運命の番マッチングシステムで出会ったのは、蒼い眼の英語講師でした

こたま

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 DNAって不思議だ。悠希は生物の授業を聞きながら思った。AGCTたった四つの塩基配列でヒトの遺伝や存在そのものが決まってしまうなんて。神というものが本当にあるならば、もっと複雑にしても良いのに。その遺伝子情報の中には、性別、特徴、疾患、バースやフェロモン、相性なんかも含まれるのか。

 悠希は高校三年生だ。もうすぐ18歳の誕生日が来る。そうしたら国営の運命の番マッチングシステムに登録出来るようになる。

 この世界には、男女の他アルファ、ベータ、オメガのバース性が存在する。優秀なアルファは人口比で減少傾向にありオメガ、特に相性の良い運命の番であれば多くの優秀なアルファやオメガを産む確率が上がる。
 国はオメガの保護と国営で希望するアルファとオメガが遺伝子情報を含め登録するマッチングシステムを構築した。相性の良い相手を紹介して自治体や病院の相談室でお見合いが出来る。

 家族のフェロモンには魅力を感じにくいのは似通ったDNAよりも多様化出来る違いのある遺伝子同士のほうが種として生き残り易いからだ。
 近隣で血縁者の多い近場でなく、運命の番が遠く離れた場所にいても見つかりやすいように全国的なデータベースが作られたのだ。
 
 悠希の家は地方都市の地主だった中小企業経営者の一族だ。昔は家族にアルファとオメガが多かったらしく名家に嫁いだオメガも居たと祖父が言っていた。
 
 近年の少子化、少アルファ化の例に漏れず悠希の祖父はアルファの血縁であったがベータとして産まれ、その一人娘の母もベータであった。そしてベータの父を婿養子に迎えて産まれたのがベータの兄と悠希だ。

 家族の中で先祖返りの突然変異なのか、悠希だけがオメガだった。家族は久しぶりのオメガの誕生にどうやって扱って良いのかわからず困惑した。

 悠希が高校入学を迎える際には、昔オメガの祖先が使ったという庭の離れをリフォームして独り暮らしが出来るようにした。
 発情期に周囲、家族を含めて惑わしたり悠希が事故にあうのを恐れてのことだった。
 6畳の自室とダイニングキッチン、ユニットバスがついて不自由はない。住んでみるとコンパクトで便利だった。祖父母や両親、兄の戸惑う表情を見ないで済むのも良かった。

 そのまま発情期以外もずっと離れで暮らしている。食材は数日毎に母が届けてくれ、発情期以外の日には夕食に手料理を容器に詰めて届けてくれることもあった。
 悠希は、扱いがわからないなりに母が自分を気遣ってくれていることはわかっていた。独り暮らしは料理や掃除洗濯といった家事のスキルアップに繋がって、自分の役にもたっていると考える事にしていた。

 その日は、地域に一つだけある総合病院のバース科を受診する予約をしていた。

「悠希君、変わりはない?」
「はい。先生」
「そうか。今回も抑制剤は以前と同じで良さそうだね」
「はい。問題は感じていません」
「わかったよ。そういえば、もうすぐ18の誕生日だね。マッチング、登録するの?」
「はい。登録したいと思います。ここは田舎でアルファ人口はやや少ないですし、相性の良い人でないと番った後で運命が現れたら捨てられたり苦しむと思うので」
「うん。番解消とかね。今は解消出来るようになっては来たけれどオメガの身体的負担が大きい。出来る事なら運命の相手と番いたいよね」
「先生はお相手の方とどうやってお知り合いになったんですか?」
「僕もマッチングだよ。99.9%の相性。ほぼ運命だった。彼に会えていなければ独身で医師を続けて独りの人生を生きるつもりだった。悠希君にも運命が見つかるように祈ってる。お見合いや何か変化があれば教えて。この病院もお見合い場所の指定を受けているから使って欲しい。僕が立ち会うことも出来るんだ」
「ありがとうございます。先生。心強いです」
「ではまた3ヶ月後に予約を取っておくね。困ったら変更して早くおいで」
「はい。失礼します。ありがとうございました」
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