4 / 5
4
しおりを挟む
「殿下、クリス殿下」
「…リン?」
「はい。リンです」
「リン!離れろ!すぐに部屋を出るんだ!」
「殿下、出ません。殿下をお助けしたいです。近寄ります」
クリスはベッドにうずくまっていた。いつもはさらさらと整えられている金髪がぐしゃぐしゃに乱れていた。
クリスの白い肌は赤黒く染まり、熱が体内を駆け巡っていることが伺い知れた。
理知的な優しい蒼い瞳は充血してつり上がり、額には汗が滲んでいた。
リンはその姿に恐れよりも悲哀を感じた。クリスがこんなに苦しんでいるのだ、何とかしてあげたい。やはり自分はクリスが好きなんだと再確認をしていた。
「殿下。手を繋ぎましょう?魔力を流せば治るかも知れません。僕の魔力と相性が良いといいです。うまく流せるのか自信はありませんが」
「リン。出て行ってくれ。こんなあさましい姿を見られたくない。リンを襲ってしまいたくないんだ」
「殿下。聞いてください。クリス殿下。大好きです。愛しています。殿下がいなければ生きてはいけません。どうか僕と触れて」
「リン。何と?」
「殿下が好きなんです」
「ああ。リン。愛している。だから出ていって欲しい」
「いいえ!」
リンは、ベッドに乗り上がり、クリスに抱きついた。そしてクリスの手の甲に自分の小さな手を重ねて、魔力を感じようとつとめた。
(確かに。殿下の中には黒く熱い魔力がぐるぐるとして、体を突き破りそう。でも、所長が言ったように薄めれば。そして、糸のはじっこのようなとっかかりを掴めば…)
リンはありったけの魔力を出した。自分の特徴のない強い魔力は透明にも水色にも見える。それでクリスの黒い魔力を薄め、少しずつ絡まった糸を解いて流していく。
「は!あ。少し、熱がひいてきた」
「はい。殿下。もう少しです」
「リン。リン。触れたい。愛したい。しかしダメだ。なのに我慢出来ない...うッ」
「殿下。そうだ!精を放つと良いって。キスをしながら、殿下の精を放ちましょう。大丈夫です。僕も殿下と触れ合って愛し合いたいです」
「リン。愛している。いずれは私と結婚して番になって欲しい」
「はい。喜んでお受けします。先程陛下と父の承諾も得ました」
「リン!ありがとう。愛しているよ」
「殿下、僕も殿下を愛しています」
「リン。キスをしていいか?」
「はい」
クリスは少し顔色が良くなり、血走っていた眼球結膜は白さを取り戻していた。
ベッドに膝立ちしたクリスは、同様に膝をついているリンの両の肩をそっと抱いて、唇を触れあわせた。
リンは、その唇の柔らかさ、優しさに勇気を得て、残った魔力を振り絞るとクリスの毛糸のように絡まった最後の黒い塊をほどきにかかった。
「ふ、あ」
「もう一度、良い?」
「はい」
唇を何度も触れあわせ、クリスはリンを強く抱き締めた。クリスは布越しの接触からも暖かいリンの魔力の波が体を癒し、楽にしているように感じた。
「クリス殿下。前が昂っておいでですね」
「リン。すまない。見ないでくれ」
「僕もです。殿下とキスをしたらとても気持ち良かった」
「リン。可愛い。リンは優しいな。美しく、魔力もそのフェロモンも温かい。初めて会ったときからずっとだ。心から愛しているよ」
「僕も殿下の薫りはとても好きです。落ち着きます。殿下の寝台で、殿下の残り香を嗅いで一晩眠れたんです」
「リン。一緒に。良い?」
互いの起立を取り出すと、まとめて二人の手を使って高みを目指した。
「あ、あ‥」
「は。う」
手に出されたお互いの精が混ざると、ふわりと光が二人を包みこんだ。良い香りのする花畑のような明るく穏やかな光に包まれ、クリスの体から黒い魔術は消失した。
「リン!ありがとう。好きだ」
「殿下。良かった…大好きです」
「すんでのところで抑えられた。ここでリンとの初めてを終えなかったこと、噛まなかったことが救いだ」
「殿下。僕のためを考えてくださって。嬉しいです。ありがとうございます」
「私自信の為でもある。さあ、外に出ようか。取り急ぎ婚約と結婚の算段をしないとな。リン!これからは名前で。殿下は無しで呼んで欲しい」
「はい。クリス」
二人は、身なりを整えると、軽いキスを交わしてから、隔離室の前で待ち構えていた人達に向けてドアを開け放った。
「「クリス!」」「「リン」」
「皆さま、私はリンのお陰で魔術から開放されました。リンとは互いの気持ちを確認しています。私は欲に負けませんでした。陛下。私達は直ぐに婚約して結婚したいのです。今回の討伐の褒美に早急な結婚をお願い出来ますか?」
「クリス。勿論だとも」
「父上、よろしいですね?」
「ああ。リン。良くやった」
「俺はこれから徹夜で結婚式の準備に取りかかるよ。招待客のリストに招待状、やることが沢山だ。嬉しいよ」
「アーノルド。頼んだよ」
その部屋にいた誰も皆が笑顔を浮かべていた。リンは、ほっとすると共に自分の不確定な魔力は、もしかしたらこのような時に役立つために神様が与えてくださったのかも知れないなと感慨深く考えていた。
「…リン?」
「はい。リンです」
「リン!離れろ!すぐに部屋を出るんだ!」
「殿下、出ません。殿下をお助けしたいです。近寄ります」
クリスはベッドにうずくまっていた。いつもはさらさらと整えられている金髪がぐしゃぐしゃに乱れていた。
クリスの白い肌は赤黒く染まり、熱が体内を駆け巡っていることが伺い知れた。
理知的な優しい蒼い瞳は充血してつり上がり、額には汗が滲んでいた。
リンはその姿に恐れよりも悲哀を感じた。クリスがこんなに苦しんでいるのだ、何とかしてあげたい。やはり自分はクリスが好きなんだと再確認をしていた。
「殿下。手を繋ぎましょう?魔力を流せば治るかも知れません。僕の魔力と相性が良いといいです。うまく流せるのか自信はありませんが」
「リン。出て行ってくれ。こんなあさましい姿を見られたくない。リンを襲ってしまいたくないんだ」
「殿下。聞いてください。クリス殿下。大好きです。愛しています。殿下がいなければ生きてはいけません。どうか僕と触れて」
「リン。何と?」
「殿下が好きなんです」
「ああ。リン。愛している。だから出ていって欲しい」
「いいえ!」
リンは、ベッドに乗り上がり、クリスに抱きついた。そしてクリスの手の甲に自分の小さな手を重ねて、魔力を感じようとつとめた。
(確かに。殿下の中には黒く熱い魔力がぐるぐるとして、体を突き破りそう。でも、所長が言ったように薄めれば。そして、糸のはじっこのようなとっかかりを掴めば…)
リンはありったけの魔力を出した。自分の特徴のない強い魔力は透明にも水色にも見える。それでクリスの黒い魔力を薄め、少しずつ絡まった糸を解いて流していく。
「は!あ。少し、熱がひいてきた」
「はい。殿下。もう少しです」
「リン。リン。触れたい。愛したい。しかしダメだ。なのに我慢出来ない...うッ」
「殿下。そうだ!精を放つと良いって。キスをしながら、殿下の精を放ちましょう。大丈夫です。僕も殿下と触れ合って愛し合いたいです」
「リン。愛している。いずれは私と結婚して番になって欲しい」
「はい。喜んでお受けします。先程陛下と父の承諾も得ました」
「リン!ありがとう。愛しているよ」
「殿下、僕も殿下を愛しています」
「リン。キスをしていいか?」
「はい」
クリスは少し顔色が良くなり、血走っていた眼球結膜は白さを取り戻していた。
ベッドに膝立ちしたクリスは、同様に膝をついているリンの両の肩をそっと抱いて、唇を触れあわせた。
リンは、その唇の柔らかさ、優しさに勇気を得て、残った魔力を振り絞るとクリスの毛糸のように絡まった最後の黒い塊をほどきにかかった。
「ふ、あ」
「もう一度、良い?」
「はい」
唇を何度も触れあわせ、クリスはリンを強く抱き締めた。クリスは布越しの接触からも暖かいリンの魔力の波が体を癒し、楽にしているように感じた。
「クリス殿下。前が昂っておいでですね」
「リン。すまない。見ないでくれ」
「僕もです。殿下とキスをしたらとても気持ち良かった」
「リン。可愛い。リンは優しいな。美しく、魔力もそのフェロモンも温かい。初めて会ったときからずっとだ。心から愛しているよ」
「僕も殿下の薫りはとても好きです。落ち着きます。殿下の寝台で、殿下の残り香を嗅いで一晩眠れたんです」
「リン。一緒に。良い?」
互いの起立を取り出すと、まとめて二人の手を使って高みを目指した。
「あ、あ‥」
「は。う」
手に出されたお互いの精が混ざると、ふわりと光が二人を包みこんだ。良い香りのする花畑のような明るく穏やかな光に包まれ、クリスの体から黒い魔術は消失した。
「リン!ありがとう。好きだ」
「殿下。良かった…大好きです」
「すんでのところで抑えられた。ここでリンとの初めてを終えなかったこと、噛まなかったことが救いだ」
「殿下。僕のためを考えてくださって。嬉しいです。ありがとうございます」
「私自信の為でもある。さあ、外に出ようか。取り急ぎ婚約と結婚の算段をしないとな。リン!これからは名前で。殿下は無しで呼んで欲しい」
「はい。クリス」
二人は、身なりを整えると、軽いキスを交わしてから、隔離室の前で待ち構えていた人達に向けてドアを開け放った。
「「クリス!」」「「リン」」
「皆さま、私はリンのお陰で魔術から開放されました。リンとは互いの気持ちを確認しています。私は欲に負けませんでした。陛下。私達は直ぐに婚約して結婚したいのです。今回の討伐の褒美に早急な結婚をお願い出来ますか?」
「クリス。勿論だとも」
「父上、よろしいですね?」
「ああ。リン。良くやった」
「俺はこれから徹夜で結婚式の準備に取りかかるよ。招待客のリストに招待状、やることが沢山だ。嬉しいよ」
「アーノルド。頼んだよ」
その部屋にいた誰も皆が笑顔を浮かべていた。リンは、ほっとすると共に自分の不確定な魔力は、もしかしたらこのような時に役立つために神様が与えてくださったのかも知れないなと感慨深く考えていた。
113
あなたにおすすめの小説
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
βな俺は王太子に愛されてΩとなる
ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。
けれど彼は、Ωではなくβだった。
それを知るのは、ユリウスただ一人。
真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。
だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。
偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは――
愛か、執着か。
※性描写あり
※独自オメガバース設定あり
※ビッチングあり
【完結】運命なんかに勝てるわけがない
藍
BL
オメガである笹野二葉《ささのふたば》はアルファの一ノ瀬直隆《いちのせなおたか》と友情を育めていると思っていた。同期の中でも親しく、バース性を気にせず付き合える仲だったはず。ところが目を覚ますと事後。「マジか⋯」いやいやいや。俺たちはそういう仲じゃないだろ?ということで、二葉はあくまでも親友の立場を貫こうとするが⋯アルファの執着を甘くみちゃいけないよ。
逃さないα✕怖がりなΩのほのぼのオメガバース/ラブコメです。
政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話
藍
BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。
ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
さかなのみるゆめ
ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。
やけ酒して友人のイケメンに食われたら、付き合うことになった
ふき
BL
やけ酒の勢いで友人に抱かれた榛名は、友人の隠された想いに気付いてしまう。
「お前、いつから俺のこと好きなの?」
一夜をなかったことにしようとする瑞生と、気付いたからには逃げない榛名。
二人の関係が、少しずつ変わっていく。
瑞生(ミズキ)×榛名(ハルナ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる