二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
40 / 64
赤と青の遊戯

36.双子の思惑

しおりを挟む
 
 弟はどうやら反対している様子だが、ミイルズが構わずにこにこと話しかけてくる。

「エレナちゃんはマリアンヌちゃんと同じ回復スキル持ちだよね?」
「そうですね。スタレット様ほどのものではないとは思いますが」

 死に戻り前、マリアンヌの回復スキルはすごかった。
 助からないだろうと思われた怪我人を治したり、余命いくばくもない病人を救ったりしていた。

 まさに聖女。
 ちやほやされたい病や親友の婚約者を盗るなど自己中心的で性格に問題はあったが、彼女が持っていたスキルで助かった人々は多かった。
 今はそこまで聞かないが、きっとこれからそういった話を耳にすることになるだろう。

「そうかなぁ。僕は領地を盛り上げ、人がたくさんついてくるエレナちゃんの力のほうがすごい気がするけど。確かにマリアンヌちゃんの回復魔法はみるみる傷が治って、ほかとはレベルは違うけどね」

 治癒院での慈善事業に精力的に動いていると聞いていたが、そこに双子も一緒に行くことがあるらしい。
 私も死に戻り前に彼女が魔法行使する場面を何度も見たが、とても神々しくて治癒が早くてすごいというのには言葉が足りないものだった。

 ――まあ、価値や見方は人それぞれだし……

 紫の殿下のことといい、私自身が聖女スキルを得たことと同じでマリアンヌ自身や周辺も変わってきているようだが、前回同様彼女が回復スキルを持っているのは一緒だ。
 きっと、また聖女だなんだと騒がれるのだろう。
 もしかしたら、今は効果的に演出できるタイミングを狙っているだけなのかもしれない。

「ありがたいスキルのおかげと、周囲に恵まれているだけですよ」

 正式名称は聖女スキルだがすべて回復スキルのおかげとしているのは、マリアンヌに絡まれるのを避け、権力者に目をつけられないためだ。
 私が目に見えて力を行使するのは目立つ。

 本当に必要としている人に力を使うことは躊躇わないが、ここ王都ではマリアンヌもいるし必要以上に回復スキルを使用するつもりはない。
 そのための回復ポーションでもある。

 せっかくのスキルなので困っている人たちの役に立てるよう、ポーションを開発した。
 商品化する物は最上級の物と比べると効能は劣るが、それでも多くの人々を救うことができるはずだ。

 王都にくるまでに間に合わせようと、家族も、なんとなく事情を察しているベアティたちも協力してくれた。
 表立っての人々への行使は目立ちたいマリアンヌに任せておくほうが棲み分けもでき、睨まれることも減るだろう。

 死に戻り前のことがあり、少しばかりマリアンヌの立場を追い込んだらどうなるだろうと考えたことはあったが、逆恨みで粘着され面倒になるだけだと却下した。
 同じ系統のスキルを持っている以上、この形が理想だと私は思っている。

「エレナ様はすごいですから」
「エレナお嬢様は偉大です」

 ベアティとシリルが背後からにこやかに告げる。

「二人も頑張ってくれたからよ。私一人では成し得ないことだもの」

 スキルはただのスキルだ。
 それをどう使うかによるし、今回のように幅広く活用するには多くの人の力が必要だ。

「やっぱり、僕はエレナちゃんに話を聞いてもらいたいな」
「ミイルズ。勝手に話を進めないで」

 そして、先ほどのやり取りに戻る双子。

「僕は彼女を信じてもいいと思う」
「だけど……」

 何か話があるようだがまず双子で話をまとめてくれないと、こちらも反応のしようがない。
 しばらく見守っていると背後から人が近づく気配がし、最も絡みたくない人物の声が私たちの間に入ってきた。

「あら、アベラルドったら深刻な顔をしてどうしたの?」

 その声を受け、二人はポーションを袋の中にそっと戻し侍従に渡すと、マリアンヌに向き合った。
 私としてはどちらでもいいが、二人はマリアンヌにポーションを知られたくないらしい。
 先ほどの相談事の件といい、回復を必要とする何か深刻なことがあり、マリアンヌはそれをまだ知らないようだ。

「少しミイルズと意見の対立があって。マリアンヌ嬢は来られるかわからないとおっしゃっていたから、来てもらえて嬉しいよ」
「ええ。彼らが私のことを気にしていたと聞いたら、私も気になって」

 そこで、マリアンヌこてんと可愛く見えるように小さく首を傾げ、私を通り越してベアティとシリルに視線を向け話を続けた。

「前回のことを気にしてだったら、気にしないでちょうだいね。貴族に囲まれて緊張していたのでしょう? その気持ちもわかるわ。私もぜひおしゃべりしたいと思って来たの。よろしくね」

 美形好きのマリアンヌの登場とその問題発言に、ベアティとシリルが殺気立つのがわかる。
 マリアンヌが思う理由で彼らが彼女のことを気にしているわけがないし、気にしていたとしても双子にあれ以来会っていないので完全な嘘である。

 どういうことだと双子を見ると、ミイルズが申し訳なさそうな顔をし、アベラルドが複雑な顔をした。
 二人がわざとマリアンヌを呼んだことは、顔を見ればわかる。

 ――ちょっと悪戯がすぎないだろうか……

 マリアンヌに気づかれないよう嘆息し、すっと私のほうへ寄ってきた二人を落ち着かせるよう手を後ろにして、彼らの手を掴んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

公爵令嬢ルチアが幸せになる二つの方法

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢のルチアは、ある日知ってしまう。 婚約者のブライアンには、妻子がいた。彼は、ルチアの侍女に恋をしていたのだ。 ルチアは長年、婚約者に毒を飲ませられていた。近年の魔力低下は、そのせいだったのだ。 (私は、彼の幸せを邪魔する障害物に過ぎなかったのね) 魔力不足に陥った彼女の余命は、あと一年だという。 それを知った彼女は自身の幸せを探すことにした。

四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?

白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。 王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。 だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。 順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。 そこから始まる物語である。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師
恋愛
 グレイフォアガウス王国の第二王女、シャーロット。  フォーサイス公爵家の次期公爵、セオドア。  二人は婚約者であるけれど、婚約者であるだけだった。  形だけの婚約者。二人の仲は冷め切っているし冷え切っている。  そもそも温度など、最初から存在していない。愛も恋も、友情も親しみも、二人の間には存在しない。  周知の事実のようなそれを、シャーロットもセオドアも否定しない。  お互いにほとんど関わりを持とうとしない、交流しようとしない、シャーロットとセオドアは。  婚約者としての親睦を深める茶会でだけ、顔を合わせる。  親睦を深める茶会だというのに、親睦は全く深まらない。親睦を深めるつもりも深める意味も、二人にはない。  形だけの婚約者との、形だけの親睦を深める茶会。  今日もまた、同じように。 「久しぶりに見る君が、いつにも増して愛らしく見えるし愛おしく思えて、僕は今にも天に召されそうなほどの幸福を味わっている。──?!」 「あたしのほうこそセオ様とお顔を合わせること、夢みたいに思ってるんですからね。大好きなセオ様を独り占めしているみたいに思えるんですよ。はっ?!」  顔を合わせて確認事項を本当に『確認』するだけの茶会が始まるはずが、それどころじゃない事態に陥った。  

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」 結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。 彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。 見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。 けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。 筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。 人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。 彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。 たとえ彼に好かれなくてもいい。 私は彼が好きだから! 大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。 ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。 と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)

私は本当に望まれているのですか?

まるねこ
恋愛
この日は辺境伯家の令嬢ジネット・ベルジエは、親友である公爵令嬢マリーズの招待を受け、久々に領地を離れてお茶会に参加していた。 穏やかな社交の場―になるはずだったその日、突然、会場のど真ん中でジネットは公開プロポーズをされる。 「君の神秘的な美しさに心を奪われた。どうか、私の伴侶に……」 果たしてこの出会いは、運命の始まりなのか、それとも――? 感想欄…やっぱり開けました! Copyright©︎2025-まるねこ

処理中です...