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1-something quite unexpected-
35高塚くんと気まずい④
しおりを挟む「えっと、高塚くん?」
『たくさん連絡した』
「ごめんね。すぐ返せなくて」
──……連絡。メールの流れを要約すると、挨拶と心配する内容が多かったけれど、あまりにもそれに対して莉乃から連絡がないため電話も間に挟んでいたといったところだった。
一向に返信がないからまたメールで安否確認しつつ徐々になんだか方向性が怪しくなって、一番新しいメールにはなんで下の名前で呼んでくれないのかなと書いてあった。ぽつり、と呟く感じだったけど、メールなのに寂しそうというか。
これには心底驚いた。
この一日あまりで高塚くんに何があったのか。流れや文面を見ると、ちょっと申し訳なさも感じてしまう。
今まで指摘されたこともないし、初めから勝手に呼び捨てにされていたので深く考えたことはなかったけど、いつまでも高塚くんなんて呼ばれることに他人行儀だと感じていたのかもしれない。
でも、土曜日に偶然聞いてしまった言葉が忘れられない。
好きでもないのに、なぜ仲良く歩み寄りたいとばかりのことを言うのか更に疑問が募る。
負い目と衝撃のメール内容を思い出し、莉乃は何を言うべきか、言わざるべきかと口ごもり高塚くんの反応を待つ。
『………………りのは休日どうだった?』
スマホの向こう側でも長い沈黙が落ちる。
なんだかいつもより気まずいと思いながら、莉乃はスマホの持つ手をぎゅっと握った。
メールの内容に触れていいのか、でも急にその話題に持っていくのも変だしと思っていたが、高塚くんもすぐにメールの内容を触れる気はないようだ。
「たくさん買い物もしたし、美味しいものも食べたよ。高塚くんは?」
『俺はりののことを考えてた』
「…………」
今度はこちらが沈黙をする番。
うん。いっぱいメールくれてたもんね。電話も。
よく考えれば、連絡先を交換してから半日以上連絡が空くことはなかった。それを考えると、心配をかけた高塚くんには本気で悪いことをしたと思う。
普段のやりとりの中から気遣いを向けてくれた高塚くんに対して、臭いものに蓋をするような自分の子どもっぽい行動を思うとげんなりする。
それでも、やっぱり土曜日のことが脳裏から離れない。
もやもやするのは事実で、莉乃は中途半端な己の対応に落ち込んだ。小さな吐息が漏れる。
『…………りの、土曜は疲れて寝たの? 今朝も連絡が取れなくてどうしたのか心配した』
「ごめん。人が来ててスマホ見てなかった」
『そう。……今まで?』
「うん。昔からの兄の友人なんだけどね、久しぶりに泊まっていったから、日曜もそのまま出かけることになって」
『家族でって言ってたけど?』
そうだよね。そこは予定を聞かれて話してたから気にはなるよね。
「そうなんだけど。両親だけで行くことになったから、予定変更で」
『……へぇー。お兄さんの友人なのに、莉乃はスマホが見れないほど忙しかったの?』
「そういうわけじゃないのだけど」
『じゃあ、なに?』
淡々とした口調。棘を感じて、ちくちく痛い。
「…………高塚くん、なにか怒ってる?」
『怒ってないとは言えない。でも、怒ってない。どちらかというととても心配した』
どっちなんだ。これって、やっぱり怒ってるってことだよね?
誘われた時に予定変えられないって言ってて、結局こうなったのだから莉乃も悪いことをしたかなと思う気持ちもある。
でも、予定変わったからじゃあ遊ぼうと気軽に誘える関係かって言われるとそうでもないから、高塚くんのことで気まずく思っていなくても結局はこうなっていたと思う。
「そうだよね。たくさん連絡くれててびっくりした」
『……りの、メール見た?』
「うん」
『心配かけさせて悪いって思ってる?」
「うん」
『ならさ、俺のお願い聞いて』
悪魔のささやきに聞こえた。スマホ越しに直で伝わる低音魅力ボイス。
「……できることなら」
『今は一人なんだよね? 今から会いたい。会いに行ってもいい?』
「今から?」
『昨日の夜からずっとりののことばかり考えてて、もしかしたら事故にあったんじゃないかとかさ。すっごい心配だった』
確かに、そんなメールも入っていた。
『だからさ、こうして話していてもまだ心配なんだ。直接会って無事を確かめたい』
「さっきも言ったけど、特に何か危険があったとかではないよ?」
『わかってる。気持ちの問題なんだ』
「明日会えるのに?」
『りの。俺は今すぐ会いたい。というか、もう向かってるから』
「えっ、うそっ!?」
『本当。それで会ってくれる?』
莉乃は部屋の時計を確認した。短い針は7と長い針はあと数分で6を指すところだ。
そんなに遅くはないし、コンビニに出るといって出るくらいなら家族に不審に思われることもないだろう。
でも、なぁ……。
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