られたら、嫌ですよね……?」
「別に、嫌なわけじゃない……」
呟くような小さな返事は、彼の本心なのだろう。ディアナを気遣ってくれているわけではなく。
だって、ディアナが触っている間、ずっと尻尾がブンブンブンブン動きっぱなしなのだ。今も揺れていて、ぱしぱしぱしぱしとひっきりなしにシーツを叩いている。尻尾も触りたいけれど、動いているのが可愛くて触れずにいる。
自分に触られて、こんなに尻尾を振るほど喜んでいるのかと思うと嬉しくて堪らない。
愛しさが込み上げ、ディアナはシルヴェストルの頭をぎゅうっと抱き締めた。
「っ、っ、ディアナ……っ」
「あっ、すみません、つい……きゃんっ!?」
慌てて離れようとするが、思い切りお尻を鷲掴みにされ驚きに体が硬直する。そのまま、むにむにと尻臀を揉みしだかれる。
「ひゃっ、ぅんっんっ、し、シルヴェストル、さんっ……?」
「どうした?」
「あっんっ、その、お、お尻、恥ずかしい、ので……んっ、離して、いただきたい、のですが……あんっ」
「ディアナ、散々俺のこと触ったよな?」
「っえ……!?」
「だったら、俺も触ってもいいよな?」
「ひんっ、あっ、だめっ、そんなとこ……っ」
「今度は俺の番だ。たっぷりディアナを堪能させてくれよ?」
にんまりと微笑むシルヴェストルに、ディアナはひくりと頬を引きつらせた。
「やっぁんっ、待って、あっあんっ、あっあっあっ、だめぇぇっ」
それからディアナはたっぷり時間をかけ、体の隅々まで触られ舐められ甘噛みされた。
散々に喘がされ体力を消耗させられぐったりとベッドに横たわるディアナは、軽々しく触らせてほしいと頼んでしまったことをちょっぴり後悔した。
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読んで下さってありがとうございます。
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