婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま

文字の大きさ
1 / 5

1

しおりを挟む
「はあ?マッチングアプリですか?」
「そう。マッチングアプリね」
「何でまたマッチングアプリなんて?」
「ほら、少子化、少アルファ化は国家の危機だから」
「?」
「自治体とかでもさ、婚活パーティーやお見合い斡旋事業なんかしてるだろ?」
「はい。それは存じておりますし、当社でも婚活パーティーの宣伝に関わる案件もたしかありましたね」
「そうなんだよ。厚労省案件で婚活アプリ開発に補助金が出ることになってさ。他社との合同でアプリ開発に参加することになったんだ」
「当社のような中小がですか?」
「大手がやると中抜きが大きいから、うちが競り買ったらしい。社長の手腕だな」
「へぇ。流石業績うなぎ登りの社長ですね」
「そうなんだよ。そこでだ」
「はい」
「開発中のテスト版には、うちと提携先の未婚、未番のアルファとオメガ、未婚のベータがまず登録して動作確認するんだ」
「そうなんですか」
「該当者は全員、登録必至。業務命令な。小島君休暇中だったから、あとは君だけなんだ。これ、登録方法の仕様書ね」
「えぇ?…そんな。…」
「登録しろっていうだけで、交際や結婚を強制しているわけじゃないよ。うまくマッチング出きるか、動作見るのにいきなり一般向けに出来ないだろうが」
「それは勿論わかりますが。僕は遠慮できませんか?」
「何?婚約者や恋人がいるなら未婚でも外れることはできるから、そのように総務に伝えるけど」
「いえ、婚約者や恋人とかは居ませんが、結婚するつもりが無いので...」
「オメガなのに?そんな美人なのに?なんでだよ、もったいない」

「係長、その発言はちょっと。セクハラ注意ですよ?」

 小島史(ふみ)は、オメガ男性だ。ベータ家庭に祖母の実家の先祖返りで産まれたらしい、親族で一人だけのオメガである。
 家族は史の扱いに当初は戸惑うようではあったが、温かく受け止め普通に育ててくれた。

 なので幼いときからの婚約者もおらずに公立校に通学して育った。オメガの二次性徴が発現した後には、幸い抑制剤が副作用なく良く効いた。
 毎日内服すれば、発情期も定期的にコントロール出来、フェロモンが漏れることもない。見た目はオメガらしく華奢で肌が白くつるっとしてはいたが、本人は自分を平凡な特徴のないベータに近い存在だと思っていた。

 だからベータの親族同様に、玉の輿など期待せず自ら働いて生きて行こうと思っていた。

(僕のような平凡でつまらない、ベータよりのオメガで男なんて。とても嫁に欲しがるアルファがいるとは思えない。一人でしっかり生きていけるように、ちゃんと発情期休暇の貰える会社に勤めなくちゃ)

 発情期には数日自室にこもる必要はあるなど多少の不便はあった。でも持ち前の根性と努力のかいあって無事に大学を卒業し、興味のあった広告代理店に新興中小企業ではあったが就職が叶った。

 史の働く会社は、アメリカに留学中飛び級で大学を卒業してから現地企業で経験を積んだ社長が、帰国後まだ若くして起業した新しい会社だ。

 しかし、社長の手腕で起業から数年どんどん業績を上げている。噂によると社長の辰巳皇成(こうせい)は34歳の独身で辰巳グループの経営者一族とも親戚だとか。


 史は経理部の社員として働きだしてまだ2年目の24歳だ。発情期開けに出社すると待ち構えていたかのように係長にマッチングアプリに登録するように迫られた。
 躊躇しているところをバースや外見の話を持ち出され、そこにセクハラだと女性ベータの先輩社員が助け船を出してくれようとしていたのだった。

「でもね、史君。登録を不快に感じる特定のお相手がいないならアプリに登録するだけなら良いんじゃない?マッチングが送られて来ても嫌ならOKしなければいいし、友達だけの募集も出来るんだよ。なんでも経験だから。物は試しっていうでしょ」
「先輩。ありがとうございます」
「ふふふ。私も未婚ベータ友達以上恋人未満の人はいるけど、もう登録したんだよ。もしかしたらなんか素敵な出会いがあるかも知れないじゃない?それは恋愛に限らず、親友関係になれる誰かかも知れないよ?」
「友人、親友…。そうですね。わかりました、登録します。先輩、やり方を教えて頂けますか?」
「オッケー。一緒にやろ?スマホ出してくれる?」
「はい」
「係長、良かったですね。上から何かと言われないで済みますね」
「本当だよ。二人ともありがとう」

「まずね。このQR読んで...それから…」
「はい。はい…」
「年齢、性別、趣味とか考え方とか、好きなこと、苦手なこと、それと…」
「色々詳しく聞かれますね…」
「そうね。相性みるのに役立つんでしょうね」

「はい、これで完了」
「ありがとうございました。先輩のおっしゃるとおり真剣な恋人希望、友人から始める、友人のみっていう多様な出会いが用意されているんですね」
「そうだね。運用開始は明後日からみたい。どんな出会いがあるか楽しみね。とりあえずはこれを作った製作会社と関連会社、うちの社内に限られるけど。辰巳グループが入るから、結構な人数になるみたいだよ?」
「そうですね。食わず嫌いはダメですね、良い経験になります」
「ふふふ。素直でかわいいね、史君。ヨシヨシ」
「っ…ありがとうございます。なんか恥ずかしいです」

 女性の先輩に頭を撫でられた。すっかり弟かペット扱いのようで恥ずかしがる。そんなふうにほんのり頬を染めた可愛い史を見て先輩も上司も微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

大事なものは鳥籠に

おもちDX
BL
アネラは五年前国外追放の身となり、それ以来辺境でひっそりと暮らしている。限られた人にしか会えない生活は寂しいけれど、隠れ住むしか生きるすべはない。 しかし突然アネラの元に第二王子リノエルがやってくる。リノエルはアネラの元婚約者で、アネラを追放した張本人だ。ずっと愛していたと告白され、急な展開にアネラはブチギレる。 「人を振っておいて、ふざけるなって言ってるんですーーー!!」 事情を抱えた第二王子×追放され逃亡した元貴族 Kindleにて配信していた『逃げる悪役令息アンソロジー』への寄稿作です。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ真に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

処理中です...