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エピローグ
6、メアリ・ブラントのその後
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「王家にあるまじき無能、無思慮、無分別。そこに加えて、1人の女性を悪女として使い潰した下劣な品性。全てが明るみになりました。何か申し開きはありますか?」
そんなものがあるはずが無ければ許しもしない。
そう言外に語る、凄絶なキシオンの眼差しだった。
無思慮な母ですら黙った。無分別なロイにエミルも、その迫力に口を開けなかった。
しかし、デグだった。
彼は無能であれど、悪知恵は多少効いたのだ。
キシオンがこれで自分たちに何を求めているのか?
察すれば光明を見いだした。
「……我々に表舞台から退けとお前は言いたいのか?」
デグの思った通りだった。
キシオンは泰然と頷きを見せてくる。
「処刑とさせていただきたいところですが、そこまではと諸侯が申しますのでね。ただ、ご家族で仲良く過ごしていただこうと思います。手狭な屋敷で、外出も無ければ慎ましく一生をです」
それは、あるいは処刑以上にブラント一家には過酷に響く言葉だった。
女遊びも出来ない。
贅沢にふけることも出来ない。
そして、お互い見下し合っている関係で1つ屋根の下で暮らさなければいけない。
王家の面々は一様に青ざめた。
だが、デグは違う。
キシオンにニヤリと笑みを見せつける。
「そうか。しかし、それで……どうする?」
「ふむ? どうするとは?」
「ワシを王位から退かせようというのだろう? ロイからもまた、嫡子の権利を奪うと」
「それはもちろん」
「だから、どうする? 次の王は? 王家の血を多少なりとも受け継ぐ者は多いだろうが、キシオン? お前か? それとも後ろで控える者どもの誰かか?」
眉をひそめるキシオンに、デグはくっくっくと喉を鳴らすことになった。
「分かったか? 次の王座に着くべき明確な人物などはおらんのだ。争いが起きるぞ? 次の王座を巡って必ず争いは起きるぞ? ブラント王国を揺るがす争いが必ずな」
キシオンは「はぁ」とため息をつけば眉根にシワを寄せる。
「良い着眼点ですが、どうしてその才覚を政務に活かすことが出来ないものですかな?」
負け惜しみとデグは判断した。
湧き上がってくる優越感を、彼は笑い声としてキシオンに浴びせる。
「はっはっは! どうだ!? 貴様らは、このブラント王国に大乱を引き起こしたいのか? その悪名を史上轟かせたいのか? では無いのであれば……なぁ?」
取るべき道は決まっているだろう?
デグが言外に問いかければ、ここでロイにエミルも息を吹き返した。
「そ、そうだ! この国の平和を考えれば取るべき道は1つだ!」
「今まで通りにするの! それ以外に無いでしょ!」
母もまた、状況が分からないなりに「そうです!」と肯定の声を上げた。
家族一丸となっての攻勢。
これにキシオンを初めとする諸侯は沈黙を守るばかりだった。
デグはほくそ笑む。
勝った。
知られたくは無いことを知られてしまったが、軟禁されて一生を過ごすことは回避することが出来た。
よって、デグはニヤニヤと首謀者であろうキシオンをあざ笑うことになったが……不意に首をかしげることになった。
キシオンがニヤリと不敵な笑みを浮かべてきたのだ。
「な、なんだ? 貴様その表情はなんだ!?」
不吉の予感にデグは思わず叫び上げる。
キシオンは嘲りの笑みを隠そうともせずに応えた。
「いや失敬。私は性格が悪いもので。こうも思うどおりに足掻かれますと……ははは。まったく愉快なものですな」
「お、思い通りだと?」
「はい。こうなると思えば、せっかくですので控えていただいていたのですがね。頃合でしょう。それでは……ご登場を願いましょう」
そうして、貴族たちは左右に割れた。
道が出来るが、それは何のためか?
デグはその先に目を凝らし……裂けんばかりに目を見開くことになった。
先にいたのは1人の女性だった。
見覚えはあった。
その鋭すぎる目つきにも、陰のある顔つきにも。
見覚えはあった。
だが、そんなはずは無いのだ。
その彼女は広場で吊るされたのだ。
もう二度と利用出来ないと惜しんだはずなのだ。
それなのに、いる。
王家の者たちは誰1人声を上げられない。
そんな中で、キシオンは優雅にその女性に手のひらを向けた。
「王位を継ぐべき、正当なる血筋のお方です。メアリ・ブラント様。いや、もはや陛下でよろしいですかな?」
デグは納得するしかなかった。
そこにいるのは間違いなく……悪女だった。
処刑されたはずのメアリ・ブラント本人だった。
◆
「え? あ? ……え? な、なんだお前は!? 何故お前はなんで……な、なんなんだ!! 一体どういうことだ!?」
半ば錯乱したようなデグの叫びを耳にし、メアリは内心頷きを見せる。
(それはそうでしょうね)
混乱もするだろうという話だった。
兄も妹も母も。
蒼白の表情で絶句しているが納得しかなかった。
なにせ、メアリ自身にも現状には驚きしかないのだ。
メアリは家族から彼にと視線を移した。
家族たちへと嘲笑を向けている彼だ。
キシオン・シュラネス。
彼こそがこの状況を作り上げた張本人だった。
そんなものがあるはずが無ければ許しもしない。
そう言外に語る、凄絶なキシオンの眼差しだった。
無思慮な母ですら黙った。無分別なロイにエミルも、その迫力に口を開けなかった。
しかし、デグだった。
彼は無能であれど、悪知恵は多少効いたのだ。
キシオンがこれで自分たちに何を求めているのか?
察すれば光明を見いだした。
「……我々に表舞台から退けとお前は言いたいのか?」
デグの思った通りだった。
キシオンは泰然と頷きを見せてくる。
「処刑とさせていただきたいところですが、そこまではと諸侯が申しますのでね。ただ、ご家族で仲良く過ごしていただこうと思います。手狭な屋敷で、外出も無ければ慎ましく一生をです」
それは、あるいは処刑以上にブラント一家には過酷に響く言葉だった。
女遊びも出来ない。
贅沢にふけることも出来ない。
そして、お互い見下し合っている関係で1つ屋根の下で暮らさなければいけない。
王家の面々は一様に青ざめた。
だが、デグは違う。
キシオンにニヤリと笑みを見せつける。
「そうか。しかし、それで……どうする?」
「ふむ? どうするとは?」
「ワシを王位から退かせようというのだろう? ロイからもまた、嫡子の権利を奪うと」
「それはもちろん」
「だから、どうする? 次の王は? 王家の血を多少なりとも受け継ぐ者は多いだろうが、キシオン? お前か? それとも後ろで控える者どもの誰かか?」
眉をひそめるキシオンに、デグはくっくっくと喉を鳴らすことになった。
「分かったか? 次の王座に着くべき明確な人物などはおらんのだ。争いが起きるぞ? 次の王座を巡って必ず争いは起きるぞ? ブラント王国を揺るがす争いが必ずな」
キシオンは「はぁ」とため息をつけば眉根にシワを寄せる。
「良い着眼点ですが、どうしてその才覚を政務に活かすことが出来ないものですかな?」
負け惜しみとデグは判断した。
湧き上がってくる優越感を、彼は笑い声としてキシオンに浴びせる。
「はっはっは! どうだ!? 貴様らは、このブラント王国に大乱を引き起こしたいのか? その悪名を史上轟かせたいのか? では無いのであれば……なぁ?」
取るべき道は決まっているだろう?
デグが言外に問いかければ、ここでロイにエミルも息を吹き返した。
「そ、そうだ! この国の平和を考えれば取るべき道は1つだ!」
「今まで通りにするの! それ以外に無いでしょ!」
母もまた、状況が分からないなりに「そうです!」と肯定の声を上げた。
家族一丸となっての攻勢。
これにキシオンを初めとする諸侯は沈黙を守るばかりだった。
デグはほくそ笑む。
勝った。
知られたくは無いことを知られてしまったが、軟禁されて一生を過ごすことは回避することが出来た。
よって、デグはニヤニヤと首謀者であろうキシオンをあざ笑うことになったが……不意に首をかしげることになった。
キシオンがニヤリと不敵な笑みを浮かべてきたのだ。
「な、なんだ? 貴様その表情はなんだ!?」
不吉の予感にデグは思わず叫び上げる。
キシオンは嘲りの笑みを隠そうともせずに応えた。
「いや失敬。私は性格が悪いもので。こうも思うどおりに足掻かれますと……ははは。まったく愉快なものですな」
「お、思い通りだと?」
「はい。こうなると思えば、せっかくですので控えていただいていたのですがね。頃合でしょう。それでは……ご登場を願いましょう」
そうして、貴族たちは左右に割れた。
道が出来るが、それは何のためか?
デグはその先に目を凝らし……裂けんばかりに目を見開くことになった。
先にいたのは1人の女性だった。
見覚えはあった。
その鋭すぎる目つきにも、陰のある顔つきにも。
見覚えはあった。
だが、そんなはずは無いのだ。
その彼女は広場で吊るされたのだ。
もう二度と利用出来ないと惜しんだはずなのだ。
それなのに、いる。
王家の者たちは誰1人声を上げられない。
そんな中で、キシオンは優雅にその女性に手のひらを向けた。
「王位を継ぐべき、正当なる血筋のお方です。メアリ・ブラント様。いや、もはや陛下でよろしいですかな?」
デグは納得するしかなかった。
そこにいるのは間違いなく……悪女だった。
処刑されたはずのメアリ・ブラント本人だった。
◆
「え? あ? ……え? な、なんだお前は!? 何故お前はなんで……な、なんなんだ!! 一体どういうことだ!?」
半ば錯乱したようなデグの叫びを耳にし、メアリは内心頷きを見せる。
(それはそうでしょうね)
混乱もするだろうという話だった。
兄も妹も母も。
蒼白の表情で絶句しているが納得しかなかった。
なにせ、メアリ自身にも現状には驚きしかないのだ。
メアリは家族から彼にと視線を移した。
家族たちへと嘲笑を向けている彼だ。
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