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✨2025年ご褒美企画✨ 12月31日公開
治療の時間2
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南先生side
今日の午前中は、スタッフステーション内にある処置室での採血担当の南です。
午前中に採血のある子は……8人?!
これを1人で捌くのは無理があるでしょ…。
「南先生、早く終わらせてよ。」
1人目のせつが、椅子に座りクルクルと回りながら口を尖らせる。
「はいはい…。ちゃんと前向いて座って。」
「俺、一昨日の採血の痕青くなってるから右にして。」
せつは頻繁に採血をされている為、手の甲や肘の内側に内出血の痕が消えずに残っていた。
「……血管ないねぇ。左も見せてよ。」
「…やっぱり?右血管出にくいんだよね~。」
素直に左腕も見せてくれたが、せつの言う通り青く痛々しい痕があった。
「右温めようか。」
保温器から蒸しタオルを取り出しせつの右腕に乗せた。
「次の子終わってからするから、しっかり温めてて。」
他のスタッフが、採血のある子を集めて処置室の外で待機させているため進みは早い。
「けいご、入って。」
「先生、ココ血管ある。」
「おっ、さんきゅ。そこ座って。」
けいごのように待機中に血管を探してくれる協力的な子ばかりだと、かなりスムーズに終わるのだが、そうはいかないのが現実…。
「チクッとするよ。…そのままね。」
2本目のスピッツにも血液を採り止血した。
「はい、お疲れ様。血がしっかり止まるまではテープ貼っといてね。」
「はーい。」
けいごを送り出し、腕を温めているせつと向き合う。
「どう?腕見せて。ん…これなら何とかいけそうかな…。」
温めたおかげで薄っすらだが血管が分かるようになった。
早急に駆血帯を巻き付け、消毒をし針を構えた。
「チクッとするよ。」
「…っん。」
「……もう終わるからね。はい、いいよ。」
「痛かった…。また内出血なりそぅ。明後日はもう刺すとこないよ。」
「それは明後日担当の先生が判断するから、心配しなくて大丈夫だよ。お疲れ様。」
「……採血なくなればいいのに。」
ボソッと呟いて処置室から出て行ったせつに苦笑いが零れる。
「次の子入って~。」
「……お願いします。」
「おっ、照か…。動かない自信ある?」
「なぃ…。誰か呼んだ方がいいよ。」
「そうだね。僕も照の採血を1人でやる自信ないや。」
スタッフステーションに誰か先生が居ないかなと処置室から出て覗くと、丁度よく北都先生が入って来るのが見えた。
「北都先生!」
「はい?」
「照の採血手伝ってもらえないですか?」
「あぁ、いいよ。1人だと大変だよね…。」
処置室に戻るとソワソワと落ち着かない様子の照が既に泣きそうな顔で待っていた。
「お待たせ。照、自分で処置室来れたの?偉いじゃん!」
僕が血管を探している間北都先生は、照を抱きかかえて肘を引かないように保定しつつ気が紛れるように話しかけてくれていた。
「…ここにしようかな。照、少し頑張ってね。チクッとするよ。」
サッと脱脂綿を滑らせ針を構えると、慎重に血管に潜らせた。
「ッたい!…グスン…。」
「痛かったね。ちゃんと血液採れてるから大丈夫だよ。」
よしよしと北都先生に頭を撫でられながら採血を終えた照は、北都先生と仲良く処置室を出て行った。
その後もなかなか処置室に来ない子や嫌がる5人の採血を終えようやく任務が完了した。
午後からは……勉強部屋担当か。
まだまだ下っ端の僕は、こういった雑務が多い。
治療のフォローに入ることもあるが、なかなかメインで治療につかせてもらえない。
メインで治療に着くと、治療方針の計画書の作成や担当する子たちの薬の調整やで、これ以上の業務が増えてくる。
今は雑務を捌くので手いいっぱいなため当分メインで治療に着くことはないと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
北都先生side
基本的に2階フロアで治療を行っている俺だが、3階にも受け持ちの子たちが居て、妊婦健診や分娩介助に入り新生児を取り上げる事もある。
特に満月が近づく日は、治験棟でお産が重なる。
そうなると俺が寝不足になる訳で、重たい身体を引きずり陣痛真っ只中の初産婦の内診に向かった。
コンコン…
「入るよ~。」
大きなクッションにお腹を預け前後に身体を揺らすゆうだいの姿があった。
ゆうだいは、ドナーの立ち会いを希望せず1人で出産に望んでいた。
「……ぅぅ…ふぅ…ッたいぃ……」
「痛いねぇ…。」
「はぁ……ぅぅぅ…んん…。」
「力まないよ。ゆーっくり息吐いて…上手だよ。」
腰を強く擦り陣痛の波が治まるのを待った。
「ふぅ…ふぅ……はぁ……。」
「落ち着いてきたね。内診させてね。」
のそのそと仰向けになりクッションに深く凭れた。
ゆうだいが、着ているワンピース型の衣服の裾を捲った
「もう少し足開いてね。」
足を大きくM字に開かせ、パチンと右手にゴム手袋を着け膣に指を深く挿入した。
ぷるんと弾力のある子宮口に指を掛けぐるりと撫で開き具合いを確かめた。
「ん~、6cmってとこかな。」
「えぇ!……さっきと変わんない。」
「だいぶ進み悪いね。陣痛の合間に動けそうなら骨盤緩めたりして、もう少し陣痛促してみようか。また様子見に来るね。」
ゆうだいのお腹に着けているNSTの波形は正常だし、子宮口の開きは悪いが良い陣痛は来ている為時間がかかるタイプなのだろう。
もう1人受け持ちの子が、別の陣痛室に居るため診察に向かった。
陣痛中のあおとの部屋に入ると、ドナーの男性に背中を預けリラックスした様子が見て取れた。
ドナーとは精子提供してくれる男性で、あおとのように生涯のパートナーになるケースも数多ある。
あおとも出産後、母体と新生児の容態が落ち着いたら、一緒に生活する計画で身辺整理をしていた。
「子宮の開き具合チェックさせてね。」
「…先生、さっき…漏れたかも。」
「漏れた?…破水したかな?確認して見ようね。」
内診の苦手なあおとが、膝を閉じてしまうのをドナーの男性が抑えてくれているおかげでスムーズに内診が進められた。
「破水だね。今8cmまで来てるからもう少しだよ。」
「……もう少しで…会える。」
「肛門の辺りが痛くなって、いきみたくて仕方ないってなったら、直ぐにコールしてね。」
「分かりました。」
「ふふ…心強いね。あおとの事をよろしくね。」
「はい。」
しっかり頷いたドナーの男性は、陣痛がくる度に甲斐甲斐しくあおとの腰を擦り、あおとも安心して身を委ねていた。
それから3時間ほど経ち、あおとの分娩準備が整った。
「あおと、長ーくいきんで。」
「ッんんんーー!……ハァハァ…ぅぅゔ…。」
「いいよ。上手だね。もう頭見えて来てるよ。」
「来た…かもっ!…ん"ん"ん"ーー!ったいぃ…痛いっ!」
陣痛の感覚もばっちり掴めているあおとは、いきむ度に胎児を押し出し、黒々とした頭が膣にがっぽりはまった状態になり、痛みで身を捩った。
「会陰切開するね。もう大きいとこ出るよー。」
バッチンと会陰を切り、胎児の頭が旋回しながらゆっくり外に出た。
「ぅぅゔ……ぁぁあッ…っん……はぁはぁ…」
バシャッという水音と共に胎児の肩が出て、羊水に流されるように全身も押し出された。
……ふぎゃ…ふぎゃー!
元気な産声が分娩室に響き渡った。
「あおと、おめでとう。お疲れ様。」
「あおと、よく頑張った!ありがとう!」
ドナーの男性も感極まり涙ながらにあおとを労わった。
だけどあおとは息も絶え絶えで、疲労困憊が顔に滲み出ている。
新生児の臍の緒を切り身体を綺麗にしあおとの胸に抱かせると柔らかく微笑んだ。
「生まれてきてくれてありがとう。」
ふにぃ…ふにぃ…と泣く新生児に指を握らせすっかり母の顔になっているあおとに声を掛ける。
「あおともう少し頑張ってね。胎盤出すよ。」
下腹部をぐぐーっと押し込む。
「軽くいきんで~。」
「…ぅぅゔ……っ、ドゥルンって…。」
「今のが胎盤だよ。出血量も多くないし、しばらく横になって休んでてね。赤ちゃんは一旦預かるね。安静時間が終わったら、また声かけるね。」
「…ぅん。」
「眠くなってきた?もう水はいらない?」
「もう大丈夫…。」
あおとに水分を取らせてくれていたドナーの男性の問いかけにも曖昧な返事になってきて、瞼が下がっていった。
あおとが出産した子は、男の子。
預かったこの子の健康状態を丁寧に診て、とても大切な子宮の有無も確認する。
生殖器に膣は見られなかった。
エコーを下腹部に当て視診するが、やはり子宮は確認できなかった。
エコーのデータや分娩記録をパソコンに打ち込み本部へ送信する。
「……ふぅ。後はゆうだいが無事に出産できればゆっくり寝られるな。」
濃いめのコーヒーを淹れ胃に流し込むと、今も陣痛と戦っているゆうだいの元へ向かった。
そっと部屋に入ると、ぐしゃぐしゃに丸めたタオルをギュッと顔に押し当て唸っている姿があった。
NSTに表示されている胎児の心拍が、少し落ちて来ているのが気がかりだった。
「ゆうだい、進み診てみようか。」
「…グスン……しんどい…痛いっ…。」
「うんうん…。今陣痛来てるね。」
四つん這いでうずくまりお尻を上げ前後に揺れるゆうだいに声を掛け、辛いと思うがゆっくり膣に指を挿入した。
「うゔっ……たいっ!……あ"あ"ぁぁぁ!」
「痛いねぇ…。」
腰をくねらせ逃げを打つ。
「なかなか出てくる気配ないから、このまま破膜しちゃうね。」
「……ハァハァ…もうっ、なんでもいい!から…。」
子宮口に鉗子を差し込み羊膜を少し引っ張ると、パシャッと水が流れ出た。
「ぅぐゔぅぅ…あ"あ"ぁぁあ!…ん゙ん゙ん゙っ!」
一気に強くなった陣痛に苦悶の表情で唸り藻掻くように強くタオルを握り締めた。
「陣痛強くなったね…。次の陣痛で軽くいきんでみようか。もうすぐ会えるからね。」
ハフハフと酸素を取り込みにくいのか呼吸が苦しそうなゆうだいに酸素マスクを着けてやる。
「うん、いいよ。お臍に力入れるようにいきんで。」
「ん"ん"ん"……ハァハァ…っんぅぅ!」
まだいきむ感覚が分からないゆうだいだが、なんとか胎児を外に押し出そうと必死にいきみ続けた。
「赤ちゃんの頭見えてきたよ。」
「……はぁはぁ…見たい…。」
ゆうだいの要望に手鏡を股下に入れ、見えるように角度調整した。
「……ふわァ…くろ……ぅぅゔ!…んんッ!」
胎児の頭を確かめられたのも束の間すぐに次の陣痛に襲われいきんだ。
押されては戻りを繰り返していた頭部が、ようやく膣にはまり戻らなくなった。
「頭良く見えるようになったよ。」
「……っぐゔぅぅぅ…はぁはぁ…ハァハァ……んぐうぅぅ…。」
強いいきみに鼻先まで一気に外に出て、じわりじわりと顔が全て出た。
顔に付着した血液を拭って、鼻から羊水を吸い出す。
「次ながーくいきんで肩出すよ。」
膣が最大に広がりゆうだいの悲鳴と共に胎児の肩が出てきた。
「ぁぁあ"あ"あ"!…痛いぃぃぃっ!」
「痛いねぇ。大きいところ通ったからね。」
「ぐずっ……ハァハァ…んんっっっ!」
「もういきまないよ。ハッハッハッって短く呼吸して。」
痛みにパニックになり、何度もいきみ続けるゆうだいに短足呼吸を促す。
「…ハァハァ…はぁはぁ…はっ、ハッはぁ……。」
「上手だよ。赤ちゃん生まれるよ。」
パシャッと激しく羊水を吹き出し、また1つの生命がこの世界に生まれ落ちた。
まだ臍の緒が繋がっている胎児をタオルで包みゆうだいの胸に抱かせる。
これはゆうだいが提出したバースプランに書かれていたためだ。
ふにゃぁ!ふにゃぁ!と産声を上げる新生児と同じように嗚咽を漏らし泣き出すゆうだい。
長い長い陣痛を1人で耐え抜き大切な我が子を抱き抱えるゆうだいの姿に俺も涙が滲んだ。
今日の午前中は、スタッフステーション内にある処置室での採血担当の南です。
午前中に採血のある子は……8人?!
これを1人で捌くのは無理があるでしょ…。
「南先生、早く終わらせてよ。」
1人目のせつが、椅子に座りクルクルと回りながら口を尖らせる。
「はいはい…。ちゃんと前向いて座って。」
「俺、一昨日の採血の痕青くなってるから右にして。」
せつは頻繁に採血をされている為、手の甲や肘の内側に内出血の痕が消えずに残っていた。
「……血管ないねぇ。左も見せてよ。」
「…やっぱり?右血管出にくいんだよね~。」
素直に左腕も見せてくれたが、せつの言う通り青く痛々しい痕があった。
「右温めようか。」
保温器から蒸しタオルを取り出しせつの右腕に乗せた。
「次の子終わってからするから、しっかり温めてて。」
他のスタッフが、採血のある子を集めて処置室の外で待機させているため進みは早い。
「けいご、入って。」
「先生、ココ血管ある。」
「おっ、さんきゅ。そこ座って。」
けいごのように待機中に血管を探してくれる協力的な子ばかりだと、かなりスムーズに終わるのだが、そうはいかないのが現実…。
「チクッとするよ。…そのままね。」
2本目のスピッツにも血液を採り止血した。
「はい、お疲れ様。血がしっかり止まるまではテープ貼っといてね。」
「はーい。」
けいごを送り出し、腕を温めているせつと向き合う。
「どう?腕見せて。ん…これなら何とかいけそうかな…。」
温めたおかげで薄っすらだが血管が分かるようになった。
早急に駆血帯を巻き付け、消毒をし針を構えた。
「チクッとするよ。」
「…っん。」
「……もう終わるからね。はい、いいよ。」
「痛かった…。また内出血なりそぅ。明後日はもう刺すとこないよ。」
「それは明後日担当の先生が判断するから、心配しなくて大丈夫だよ。お疲れ様。」
「……採血なくなればいいのに。」
ボソッと呟いて処置室から出て行ったせつに苦笑いが零れる。
「次の子入って~。」
「……お願いします。」
「おっ、照か…。動かない自信ある?」
「なぃ…。誰か呼んだ方がいいよ。」
「そうだね。僕も照の採血を1人でやる自信ないや。」
スタッフステーションに誰か先生が居ないかなと処置室から出て覗くと、丁度よく北都先生が入って来るのが見えた。
「北都先生!」
「はい?」
「照の採血手伝ってもらえないですか?」
「あぁ、いいよ。1人だと大変だよね…。」
処置室に戻るとソワソワと落ち着かない様子の照が既に泣きそうな顔で待っていた。
「お待たせ。照、自分で処置室来れたの?偉いじゃん!」
僕が血管を探している間北都先生は、照を抱きかかえて肘を引かないように保定しつつ気が紛れるように話しかけてくれていた。
「…ここにしようかな。照、少し頑張ってね。チクッとするよ。」
サッと脱脂綿を滑らせ針を構えると、慎重に血管に潜らせた。
「ッたい!…グスン…。」
「痛かったね。ちゃんと血液採れてるから大丈夫だよ。」
よしよしと北都先生に頭を撫でられながら採血を終えた照は、北都先生と仲良く処置室を出て行った。
その後もなかなか処置室に来ない子や嫌がる5人の採血を終えようやく任務が完了した。
午後からは……勉強部屋担当か。
まだまだ下っ端の僕は、こういった雑務が多い。
治療のフォローに入ることもあるが、なかなかメインで治療につかせてもらえない。
メインで治療に着くと、治療方針の計画書の作成や担当する子たちの薬の調整やで、これ以上の業務が増えてくる。
今は雑務を捌くので手いいっぱいなため当分メインで治療に着くことはないと思う。
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北都先生side
基本的に2階フロアで治療を行っている俺だが、3階にも受け持ちの子たちが居て、妊婦健診や分娩介助に入り新生児を取り上げる事もある。
特に満月が近づく日は、治験棟でお産が重なる。
そうなると俺が寝不足になる訳で、重たい身体を引きずり陣痛真っ只中の初産婦の内診に向かった。
コンコン…
「入るよ~。」
大きなクッションにお腹を預け前後に身体を揺らすゆうだいの姿があった。
ゆうだいは、ドナーの立ち会いを希望せず1人で出産に望んでいた。
「……ぅぅ…ふぅ…ッたいぃ……」
「痛いねぇ…。」
「はぁ……ぅぅぅ…んん…。」
「力まないよ。ゆーっくり息吐いて…上手だよ。」
腰を強く擦り陣痛の波が治まるのを待った。
「ふぅ…ふぅ……はぁ……。」
「落ち着いてきたね。内診させてね。」
のそのそと仰向けになりクッションに深く凭れた。
ゆうだいが、着ているワンピース型の衣服の裾を捲った
「もう少し足開いてね。」
足を大きくM字に開かせ、パチンと右手にゴム手袋を着け膣に指を深く挿入した。
ぷるんと弾力のある子宮口に指を掛けぐるりと撫で開き具合いを確かめた。
「ん~、6cmってとこかな。」
「えぇ!……さっきと変わんない。」
「だいぶ進み悪いね。陣痛の合間に動けそうなら骨盤緩めたりして、もう少し陣痛促してみようか。また様子見に来るね。」
ゆうだいのお腹に着けているNSTの波形は正常だし、子宮口の開きは悪いが良い陣痛は来ている為時間がかかるタイプなのだろう。
もう1人受け持ちの子が、別の陣痛室に居るため診察に向かった。
陣痛中のあおとの部屋に入ると、ドナーの男性に背中を預けリラックスした様子が見て取れた。
ドナーとは精子提供してくれる男性で、あおとのように生涯のパートナーになるケースも数多ある。
あおとも出産後、母体と新生児の容態が落ち着いたら、一緒に生活する計画で身辺整理をしていた。
「子宮の開き具合チェックさせてね。」
「…先生、さっき…漏れたかも。」
「漏れた?…破水したかな?確認して見ようね。」
内診の苦手なあおとが、膝を閉じてしまうのをドナーの男性が抑えてくれているおかげでスムーズに内診が進められた。
「破水だね。今8cmまで来てるからもう少しだよ。」
「……もう少しで…会える。」
「肛門の辺りが痛くなって、いきみたくて仕方ないってなったら、直ぐにコールしてね。」
「分かりました。」
「ふふ…心強いね。あおとの事をよろしくね。」
「はい。」
しっかり頷いたドナーの男性は、陣痛がくる度に甲斐甲斐しくあおとの腰を擦り、あおとも安心して身を委ねていた。
それから3時間ほど経ち、あおとの分娩準備が整った。
「あおと、長ーくいきんで。」
「ッんんんーー!……ハァハァ…ぅぅゔ…。」
「いいよ。上手だね。もう頭見えて来てるよ。」
「来た…かもっ!…ん"ん"ん"ーー!ったいぃ…痛いっ!」
陣痛の感覚もばっちり掴めているあおとは、いきむ度に胎児を押し出し、黒々とした頭が膣にがっぽりはまった状態になり、痛みで身を捩った。
「会陰切開するね。もう大きいとこ出るよー。」
バッチンと会陰を切り、胎児の頭が旋回しながらゆっくり外に出た。
「ぅぅゔ……ぁぁあッ…っん……はぁはぁ…」
バシャッという水音と共に胎児の肩が出て、羊水に流されるように全身も押し出された。
……ふぎゃ…ふぎゃー!
元気な産声が分娩室に響き渡った。
「あおと、おめでとう。お疲れ様。」
「あおと、よく頑張った!ありがとう!」
ドナーの男性も感極まり涙ながらにあおとを労わった。
だけどあおとは息も絶え絶えで、疲労困憊が顔に滲み出ている。
新生児の臍の緒を切り身体を綺麗にしあおとの胸に抱かせると柔らかく微笑んだ。
「生まれてきてくれてありがとう。」
ふにぃ…ふにぃ…と泣く新生児に指を握らせすっかり母の顔になっているあおとに声を掛ける。
「あおともう少し頑張ってね。胎盤出すよ。」
下腹部をぐぐーっと押し込む。
「軽くいきんで~。」
「…ぅぅゔ……っ、ドゥルンって…。」
「今のが胎盤だよ。出血量も多くないし、しばらく横になって休んでてね。赤ちゃんは一旦預かるね。安静時間が終わったら、また声かけるね。」
「…ぅん。」
「眠くなってきた?もう水はいらない?」
「もう大丈夫…。」
あおとに水分を取らせてくれていたドナーの男性の問いかけにも曖昧な返事になってきて、瞼が下がっていった。
あおとが出産した子は、男の子。
預かったこの子の健康状態を丁寧に診て、とても大切な子宮の有無も確認する。
生殖器に膣は見られなかった。
エコーを下腹部に当て視診するが、やはり子宮は確認できなかった。
エコーのデータや分娩記録をパソコンに打ち込み本部へ送信する。
「……ふぅ。後はゆうだいが無事に出産できればゆっくり寝られるな。」
濃いめのコーヒーを淹れ胃に流し込むと、今も陣痛と戦っているゆうだいの元へ向かった。
そっと部屋に入ると、ぐしゃぐしゃに丸めたタオルをギュッと顔に押し当て唸っている姿があった。
NSTに表示されている胎児の心拍が、少し落ちて来ているのが気がかりだった。
「ゆうだい、進み診てみようか。」
「…グスン……しんどい…痛いっ…。」
「うんうん…。今陣痛来てるね。」
四つん這いでうずくまりお尻を上げ前後に揺れるゆうだいに声を掛け、辛いと思うがゆっくり膣に指を挿入した。
「うゔっ……たいっ!……あ"あ"ぁぁぁ!」
「痛いねぇ…。」
腰をくねらせ逃げを打つ。
「なかなか出てくる気配ないから、このまま破膜しちゃうね。」
「……ハァハァ…もうっ、なんでもいい!から…。」
子宮口に鉗子を差し込み羊膜を少し引っ張ると、パシャッと水が流れ出た。
「ぅぐゔぅぅ…あ"あ"ぁぁあ!…ん゙ん゙ん゙っ!」
一気に強くなった陣痛に苦悶の表情で唸り藻掻くように強くタオルを握り締めた。
「陣痛強くなったね…。次の陣痛で軽くいきんでみようか。もうすぐ会えるからね。」
ハフハフと酸素を取り込みにくいのか呼吸が苦しそうなゆうだいに酸素マスクを着けてやる。
「うん、いいよ。お臍に力入れるようにいきんで。」
「ん"ん"ん"……ハァハァ…っんぅぅ!」
まだいきむ感覚が分からないゆうだいだが、なんとか胎児を外に押し出そうと必死にいきみ続けた。
「赤ちゃんの頭見えてきたよ。」
「……はぁはぁ…見たい…。」
ゆうだいの要望に手鏡を股下に入れ、見えるように角度調整した。
「……ふわァ…くろ……ぅぅゔ!…んんッ!」
胎児の頭を確かめられたのも束の間すぐに次の陣痛に襲われいきんだ。
押されては戻りを繰り返していた頭部が、ようやく膣にはまり戻らなくなった。
「頭良く見えるようになったよ。」
「……っぐゔぅぅぅ…はぁはぁ…ハァハァ……んぐうぅぅ…。」
強いいきみに鼻先まで一気に外に出て、じわりじわりと顔が全て出た。
顔に付着した血液を拭って、鼻から羊水を吸い出す。
「次ながーくいきんで肩出すよ。」
膣が最大に広がりゆうだいの悲鳴と共に胎児の肩が出てきた。
「ぁぁあ"あ"あ"!…痛いぃぃぃっ!」
「痛いねぇ。大きいところ通ったからね。」
「ぐずっ……ハァハァ…んんっっっ!」
「もういきまないよ。ハッハッハッって短く呼吸して。」
痛みにパニックになり、何度もいきみ続けるゆうだいに短足呼吸を促す。
「…ハァハァ…はぁはぁ…はっ、ハッはぁ……。」
「上手だよ。赤ちゃん生まれるよ。」
パシャッと激しく羊水を吹き出し、また1つの生命がこの世界に生まれ落ちた。
まだ臍の緒が繋がっている胎児をタオルで包みゆうだいの胸に抱かせる。
これはゆうだいが提出したバースプランに書かれていたためだ。
ふにゃぁ!ふにゃぁ!と産声を上げる新生児と同じように嗚咽を漏らし泣き出すゆうだい。
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