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「はあ?マッチングアプリですか?」
「そう。マッチングアプリね」
「何でまたマッチングアプリなんて?」
「ほら、少子化、少アルファ化は国家の危機だから」
「?」
「自治体とかでもさ、婚活パーティーやお見合い斡旋事業なんかしてるだろ?」
「はい。それは存じておりますし、当社でも婚活パーティーの宣伝に関わる案件もたしかありましたね」
「そうなんだよ。厚労省案件で婚活アプリ開発に補助金が出ることになってさ。他社との合同でアプリ開発に参加することになったんだ」
「当社のような中小がですか?」
「大手がやると中抜きが大きいから、うちが競り買ったらしい。社長の手腕だな」
「へぇ。流石業績うなぎ登りの社長ですね」
「そうなんだよ。そこでだ」
「はい」
「開発中のテスト版には、うちと提携先の未婚、未番のアルファとオメガ、未婚のベータがまず登録して動作確認するんだ」
「そうなんですか」
「該当者は全員、登録必至。業務命令な。小島君休暇中だったから、あとは君だけなんだ。これ、登録方法の仕様書ね」
「えぇ?…そんな。…」
「登録しろっていうだけで、交際や結婚を強制しているわけじゃないよ。うまくマッチング出きるか、動作見るのにいきなり一般向けに出来ないだろうが」
「それは勿論わかりますが。僕は遠慮できませんか?」
「何?婚約者や恋人がいるなら未婚でも外れることはできるから、そのように総務に伝えるけど」
「いえ、婚約者や恋人とかは居ませんが、結婚するつもりが無いので...」
「オメガなのに?そんな美人なのに?なんでだよ、もったいない」
「係長、その発言はちょっと。セクハラ注意ですよ?」
小島史(ふみ)は、オメガ男性だ。ベータ家庭に祖母の実家の先祖返りで産まれたらしい、親族で一人だけのオメガである。
家族は史の扱いに当初は戸惑うようではあったが、温かく受け止め普通に育ててくれた。
なので幼いときからの婚約者もおらずに公立校に通学して育った。オメガの二次性徴が発現した後には、幸い抑制剤が副作用なく良く効いた。
毎日内服すれば、発情期も定期的にコントロール出来、フェロモンが漏れることもない。見た目はオメガらしく華奢で肌が白くつるっとしてはいたが、本人は自分を平凡な特徴のないベータに近い存在だと思っていた。
だからベータの親族同様に、玉の輿など期待せず自ら働いて生きて行こうと思っていた。
(僕のような平凡でつまらない、ベータよりのオメガで男なんて。とても嫁に欲しがるアルファがいるとは思えない。一人でしっかり生きていけるように、ちゃんと発情期休暇の貰える会社に勤めなくちゃ)
発情期には数日自室にこもる必要はあるなど多少の不便はあった。でも持ち前の根性と努力のかいあって無事に大学を卒業し、興味のあった広告代理店に新興中小企業ではあったが就職が叶った。
史の働く会社は、アメリカに留学中飛び級で大学を卒業してから現地企業で経験を積んだ社長が、帰国後まだ若くして起業した新しい会社だ。
しかし、社長の手腕で起業から数年どんどん業績を上げている。噂によると社長の辰巳皇成(こうせい)は34歳の独身で辰巳グループの経営者一族とも親戚だとか。
史は経理部の社員として働きだしてまだ2年目の24歳だ。発情期開けに出社すると待ち構えていたかのように係長にマッチングアプリに登録するように迫られた。
躊躇しているところをバースや外見の話を持ち出され、そこにセクハラだと女性ベータの先輩社員が助け船を出してくれようとしていたのだった。
「でもね、史君。登録を不快に感じる特定のお相手がいないならアプリに登録するだけなら良いんじゃない?マッチングが送られて来ても嫌ならOKしなければいいし、友達だけの募集も出来るんだよ。なんでも経験だから。物は試しっていうでしょ」
「先輩。ありがとうございます」
「ふふふ。私も未婚ベータ友達以上恋人未満の人はいるけど、もう登録したんだよ。もしかしたらなんか素敵な出会いがあるかも知れないじゃない?それは恋愛に限らず、親友関係になれる誰かかも知れないよ?」
「友人、親友…。そうですね。わかりました、登録します。先輩、やり方を教えて頂けますか?」
「オッケー。一緒にやろ?スマホ出してくれる?」
「はい」
「係長、良かったですね。上から何かと言われないで済みますね」
「本当だよ。二人ともありがとう」
「まずね。このQR読んで...それから…」
「はい。はい…」
「年齢、性別、趣味とか考え方とか、好きなこと、苦手なこと、それと…」
「色々詳しく聞かれますね…」
「そうね。相性みるのに役立つんでしょうね」
「はい、これで完了」
「ありがとうございました。先輩のおっしゃるとおり真剣な恋人希望、友人から始める、友人のみっていう多様な出会いが用意されているんですね」
「そうだね。運用開始は明後日からみたい。どんな出会いがあるか楽しみね。とりあえずはこれを作った製作会社と関連会社、うちの社内に限られるけど。辰巳グループが入るから、結構な人数になるみたいだよ?」
「そうですね。食わず嫌いはダメですね、良い経験になります」
「ふふふ。素直でかわいいね、史君。ヨシヨシ」
「っ…ありがとうございます。なんか恥ずかしいです」
女性の先輩に頭を撫でられた。すっかり弟かペット扱いのようで恥ずかしがる。そんなふうにほんのり頬を染めた可愛い史を見て先輩も上司も微笑んでいた。
「そう。マッチングアプリね」
「何でまたマッチングアプリなんて?」
「ほら、少子化、少アルファ化は国家の危機だから」
「?」
「自治体とかでもさ、婚活パーティーやお見合い斡旋事業なんかしてるだろ?」
「はい。それは存じておりますし、当社でも婚活パーティーの宣伝に関わる案件もたしかありましたね」
「そうなんだよ。厚労省案件で婚活アプリ開発に補助金が出ることになってさ。他社との合同でアプリ開発に参加することになったんだ」
「当社のような中小がですか?」
「大手がやると中抜きが大きいから、うちが競り買ったらしい。社長の手腕だな」
「へぇ。流石業績うなぎ登りの社長ですね」
「そうなんだよ。そこでだ」
「はい」
「開発中のテスト版には、うちと提携先の未婚、未番のアルファとオメガ、未婚のベータがまず登録して動作確認するんだ」
「そうなんですか」
「該当者は全員、登録必至。業務命令な。小島君休暇中だったから、あとは君だけなんだ。これ、登録方法の仕様書ね」
「えぇ?…そんな。…」
「登録しろっていうだけで、交際や結婚を強制しているわけじゃないよ。うまくマッチング出きるか、動作見るのにいきなり一般向けに出来ないだろうが」
「それは勿論わかりますが。僕は遠慮できませんか?」
「何?婚約者や恋人がいるなら未婚でも外れることはできるから、そのように総務に伝えるけど」
「いえ、婚約者や恋人とかは居ませんが、結婚するつもりが無いので...」
「オメガなのに?そんな美人なのに?なんでだよ、もったいない」
「係長、その発言はちょっと。セクハラ注意ですよ?」
小島史(ふみ)は、オメガ男性だ。ベータ家庭に祖母の実家の先祖返りで産まれたらしい、親族で一人だけのオメガである。
家族は史の扱いに当初は戸惑うようではあったが、温かく受け止め普通に育ててくれた。
なので幼いときからの婚約者もおらずに公立校に通学して育った。オメガの二次性徴が発現した後には、幸い抑制剤が副作用なく良く効いた。
毎日内服すれば、発情期も定期的にコントロール出来、フェロモンが漏れることもない。見た目はオメガらしく華奢で肌が白くつるっとしてはいたが、本人は自分を平凡な特徴のないベータに近い存在だと思っていた。
だからベータの親族同様に、玉の輿など期待せず自ら働いて生きて行こうと思っていた。
(僕のような平凡でつまらない、ベータよりのオメガで男なんて。とても嫁に欲しがるアルファがいるとは思えない。一人でしっかり生きていけるように、ちゃんと発情期休暇の貰える会社に勤めなくちゃ)
発情期には数日自室にこもる必要はあるなど多少の不便はあった。でも持ち前の根性と努力のかいあって無事に大学を卒業し、興味のあった広告代理店に新興中小企業ではあったが就職が叶った。
史の働く会社は、アメリカに留学中飛び級で大学を卒業してから現地企業で経験を積んだ社長が、帰国後まだ若くして起業した新しい会社だ。
しかし、社長の手腕で起業から数年どんどん業績を上げている。噂によると社長の辰巳皇成(こうせい)は34歳の独身で辰巳グループの経営者一族とも親戚だとか。
史は経理部の社員として働きだしてまだ2年目の24歳だ。発情期開けに出社すると待ち構えていたかのように係長にマッチングアプリに登録するように迫られた。
躊躇しているところをバースや外見の話を持ち出され、そこにセクハラだと女性ベータの先輩社員が助け船を出してくれようとしていたのだった。
「でもね、史君。登録を不快に感じる特定のお相手がいないならアプリに登録するだけなら良いんじゃない?マッチングが送られて来ても嫌ならOKしなければいいし、友達だけの募集も出来るんだよ。なんでも経験だから。物は試しっていうでしょ」
「先輩。ありがとうございます」
「ふふふ。私も未婚ベータ友達以上恋人未満の人はいるけど、もう登録したんだよ。もしかしたらなんか素敵な出会いがあるかも知れないじゃない?それは恋愛に限らず、親友関係になれる誰かかも知れないよ?」
「友人、親友…。そうですね。わかりました、登録します。先輩、やり方を教えて頂けますか?」
「オッケー。一緒にやろ?スマホ出してくれる?」
「はい」
「係長、良かったですね。上から何かと言われないで済みますね」
「本当だよ。二人ともありがとう」
「まずね。このQR読んで...それから…」
「はい。はい…」
「年齢、性別、趣味とか考え方とか、好きなこと、苦手なこと、それと…」
「色々詳しく聞かれますね…」
「そうね。相性みるのに役立つんでしょうね」
「はい、これで完了」
「ありがとうございました。先輩のおっしゃるとおり真剣な恋人希望、友人から始める、友人のみっていう多様な出会いが用意されているんですね」
「そうだね。運用開始は明後日からみたい。どんな出会いがあるか楽しみね。とりあえずはこれを作った製作会社と関連会社、うちの社内に限られるけど。辰巳グループが入るから、結構な人数になるみたいだよ?」
「そうですね。食わず嫌いはダメですね、良い経験になります」
「ふふふ。素直でかわいいね、史君。ヨシヨシ」
「っ…ありがとうございます。なんか恥ずかしいです」
女性の先輩に頭を撫でられた。すっかり弟かペット扱いのようで恥ずかしがる。そんなふうにほんのり頬を染めた可愛い史を見て先輩も上司も微笑んでいた。
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