妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます

こたま

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 勝利間際の辺境に、報せがもたらされた。相手国と宰相双方からで、王妃、王子、王子の婚約者を捕らえたとの内容だ。隣国からは戦争を放棄して、属国となれば王家を存続させると。人質の三人は国を売る発言をしている。宰相からは、国を守りしかし人質も救助すべしと。

 戦に勝ってから人質奪還に向かって間に合うのだろうか。すると王家後継者のいなくなったこの国はどうなってしまうのか。
 しかしこの勝利を目前にして放棄など出来ない。どれだけの被害が及ぶか。今までの戦争の犠牲者も報われぬ。
 
 騎士団長、伯爵、辺境軍司令官は急遽作戦会議を行う。その場で伯爵は目を閉じ、深く頷くと大きく目を見開いた。

「今こそ、その時だ。真実を告げよう。ここに正統な王家の継承者がいる」

「フレディこそ、亡き国王から私が託された彼の息子。アルファであり、継承順第一位だ」

「これまで我らが闘ってきたのは何のためか。属国となって重税が更に課されれば民を苦しめる事になる。自衛のために我が辺境軍は生きて、身を捧げてきたのだ。まずは勝とう。王妃殿下、王子殿下が助からずとも王家が途絶える事はない」

「私は亡き親友ルードのためにも、この国を守りたいのだ。宰相が横槍をいれてもこちらには王の密書と王家の秘宝がある!クーデターも辞さず。闘うのみ」

 辺境の軍はこの宣誓によって士気を高め、遂に戦に勝利した。
 敵国からは、役に立たなかった人質達は、金銭との交換に応じるとの報せが届けられた。

 宰相は、貴族議会により戦況に混乱を生じさせ、王家の人質をとられたという采配の責任を取って罷免された。
 また国を捨て逃げようとして捕らえられた人質は、金銭での交換には応じるものの王にはふさわしくないと保養地に軟禁される事になった。

 王子としてフレディが認められ、立太子することが閣議で決定された。


「フレディよ、黙っていて済まなかった。これからは王子として王宮に赴き、国を治め、民を守ってくれ」
「父上。あなたのお陰で私も母、叔父とも幸せに暮らしてこられました。当地や皆のもとは離れがたいです。もう少し、こちらの復興を手伝わせてくださいませんか」

「そうか。では、あと少しだけ力を借りよう。隣地侯爵領に、戦で不足した材木、石材、農産品を購入できるように頼んで欲しい。王都には手紙を送ってあるが、領地には息子殿がおられるようで、実際の手配はその方に頼むようにとの事であったのだ。軍司令部からの遣いと共に、侯爵領地に行って契約書を交わし、配送に取り掛かって欲しい」
「かしこまりました。すぐに向かいましょう」


 侯爵領では、この地に来てからとても穏やかに明るい笑顔を見せることも増えたミシェルが暮らしていた。
 タウンハウスにいたときのように妹の意地悪や両親の冷たさに心を抉られることがなく、自然の中で花を愛で、木々を育てて過ごしていた。

 戦争の報せがあり、戦地に近いこちらを離れるべきかと考えたが、この地を好きになっていたのだ。
 そのうち、妹だけが王子殿下と共にいるため家を離れたらしいことは伝わるが、自分は何かあってもむしろここで骨を埋めても良いとさえ思った。

 それが戦争勝利と、そして妹が王妃殿下、王子殿下と逃げた挙げ句人質になって、金銭で釈放されるも更に軟禁される事になるとは。
 しかし話を聞くと、あの傲慢な王妃殿下、王子殿下は国を守ろうともせず逃げて、あまつさえ国を売るような発言をしたらしい。王宮で自分を貶めた言葉の数々を思いだし、それもあるだろうと納得した。
 しかし王妃になりたい、僕より多くの幸せを持たないと許せないと僕から何もかもを奪った妹。それが今は不遇な立場に置かれるとは、数奇なものだな。

 いずれにせよ自分には関わりない事だといつも通り過ごしていたら、父から手紙が届けられた。いわく辺境伯領に、石材、木材等を高値で売ることになったので、契約書にサインをして、配送の手配をするようにと。
 がめつい父も兄もこちらに来るのが面倒なのだろう。そのように差配すれば、怒られることもない。今は貴族間の力関係も大きく変わっている時期である。どの家が強くなるか分からない現状では縁談を強制されるのもまだ先になることだろう。

 ミシェルは了承の連絡をして辺境からの使者を待つ事にした。これが人生を大きく変えることになるとは、思ってもいなかった。
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