婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?

こたま

文字の大きさ
2 / 5

2

しおりを挟む
「ピロロ~ン」
「?なんの音かな?」

 何とも間抜けな通知音が、昼12時のオフィスに響いた。皆、音の出所をキョロキョロと見回している。

 史は、今の音が自分のデスクの引き出しあたりから聞こえたように思って引き出しを開けた。

 すると、スマホが点滅して何らかの通知を示している。

「なんだろう?僕のスマホ?聞いたことない音だけど」

 スマホを開いてみると、あのマッチングアプリのアイコンが表示されている。

「あっ」
「どうしたの?」
「先輩。あのマッチングアプリみたいです」
「えっ、えっ?何だって?誰、誰?っ…て、個人情報だよね。立ち入ったこと言ってごめんなさい。昼休みに一人で確認したいよね。う~ん、私のところにはまだ来てないなぁ。誰か連絡くれないかなぁ。自分から合いそうな人、見つけて送ってみよっかなぁ」

 先輩がぶつぶつ話ながらパソコンを閉じた。

「お昼休憩とりまーす」
「はい、了解です」

 史も、しばらくの作業の後、キリの良い所でセーブするとパソコンを閉じた。さて、どんな人から連絡が来ているのか。友人募集なのか、恋人希望なのか…

 デスクを片付けると自作のお弁当を取り出した。史は、自宅から通勤しており、母と二人で手分けして自分と父、兄の分の弁当を作っている。

 今日は母がハンバーグを焼いてくれている間に、ツナマヨとチーズを乗せて焼いた椎茸と茹でたブロッコリー、ミニトマトを準備した。

「頂きます」

 うん。美味しい。周りの社員がカフェや外食に出て、人が少なくなったのを確認し、食事を進めつつスマホを見た。アプリに来ている通知を開く。

「えっ?!」

 小さい声が出てしまった。その通知は、名前を臥せたりニックネームにする事もせず堂々と本名で送られて来ている。

 何と送り主は辰巳皇成と書いてあるではないか。

(社長?!何で?)

 アプリの起動によって、相手の詳細が本人の許可する範囲で示される。どんな希望なのか、どこまで自分の情報を出すのか、それらは相手一人毎に変えることができる優れものなのだが。

 辰巳皇成から、真剣な恋愛希望、友人からの双方の希望にチェックが入ってマッチングを希望している。
 本人の個人情報は、登録内容を全解除、つまり史に対して趣味とか何とか、入力した内容の全てを公開すると設定されているのだった。
 スクロールしていくと、好きな食事や音楽、趣味、苦手なもの、コト…色々が書かれてあり、概ね史とその嗜好が似通っていて、好意的に感じる内容ではあったが…

 なんとその通知は本日昼12時の運用開始直後に来ている連絡だった。

(ってことは、もしかしてバグ?何かの間違いとか?社長の個人情報が全登録者に公開する設定とかになっちゃってたりして?!どうしたら良いんだろう?何処かに報告したほうが良いのかな)

 まだ入社二年目、若干24歳の史に判断など出来ない。ワタワタしつつ、まず誰に相談するべきかと悩む。

(そうだ。まずは先輩か。それから係長?課長?何か対応が必要になるかも知れないからさっと食べてしまおう)

「あ!先輩。おかえりなさい」
「ただいま。史君」
「大変です。アプリに問題が発生したかも知れません」
「ん?何かあったの?」
「はい。見てくださいこれ!先輩の所にも届いて居ませんか?」
「私のアプリ?起動してみたけど、何も来てなかったよ?」

 二人で史のスマホを覗き込む。

「ん?社長だね」
「ですよね?本名で、登録情報全解除って、何かの間違いですよね?」
「ん?何が?」
「?ですから、何かのバグとか不具合とか?」
「そう?」
「え?」
「普通にマッチングなんじゃないの?」
「え?」
「社長が、史君とマッチングしたいんでしょう?」
「まさか」
「でも、社長は未婚のアルファで史君、未婚のオメガなんだから、充分あり得る話だよね?」
「え?だって、僕ですよ?」

「信じられないなら、誰かに友達募集送って動作確認してみる?」
「あ、そうですね。試しにやってみます」

 アプリの中から、自分の登録内容と趣味の合う相手、恋人ではなく男性の友人募集で探してみる。

「友人で探してみました」
「どう?」
「あれ?」
「ん?」

 検索をかけると、相手の合う男性友人候補は一人だけ。その詳細をタップしてみると、なんと。

「「あ...」」

「社長だねぇ」
「本当ですね。何でだろう?やっぱりバグ?」

「検索内容をまた変えてみるとか?」
「そうですね。異性の恋人希望にして、相性の合う人…」

 またマッチング候補は一人。その詳細を表示してみると

「「また」」

 辰巳皇成のみが表示されてきた。

「今の所、何人が登録されているんでしたっけ?」
「まだ300人くらいかな」
「う~ん…少ないから?それとも問題が?」
「私も、ちょっと検索かけてみるよ」

「あ。友人候補で女性だと48人。異性の恋人希望だと19人いる」
「そんなに?何で僕は社長だけなんですかね?」
「う~ん、アルファとオメガが少ないからかなぁ?でも友人候補でも少なすぎるよね。とりあえず、シムテムに報告してみよう?母数が少ないと、アルファとオメガには使えない仕様ってことになるから」
「はい。先輩、すみませんが一緒に行って貰えませんか?」
「良いよ」

 課長に報告した後、業務の一環であるからと昼休み後の時間にそのままシムテム部門に報告しに行った。

 そちらでも、独身の登録者が試しにアプリを起動してみると、多数の候補が表示されていたし、社長の個人情報が送信されている社員は居なかった。
 そして、実際に友人候補と友人マッチングが出来、公開情報もきちんと選んで表示し合うことが出来ている。製作会社に問い合わせてみるとの結果になった。

 史と先輩は、疑問が解決しないまま経理部に戻って業務を再開した。

「さあて、今日は終業時間だね。お疲れさま」
「お疲れさまです」
「私、予定があるからお先に。史君も遅くならないうちに帰るんだよ」
「はい。ありがとうございます」
「係長、課長、お先に失礼します」
「「オツカレ」」

 残った数人でカタカタとキーボードを打つ。途中、次第に人数が減っていく。お疲れさまでしたと挨拶をしつつ、史もキリの良いところまで進めるとデータをセーブした。気付くと周囲にはもう課長しか居ない。

「課長、お先に失礼します」
「うん、小島君お疲れさま。気をつけて帰って」
「はい、ありがとうございます」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

大事なものは鳥籠に

おもちDX
BL
アネラは五年前国外追放の身となり、それ以来辺境でひっそりと暮らしている。限られた人にしか会えない生活は寂しいけれど、隠れ住むしか生きるすべはない。 しかし突然アネラの元に第二王子リノエルがやってくる。リノエルはアネラの元婚約者で、アネラを追放した張本人だ。ずっと愛していたと告白され、急な展開にアネラはブチギレる。 「人を振っておいて、ふざけるなって言ってるんですーーー!!」 事情を抱えた第二王子×追放され逃亡した元貴族 Kindleにて配信していた『逃げる悪役令息アンソロジー』への寄稿作です。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ真に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

処理中です...