5 / 37
10年ぶりの再会
しおりを挟む第三王子帰還パーティー当日。トランペットが高々と奏でるファンファーレの音と共に入場してきたひときわ輝く王子の姿に、会場内には感嘆のため息が充満していた。
10年ぶりに見たカーティス様は今でも美味しそうなはちみつ色の髪と瞳はそのままに、随分と逞しく凛々しく成長を遂げていた。
ウォーレンと大差ないんじゃないかと思うほどの身長。厚みを感じる胸元と長い手足。晴れの日が多いという同盟国で健康的な生活を送っていたのだろうと一目で分かる小麦色の肌。
眉はキリッと整えられ、人形のようだった面影は薄れたものの、優しげに垂れ下がる目元とその下の涙黒子は確かにカーティス様だと証明していた。
今日の主役である彼は、舞台の真ん中に立ち止まるとぐるりと会場を見回す。そしてバチ、と音がしそうなほど僕と目が合ったと思えば凛々しい眉を下げ、柔らかな笑顔を浮かべた。
僕の周りにいたご令嬢たちが小さく黄色い悲鳴をあげて盛り上がる。明らかに僕に向けたと分かる笑顔に、内心動揺を悟られないように必死に取り繕った。
パーティー主催・参加への感謝、帰国をするに当たって同盟国で学んだことを自国に生かし、国民のために働く決意表明を淡々と、しかし力強く言葉にしたカーティス様。
子供の時は砂のお城を崩すときにわんわんと声をあげて泣くほど泣き虫王子だったのに、と思いながらも彼の立派に成長した姿に感動すら覚える。
僕も少しは彼に誇れるような人間になれているだろうか、と考えてあまり自信が持てず隠れるように会場の端に移動する。
入り口近くには警備の仕事にあたっているウォーレンがいて、僕が気付いた時には彼はすでに僕を見ていた。
何となくウォーレンの表情が固いのが気になったがすぐに小さく微笑まれて僕もきゅっと口角を上げて見せる。
カーティス様の挨拶が終わると、拍手の音がまるで大きな油鍋の中に水でも零したようにぱちぱちと起こった。
そして我先にとカーティス様の元に人々が集まり、自分の娘をぜひ嫁にという魂胆が渦巻く空間が出来上がる。
帰国して早々カーティス様も大変だなとぼんやり思っていると少し離れていた両親に呼ばれ、そのままカーティス様を囲む人集りの中に引きずり込まれた。
国の官僚の中でも特に位の高い役職についている両親に周りも気を配り、さっと人が避けていく。
気付けば僕は人集りの真ん中まで押し出され、目の前には10年ぶりに至近距離にいるカーティス様。
僕も彼も目を丸くして数秒無言で見つめ合い、お互い同時に息を吸い込んだ。
「…ロナ!会いたかった!」
そう叫んでがばりと覆い被さるようにハグをしてきたカーティス様の身体を少しよろけながらも受け止める。
爽やかなオレンジのような香りが鼻腔を擽り、逞しく成長した背中にそっと手を添えながら僕は口を開いた。
「お久しぶりです、カーティス様。覚えていて下さったんですね。ご健勝のようで何よりでございます」
「ロナ、そんな堅苦しい態度はやめてくれ。と言ってもこの場で難しいことは理解している。昔のように2人で語り合いたい。積もる話が山ほどあるんだ」
「はい。過去の学友とはいえ、私で良ければぜひ留学先で学ばれ成長されたカーティス様のお話をお聞かせくださると幸いです」
「……うん、この後すぐにでも」
ちょっと堅苦しすぎる文言だっただろうか。しかしありとあらゆる由緒正しき家柄の人間たちに囲まれている中で昔のように話せば、どんなことを噂されるかたまったもんじゃない。
苦い顔を一瞬見せたがすぐににこやかな笑顔を浮かべたカーティス様は、そっと顔を僕の耳元に近付けた。
「パーティーが終わったら、蘭の宮にあるあの場所でおち合おう」
小声で僕にだけ聞こえるように囁いた彼の言葉に逡巡する余地もないまま、すぐに身体は離される。
そしてすぐにカーティス様は僕との挨拶が終わるのを待っていた人々に再び囲まれ、僕は人の波に流されるようにして群衆の中から脱出した。
蘭の宮にあるあの場所を彼もまだ覚えていてくれたんだな、という嬉しさはありつつも。
パーティーが終わり次第すぐに帰っていちゃいちゃしようと約束していたウォーレンへ何て言うべきか、とパーティーが終わるまで頭を悩ませることになった。
550
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
婚約者変更で傲慢アルファの妃になりました
雨宮里玖
BL
公爵令息のハルは突然の婚約者変更を告げられ戸惑う。親同士の約束で、ハルは第一王子のオルフェウスと婚約していた。だがオルフェウスの病気が芳しくないため王太子が第二王子のゼインに変更となり、それに伴ってハルの婚約者も変更になったのだ。
昔は一緒に仲良く遊んだはずなのに、無愛想で冷たいゼインはハルのことを嫌っている。穏やかで優しいオルフェウスから、冷酷なゼインに婚約者が変わると聞いてハルは涙する。それでも家のために役に立ちたい、王太子妃としてゼインを一途に愛し、尽くしたいと運命を受け入れる覚悟をする。
婚礼式のときからハルに冷たく傲慢な態度のゼイン。ハルは負けじと王太子妃としての役割を果たすべくゼインに迫る。初夜のとき「抱いてください」とゼインに色仕掛けをするが「お前を抱く気はない」とゼインに一蹴されてしまう——。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる