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2-My goddess-【千歳SIDE】
58お願いだから③
しおりを挟む「りの。落ち着いて。連絡ない間に何かあった?」
「…………」
「りの」
「気安く名前を呼ばないで」
らしくない反応。
ほんと、りのどうしたの?
まさか、その男となにかあった?
「りの。ちょっと落ち着こう。ほら、座って」
やはり、自分たちの間に大きな隔たりがある。一刻も早くそれを払いたくてベンチに誘導して座らせようとするが、りのはふるふると首を振った。
「無理、いや」
無理? いや?
ああー、ほんと駄目だ。駄目だよ、りの。
拒絶されたら、俺自身がどうなるかわからない。頼むから、追い込まないで。
りののこと優しく大事にしたいのに、それと同時にどうしても衝動的に奪って印象づけたいという正反対の気持ちが膨れ上がる。
「こっち向いて」
自分でも思った以上に硬い声が出た。りの身体が震えて息を飲んだが、表情を取り繕うこともできないままりのを見据えた。
逃さない。俺から逃げようとするとか無理だから。
「……高塚くん、ちょっと怖い」
「怖い? ああ、ごめん。でも、りのが放っておいて何ていうから悪いんだよ」
怖いとかもうどうでもいい。これだけ必死なのをわかってほしい。俺はりのしか見えないのに、な。
嫌われてはいないと思うのに、いまだにりのの本心が見えなくて、近寄らせてくれなくて、それでいて簡単に他の男に名前を呼ばれ呼ばせていて。
いつになったら、りのは俺に心を見せてくれるのだろうか?
親しげな男の存在は、それがどういう立ち位置の男かとわかってもなお、千歳の暗い感情を刺激する。
「……離して」
「嫌だ」
離したら逃げるだろ? わかっていて逃がすわけがないし。
「お兄さんの友人と何かあった?」
「なにもないよ」
「なら、なんで急にそんなことを言い出したの?」
本当、教えてよ。りのをどうしたら手に入れられるのか。どうしたら、愛してるって告げてもよくなるのか。
「本当に何もないよ」
「なら、」
「……聞いて。こういったスキンシップもさ、高塚くんにとっては普通の事かもしれないけど、私にとってはそう割り切れるものでもない。探してたから? 見つけたから? 過ごしたいから? そんなものを急に押し付けられて、私はどうしたらいいの? どうして欲しいの? まったくわからないよ」
「りの」
「やめてっ」
さらにりのを引き寄せようとしたら、振り払らわれた。
「りの……」
ここまで本気で拒絶されたことがなかった。
本気なの?
俺がもたもたしてたから、他の男とくっついた? さっさと本性晒していても良かった?
わからない。
りのに拒絶されるとどうしていいかわからなくなる。無理だ。離れるとか考えられない。
お願いだから、りの。俺を拒絶しないで。
「えっと、急にごめん。ちょっと混乱してて」
優しいりのはこんな時も謝ってくれる。でも、今はそんな言葉じゃなくて、一緒にいるって言ってほしい。
離れてしまったりのの手をまた掴む。
「りの。座ろ」
「ううん。座らない」
「りの、お願い」
今の自分はきっと情けない顔をしていると思う。それだけ、りのの拒絶は痛くて痛くて本当どうしていいのかわからない。
「やっぱり、無理だよ。さっきも言ったけど、高塚くんがなにを考えているのかわからない。なにをしたいのかわからない。だから、ごめん」
「何が?」
「えっ?」
「何がごめん?」
わからないから、教えて。
りのがそばにいてくれるなら、なんだってするから。
「正直、高塚くんといて楽しいことも多いのだけどそれ以上に振り回されるの疲れる。だから、もうこういうのやめて欲しい」
「────こういうのってどういうの? 俺はずっと莉乃に意思表示をしてるつもりだけど」
「えっ?」
「ね、りのは俺の名前知ってる?」
ずっと、高塚くんって距離を取られて、他もろもろ強引にしていることを自覚していたから、そこはりのから距離を詰めてくれるのを待っていたのだけど。そんなことしない方が良かった?
わけも分からず、捉えてしまって良かったのだろうか。
すぐにでもりのの気持ちが欲しかったけど、りのから来てくれないと意味がないと思っていたから。
初めてのことに千歳なりにいろいろ考えて、アプローチをしてきたつもりだったけれど、結局拒絶されている。
なんだか、馬鹿らしくなってきた。
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