高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
36 / 81
1-something quite unexpected-

36高塚くんがわからない①

しおりを挟む
 
 でもなぁ、と思ったのも束の間、あっという間に流されました。
 私が高塚くんの本気ヒンヤリモードに勝てるわけがない。今回は罪悪感もあったので、『りぃの』とあの独特の呼び方で名を呼ばれて秒で返事することになった。

 現在、家から徒歩5分の公園。公園といっても記念公園というもので、遊具があるわけではなく、大きな桜の木が周囲に植えられそのそばにベンチが二つあるだけの小さな公園だ。

 さすがに家まで来てもらうのは悪いと思うのと、住所まで知られてしまうのも避けたかったこともあった。
 駅まで出ると言ったのだけど、バイクで行くからってことで家の近場で人目につかない場所はと考えてここを指定した。
 あと、向かってるって言ったよね? と思ったけど、バイクの保管場所まで向かっているであって嘘はついてないとのこと。やられた。

 ベンチに座りぼんやりと木々の合間の夜空を見上げていると、ブヴォォォンとエンジン音とともに一つライトの光に照らされた。眩しくて目を細めると、バイクの音がすぐそばでやみ停止する。
 長い足をするりと下ろした高塚くんは、ヘルメットをとると髪をかきあげ左右に首を振った。そこですぐに視線が合う。嬉しそうに口角を上げ、駆け寄りながら確かめるように名を呼ばれた。

「りの!!」

 その姿を魅入られるように眺めていたが、莉乃は慌ててベンチから立った。

「こんばんは。迷わなかった?」
「ああ。調べたらすぐわかった。ここまで出てきてくれてありがとう」
「ううん。こっちこそわざわざここまで来てくれてありがとう」

 わりと強引に外に出ることを勧めたくせに、まずお礼なんだと思うと笑みが零れた。
 そのまま同じようにお礼を告げると、高塚くんがふわっと嬉しそうに笑った。それがあまりにも自然体に見えて、直視しきれずわずかに視線をそらす。

 足にぴったりとしたパンツに分厚いライディングシューズが、高塚くんのスタイルの良さを引き立たせ、ヘルメットで押さえつけられ乱した髪が妙に色っぽい。
 同級生がバイクを乗り回す姿とかちょっとキュンものだ。むしろギュンってきた。
 この人、どこまで胸キュンポイント稼ぐつもりなのか。こんなの、通りすがりの人でも見惚れてしまうレベルだと思う。

「りの」

 改めて高塚くんのスペックの高さを見せつけられた気分の中、同時に昨日のことなどここにくる経緯があれこれ浮かんでくる。どっしりと重い気分で佇んでいると、低く硬い声で名を呼ばれた。

「……なに?」

 気まずくて上擦った返事をしながら改めて高塚くんを見上げて、ぎょっとする。
 いつのまにこんなに近づいていたのか。目と鼻の先に高塚くんの胸元が見えたと思ったら、そのまま腕を伸ばされてガバリと抱きしめられた。

 突然の超接近に目を白黒させていると、こつんと頭を寄せた高塚くんが切なげに囁かれ、甘く低い声が耳くすぐる。

「来てくれないかと思った」
「ちょっ、高塚くん」
「俺、この1日生きた心地しなかった」

 そのままぐぅっと痛いくらいに抱きしめられ、すぅっと息を吸い込み首の辺りの匂いを嗅がれる。
 やめれ。
 すんすんっと何度か嗅がれ、「りのの匂いだ」と言われどうしろと? ちょっと変態ちっくな行動ですよ。

 どうした、高塚くん!?
 休日を誘われたあたりから、噛み合わないことが多すぎる。どうしていいのかわからないことが多すぎるっ!!

 首を伸ばし少しでも距離を取ろうとするけれど、すんすんとまだ匂いを嗅がれる。
 ぎゅうっと回された腕は外されそうにない。これはダメだ。抵抗は諦めて打開策を探ろうと会話に集中することにする。

「高塚くん、どうしたの? 離して!! 匂いかかがないで」
「嫌だ。りのが足りない」
「意味がわからないよ」
「さっきも言った。りのと連絡がつかなかった1日が地獄のようだった。りのが不足してしんどいっ」
「そんな大げさな」

 少し行き違いがあっただけだ。
 莉乃が気持ちの整理がつかなかくて放置した時期と被って、高塚くんがやたらと連絡してきたから大事に思えるだけのことだ。それも一週間とか一ヶ月とかではなく、たった1日のこと。

「大げさでもなんでもない。俺はいつもいつももっとりのと一緒にいたいって思ってるのに」
「…………」

 なにかいつもと違う。ほんと、高塚くんどうした!?
 自分の気持ちもよくわからない状態なのに、高塚くんのこの変化をどう受け止めていいのかわからない。

 きゅっと唇を噛み締めると、高塚くんもきゅっと唇を噛み、意を決したように口を引いた。

「──俺がりのに言った最初の言葉を覚えてる?」
「最初の言葉?」
「俺が学校でりのを見つけた日に言った言葉」
「……あぁー、」

 覚えてますとも。ある意味ホラーなあの言葉でしょ? 思えば、あれで行動が制限された気もする。
 探されてたんだと思うと、相手が勝手にしていたことでも申し訳なさが湧いてくるものだ。そんな相手に、冷たくできるわけがない。
 ひとまず話を聞こうってなるよね。しかも相手は人気者だから、ある程度は人柄は保証されてるわけだし。

「俺はあの日からずっとりのを探してた。せっかく転校してもなかなか見つからなくて本当は焦ってた」
「…………」

 それっぽいこと言ってたけど答えは教えてくれなくて、いつ出会ったのかいまだに私はわからないままだ。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

喚ばれてないのに異世界召喚されました~不器用な魔王と身代わり少女~

浅海 景
恋愛
一冊の本をきっかけに異世界へと転移してしまった佑那。本来召喚されて現れるはずの救世主だが、誰からも喚ばれていない佑那は賓客として王宮に留まることになった。異世界に慣れてきたある日、魔王が現れ佑那は攫われてしまう。王女の代わりに攫われたと思い込んだ佑那は恩を返すため、身代わりとして振舞おうとする。不器用な魔王と臆病な少女がすれ違いながらも心を通わせていく物語。

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が私への初恋を拗らせていた〜

岡崎マサムネ
恋愛
アイシャがかつて赤の大魔導師と呼ばれていた前世を思い出したのは、結婚式の当日だった。 まだ6歳ながら、神託に従い結婚することになったアイシャ。その結婚相手は、当代の大魔導師でありながら禁術に手を出して謹慎中の男、ノア。 彼は前世のアイシャの教え子でもあったのだが、どうやら初恋を拗らせまくって禁忌の蘇生術にまで手を出したようで…? え? 生き返らせようとしたのは前世の私? これは前世がバレたら、マズいことになるのでは……? 元教え子を更生させようと奮闘するちょっぴりズレた少女アイシャと、初恋相手をもはや神格化し始めた執着男ノアとの、歳の差あり、ほのぼのありのファンタジーラブコメ! ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

処理中です...