【完結】恋人から試し行動され続けるけど僕の愛は揺らがない。

u

文字の大きさ
34 / 37

愛に溺れるのは永遠

しおりを挟む


    僕から王太子と騎士団長が繋がっていること、ラディス国に再び追いやりたいこと、それが無理なら命を狙っていることを知った第三王子は、すぐに第二騎士団長を連れて王宮に向かい、父親であるこの国の王に火急の報告があると謁見を申し込んだ。
    謁見の許可が下りる間に、杏の宮の警備をお願いしていた第二騎士団の団長にアーバント家に立ち入り捜査が出来るよう人数を集めておけと命じる。そこで動き出したのがハリスさんだった。

    王に謁見した第三王子は、アーバント家が第一騎士団長と王太子と手を組み、ウォーレンを監禁している疑いがあるため捜査をさせてほしいこと。自分の命を狙っている疑いがあること。もしそれが事実だと証明できた暁には、第一王子を王太子から外し、自分を王太子候補にしてほしいと願い出た。
    第二王子派閥も黙っていないだろうが、彼らも自分の暗殺を企てているためその証拠を確実に掴み、証明して見せることも宣言したそうだ。
    その確固たる自信と堂々とした佇まいに、彼が帰国してから第三王子が王太子に相応しいと常々思っていたという王は、それを許した。

    アーバント家に向かいその周辺を注意深く観察していたハリスさんたちは、第一騎士団長がアーバント家に入っていく後を着いていき、地下牢があることを突き止め、そこにウォーレンがいることを確認した。
    それを第二騎士団長に報告し、気を緩めているであろう朝方奇襲を仕掛けることに決める。そして第三王子が第二騎士団を引き連れて、アーバント家を一斉包囲、摘発したというわけだ。

    助け出されたウォーレンに、カーティス様は高らかにこう告げたという。

『ウォーレン・コーク!よく聞け!私は将来、この国の王となる男だ。いつか子をなすため妃を娶らなければならない。よってロナを真の意味で幸せにすることが出来ない。だからこの身を切る思いで、お前にロナを託す!この私がたった一つ欲しい宝物を貴様に託すのだから、二度とロナを傷付けるな!必ずロナを幸せにしなければ、この私が許さない!』

    その姿は、伝説の不死鳥、鳳凰の姿に見えたとウォーレンはポツリと呟いた。カーティス様の強く、深い愛に満ちた言葉たち。動かしがたい岩のような重みで、胸にのしかかってきた。
    直接目にしたわけではないのに、カーティス様の声と言葉がはっきりと耳元で聞こえるようだった。自分の夢や願いを手放し、ただ僕の幸せのために最善を尽くそうとする彼の深すぎる愛に、強く胸を打たれる。
    あれだけ助けられ、あれだけ慈しむ心を貰い、あれだけ甘えさせてもらったのに、彼の想いに応えることが出来ない歯痒さに胸の内側をかきむしりたくなる。罪悪感が血に混じり、全身に巡っていく。
    気付けば再び、ぼたぼたと大きな雫が頬を滑り顎から溢れ落ちていく。肩が震え、息を吸って吐くのもやっとの思いだった。

「そしてロナは杏の宮にいるからすぐに迎えに行けと言って下さった。実際にすぐ向かおうとしたけどこのハリスからそれは王に直接これまでの経緯説明と報告をしてからだと止められた。やっとそれを終えてこんな時間になってしまったというわけなんだ」

    じとりとした目でハリスさんを見やったウォーレンは、すぐに僕に視線を戻し、そっと指先で僕の涙を拭う。その指先に甘えるように頬を傾け、すべてを聞き終えた僕は大きなため息を溢した。

「…この涙が、他の男を思って流されていると思うと嫉妬でおかしくなりそうな今の俺を、本当に受け入れてくれる?かっこいいカーティス王子とは比べ物にならないくらい、騙されはめられるようなかっこ悪い俺を、心から選べる?」
「ウォーレン、」
「カーティス王子のロナへの気持ちは真っ直ぐで強くて、俺には目が眩むほど眩しい。俺の持つドロドロとした、暗い執着とは正反対の愛だ。彼と一緒になればロナはずっと笑顔でいられるのかもしれない、彼のほうがロナを幸せに出来るのかもしれないと…いい加減、分かってはいる」

    萎れた花のように自信を失くしたウォーレンが、それでも、と新緑の瞳に熱い炎を燃やしながら言葉を続けた。

「それでも、俺がロナを幸せにしたい。俺の隣で笑うロナが見たい。ロナと一緒に歳をとりたい。これから共に過ごす時間の中で、傷付けてしまった傷を癒させてほしい。だから、ロナだけは誰にも譲れない。そんな俺を……受け入れてくれる?」

    嘘偽りのない、真摯な言葉にまた違う種類の涙が頬を濡らす。僕は彼の手をギュッと強く握りしめ、こくこくと何度も頷いた。

「もちろんだよ……僕も、ウォーレンの人生のどこを切り取っても、隣に僕がいたい。幸も不幸も、笑いも涙も、隣で分かち合いたいと思うよ」

    鼻をすすりながらも一生懸命伝えた言葉は、震えていた。ウォーレンは感極まったように僕を抱き締める。少し痩せたような気がする広い背中に僕も腕を回し、強く抱き締めた。

    きっと、結婚式のあのシーンは、一生僕の心の影となって消えないだろう。夢に見て涙を流すこともあるだろう。だけど、その影をまとめて愛する覚悟が、今の僕にはある。
    いつかその影が僕の心を再び覆うとしても、そのたびにウォーレンの愛で影を薄めてもらえばいい。その義務と権利を、彼に与えていこう。

「えー……こほん、愛を交わし合っているようなので、本日のところは我々は退散させて頂きます。明日、王宮にお二人を連れてくるよう命じられておりますのでまた明日お迎えに参ります。失礼致しました」

    すっかり二人の世界に入り込んでいた僕たちだったが、ハリスさんの言葉に気まずさと申し訳なさで居たたまれなくなる。僕は立ち上がり、深くお礼と謝罪をしながら部屋から出ていく第二騎士団の方々を見送った。
    執事のホッジさんも空気をよんで深くお辞儀をしたあと出ていき、文字通り二人きりの室内になった途端、ウォーレンから嵐のようなキスを受けた。

「やっと二人きりになれた…!もうずっとずっとキスしたいのを、触れあいたいのを我慢してたんだ!人前だからと欲求を抑えた俺を褒めてほしいよ」
「んっ、ウォーレン…ここでそういうことをするわけには…」
「無理、もう無理だ。早くロナを感じたい。ロナの心も身体も隅々まで愛したい。愛させて」

    そして始まったウォーレンからの愛撫に、僕はあっという間に陥落させられ、抵抗するのを諦めた。僕も同じく早く抱き合いたかったから、抵抗する素振りを一応してみただけで、すぐに彼からもたらされる快感に翻弄された。

「ロナ…やっと、君が俺のものになったと実感できてるよ…ありがとう。俺を受け入れてくれて、俺を選んでくれて…本当にありがとう。ロナが女性だったら孕ませて繋ぎ止められる安心感を得られるのにってずっと思ってたから…やっと今初めて、安心できているよ」
「僕には最初から最後までウォーレンだけだよ。ウォーレンの熱しかほしくない。だから、もっと…もっとちょうだい…」
「あぁ、愛おしすぎる…!ロナ、愛してる、愛してるよ…心から」
「僕も、世界中で誰よりも愛してる」

    誰かが言った。恋に落ちたのは一瞬、愛に溺れるのは永遠だと。
    たとえ、正しさが恋を殺しても。その分愛は間違いをも飲み込んで、許していく。

    僕たちは、食べることも寝ることも惜しんで、離れていた時間を埋めるようにただひたすら繋がって夜を過ごした。幸せの海に溺れているような、そんな夜を。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

婚約者変更で傲慢アルファの妃になりました

雨宮里玖
BL
公爵令息のハルは突然の婚約者変更を告げられ戸惑う。親同士の約束で、ハルは第一王子のオルフェウスと婚約していた。だがオルフェウスの病気が芳しくないため王太子が第二王子のゼインに変更となり、それに伴ってハルの婚約者も変更になったのだ。 昔は一緒に仲良く遊んだはずなのに、無愛想で冷たいゼインはハルのことを嫌っている。穏やかで優しいオルフェウスから、冷酷なゼインに婚約者が変わると聞いてハルは涙する。それでも家のために役に立ちたい、王太子妃としてゼインを一途に愛し、尽くしたいと運命を受け入れる覚悟をする。 婚礼式のときからハルに冷たく傲慢な態度のゼイン。ハルは負けじと王太子妃としての役割を果たすべくゼインに迫る。初夜のとき「抱いてください」とゼインに色仕掛けをするが「お前を抱く気はない」とゼインに一蹴されてしまう——。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...