71 / 81
3-Love doesn't stop-
70高塚くんの愛が爆発した②
しおりを挟む「昨日は、ちょっと言い過ぎたと思う。ごめん」
後悔していた。話そうとしてくれていた高塚くんを放り出して、言い逃げはさすがによくなかった。理由はどうあれ、ひどい態度だったと思う。
そう思うと、よく飽きずに自分のもとに来てくれたのだと感動さえあって、謝罪を口にすることで少し肩の荷が降りる。
「傷ついた。癒してほしい」
「…………ごめ、」
「嘘。責めたいわけじゃないから。いや、これ以上ないってくらい傷ついたけど、またりのが俺のところに戻ってきてくれたから大丈夫」
「でも、」
よくよく見ると、目元に隈があることに少し前から気づいていて、そのことを軽く話しているけどそれはポーズではなくて、きっと寝られないくらいに悩んだのだろうことがわかる。
自分はぐーすか寝てしまっていたから、余計に気持ちがえぐられる。
そのことについて触れていいのか、もっと真摯に謝るべきかと言葉を切ると、高塚くんがふっ、と笑みを浮かべそれから力なく顔を隠すように項垂れた。
「なにか理由があったってわかってるから。だから、話してくれる? 何もわからないままりのがどこか俺の手の届かないところに行くと思ったら、昨日は生きた心地がしなかったしもう見失いたくない」
首元に口がつけられ、吐息がかかる。かすかに触れる唇が震えていることに気づき、ぎゅっと心臓が掴まれた。
「千歳くん……」
スキンシップに思うところはあるけれど、隠しきれない高塚くんの思いが漏れ出し、それは本人は隠したいことなのに出てしまっているようで、それがとても愛おしいことのように思える。
「りの、いなくならないで」
さっき、消えないかって心配していた。それだけ昨日のことは高塚くんにとって衝撃的なことだとこの震えが伝えてくる。
これだけ必死なのに、電話がなかったこととか、今朝すぐにでも捕まえに来なかったのかとか気にはなるけれど。
どうやら高塚くんルールというものがあるらしいしことは、なんとなくだが承知した。
たまに漏れ出ていた言葉から、そこを突くと莉乃にとってあまり良くない気がして今はスルーする。
すっかり高塚くんのことを信じたくなっているのだけど、誤解があるのなら先にそれを解消したい。
「……いなくならないよ。私もちゃんと話がしたいって思ってるし。だから、一度離れて話そう」
もう、心臓がもたないよ。心臓が壊れるのではないかというくらい、ばくばくしている。恋愛初心者はギブです。
好きだと思った人に好きだと言われて、バックハグされながらすっごい愛情表現されて嬉しいけれど恥ずかしいし、どういった態度をとったらいいのかわからない。
だから、一度離れて落ち着きたかった。
「うーん。でも、くっついていないと無理っていうか。やっぱり、どう考えても無理!! りのにくっついていないと逆にやばいっていうか、りのも本気で嫌がってはいないよね? だったら、りののためにもこのままをお勧めするよ」
どうやばいのか。
ときおり不穏な言葉が混ざっていて、甘いだけではない緊張感を強いられる。
「その、性格が変わった?」
土曜日に見たちょっと怖さも含む高塚くんとも、学校の爽やかな高塚くんとも、一緒に放課後過ごしていたナチュラル王子といったものとも違う。
饒舌な高塚くんに慣れないし、何より照れ臭くて、少しでもこの甘い雰囲気を和らげないと落ち着いて話せない。
確かに嫌がってはいないが、それを口にされると居た堪れない。でも、ここで嫌とも言えない。
これ以上、高塚くんを傷つけることはしてはいけないと思うし、それによって自分たちがこじれることの方が絶対嫌だった。
だったら、照れくさいのとか我慢する方がいい、のだろうとは思う。本当に心臓はやばいのだけど。耐えられるかな……。
きっと、最終的に莉乃が折れるだろうことも、見透かされてはいるのだろう。強引だけどしっかり見極められているというか、油断ならないのが高塚くんだ。
わらかないことの方が多いけれど、今まで過ごした時間で自分に嘘偽りのない姿を見せていたのだというのなら、多少は莉乃だって高塚くんの本質を掴めているはずだ。
「うーん。りのの前では本音を隠して取り繕わないって決めただけ。執着するものがなかったから他がどうとか、変わったとかはわからない。ただ、りのが逃げないならこのままでいたいだけ」
「やっぱり、性格変わった」
「変わってないから。もともと感情の揺り幅がない方だったけど、りのだけが特別だからこれはりの仕様なんだと思う」
仕様ってなんだ?
いや、そこはもう突っ込まない。だから、こっちの質問に留める。
「なんで急に?」
すっごくわかりにくかった。すっごく迷ったし悩んだし、振り回されていたと感じてもいた。それは高塚くんが気になっていたからでもあるのだけど、その分しんどかったというか。
やっぱり、もうちょっと今みたいに言葉で伝えてくれていたら違ったのではないかと思うわけで。
10
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。
待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。
箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。
落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。
侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!?
幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。
※完結まで毎日投稿です。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
喚ばれてないのに異世界召喚されました~不器用な魔王と身代わり少女~
浅海 景
恋愛
一冊の本をきっかけに異世界へと転移してしまった佑那。本来召喚されて現れるはずの救世主だが、誰からも喚ばれていない佑那は賓客として王宮に留まることになった。異世界に慣れてきたある日、魔王が現れ佑那は攫われてしまう。王女の代わりに攫われたと思い込んだ佑那は恩を返すため、身代わりとして振舞おうとする。不器用な魔王と臆病な少女がすれ違いながらも心を通わせていく物語。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる