運命の番マッチングシステムで出会ったのは、蒼い眼の英語講師でした

こたま

文字の大きさ
2 / 5

2

しおりを挟む
「今度回ってくるネイティブの英語講師ってすごいイケメンらしいよ」
「何で知ってるの?」
「ほかの学校の友達に聞いた。曜日毎にいろんな学校を回るから、もう先に行っている学校では女子が大騒ぎになったんだって」
「へえ」
「うちの学校でも女子達が色めき立ってるみたい。アメリカの大学生で日米ハーフらしいよ」
「ふうん」
「何?あんまり興味無い?」
「うん。ごめん。それよりはマッチングの事が頭を占めてるかな?」
「ああ。悠希君は18の誕生日がもうすぐだもんね。確かにイケメンが皆アルファとは限らないしなぁ」
「みのり君は12月だからまだだよね」
「うん。登録するつもりだけど、すぐに相手が見つかるかはわかんないから都会の大学に行っておこうかなと思ってるんだ」
「僕も同じ。相性の良い相手がいつ見つかるか、見つかってもすぐに番うかもわかんないよね。結婚出来なくても独りで生きて行けるように、オメガの学生寮に住んで通える大学を受験するつもり」

 悠希の通う私立高校では国の助成金でアルファクラスとオメガクラスを整備している。
 昔は一学年300人のうち2割近いアルファが在籍したこともあったが現在はアルファ30人、オメガ20人だ。

 オメガクラスの中で男子は悠希とみのりの二人だけ。オメガの女生徒の中にはアルファの同級生とお付き合いしていたり幼少から家の決めた婚約者のいるものがある。
 そのほかは皆マッチングに登録する予定を立て、既に登録した生徒もいた。方法は簡便で、本人と保護者のサイン入り申請書と頬の内側の粘膜を専用の綿棒で擦り取った検体を郵送するのみである。

「もう高三なんて、早いよね」
「うん。受験に向けて勉強しないとね」

 そんな話をしていた。4月末の誕生日に悠希は予定通り両親のサインと自分の署名、遺伝子採取した検体を郵送して小さな達成感を得た。

 その後のゴールデンウィークに悠希は発情期が当たり、学校を休まないで済んで良かったなと考えていた。

 5月の連休明け、発情期もあけたばかりの平日、オメガクラスの担任が告げた。

「来週から毎週金曜日にアメリカ人のネイティブ英語講師が登校に来校して講義をします。彼はアルファだそうです。彼も服用していますが皆も必ず抑制剤を飲んでくるように、注意してください」

「「「はい」」」

 休み時間は英語講師の噂でもちきりになった。

「アルファだって。アメリカ人のアルファ。格好良いらしいね」
「イケメン楽しみだね」
「大学生で一年間だけ日本にいるって」
「日米ハーフなんだって」
「そうなの?」
「ほかの学校の友達が言ってた」

 悠希はあまり興味は無かった。マッチングに登録した結果のお見合い相手がいつ紹介されるかのほうが喫緊の課題だったからだ。
 オメガの女子生徒達とみのりの会話をふうん、へえ、と何となく聞いていただけだった。

 抑制剤は毎日しっかり飲んでいる。また発情期が終わったばかりだ。自分にはあまり関係ない話題として認識していた。

 そして翌週。くだんの英語講師は1限から一年の英語講義を回り始めた。悠希のいる三年生のオメガクラスに現れるのは、まだ二週間先である。
 しかし彼の見目麗しさは悠希のクラスにも噂が届いており、学校中の皆からアイドル並みの人気になっていた。

「英語の先生がお昼に学食を使ったら大騒ぎになってたんだって」
「ふうん」
「皆、先生と話したがったり近くに座ろうとして。教頭先生が来て散れって怒鳴っていたらしいよ」
「そうなんだ、人気者だね」
「悠希君、僕達も見に行かない?」
「僕はいいや。みのり君、行きたいなら他の皆と行って来なよ」
「うん。わかった。ちょっと見てくるね」

 昼休みになるとオメガクラスの女子数人とみのりも学食に教師を見に行った。

「ただいま」
「おかえり、早かったね。ご飯は食べられたの?」
「ううん。混んでたからパン買って、その先生見てきた」
「そっか。早く食べちゃいな」
「うん」

 みのりは弁当を食べる悠希の前でもそもそとパンを咀嚼した。ほかの女子生徒も学食では食べられなかったのか、何か買ってきたり、弁当箱を出して教室で食べ始めた。

 パンと飲み物を急いでかきこむと

「格好良かったよ。アメリカ映画に出る俳優とか雑誌モデルみたいだった。暗めの金髪で蒼い眼だった」
「そう。見られて良かったね。先生は珍獣みたいに皆が見にきて気分を害されて無かった?」
「皆がチラチラみたり、学食の外からも見てるのには苦笑してる感じだった」
「そう。もうすぐ講義で来るし、ゆっくり食事してもらえるように静かにしておいてあげたいね」
「うん。ちょっと反省したよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。 月・木更新 第13回BL大賞エントリーしています。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

処理中です...